第五話 決戦!!アメリカ本土上陸作戦 前編
アメリカ合衆国
西海岸沖
戦艦敷島以下数隻の戦艦、空母、そして多数の巡洋艦、駆逐艦が海上を航行している。そして上空には100機以上の零戦七八型、紫電改が飛行している。
岩本徹三 「ここまで来るのが大変だったなぁ」
赤松貞明 「だけどようやく奴らの本土が見えてきたぜ。今度はこっちが空襲する番だ。」
故郷日本を無差別に銃爆撃した報復とばかりに、伊藤たち海軍第一航空団の団員たちは士気を高める。
伊藤龍生 「…。アメリカ太平洋艦隊がいませんね。」
菅野直 「当たり前だろ。さっきの敷島の攻撃で敵主力艦隊は全滅、残った艦も傷だらけだし俺たちを迎撃できるほどの戦力はもうあいつらにはねぇってことよ!」
西澤広義 「そうですね。ですが敵艦隊が完全にいなくなった訳ではないので気をつけないといけませんね。」
伊藤龍生 「確かに残存艦隊にも対空能力の高い軍艦はまだまだいますしね…。」
いかにアメリカ太平洋艦隊を壊滅させ、アメリカ本土近海の制海制空権を掌握したとしても相手は大国アメリカだ。圧倒的工業力によって建造される軍艦の数は尋常じゃない。この機会を逃せば、再び近いうちにアメリカ太平洋艦隊は再建されるだろう。そうなれば、すでに国力が限界に達している日本に勝機はもうない。あるのは”敗戦”への道だけだ。
坂井三郎 「何が何でもこの作戦でけりをつけるぞ。この作戦が失敗したら、日本が滅びると思ったほうがいいな。」
赤松貞明 「ああ、そうだな。それにもうじき戦闘機が飛んできてもおかしくない時間だな。」
岩本徹三 「警戒を緩めないほうがいいな。」
伊藤が操縦席の計器に目をやる。高度7000、速度480、燃料5時間分、機銃問題なし。機体には問題はない。後は自分の練度しだいだ。
相手も日本海軍ほどではないが、それなりに骨がある。それにこちらのアラスカからの航空支援を含めても、米軍
とは数の上では劣勢であった。しかし、米軍パイロットよりも練度が高いのは大きなアドバンテージだ。
西澤広義 「まもなく米本土西沿岸に到達します。総員、戦闘配置!!」
西澤が無線を通じて全機に通達する。そして海軍第一航空団は艦隊上空を護衛する飛行隊を残し、米本土へと飛来していった。
アメリカ西海岸
空襲警報が海岸一帯に響き渡る。米陸軍の兵士たちが対空砲に飛びついていく。
米兵1 「敵機接近中!!対空戦闘用意!!」
米兵2 「急げ〜!!」
米兵たちが声を上げる。M26パーシングが続々と海岸に到着する。水際作戦を想定し、防衛隊としてはありえないような装備を搭載している。
戦力約12万7000人。重戦車20両、中戦車50両、軽戦車50両という戦車一個機甲師団分の防衛戦力が鎮座していた。上空には米陸軍航空隊850機が防空にあたり、海中には500発もの機雷が敷設されていた。
米兵3 「以外にヤバい状況になってきたが、こんぐらいの戦力があればジャップの連中も上陸はできてもロッキー山脈を越える前に壊滅するぜ。」
米兵4 「おい、バカなこと言ってんじゃねぇ!ハワイの話を聞かなかったのか!?奴らは核を持ってる!今ここに核を積んだ爆撃機が来たっておかしくないんだぞ!?」
確かに数ヶ月前にハワイが占領されたときに、日本海軍が陸軍に先駆けてF研究で完成させた核爆弾、”旭日弾”が投下された。史実でのリトルボーイやファットマンほどの威力はないが、ハワイ周辺を焼き払うのには十分な威力を発揮した。ここにも核爆弾を投下する可能性も否定はできない。
その時、
米見張員 「敵機確認!!多数接近!!」
ついに日本海軍航空隊が姿を現した。姿を現した航空隊は戦闘機だけでなく、陸上攻撃機や爆撃機も編隊を組んで飛行している。占領したアラスカ基地から発進してきた爆撃隊だ。アメリカ本土侵入前に合流したようだ。
アメリカ陸軍の戦闘機、P-51マスタングの大編隊が陸攻と爆撃機に狙いを定め攻撃を開始する。同時に沿岸に展開していた対空砲陣地も一斉に迎撃を開始する。空の色が変わるほどに弾幕が構成される。しかし、精鋭ぞろいの海軍第一航空団はこの程度では全く動じない。
岩本徹三 「奴ら爆撃機を狙ってやがるな。」
坂井三郎 「そうだな…。よし!敵機は俺と西澤、赤松で対処する。菅野、岩本、伊藤は他の編隊とともに爆撃機を護衛しつつ、五月蝿い対空砲を黙らせろ!」
坂井が的確に指示を出す。
西澤広義 「わかりました!」
赤松貞明 「そうこないとな!!全機叩き落としてやるぜ!!」
西澤と赤松が返事をする。
菅野直 「おう!任せとけ!!」
岩本徹三 「しょうがねぇ。付きやってやるか!!」
伊藤龍生 「了解!全力を尽くします!!」
伊藤たちも力強く返事をする。そして航空団は二隊に分かれた。坂井たちはマスタングの相手、伊藤たちは爆撃機の護衛に付きつつ、可能な限り対空砲陣地を破壊する。
米パイロット1 「おい!あいつら二手に分かれやがったぞ!!」
米パイロット2 「爆撃機を守りに行ったのか…!鋭いが考えが甘いな!!」
多数のマスタングは零戦七八型と戦闘を開始したが、なんとか合間を縫って数十機のマスタングが防空網を突破した。
米パイロット1 「よし抜けた!!後は奴らの爆撃機を…、ぐはぁ!?」
突然先頭を飛行していたマスタングが風防を撃ち抜かれて撃墜された。周囲には零戦七八型や紫電改の姿もみえない。
米パイロット2 「なにっ!?ど、どこから!?」
米パイロットたちは爆撃機を見上げてようやく理解した。12.7mm連装機銃がハリネズミのように張り付いている爆撃機の存在を忘れていた。
米パイロット2 「ふっ、Huziだ!!」
Huzi、それは日本陸海軍が共同で開発した六発超重爆撃機”富嶽”のことだ。富嶽は巨大な機体、強力な武装、そして驚異的な爆弾搭載量を武器に持ち、米陸軍の重爆撃機B-29をも凌駕する。最強の爆撃機の名を欲しいままにする爆撃機だ。
まさしく、”超空の大要塞”を名乗るのにふさわしい爆撃機だった。
富嶽に接近してくるマスタングは次々に富嶽の12.7mm連装機銃の餌食となっていった。零戦七八型20機分の防御力を持つため、重武装のマスタングでさえ仕留めるのには無理があった。
富嶽機銃員 「弾幕の雨を食らいやがれ!!」
きれいに編隊を組んで飛行する富嶽からの隙間ないほどの機銃掃射に、近づいていくマスタングはことごとく撃墜されていく。そうしている間に富嶽はアメリカ本土の領空に侵入する。
米パイロット2 「もうだめだ!空域から離脱しろ!!対空砲にやられるぞ!!」
このままでは友軍の対空砲に誤射される可能性があるため、富嶽を攻撃していた残存マスタングは空域から離脱していった。それにともない、伊藤たちも対空砲を回避するために空域を離脱する。こうなったら後は富嶽頼みだ。
富嶽爆撃手 「高度確認よし。爆撃地点を確認!」
爆撃手が対空砲火で視界の悪い中爆弾倉を開き、爆撃地点に照準を合わせる。
富嶽爆撃手 「爆弾投下!!」
そして全富嶽が一斉に爆撃を開始する。1トン爆弾が次々と投下されていく。富嶽の爆弾搭載量は最大20トン。数十機の富嶽から大量の1トン爆弾の雨が降り注ぐ。
次々と海岸に爆弾が着弾していく。
米兵たち 「うわああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
数十機の富嶽による絨毯爆撃に、展開していた米兵やパーシング、対空砲などすべてのものが爆風により吹き飛ばされていく。米兵たちは安全地帯を求めて逃げ回るが、海岸にはトーチカはおろか塹壕すら掘られていなかったため、丸裸の海岸に富嶽からの爆撃から身を守る安全地帯など存在しなかった。
数十分後、全ての富嶽が爆弾を投下し終えた後に海岸に残っていたのは、対空砲や戦車の残骸、バラバラになったおびただしい数の米兵の死体だった。仮に残存兵がいたとしても、軽症では済んでいないことは確実だ。
そして、米兵の血で染まった海岸に百一号型輸送艦が次々に接岸する。タラップを下ろし、四式中戦車、五式中戦車がタラップを通りアメリカ本土に上陸する。
続いて一号型輸送艦から多数の大発動艇が発進し、大発動艇も接岸に成功する。大発のタラップを下ろし、乗艇していた陸軍兵士、海軍陸戦隊が海岸に上陸する。
岩本徹三 「上陸成功したみたいだな。」
赤松貞明 「ああ、そうだな。これで少しは楽になるな。」
西澤広義 「でも気を抜かないでくださいよ。まだ奥地に強大な兵力が展開しているはずですから。」
坂井三郎 「西澤の言う通りだ。敵の奇襲もあり得るからな。」
西澤たちが無線を経由して、これからの作戦行動を話し合う。その中で、伊藤は一人列機も連れずに海岸を風防越しに見つめていた。
伊藤龍生 「…………」
海岸にはいくつもの米兵の死体が転がっている。おそらくこの中にもいるのだろう。伊藤と同じく、家で帰りを待ってくれている両親や家族がいる兵士も。
伊藤龍生 「(軍人とは言え、家族や恋人からしたらかけがえのない大切な人…。戦争はそんなかけがえのない大切な人を理不尽に奪っていく…。)」
伊藤は狭い操縦席でうつむき加減に呟いた。
「ごめんなさい」と…
次回 決戦!!アメリカ本土上陸作戦 中編1
伊藤の家族…両親と七つ歳の離れた弟がいる。伊藤が徴兵したときは、泣きながら列車を見送った。3年ほど会っていないが、手紙のやり取りなどをしている。