天狗の戯れ 作:葦名ご当地アイドル弦ちゃん
最近痒みが止まらなくて困ってます。
そんなわけで初投稿です。
雄英高校二日目。
この日、A組生は誰も彼もが昼休みを過ぎた辺りからソワソワと落ち着かない様子を見せていた。
それもそのはず。午後最初の授業は待望のヒーロー基礎学。そしてその教鞭を取るのはもちろん──。
「わーたーしーがッ
普通にドアから来たッ!!」
「オールマイトだ! すげぇ、本当に先生やってるんだ!」
「
「画風違いすぎて鳥肌が……!」
決めポーズをビシッと決めて登場したNo.1ヒーローの登場にクラス中が沸き立つ。
オールマイトは興奮が冷めぬままの生徒達に高説を始めた。
「やあ新入生の少年少女諸君! 私が君達に教えるのはヒーロー基礎学! ヒーローの素地をつくるため様々な訓練を行う課目だ! もちろん単位数も一番多いぞッ!
そして今日君達にやってもらうのはこれだッ! 戦闘訓練ッ!!」
「戦闘訓練ッ!?」
「二日目でか!?」
「何を言ってるんだい! ヴィランは今日明日にも現れ続けている! 奴らに追い付くためにも君たちの成長が不可欠なんだ!」
言い換えれば未来のヒーローたる君達の力が必要なんだとオールマイトは言っている。ナンバーワンヒーローに期待され、心踊ったのは言うまでもないことだ。
オールマイトがリモコンを押すと壁から数字の書かれたロッカーが現れた。
「君達に渡すものがある! 入学前に学校に送ってもらった個性届と要望に沿ってあつらえた戦闘服コスチュームだ!」
「おお!」
ヒーローの象徴ともいえる戦闘服コスチュームの登場に教室内は歓声に包まれる。
「更衣室で着替えて順次グラウンド・βに集合だ! 格好から入るってのも大事なことなんだぜ? 自覚するんだ、今日から自分は……、ヒーローだとッ!!」
その言葉を皮切りに全員が我先と戦闘服コスチュームに雪崩れ込み、自分のを手にすると更衣室へ向かった。
「待っていたぞ、童共」
「あっ、葦名さんだー!」
集合地点のグラウンド・βで待っていたのは葦名一心だ。
手ぶらだった昨日と違い、その場には赤と白の箱がそれぞれあった。それを見て何に使うか想像を掻き立て、これから始まる授業への期待を高めていく。
「準備中でしたか?」
「いや、今しがた終わったばかりじゃ。しばらくすればオールマイトの奴が来るじゃろうから待つがよい」
「はい!」
「……にしても。なんとも派手に
「あ、あざーっす!」
「お前さんのは……まぁ、あまり淫らに肌を見せるのは慎んだほうがいいぞ」
「そんな! 葦名さんまで!?」
昨日の件もあって、生徒達は一心に対してどこか近寄り難い印象を持っていたが、各々がデザインしたコスチュームを褒められて思わず頬を緩める。一部例外もあるが……。
「爆豪のもなかなか洒落た装いではないか。似合っておるぞ」
「けっ! 世辞だけは受け取ってやらぁ!」
そっぽを向く爆豪。周りは苦笑するが 幼馴染である緑谷は彼がただ照れているだけだと気づいた。
(かっちゃんが
あの唯我独尊、傍若無人を地で行くような男が礼を言うなど誰が想像できようか。
昔から知っている仲だからこそ、爆豪の心情の変化に驚きを隠せない緑谷。そして爆豪をそこまで変えた一心にも尊敬と興味が湧く。
「お待たせ! さァ! 始めようか有精卵共!! 戦闘訓練の時間だ!!!」
オールマイトの声に全員が気を引き締める。ヒーローになるための第一歩がいよいよ始まるのだ。
ここで飯田が挙手をして質問をする。
「先生! ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか!?」
「いいや! もっと二歩先に踏み込む! 今日やってもらうのは屋内での対人戦闘訓練だ!」
「「「対人戦闘訓練?」」」
オールマイトが告げた内容に首を傾げる一同。
「対人戦闘訓練って……基礎訓練も無しにですか?」
「勝敗のシステムはどうなります?」
「とりあえずぶっ飛ばせばいいンすか?」
「また相澤先生のときみたいに除籍があるんですか……?」
「分かれるとはどのような分かれ方をすればよろしいのでしょうか!」
「このマントヤバくない?」
「ン~! 聖徳太子ィ~~~!!」
「ほぉ、意外と様になっとるのう」
一斉に質問を投げ掛けられて思わず天を仰いだオールマイトだったが、咳払いして懐から小さなメモ用紙を取りだすと説明し始めた。
「敵退治は主に屋外で見られるが、統計だけでいえば屋内の方が凶悪敵発生率は多いんだ! 監禁、軟禁、裏商売など……真に賢しい敵は屋内に潜む!
そこで君達にはこれからヒーローチームと敵ヴィランチームに二体二の屋内戦を行ってもらう!」
オールマイトの説明をまとめるとこうだ。
・ヴィランがアジトに隠した核をヒーローが回収するという設定。
・制限時間内にヴィランを確保するか、核を回収すればヒーロー側の勝利。核を守るかヒーローを返り討ちにすればヴィラン側の勝利。
・訓練場として使用されるのは五階建てのビル。
といった感じだ。
ルールが設けられている訓練とはいえ、流れは実戦さながらの本格的な内容に緊張の色を滲ませつつも、高揚していく気持ちを抑えられない。
「コンビ及び対戦相手はクジだ!」
「適当なのですか!?」
「ヒーローはその場にいる他のヒーローと即席でチームを組んだりするからそういう事じゃないのかな……」
「なるほど! 先を見据えた計らいということですね。失礼しました!」
「なんでもいいさ! さっ、早く引きたまえ!」
「俺が先だ!」
一番乗りをかました爆豪を筆頭に次々とクジを手にしていく生徒達。
全員がペアを組んだことを確認したオールマイトは赤白の箱に手を突っ込んだ。
「それじゃあ最初の対戦相手はこいつらだ!
ヒーロー側、Aコンビ! ヴィラン側、Dコンビ!」
「あ"ぁ?」 「へっ?」
天の悪戯か、はたまた運命なのか。初っぱなからいきなり因縁のある相手とぶつかった二人は同時に声を上げた。
びくびくしながらも覚悟を決める緑谷と、気に入らない奴と当たり不機嫌そうに睨みを効かせる爆豪。
二人の反応は対照的ではあったが、どちらもやる気に満ち溢れていることに変わりはない。
「それじゃあヴィランチームは先に入って準備を! 五分後にはヒーローチームがスタートする。他の皆はモニタールームで見学だ!」
オールマイトの指示通り、各々が準備に取りかかろうとしていると爆豪が緑谷に近づくのが見えた。
最悪の事態も考え、一心は目を凝らして二人の動向を観察する。
「おい、デク」
「うぇ!? あっ、かっちゃん……な、なに?」
「今まで個性を隠してたのか、本当に発現したのかは知らねぇが……まァ、そんなことはどうでもいい。それより本気で来やがれ。全力でブッ殺してやるッ!」
「えっ? ちょ、ちょっと待っ──」
「話はしめぇだ。さっさと準備しろや、クソがッ!」
言いたいことを言って満足した爆豪はそのまま建物内へ入っていく。
呆然と立ち尽くしていた緑谷の肩に一心の手が置かれる。
「気を引き締めんか。爆豪の奴、本気でお主を潰しにかかるぞ」
「……はい」
「お主を侮るつもりはないと……そういう腹だったのう……。と、なれば……どうすべきか分かるな?」
「はいッ。僕も負けません! 全力で勝ちにいきます!」
一心の問いに力強く答える緑谷。その瞳には確かな決意が宿っていた。
「よろしい。では、不完全なお主なりの戦い方を見せてみるがよい」
一心に背中を押された緑谷はペアの少女、麗日と作戦会議にとりかかった。
AチームとDチームの闘いは熾烈を極めた。
生まれ持った天才的な戦闘センスと応用の利く個性を武器に攻撃を仕掛ける爆豪と咄嗟の判断力と培った知識で補填し対抗する緑谷。
二人の一騎討ちはまさしく死闘と呼ぶに相応しく、最上階で闘ってる麗日と飯田が霞んでしまうほど凄まじいものだった。
『しねぇぇぇえッ! デクゥウ!!』
『ぐぅ……! まだまだァ!!』
「すげぇ……マジですげぇよアイツら……!!」
「どっちか応援したいけど、どっちも頑張れ……!!」
二人を見守るクラスメイト達は手に汗握り、興奮冷めやらぬ様子で見つめていた。
(ふむ……。確かに爆豪は圧倒してるが、まだまだ粗が目立つのう。緑谷は……やはり、まずはOFAを我が物にしなくてはいかん)
爆豪の攻撃はどれもこれもが荒々しく、体力と個性に物を言わせた力任せなものばかりだ。対する緑谷は攻撃を避けつつ、隙を伺いながら反撃の機会を窺うという戦い方をしている。
一見すると互角に見えるが、一心からすれば緑谷は決定打に欠けていた。まだOFAを掌握していないため仕方がないが、それでも諦めずに食らいついている。
そんな二人の決着は当然の結果に落ち着いた。
『これでッ……! 終わりだぁッ……!』
『ぐはぁ……ッ!』
右の拳が炸裂した瞬間、爆豪の勝利が決まった。
打撃と爆破を融合した一撃により、意識を刈り取られた緑谷は壁まで吹き飛びその場に倒れ込む。
緑谷は動かない。これを見たオールマイトはすぐさま戦闘不能のジャッジを下した。
同時刻、緑谷が負けたのを知った麗日はそのせいで萎縮してしまい、飯田に一瞬の隙を突かれて確保テープを巻かれてしまった
こうして一戦目はDチームがヒーローを確保し、核を守りきったことで勝利した。
その後も戦闘訓練は続いた。
個性把握テスト時にはなかった仲間との連携、敵との駆け引き、そして室内戦という限られた空間での戦闘など実戦を想定した訓練を得てそれぞれが課題を見つけていった。
こうして全ての取り組みが終わり、オールマイトから講評が言い渡された。
「お疲れさん! 緑谷少年以外は大きな怪我もなし! しかし真摯に取り組んだ! 初めての訓練にしちゃ、皆上出来だったぜ!」
現在保健室で治療を受ける緑谷を除き、生徒達の顔は一様に晴れやかであった。
初めて体験した実戦形式の授業。自分達の実力を客観的に評価してもらえることは貴重な機会でもあり、彼らにとって有意義な時間となったようだ。
「今回の訓練で学んで欲しかったのはただの勝ち負けではなく、これから個性を使っていく上での課題だ! それをきちんと理解して今後の糧とするんだぞ!」
「「「はい!」」」
「さて、これにて授業は終わり……そうだ! せっかくだから一心さんからも何かありますか?」
隅で見守っていた一心にオールマイトが話を振ってきた。
「そうじゃのう……。初めてにしてはよく動けてたと思うが、やはりまだまだ改善の余地はある。まずは経験を積むことじゃ。一の経験は十の見聞に勝る。身体の使い方さえ覚えれば、お主らならすぐに強くなるじゃろう」
「なるほど……一心さんもそう思いましたか! やはり、実践あるのみですね!」
「うむ。昔のお主と同様にな」
「おぅふッ! ああ……! 思い出したら震えが……!」
「すいません」
二人が会話している最中に、手を挙げる者がいた。一心から『淫ら』と形容された八百万である。
「質問があるんですが、構わないでしょうか?」
「ああ、いいとも! 何が聞きたいんだい?」
「お二人の関係についてです」
オールマイトが硬直した。
「あまり人のプライベートに踏み入るべきではないことは承知しています。……ですが、オールマイト先生は葦名さんに対してどこか敬意を払っているような印象を受けます。それも敬老精神とかではなく、もっとこう……畏敬の念に近しいもののように感じますわ」
「……」
「それに葦名さんもです。雄英の用務員ともなれば名の知れた方なのかと考え、あの後私なりに調べてみたのですが何一つ情報が出てきませんでした。そんな無名な方を何故雇うに至ったのか。どこでそれほどの実力を身に着けたのか、気になって仕方ありません。差し支えなければお聞かせ願いますでしょうか……?」
(やだ……! 八百万少女ったら勉強熱心……! しかし困ったな! どこまで話していいものか!)
真っ直ぐに見つめてくる八百万を前に、困り果てるオールマイト。どう答えればいいのかと悩んでいると一心が助け舟を出すように口を開いた。
「関係も何も、こいつが若い頃によく手解きしてやった。それだけのことよ」
「え? それはつまり……お二人は師弟関係にある……と? そういうことでしょうか?」
「まあ、そうなるのかのう」
今まで公にされたことのないNo.1ヒーローに纏わる特ダネをあっけらかんと打ち明けた葦名。
生徒達の反応は至極当然のものだった。
「「「ええぇぇぇぇぇッ!?」」
その声はグラウンド・β中に響き渡ったそうな。
・爆豪
原作とは違い、慢心も油断もしてないため緑谷との一騎討ちに勝つ。その後の八百万の評価や轟の戦闘描写から自分がより強くなるにはこれからどうすればいいか思案していく。
・緑谷
爆豪に敗北。自分の力量不足からチームが負けたことを悔しがり、特訓することを決意する。
・一心
生徒らの青春ぶりを楽しそうに見守るが、最後に特大の爆弾投げて帰ってった。
没シーン
ヤオモモ「貴方は何者なんでしょうか?」
一心「……明かせぬ」
ヤオモモ「……もしかしてオールマイトのお師匠であらせられますか?」
一心・オール「!?」