ガンダムビルドダイバーズ Episode:Fairy 作:セルフィア
昨日のプルーマフェスから時間が経ち早朝
まだ少し眠気の残る通学路を、晴翔と綾香は並んで歩いていた。
「……眠い」
隣から、聞き慣れた大きな欠伸が聞こえてくる。
「昨日、寝るの遅かっただろ。」
「だって昨日のイベント、楽しかったんだもん!」
「まぁ、確かにな…でも、だからって夜更かしするなよ。」
「晴翔だって最後までログインしてたじゃん。」
「してたけど、俺はちゃんと寝たぞ。」
「嘘だぁ!」
「本当だって…」
そんな昔から変わらない他愛のない会話。
4月から通い始めた学校へ向かう道もこうやって隣を歩くことも下らない事で言い合う事も、いつも通りの光景だった。
「……そういえば」
ふと、昨日のイベントの話になる。
「昨日のキュリオスの人、強かったよな。」
「……え?」
隣を歩いていた綾香の足が、一瞬だけ止まった。
「ほら、途中で助けに来てくれた人!あの空中戦、かなり上手かった。」
「……ふーん。」
「変形を使った急加速からの射撃。ああいう戦い方は俺たちのフォースにはいないタイプだったから…」
「…………」
返事がなく、隣を見ると綾香は少しだけ頬を膨らませていた。
「どうした?」
「……その人の事、気になるの?」
「え?」
「昨日から結構その人の話するじゃん。」
「そう?」
「…そうだよ。」
雰囲気が若干不機嫌そう。
「別に、そういう意味じゃないけど」
「じゃあどういう意味?」
「単純に強かったから気になっただけだよ。」
「……ほんと?」
「あぁ。」
「……そっか」
綾香は再び前を向く。
けれど、どこか納得してない感じがした。
「それに、昨日はちゃんと話す時間もなかったしな。」
「………」
「どんな人かも知らないし。」
「…じゃぁ。」
「ん?」
「私も気になる。」
「急にどうしたの?」
「だって気になるじゃん!」
さっきまでの不機嫌そうな顔から一転、彼女はいつもの笑顔になる。
「どんな人なのか、ちゃんと見てみたい!」
「まあ……そうだな。」
「よーし! 今日ログインしたら探してみようよ!」
「見つかるか分からないけどな。」
「見つける!」
「はいはい…」
俺は苦笑した。
この時の俺は、彼女がどうしてそこまでキュリオスの女性を気にしているのかまだ分かっていなかった。
〜〜〜〜時は経ち放課後
学校を終え、急いで帰宅した晴翔と綾香はGBNへログインした。
フォースメンバーであるアックアとヤマトにもメッセージを送り2人とも割と早く了解の返信が来て待ち合わせまで少し時間があったため、交流エリアで時間を潰すことにした。
「昨日の人、いるかな?」
「さぁな。」
探すと言っても俺たちが知ってるのダイバーネームと女性って事ぐらいなんだよな…
「絶対見つけるからね!」
「だから、そこまで探さなくても――」
「あっ!」
アヤが突然声を上げた。
「いた!」
視線の先を見ると、確定ではないだろうが8割方間違いないだろう。
昨日のイベントで見た、あのキュリオスの女性がいた。
「本当にいた……」
「ほら、行こう!」
「ちょっと待てって!」
アヤに引っ張られるように、女性のところへ向かって行く。
「こんにちは!」
アヤが普段の感じで元気よく声を掛ける。
声をかけられた女性が振り返る。
「あら?」
そして俺たちの顔を見て、少し驚いたように笑った。
「降りた所をちょっとしかみてないから違っていて気を悪くしたらごめんなさいね?貴方が昨日のフリーダムのダイバーよね?そして貴女がF91ね?」
「やっぱり!昨日はありがとうございました!」
「いやいや、こっちこそ。あの状況じゃ私一人でも厳しかったからね」
女性は笑っていた。
「それに…改めて見ると、昨日のF91の子も結構やるじゃない。」
「えっ、本当ですか?」
「そうね。あの状況であれだけ動けるなら大したものだよ。」
「えへへ……」
アヤが嬉しそうに笑う。
「俺から見ても、昨日の動きはかなり参考になりました。」
「そう?」
「特に変形を使った急加速からの射撃、あれは…」
「…またその話?」
その声の反応にアヤを見る。
「だって昨日から、その人の話しかしないじゃん。」
「いや、それは強かったから…」
「ふーん…」
女性はそんな俺たちのやり取りを見て、クスッと笑った。
「仲良いのね、二人とも」
「彼とはリアルで幼馴染なので!」
アヤが胸を張る。
「なるほど…そう言えば自己紹介がまだだったよね?私はエンキ。よろしくね。」
「俺はハルトです!」
「私はアヤです!」
「「よろしくお願いします!」」
直後、エンキは何かに納得したように笑った。
自己紹介などがひと段落したタイミングで、他のフォースメンバーも集まってくる。
「お?もしかして、この人がキュリオスの人か?昨日はどうも!」
アックアがエンキに声を掛ける。
「昨日は助かりました。」
「こちらこそ、一緒に戦ってくれてありがとね。」
ヤマトも同じく頭を下げる。
それ以上は何も言わない。
エンキも特に気にする様子もなく、再びこちらを向く。
「ねぇ?」
「はい?」
「ちょっと聞きたいんだけど。」
エンキが少しだけ姿勢を正した。
「私もこのフォースに入れてもらえないかな?」
「え?」
全員がエンキの方を向く。
「昨日、少しの間だけど一緒に動いてみてすごく楽しかったなって思ってね。」
ハルトは少し考えて…
「俺はいいと思う」
と答えた。
「良いんじゃねぇか!」
アックアが続く。
「実力も申し分ないですしね。」
ヤマトも頷いた。
ハルトたちの反応を見て、エンキは嬉しそうに笑った。
「じゃぁ…」
「…待って。」
その声だけは違っていた。
「…私は反対」
アヤだった。
「どうして?」
エンキは怒ることなく、穏やかに聞く。
「昨日一緒に戦っただけで、そんな簡単に仲間を決めていいの?」
「でも…」
ハルトが口を挟もうとする。
「そういうことじゃないの!」
アヤが声を上げる。
その瞬間、自分でも驚いたように口を閉じる。
「……」
沈黙が続く。
「…ごめん」
アヤが俯く。
「私もなんでこんなに嫌なのか分からない…」
エンキはしばらくアヤを見つめていた。
そして……
「じゃぁさ。」
柔らかく笑って。
「私が貴女に認めて貰えば良いのかな?」
「え?」
「実力が見たいんでしょう?」
「……うん。」
「ならやろっか。」
エンキは待機場に留めてあるキュリオスへ向かう。
「私がこのフォースに入るのに相応しいか、確かめてみて。」
「……分かった!」
アヤも同じくF91へ向かった。
試合形式などを確認し戦闘可能エリアに転送される。
今回のエリアは荒野。
ゲートから飛び出た2機は互いに距離を取る。
「武装の追加はしないでいいの?」
エンキが尋ねる。
「うん!」
「なら、始めよっか。」
ガンダムキュリオスがGNビームサブマシンガンを構える。
対するガンダムF91もビームライフルを構えた。
「行きます!」
ガンダムF91が先に飛び出す。
ビームライフルが火を吹き、それに呼応するようにガンダムキュリオスが横にステップを刻む。
続けざまに2発、3発と撃ち続ける。
「早いね。」
ガンダムキュリオスが反撃。
GNビームサブマシンガンからビームが連続して放たれる。
「っ!」
ガンダムF91がシールドを構えて防ぐ。
そのまま反撃。
「そこ!」
ガンダムキュリオスが変形。
MA形態へ移行し、一気に加速する。
「速っ!」
ガンダムF91の横をすり抜けていく。
すれ違いざまに射撃。
「くっ!」
ガンダムF91が身を捻って回避する。
「まだまだ!」
ガンダムF91が追っていき、ビームライフルを連射する。
ガンダムキュリオスは旋回しながら避ける。
「やるね!」
「そっちこそ!」
互いに距離を詰めガンダムF91がビームライフルを捨て、ビームサーベルを抜く。
「近距離なら!」
ガンダムキュリオスも変形を解除。
こちらもGNビームサーベルを振り抜く。
ビームの刃がぶつかる。
「くっ!」
「まだまだ!」
一撃、二撃、三撃。
互いに一歩も譲らない、ガンダムF91が一歩踏み込む。
ガンダムキュリオスが受け流す。
その勢いで反撃。
「そこ!」
「させない!」
ガンダムF91がビームシールドで受け止める。
そして、その至近距離からビームライフルをかまえる。
同じくガンダムキュリオスもGNビームサブマシンガンを構えた。
「「ーー!」」
同時に引き金を引き2機が吹き飛ぶ。
地面を滑りながら、ほぼ同時に立ち上がる。
「「……」」
互いに獲物を構える。
しかしーー
「ここまでにしようか。」
エンキが言った。
「え?」
「これ以上やったら、本当にどっちか壊れちゃう。」
アヤは少し息を切らしながら
「……私の負け?」
「ううん。」
エンキは笑った。
「引き分け。」
「……!」
「十分じゃない?」
再びエンキが笑う。
「貴女、私が思ってたよりずっと強い。」
「本当?」
「うん。」
エンキが手を差し出す。
「これなら私も安心して、このフォースに入れるかな」
アヤは差し出された手を見る。
そして、少しだけ迷ってからその手を握った。
「……よろしく」
「うん。よろしくね」
エンキは先ほどよりも優しく笑った。
そして一瞬だけ、アヤの顔を見る。
「それに――」
「?」
「貴女が、このフォースを大事にしてるのもよく分かったから」
「……?」
「なんでもない」
エンキは笑って誤魔化した。
〜〜〜〜交流エリア
「これで決まりだな!」
アックアが嬉しそうに言う。
「うん、改めてよろしく。」
「こちらこそ。」
ヤマトも頷く。
「よろしく。」
ハルトも笑って手を差し出す。
「よろしくね。」
エンキが握手を返す。
その隣ではアヤが少し複雑そうな顔をしていた。
けれど、先ほどまでの険しい顔ではない。
エンキはそんなアヤの様子をみてほんの少しだけ笑った。
(……なるほどね。)
それ以上は何も言わなかった。
そして、その日は新メンバー歓迎会をしてお開きとなった。
〜〜その日の夜
ハルトは一人でGBNにログインしていた。
昨日、姉から託されたデータ。アイテム化できる正体不明のバグ。
「……やっぱり、おかしい」
システムコマンドから言語などの解析画面を開く。
普通のシステムエラーなら、こんな形で文字化けしながらでもデータとして残るはずがない。
「不正なエラーとかで削除されたデータの残骸……なのか?」
さらに調べる範囲を広げて見てみる。
その瞬間、開いていた画面が一瞬だけ乱れた気がした。
「……?」
一瞬だがノイズが走り刹那、何かが映った気がする。
「今の……何だ?」
もう一度確認してみるが、何もない。
「気のせいか……?」
そう呟いた瞬間。
画面の奥で、データが微かに小さく脈打つ。
「……!」
まるでもうすぐ生まれてくるんじゃないかと言わんばかりに。
「お前……」
ハルトは静かに画面を見つめる。
「一体、なんなんだ?」
返事はないが、ただ--
もう一度、そのデータが小さく脈打った。
まるで--生きているかのように…
だいぶ感覚が空いてしまいましたが第7話更新しました!
他の2作品と主観を変えていこうと思ってるので、もう少しお付き合い下さい!
今回の機体紹介!
ガンダムキュリオス
武装:GNビームサブマシンガン、GNビームサーベル×2、GNシールド、その他オプションに応じて武装選択可
SP:トランザム?
前回のお話でハルト達の改造プルーマ攻略を手伝ってくれたエンキの使用する機体。エンキのイメージカラーが朱色のためキュリオスのオレンジの部分が全部朱色に変えられている以外は普通のキュリオスと変わらない性能を持つ。
戦闘スタイルとして上空からの強襲を得意としていて一撃離脱を取る。