そんな彼女の妹であるローグロリアは再び不滅の栄光を世間に見せ、姉の代わりとなるため走ろうとするが………。
トレーナー達に見てもらう必要な実戦形式のレースで彼女は。
※評価してくださると感謝感激です。
[さぁ最終コーナーに入り熾烈な位置争いが始まる、一番人気1番エターナルグロリア、最後列で好位置に付いて足を溜め続け追込みの姿勢を崩さない]
[変わらずの覇気で前のウマ娘達が竦んでいます、今レースもエターナルグロリアの独壇場か]
[さぁ最終コーナー終盤に入りここから最終直線! おぉっと!!エターナルグロリアここで仕掛けた!エターナルグロリア、エターナルグロリア先頭へ抜け出した!!!]
[絶対不変! 天帝の異名は伊達ではない! 不滅の栄光は今回も天に轟くか!]
[二番人気アイエース! 追いすがる、しかしエターナルグロリア脚色は衰えない!]
[強い!強すぎる!リードは10バ身以上!! 残り400m!]
[二番手争いは五番アイエース!七番カツラギダスト! 三番手は十一番グルコサアンカ!]
[エターナルグロリア!余裕の走りを見せ大差でゴール! 一着はこのウマ娘! 天帝エターナルグロリア! 今レースにも不滅の栄光を天に轟かせました!]
[二番、カツラギダスト!三番、グルコサアンカ!]
[天帝、全冠達成に王手! 残すレースは有馬記念、期待が高まりますね]
[前代未聞の踏破まであと一歩! 天を穿ち我々に輝かしき不滅の栄光を知らしめるのか、目が離せません!]
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『まだ見るの? もう何回も見返した記憶でしょ』
「まだ見ていたい、記録が消された姉様の残っている唯一の走り」
「私は……あの走りを、あの輝きをまた世間に思い出させる」
「だから、だから何度も何度も何度も何度も」
「私にしか出来ない、私じゃなきゃいけない、私がやらなければいけない」
記憶を読み返す様に姉の走りを思い出していた時に、ふと客観的に自分の精神から質問された。
それに対して体の私は奮起し、言い返す。 頑固になった子供みたいな理由だがもう私はこの運命を受け入れようとさえ思っている。
姉の代わりに光る偽の灯火だとしても、もう私しかあの走りは出来ない。
殆ど倒れているのと同じだとさえ言われた前斜姿勢から更に前へ倒れる、姉の得意だった走り方。
スプリント"ギア"チェンジ、どこかの誰かがそう名付けた最終直線で爆発的に変化する加速力と速度は他のウマ娘をごぼう抜きし置き去りにしてしまう走法。
『でも、自分には出来ないことくらいは理解出来るはず』
『あれはエターナルグロリアという天から全てを授けられたウマ娘だったから実現出来た、机上の空論を無理矢理実現させた物』
そう、姉は天から全てを授けられたと言っても過言ではないウマ娘だった。
初めての地方レースではトレーニングをしていないにも関わらず爆逃げをし大差でゴール、その時に言った言葉はこうらしい。
〈とりあえず分からないから一番前を走り続ければ勝てると思ったし、実際そうだった〉
………あまりにもバ鹿バ鹿しいが、それを実現してしまえる事にその場にいた全員が息を飲み込んだ。 その傲慢が通用するウマ娘だと理解してしまったから。
無論、すぐに姉は中央にスカウトされ編入の形でトレセン学園に入学し適当なトレーナーを見繕ってありえない事を中央デビューのレース後にインタビューで宣言したのだ。
〈選べないから全部欲しい、だからダートも芝も全部出て短距離もマイルも中距離も長距離も走る事にした〉
会場はどよめいた、出来るはずの無い事だから。GⅢ~GⅠ全てを獲ると言ったのだ。
複数の記者からは苦笑いされながら遠まわしに否定されバ鹿にされたが、姉はその記者達に対して。
〈慢心だとか傲慢だとかは好きに考えて構わない、そう考えている間に私は努力しているから〉
〈バ鹿にして来てもその時私は努力をしている、家族とかと飯を食いながら批判してる時も私は努力をしている、散々言い終えて寝た時も私は努力をしている〉
〈私は、ただ言うだけ言って何もやり遂げようとしない部類では無い〉
姉は昔から強い言葉、アタリのキツイ言葉を良く使うウマ娘だった。
私には甘かった印象はあるがそれでも何か私が一度決めた事を投げ捨てようとしたら怒った事もある、怒った後はそれ以降何も言わずに見守ったり助けてくれたりしていた。
適当に見繕ったと言っていたトレーナーは大変だっただろう、どうやら新人だったらしくメディアの扱いもまだ下手だったのだから。
そして順調に姉は勝ち進み、気づけば全冠達成一歩手前まで来た……その時の世間は凄く期待していたのを覚えている。
今思えばその世代にいたウマ娘達は絶望していたんだと思う、なにせ全距離を走るのはともかくとしてダートでさえも姉は出ていたのだ。
私が当事者だったら、天を呪うだろう。
それほどまでに。忌々しくも美しく華麗な翼を広げ走る姿は眩しかった。
『だけど消された、輝かしき光を憎む者に撃ち抜かれエターナルグロリアは地の闇に堕とされた』
『そして記録から抹消され……次第にエターナルグロリアという名のウマ娘は人々の記憶から消えていった』
有馬記念に出走するために移動をしていた最中、病院で寝込んでいた私に会うために寄り道して来てくれた姉様は………。
迎えようと外にあるカフェに車椅子で向かった私の目の前でトラックが発端で引き起こされた玉突き事故に巻き込まれ。
輝きを失った。
皮肉にも私はその時、トラウマのせいで動けなくなっていた脚のせいで病院にいたにも関わらず。
姉が巻き込まれた瞬間に気が付けば走っており、駆け寄って姉を抱きしめていた。
腕の中で輝きを失っていく姉の姿は…………儚くもそれでいて最期まで美しかった、私が………私が。
『姉の翼を捥ぎ取り自分の翼にした』
「違う、違う私は、私は……違う」
その事故でトレーナーも死んでおり、事件の詳細な原因を知る者は現れなかった。
それ以来、私は何故かトラウマを持っていながらも歩けるようになっていた、両親からは姉が死んだのは自分のせいだと言われ走るのが嫌いになった。
姉の輝きに似た清々しいまでの青空は嫌いになり、レースを見るのもやめた。
『だけど』
「だけれど私は」
やらなければというもはや強迫観念に近いモノが全身に、いや魂に駆け巡った。
きっとこれは姉の魂の一部が私に宿り呪っているのだろう、私が歩けなかった事に対する罰。
あの時トラウマ如きすぐに克服して病院なんかにいなければ良かった私がするべき贖罪。
「……………行こう」
『もうそんな時間かぁ』
「姉様、また会いましょう」
控室にいた私は本にそう言葉を掛けると耳飾りを付け、ドアを開くとパドックへ向かう。
今日はトレーナーと契約したいウマ娘達が出るレース、ここで絶対に勝たなければいけない。
ここから始めなければいけない、不滅の栄光の輝きを知らしめる走りを見せる。
[さぁパドックに着ました10番人気、ローグロリア]
[この状態で最後まで走り切れるのか]
[絶不調に見えます、大丈夫でしょうか、不安が高まります]
[一番人気はマッタンハニー、二番人気はバニーホップ、この評価は少し不満か三番人気アスタイテイオー]
私の"初めての実戦"レースが始まる。
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[さぁ春の日差しが光り新しい芽を照らすこのレース、綺麗に咲き誇る花が現れるか]
[ゲートに入りました、再度振り返ります]
[一番人気マッタンハニー、二番人気バニーホップ、少し評価に不満があるのか険しい表情の三番人気アスタイテイオー]
横に目を向ける、確かに不満そうな顔だ。
「なに見てんだよ」
「いえ、お互い頑張りましょう」
そう言うと会話はそこで終わる、何故か? 雰囲気で理解したから。
もうすぐで始まる戦いの匂いが鼻腔をくすぐり脳へ駆け巡ると思考がリセットされ視界が広くなる、姉もこの感覚が好きだと言っていたのを思い出す。
[さぁ全ウマ娘ゲートインが終わりました]
【ダバンッ】
音が鳴らされた瞬間にゲートが開き、全員が一斉に駆けだす。
私も問題無くスタートダッシュを決めれたがあえて遅らせる、私はバ群に接近したりでもしたら走れなくなるから。
自分の弱みだと思う、なにせ強制的に走る時は最先頭か最後尾になるのだから。
だけど私は強みだとも思っている、ここなら良く見える……各ウマ娘が何を考え何をしたいのかが手に取る様に分かる。
好位置も最後尾で全部見えているから取りやすい、私の脚質とも相性抜群の"諸刃の剣"だ。
[ハナに出たのは二番バニーホップ、その後ろで抜け出す機会を窺うのは一番マッタンハニー、足を溜めているのかバ群に潜むのは三番アスタイテイオー]
[六番ハナメカカ、少し速度を上げる、どうみますか]
[掛かりましたね、冷静さを取り戻せると良いのですが]
[十番ローグロリア、最後尾にいます、やはり不調か]
[彼女の脚質には合っていますがアクシデントが起こらないか心配ですね]
アクシデント? 何を、そんな事を恐れてレースが出来るわけが無い……それにもう私は恐れる事は無い。
姉を失うという最大の恐怖をもう体験したのだ、これ以上の不幸や苦しみや恐怖に勝るモノはもうこの人生で現れない。
[それにしても十番ローグロリア、今にも倒れそうですがコーナーに入ります]
[ま、曲がれています! 凄い走法だ……]
[一番マッタンハニー、ここでバニーホップを抜かしハナに躍り出た]
[三番アスタイテイオー、バ群に完全に囲まれ思う通り動けない、抜け出せるか]
[二番バニーホップ、追い抜かされたがまだ余裕の表情だ]
ここまでは順調だ、非常に良く事を進めれている。
問題は最終コーナー………私が勝つにはここで勝負を仕掛けないと確実に負ける。
[最終コーナーに入り熾烈な位置争いが始まる、三番アスタイテイオー、バ群から完全に抜け出した]
[ぐんぐん速度を上げ二番バニーホップの後ろで機会を窺う、一番マッタンハニー、このままペースを握れるか]
最終コーナーの中盤で動きが始まった、それと同時に隣から無いはずの蹄音が聞こえる。
チラリと見ると姉がいた、模擬レースの時もそうだ……見せつける様に姉がここになって現れ。
抜け出していく、それと同時に私も追いかける様に速度を上げ加速し外から追い込む。
[十番ローグロリア最終コーナー終盤で勝負を仕掛けに来た、凄いスピードだ!]
[あの状態で外から速度を上げ抜かすつもりか!?]
[最終直線に入りローグロリア完全に抜け出した! 見事なまでのごぼう抜きだ!]
[一番マッタンハニー、どうしたのか、速度が下がる]
[二番バニーホップも失速、何が起こった?!]
「うぉぉぉぉぉ!!!!!」
[他のウマ娘達が失速するなかで現れた三番アスタイテイオー! 十番ローグロリアに追いすがる!]
「まてぇぇぇぇ!!!」
「…………きた」
姉の後ろ姿から察する、ここだ。
走る最中に動きを変え、走法を完全に移行させる、私もそれと同時に。
[この走りは?!]
[見たことありません、十番ローグロリアあの状態からさらに前斜姿勢になり爆発的な加速! アスタイテイオーなど見向きもせず走り去る!]
[リードはまだ三バ身、しかし徐々に距離が離れる!]
「ぐぅぅ!くそぉぉぉ!!!!!」
「あ゛あぁぁぁぁ!!!!今度こそ……貴女に!!」
[さらに速度を上げたぁ?! どういうことだ、このままではゴールしたとしても事故は免れない可能性があるぞ!]
姉の後ろ姿は更に速度を上げ離れていく、だか諦めない! 今度こそ抜かして勝つんだ! "一番"になるんだ!
[リードはもう十バ身以上! 圧巻の走りです!残り200m!]
姉が、先に、ゴールした、まけた、まただ。
[ゴール!十番ローグロリアが一着! 圧倒的なまでのごぼう抜きを見せました、何か懐かしい気持ちにさせる余裕の走りだ!]
[どうしたローグロリアもうレースは終わったが減速しない、一体何が起こった!]
減速しないと、ここで。
[踏みとどまった、減速し元に戻りました、ドキドキしましたね]
[アクシデントにならなくて良かったです、さぁ着順を再度振り返ります]
[一着はローグロリア、二着はアスタイテイオー、三着はマッタンハニー、四着は—————]
「てめぇ! よくも!」
後から来たアスタイテイオーに胸倉を掴まれる、憤怒と悲しみが入り乱れた様な……情けないのか今にも泣きだしそうな複雑な表情で私を睨む。
「私に見向きもしねぇで、てめぇは何を見てたんだ!」
「……こんな一着、いらない」
「っ!!!!」
「ふざけんな!! ふざけんなよッ!」
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レースが終わって私がアスタイテイオーに胸倉を掴まれていると職員が助けに入り、無事に元の状態に戻る。
頭が冷め電子掲示板に自分が一着だと告げる文字を見て、目を背ける。
二着だ、こんなのは一着だと思えない、いらない……そんな考えが頭の中を駆け巡る。
ライブがあるらしいが、理由を付けて辞退した………そんな気分では無いし余裕も無い。
戻って控室の扉を開け中に入ると、崩れ落ちる。
もう限界だ………。
『あぁ。次こそは——』
薄れゆく視界に身を任せ、目を閉じ……私は気絶したのだった。
見てもらえる感じだったら続けてみたいと思ってます。