天狗の戯れ   作:葦名ご当地アイドル弦ちゃん

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 お久しぶりです。色々あって執筆出来ない状況でした。

 それはそうとアーマード・コアⅥトロコン達成出来ました。そんなわけで初投稿です。


※修羅一心が使ってる刀の名前が調べても分からなかったのでオリ設定を導入してます。



九話

 

 

 

 突如、USJを襲撃してきた謎のヴィラン集団は剣呑な雰囲気を纏ったままうじゃうじゃと黒いモヤから現れ、あっという間に広場を埋め尽くしてしまう。

 その中には先日相対した黒霧と死柄木なるヴィランの姿もあり、その表情は無邪気な悪意を孕んだ笑みで見た者の背筋を凍らせた。

 

 そんな中で一心は冷静に敵勢力の分析を始めた。

 

 

(敵数およそ三十人。そのほとんどがチンピラ程度の雑魚か……)

 

 

 数を揃えただけの有象無象など、露程も気にも留めない烏合の衆そのもの。時間稼ぎにもならないだろう。

 だが、その中で怪しく光り、一際存在を放ってるのが死柄木、黒霧、脳みそ男の三人である。

 死柄木と黒霧の個性は先日の件で判明してる、だが──。

 

 

(あの脳みそ男……果たして()()か?)

 

 

 

 危険な(ヴィラン)、奸悪な敵は山ほど見てきた。だが、これほど不気味な敵は今まで見たことがない。

 見るからに正気な様子とは思えず、何なら生気すら感じない。視点も合わず、人語とも思えない言葉を垂れ流している。

 薬物過剰摂取(オーバードーズ)による廃人を連想させたが、それすらもあてはまらないような理外の存在にも見えた。

 

 それに知りたいのは何も脳みそ男のことだけではない。

 一心が今一番知りたい情報、それは──。

 

 

(──こいつら、何用でここに来た?)

 

 

 盗られた情報(カリキュラム)から、校舎から離れた隔離施設に生徒が集まる時間割を狙われた。

 逆に言えば、限られた状況でしかその目的は果たせないということ。

 先日のマスコミ騒動に加え、今回の奇襲も加味すると雄英でしか成せない何かしらの目的があるはず。

 そして、それこそが敵の狙いである可能性が高い。

 

 

(一先ずはこやつらを逃がさねばならん)

 

 

 後ろで控える二十名の生徒達。

 いくらヒーロー科の卵と言えど、彼らはまだ子供。今は大人の庇護下に入るべき存在なのだ。

 

 

「そういえば……ここには侵入者用のセンサーは設置しておらんのか?」

 

「もちろんありますが、作動してないことを見るに無力化されたか、個性で妨害されてるかと……!」

 

「はっ、肝心な時に使えん代物よのう」

 

「使えないものなんて放っておけ。13号、学校に直接連絡(でんわ)してみろ! 上鳴! お前も個性で連絡を試せ!」

 

「っス!」

 

 

 指示をとばし終えた相澤は一呼吸置くと顎で死柄木を指しながら一心に問う。

 

 

「じいさん。念のため聞いておくが、あんたが会ったのはあの二人なんだな?」

 

「うむ。紛れもなく奴らよ」

 

「……そうか」

 

 

 相澤はゴーグルを装着し、捕縛布を手に臨戦態勢をとる。 

 

 雄英はすでに二回も侵入を許してしまっている。ここであの二人を捕まえない限り、これからも三度四度と侵入を許すことになるだろう。ヒーローとして、教員として今すぐにでもその連鎖をここで断ち切らなくてはならない。

 成すべきことを成すため、イレイザーは前に出た。

 

 

「待ってください先生! まさか一人で戦うつもりですか!?」

 

 

 イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の個性を抹消してからの捕縛。多数との正面戦闘は不利だと緑谷が心配そうに声をかけるが、イレイザーはまったく意に介さない

 

 

「いいか、緑谷。一芸だけじゃヒーローは務まらん。

 

 ──13号は生徒と避難を。じいさん、俺が前衛をやるから後衛は任せた」

 

 

 一介のプロヒーローがヒーロー志望でもなければ個性も持っていない一般人を矢面に立たせるなど、プロヒーローとして正気の沙汰とは思えない判断だろう。

 

 13号に任せることも考えたが、個性"ブラックホール"は吸い込むものを全てチリにしてしまうので戦闘には不向き。彼女自身も戦闘を苦手としてるため、頼るに頼れなかった。

 その点、オールマイトから一心の実力と実績は聞き及んでおり、イレイザー自身も先の模擬戦でその一角を目の当たりにしている。

 以上の点から13号よりも一心に任せることがこの場を切り抜けるための最善策という判断に至ったのだった。

 

 

「全滅させろとは言わん。こいつらが逃げれたらあんたも逃げろ。校舎まで逃げ込めば俺達の勝ちだ」

 

「かかかっ、承知」

 

 

 一心の言葉に満足するとイレイザーは階段を飛び越え、広場の中央へと躍り出た。

 それを皮切りに襲い掛かるヴィラン達だが、"抹消"により個性を封じられた挙げ句、捕縛布術によって絡め取られて倒されていく。所詮は寄せ集めのごろつき共、一人一人の強さは大したことない。加えてイレイザーヘッドの戦闘技術がずば抜けていることも起因してるだろう。

 

 ヴィラン達が攻めあぐねてることを良いことに一心は13号を避難を促した。

 

 

「13号」

 

「はいッ。さあ皆! 先輩が戦ってる内に避難を──」

 

「そうはさせませんよ」

 

 

 USJ入り口を覆い隠すように、黒霧が彼らの行く手を阻んだ。

 

 

「初めまして、我々は敵連合……。僭越ながらこの度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいと思っての事でして……」

 

 

 オールマイトの抹殺という常軌を逸した発言に生徒達は愕然とする。

 黒霧から滲み出る純粋な殺意が殺害予告が単なる冗談や妄言の類でないことを物語っていた。

 

 

「おかしいですね。本来ならばここにオールマイトがいらっしゃるはずですが……何か変更でもあったのでしょうか? まあそれとは関係な──ッ!」

 

 

 闇の中に一瞬の煌めきが走った。

 

 

「敵前に来たのにとっとと殺らんからこうも一撃を貰うのよ……生徒達に手は出させんぞ」

 

 

 目で追えないほどの抜刀術。それよりも着目すべき点は──。

 

 

(()()()()()()()()()ですかッ…!)

 

 

 1.4キロはある愛刀──"不還"の柄頭付近を人差し指と中指だけで掴む特殊な握りは江戸時代初期、当代の当主が濃尾に伝わる剣術から盗み伝えたもの。その状態から放たれる一閃は普通の居合より威力が下がるものの、葦名流最速の抜刀術として段違いの速度を誇っていた。

 常人以上の指力を以て初めて為せる技であり、これを習得している門弟は数える程度しかいない。

 

 

「や、やったか!?」

 

「阿呆。よく見んか」

 

 

 誰かが喜ぶのも束の間、そこには無傷で佇む黒霧の姿があった。

 やはりこの黒いモヤには実体がないようで、石に灸を据えるが如く斬っても手ごたえがない。一心の脳裏に『物理無効個性』の六文字が過った。

 

 

「……危ない危ない。この前の事といい、貴方は少々手強そうだ。早めに対処させてもらいましょう。まずは……」

 

 (危ない、じゃと……? もしやこやつ……)

 

「退いてください! 僕が吸い──」

 

 

 13号の応援も虚しく、黒いモヤは一瞬にして生徒一同を覆い隠せるほどに広がり、そして包んでいく。

 数名が対処しようと試みるもどれも効果はなく闇の中へと吸い込まれていった。

 迫る暗中に黒霧の声が響いた。

 

 

散らして、嬲り、そして殺す……!

 

「ぐっ……!」

 

 

 身を呈して生徒達を守ろうとする一心の身はいの一番に飲まれ、生徒達も次々に飲み込まれる。

 やがてモヤが晴れると彼の姿は消え、クラスの半数もいなくなっていた。

 唖然とする13号と残された生徒達。

 行く先を知っているのは目の前で嗤うヴィランだけだった。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

「おいおい、雄英のガキが送られてくるって聞いたのに……」

 

「来たのはこんなよぼよぼのジジイかよ! 何かの手違いかぁ?」

 

女子生徒(おんな)だったら俺達が()()()()()やろうかと思ったのによぉ!」

 

 

「「「ギャハハハハっ!!」」」

 

 

 USJは大きく分けて暴雨・水難・火災・倒壊・土砂・山岳の六つのゾーンに分けられており、そのどれもが本格的な災害救助訓練を行えるように設計されている。

 

 その内の一つ、火災ゾーンはその名の通り、火事に関する災害を取り扱ったエリアだ。

 辺り一面は火の海。熱気と煙が充満し、視界は不明瞭。

 そんな劣悪な環境にいたのはそれに耐えうる個性を持つ凶悪なヴィランばかりだ。

 この光景を見て一心の一言。

 

 

「ぬぅ……暑いのう……。年寄りにはキツいわい……」

 

 

「「「ハハ……ハっ?」」」

 

 

 目の前の悪よりも周囲の熱さにうんざりする一心にヴィラン達から哄笑が消え、表情を強張らせる。

 

 自分達が見えないほどの老眼か、それともイカれたボケ老人か。はたまたその両方か。

 

 耐え性の無さを露呈させるように苛立ちを募らせるそんな彼らの足元に──。

 

 

「おいジジイ! 俺達が見えねぇのかあ?!」

 

「面倒だ! 殺っちまえぇ!」

 

「──喧しい」

 

 

 ──炎の道が駆けた。

 

 

「「「ギャアアアアアぁぁぁッッ!!??」」」

 

 

 周囲の火を集めて灯した炎は刃となり、地面を這うようにして直線上にいた数人のヴィランを吞み込み、それだけでは飽き足らず勢い余って周囲の建物や機材さえも燃やしていった。

 さながらそれは劫火。

 無個性の人間に成せる代物ではなかった。

 

 

「敵戦力を分散させ、数の差を以て各個撃破する……。常套手段ではあるが肝心の兵がこれではのう……」

 

 

 刀身に纏わりつく炎を揺らめかせながら一心は歩を進める。

 一歩、また一歩と。

 燃え盛る炎の中をゆっくりと歩いてくる死神の姿を目の当たりして凶悪なはずのヴィラン達に動揺が走った。

 

 

「な、なにが起きたんだ、これ……!?」

 

「このジジイ! 一体何の個性だッ!?」

 

 

 老いた猫が噛みついてくると分かれば、さっきまで軽んじてたヴィラン達もさすがに目を覚ますというもの。

 だが、この老人は猫ではない。老いて尚、獣を狩る獅子なのだ。

 

 

「そこの透明娘」

 

「ひゃい!?」

 

 

 一心と同じようにワープによって飛ばされた葉隠透が驚きながら返事をする。

 

 

「なんでいるってわかったんですか!?」

 

「『見る』のではなく、『観る』……。『聞く』のではなく、『聴く』……。一枚の葉に囚われていては木そのものを見ることは叶わんわい」

 

 

 一心は無個性。当然、葉隠がどんな容姿をしてるかなど分かるはずがない。

 しかし、姿は見えなくとも、それ以外が見えていればそれはつまり見えていると同義。葉隠が動いた際の空気の揺れや足音から彼女がどこにいてどんなポーズをとっているか大体は把握出来ていた。

 一心の観察眼を前に個性"透明"はもはや何の意味もなさない。気配を殺してようやく透明と呼べるのだ。

 

 

「これから広場に向かう。はぐれないようにしっかりとついてこい」

 

「わ、分かりました!」

 

「おい!  無視してんじゃねぇぞジジぅがぁッ!?」

 

 

 怒り狂って襲いかかって来た異形型のヴィランを峰打ちで沈める。

 手加減されたとはいえ、目にも留まらぬ速さで繰り出される一閃を捌ける者はいない。

 

 

「邪魔じゃ。どいてもらうぞ」

 

 

 一心の刀が縦横無尽に振り回される度に彼らは呻き声を上げ、倒れていく。

 ある者は頭に、ある者は腹に薄い鉄の板が食い込む。刃先であれば火災ゾーンに火より真っ赤なモノが撒き散らされることになっていただろう。

 

 あまりの猛勢ぶりに数の利を得てたはずのヴィランは尻込みし始め、次第に戦意を失っていった。

 

 

「つ、強ぇ……!」

 

「なにぼさっとしてやがる! どけ! 俺が殺ってやらぁ!」

 

 

 仲間がやられようとも臆することなく果敢に挑むヴィランがいた。

 上半身は裸。しかし露にした体躯は銀白色一色に染まり、皮質は金属のような光沢を放っている。

 

 

「俺の個性"鋼皮"は銃弾すら弾き返す! ポン刀なぞが効くと思ってんのかァ!!」

 

「傷はつけられなくとも、命に届かせればよい」

 

「なんだと!」

 

 

 一心は刀を高く挙げる。剣術における基本の一つ、上段の構えだ。

 呼吸を一つ挟み、心を鎮める。一点の曇りもない鏡のように、一切波立たない水面のように。ただ静寂に──。

 やがて切先が真上を貫いた時、一心の瞳孔は開かれた。

 

 

「葦名流……」

 

 

 その技は戦国期、甲冑を着込んだ武士を相手取るために編み出され、正面から叩き割ることのみを追求した剛の技。

 歴代の使い手にはたった一太刀で兜から丹田まで斬り伏せた者もいたという。

 技名を──。

 

 

「一文字」

 

 

 防御として腕を交差するものの、鈍い音と共にヴィランの両腕はへし折れた。

 

 

「うゥがあぁぁぁぁぁッ!!??」

 

 

 耳を劈く悲鳴と共にのたうち回るヴィラン。幸か不幸か腕は両断されず、くの字に折れる程度で済んでる。とはいえ、回復にはそれなりの時を要するだろう。そんな惨状を一顧だにせず、一心は前に進む。

 

 斬っては捨て、斬っては捨てを繰り返していく内にヴィラン達の数はみるみると減っていく。

 戦闘から数分ほどで9割が無力化され、最後に残ったのも何てことない雑魚でその者は敵わないと察すると、一目散に逃げ出した。

 

 

「逃がさないよ~! やあっ!」

 

 

 逃走することを見越して先に回り込んでいた葉隠がヴィランの背中から飛び付くとそのまま地面へと押し倒した。

 

 

「な、なんだっ!? 透明人間だと!? くそっ、離せ! 話が違えぇ! ガキ殺れるって聞いてはがっ!?」

 

「しばらく眠っておれ」

 

 

 ヴィランのうなじに一撃を加え気絶させると服で腕を絡めとる。衣服を用いる拳法を流用した捕縛術だ。

 

 

「よくやったぞ透明娘」

 

「むぅ~! 私には葉隠透っていう名前があります! 透明娘なんて名前じゃないです!」

 

「かかっ、そいつは失礼した」

 

 

 ぷんすか怒る葉隠を見て一心は微笑むと刀を鞘に納める。めぼしい敵は狩り尽くしたようで、辺りには無力化されたヴィラン達が転がっていた。

 

 

「行くぞ。広場が気掛かりじや」

 

 

 そこから一心は急いで離れる。

 

 他のゾーンに飛ばされた生徒達がどうなってるか気になりはしたが、思ったより敵は烏合の衆でこの程度のヴィランなら生徒でも対処できるだろう。

 問題は他とはまるっと違う雰囲気を纏ったあの三人だ。マスコミ事件後、死柄木らを公安に調べさせたが有力な情報は見つからず、素性不明ということだけが分かった。

 

 未知数のヴィラン。それだけでも十分に警戒に値するが、あの脳ミソ男からは底知れぬ何かを感じた。

 

 

(今までの相手とは違う、異質なものを感じる……)

 

 

 脳裏に浮かぶ最悪の事態。それを思うと老齢でありながら一心の足は速くなる一方だ。

 ようやくついたセントラル広場で一心が目にしたのは悔しくも、予想通りの光景だった。

 

 

「相澤、先生……」

 

 

 隣の葉隠が絶句する。

 そこには腕をねじ曲げられ、地面に押さえつけられた相澤の姿があった

 

 

 

 







 原作では火災ゾーンは尾白君が担当でしたが、今作では一心様が担当です。
 葉隠ちゃんは偶然飛ばされました。見えないから仕方ないね。

 

・指二本だけの抜刀
 『シグルイ』の虎眼流より拝借。葦名流中目録に記されるこの技は本来脇差しを用いて繰り出すものだが、一心はこれを大刀で行っている。


不還(ふげん)
 
 剣豪、葦名一心の得物。
 ある刀匠が鍛え上げたそれはあまりの切れ味に曰くつきとされ、名のある剣豪ですら手に余した。
 誰が打ったものか、いつ打たれたのか、詳しいことはわかっていない。
 茎にはただ『不還』の文字のみが刻まれている。

 不還とは次なる次元。
 名は体を表すとはよく言ったものだ。




・葦名流

 葦名流とは葦名家に伝わる戦いの歴史である。
 歴代の当主達はひたすら戦いを重ね、命の鍔際に立つことで剣技を磨き続けた。

 これはその道筋。
 人に終わりがないように、葦名流にも終わりはない。

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