ウヴァさんが蟲惑魔アトラのに拾われるお話 作:覇王龍を従えるウィルス使いの蠱惑魔
申し訳ない
…………ここは、どこだ?
目を閉じても開いても何も変わらないような、そんな暗闇の中で私は目を覚ました。光も無ければ地面すら無いのか分からないが、体を四方八方に動かしてみても何かに当たる感触は無く、まるで宇宙空間に一人取り残されふわふわ浮かんでいるようだ。
当然だがこんな不思議空間に心当たりなど無い。私はごく普通の人生を歩んできた童貞であり、ごく普通にオタクをやっていただけのサラリーマンなのだ。生まれてはじめての特殊な環境である。
困惑しつつも思いつく限りの現状把握の為の努力をしてみた結果として分かった事は、自分が何も身に着けていない生まれたままの姿でこの暗闇の謎空間に浮かんでいるということだけだった。
状況から察するに、私は十中八九異世界転生等に巻き込まれてしまったのだとは思うが、ステータスオープン等のいわゆるテンプレと言われるような行動は全て空振り。
私自身が趣味で異世界転生モノの小説を書いている以上どうこう言う権利は全く無いのだが、今だけはテンプレ異世界転生が廃れてしまった事を呪った。いくら擦りすぎて出がらしすら出ないと言われようとも、当事者としては序盤の動きがだいたいテンプレに沿えば良い方向に転がってくれるような世界の方がどれだけよかったか……
神様の手違いで死んじゃったから、チートスキルもらって異世界無双
そんな物語を何度夢想したものか………先の見えない展開など、当事者からすると厄災以外の何物でも無い。
そんな事をあーだこーだ考えながら謎空間を漂うこと(体感)1〜2時間。
ついに視界内に一つの光が現れた。
それは今にも消えそうで、弱々しい光だったが、どこか底知れない雰囲気を薄っすらと感じたような気がするのは……私の身勝手な希望的観測だろうか。
やっと見つけた変化らしい変化だ。たとえ私が関わったことでどれだけの不幸に見舞われようとも、この謎空間で一生を過ごすよりかはよっぽど良い。
とにかくその光に手を伸ばし、蹴る地面が無いことにやきもきしつつも一心不乱に光を求め、バカみたいに平泳ぎやクロール等の思いつく限りの無重力空間の移動法を試したりして暗闇の中を光を目指して移動する。
悪戦苦闘の末なんとか光が消える前に触れると、真っ暗だった視界は光に満たされて真っ白になった。
「嘘でしょ……?キミはニンゲンなのに、私を…私達の事を知っているの?」
「そっか、別の世界のニンゲンねぇ……あのさ、世界を……いや、せめて私の仲間達だけでも、救って欲しいんだけど……だめ?」
「……ありがとう。早速だけど、今からキミの魂を私の精霊の器に移し替えるから。もう、私の意識も限か…い……だ……し……………」
それから何が起こったか、記憶が曖昧で覚えていない。
光の中の誰かに会って、何かを託されたような気はするのだが、詳しい事はなんにも分からない。
ハッキリしているのは、ココは鬱蒼とした森の中で、私の体は大きな蜘蛛になっていたという事だ。
いや、現実から目を反らすのはやめよう。
人間だった頃に比べて遥かに多彩にそして優秀になった感覚器官と、それを問題なく処理できる脳みそが弾き出した己の姿(予想図)には、どうにも見覚えがある。
どうやらこの体は腹にある糸いぼの部分とは別に口の方にも糸を出す器官があるようなので、本能に任せて糸人形を作ってみたところ……その疑念は確信に変わった。
ソレは、青紫の長い髪は左右で大きな三編みを作り、蜘蛛の眼を模した紅い髪飾りでまとめた幼女だった。
黒で作られた衣装は胸と袖部分しか存在しておらず、肩やお腹を大胆に晒しており、下半身は植物のようなナニカでかろうじて秘部が隠されているに留められており、非常に扇情的な格好と言わざるを得ないだろう。
そして、何よりも、ハイライトの無い紅の瞳が爛々と妖しく輝き、こちらを見つめている。
どうやら私は、「アトラの蠱惑魔」になってしまったようだ。
「いや、アトラ単体で何をしろって言うんじゃい!!!!」
哀れなTS人外転生者の、幼い糸人形を通した悲痛な叫びに答えてくれる知的存在は、
残念ながら今はまだ、この小さな森の中にはいなかった。
(以下、別に読まなくても良いです)
アトラの蠱惑魔
地属性 レベル4
昆虫族 効果
①:このカードはモンスターゾーンに存在する限り、「ホール」通常罠カード及び「落とし穴」通常罠カードの効果を受けない。
②:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分は「ホール」通常罠カード及び、「落とし穴」通常罠カードを手札から発動できる。
③:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分の通常罠カードの発動及びその発動した効果は無効化されない。
ATK1800/DFE1000
言わずと知れた、蠱惑魔の祖
全てはココから始まった。
カードには可愛らしい幼女が描かれているが、コレはアトラの蠱惑魔では無く疑似餌のようなモノであり、その裏に潜んでいるであろう巨大な蜘蛛が本体である。
その証拠に幼女の眼にはハイライトが無く、血の通っていない作り物である事が示唆されている。また、蠱惑の落とし穴のカードには巨大な蜘蛛が描かれていたりするので、本体はコッチだろう。
蠱惑魔を美少女モンスターだという声もあるが、作者はどっちかと言うと疑似餌の幼女の部分よりも、本体の方に意識がある方が好きなので、美少女モンスターのカテゴリに入れないのでは?と思っている。
オリジナル解釈として、本作ではアトラの疑似餌部分は「蜘蛛の糸で作った糸人形」と解釈して描写している。
さて、アトラの蠱惑魔の性能のお話だが、攻撃力は下級蠱惑魔の中で最も大きい1800となっていて、割と頼もしい。
効果は蠱惑魔の共通効果に加えて、「手札からの落とし穴発動」、「通常罠が無効にされない」と、現代基準で考えてもかなり強力。
(アトラ召喚→相手が増G→手札の墓穴ホール発動、が出来るのは滅茶苦茶偉い。)
しかし、それら全てがアトラの蠱惑魔がフィールドにいる事が前提となっているので、
フルパワーで使っていく為にはフレシアの蠱惑魔などでアトラの蠱惑魔を相手の除去から守る盤面を作り出せないと、少々心もとないと言わざるを得ない。
また、セラの蠱惑魔でデッキから持ってくるにしてもアトラの蠱惑魔は展開に関する効果を持たず、更にアトラの蠱惑魔自身は永続効果しか持っていないため、必然的にデッキから持ってくる優先順位は下がってしまう。(トリオンかティオが最優先、時と場合によりカズーラ)
ついでに言うと、蠱惑魔デッキでの主な落とし穴サーチは手札に加えるのはトリオンの蠱惑魔だけで、他はフィールドに直接セットばかりなので、アトラの蠱惑魔の②の効果が発動する場面は、割と少ない。この効果は手札から魔法・罠ゾーンに置いて発動させるので、魔法・罠ゾーンが空いていないと②の効果は使えず、リソースがカツカツになる事が多い蠱惑魔デッキにおいては、結局手札からの発動の為にとっておくよりも、アトラが除去されても使えるようにセットしてしまう事が多い。
その為、他の蠱惑魔と比べあまりデッキに採用されにくい蠱惑魔である事は否定のしようが無いのだ。悲しいことに。
とはいえ役に立たないクズカードだなんて罵られるほど弱い訳では決して無い。
重ねて言うが、決してアトラの蠱惑魔が持っている効果が弱い訳では無いのだ。ちょっと周りと噛み合わせが悪いだけで、活躍させようとすればいくらでも方法はある。
特に、2022年の秋だったか冬だったかに発売された蠱惑魔ストラクによって、新規が来たことによって蠱惑魔全体の展開力が進化したので、必然的にアトラの蠱惑魔の効果が輝ける場面が多くなった。
罠デッキに対する特大メタである「王宮のお触れ」等の効果も問答無用で打ち消す事が出来るので、役に立つ場面も多いだろう。
是非みなさんも純正蠱惑魔デッキにて、アトラの蠱惑魔を使ってみて欲しい。