横島の兄は多重転生者 作:バビルメイクライ
人骨温泉で温泉に入っていると黒い服を着た導士が話しかけてきた。
それは幽霊ですらない立体映像のような存在だったが、おキヌちゃんについて話したいことがあるようだ。
話を聞いてみると、死津喪比女が倒されたのならおキヌちゃんを反魂の術で生き返らせたいとのことだった。
地脈に力が満ちるまで数ヵ月以上かかるようで、反魂はそれからのことになるみたいだが、おキヌちゃんの復活を手伝うことを約束しておく。
一応事前に話を通しておく為に、美神令子除霊事務所に行き、所長の美神令子と忠夫とおキヌちゃんに詳しい話を伝えておいた。
時が来ればおキヌちゃんを連れて向かうことを約束した美神令子は、おキヌちゃんが生き返れるなら協力してくれるらしい。
これならおキヌちゃんの復活は問題ない筈だ。
ちなみに俺と忠夫が兄弟だと知った美神令子は「似てない兄弟ね」と言っていたりもした。
それは忠夫が父親似で、俺が母親似だからだろう。
まあ、どんな風に生まれるかは選べないんだから仕方ない。
おキヌちゃんの復活までは数ヵ月以上の時間がある。
自分なりに修行はしていたが、アシュタロスとの戦いに備えて、更に霊力を高める為に俺は妙神山へと向かうことを決めた。
妙神山で修行を受ける為には紹介状が必要だと知っていたので、唐巣神父に頼んで妙神山への紹介状を書いてもらう。
受け取った紹介状を大事に持ち、妙神山へと続く険しい崖道を進んでいくと、左右に鬼の顔がくっついている門が見えてきた。
門番でもある鬼門の試しを受けることになり、縄のような形状にした霊波刀を瞬時に伸ばして操り、一瞬で2体の鬼門を縛り上げて降参させると、妙神山の門が開く。
門を開けたのは妙神山の管理者である小竜姫様だったようだ。
「鬼門を倒すまで、5秒、最速記録ですね」
小竜姫様は鬼門を倒すまでの時間を計測していたらしく、数秒で鬼門を倒したことに驚いていた。
とりあえず妙神山の管理者である小竜姫様に唐巣神父からの紹介状を渡すと、妙神山の修行場に入るように促される。
男女で別々になっている脱衣所で渡された服に着替えた後、今回どんな修行をするかを小竜姫様に聞かれたので、霊力を高めることができる修行を頼んでみた。
じっくり時間をかける修行と、1日あれば終わる修行があると言われ、まずは1日で終わる修行を選んでみると異界空間に案内される。
異界空間にある法円を踏むように小竜姫様に促され、法円を踏むと俺の身体から出現した影法師。
霊格、霊力、その他、俺の力を取り出して形にした分身とも言える影法師の姿は、陰陽師が着るような狩衣に金色の気鋼闘衣を被せた姿をしていた。
影法師が強くなることが俺の霊能力のパワーアップに繋がるようで、これから出現する3つの敵と影法師で戦い、1つ勝つごとに1つパワーが授けられるらしい。
全部勝てば3つのパワーが手に入るが、1度でも負ければ命はないものと覚悟するようにと小竜姫様から忠告される。
構えた影法師の前に現れたのは、小竜姫様に呼び出された剛練武という怪物。
まるで岩で形作られたかのような身体をしていて人型であり、角を生やした1つ目の怪物な剛練武。
叫び声を上げながら近付いてきた剛練武を相手に、影法師の腕から出した霊波刀を伸ばして操ると、剛練武の1つ目を貫く。
弱点を貫かれて倒れた剛練武が影法師に吸収されていき、影法師に籠手と具足が装着された。
これで霊的な攻撃に対して、今までとは比較にならない耐久力を手に入れたことになるようだ。
次に現れた禍刀羅守は四足歩行であり、三日月のような刃を四肢から生やした怪物である。
手早く始まった次の試合。
襲い掛かってきた禍刀羅守の刃を影法師の左手の霊波刀で受け止めて、右手の霊波刀で禍刀羅守を真っ二つにして終わらせた。
影法師に禍刀羅守が吸収されると麻倉家の宝剣であるフツノミタマを長剣に変えたかのような剣を手に入れた影法師。
影法師が確かに強化されたことで霊的な攻撃力が上がったことは間違いない。
最後の試合は小竜姫様が相手になるようで、まるで小竜姫様自身の影法師のような姿になった小竜姫様。
俺の影法師と小竜姫様が互いに持つ剣で斬り合うことになったが、影法師が持つ長剣のフツノミタマに霊波刀を纏わせるとかなりの威力となり、小竜姫様が持つ剣を破壊することも可能だった。
剣を破壊されて動揺した小竜姫様の首元に影法師が長剣を突きつけると、小竜姫様は敗北を認めてくれたみたいだ。
最後の試合も勝利で終わらせた俺は、小竜姫様から最後のパワーを受け取ると、サイキック・パワーの総合的な出力が上がった影法師が光輝く。
1日で終わる修行を最後まで終わらせると身体に戻った影法師。
気になったので試してみると、影法師が手に入れた籠手と具足や長剣を出現させることが可能になっていた。
新たな武器が手に入ったことを喜んでいると、異界空間から出るように小竜姫様に促される。
異界空間の出入口から出ると現れたのは猿神である斉天大聖老師。
外見は眼鏡をかけて服を着た猿のような姿をしている老師だが、小竜姫様とは比べ物にならないほど強力な神様だ。
「力を封じたまま小竜姫を倒しおったか」
そう言った老師は全てをお見通しらしい。
幽遊白書の世界で身に付けた呪霊錠を着けたまま、小竜姫様の相手をしていたことに気付いていた老師。
力を封じていた相手に負けたことにショックを受けていた小竜姫様が落ち込んでいたが「修行が足りんな小竜姫」と老師から言われて肩を落としていた。
「それだけ元気があるならワシの修行も受けてみるか」
老師からのその提案を快く了承した俺は、案内された部屋で椅子に座る。
仮想空間に移動し、ひたすらゲームをして食事を食べる生活が20年以上経過した頃、ようやく準備運動が終わった。
俺の魂が老師の精神エネルギーを大量に受けて加速状態にあった為に、現実では時間の経過はしていない。
20年以上かかったのは俺の魂がかなりの強度を持っていたことが原因で、それには老師も驚いていたみたいだ。
仮想空間で俺と魂が繋がっていた老師には、俺が知っていることを全て知られてしまったが、老師がそれについて追求してくることはなかった。
加速状態という過負荷から解放された今、俺の魂は一時的に出力を増している。
この隙に己の潜在能力を引き出す為に老師と戦うことになるが、どうやら異界空間で戦うようだ。
間違いなく強い老師が相手なら更なる力を引き出すことができるだろう。
巨大化した老師が振るう棒を避けながら、物質化した霊波刀に更に霊力を込めていく。
霊波刀を越えた何かが生まれる予感に従い、霊力を霊波刀に集束していくと、完成したのは次元すらも斬り裂く次元刀であった。
老師が持つ如意金剛と書かれた棒を容易く断ち斬った次元刀は凄まじい斬れ味を持つ。
「どうやら潜在能力を引き出すことができたようじゃな」
頷いてから元の姿に戻った老師は半ばから断たれた棒を見て、笑っていた。
「まさかワシの如意金剛が人間に斬られるとはのう。長生きはしてみるもんじゃな」
とても楽しげな老師は怒っていたりはしないようだ。
壊したなら弁償しろと言われなくて良かった。