連山から射出された十四機の神風は、一斉に米軍機と交戦を開始した。
米パイロット 「なんなんだあれ!?奴らの新型機か!!?」
米パイロットたちは見たこともない機体に戸惑いながらも、攻撃を開始する。一機の神風にベアキャットが食らいつく。
米パイロット 「よし、照準におさめたぞ。墜ちろ!!」
そのまま機銃を連射する。しかしなぜか弾丸は当たらない。照準は合っているのだがなぜか横へ弾丸が流れていく。
坂井三郎 「ふっ、横滑りに気づいていないみたいだな。」
そうだ。坂井は横滑りを利用して弾丸を横流しにしていたのだ。
坂井三郎 「今度はこっちの番だ!!」
坂井はジェット機とは思えないほどの、驚異的な旋回であっという間に先程のベアキャットの後方についた。
米パイロット 「なっ!?いつの間に…!!?」
米パイロットが気がついたときには手遅れだった。神風の40mm機関砲の直撃により、空中爆発を起こして墜ちていった。
スミス 「おいおい、まじかよ…」
シューティングスターに搭乗し、戦闘を行っていたエースパイロットスミスは、坂井がベアキャットを撃墜した一部始終を目撃していた。
スミス 「速度の遅いジェット機だと思っていたが、ここまで旋回戦が強いのかよ…。まるで”青いゼロ”の強化型じゃないか。」
スミスは襲いかかる零戦七八型の攻撃をかいくぐり、撃破していきながら注意深く神風へと接近していく。
その時、伊藤はすぐさまそのシューティングスターに目が止まった。撃墜を表す旭日旗のマーキングは12個も表示されていたのだ。
伊藤龍生 「!?あのジェット機…。あの時の…!」
シューティングスターが初めて伊藤たちの目の前に現れた日のことを思い出す。あっという間に連山を撃墜。零戦七八型でも追いつけない。
伊藤龍生 「…間違いない!!」
伊藤は気づいていた。スミスが自身を兄のように慕っていた小国を撃墜したのも、移動中に襲いかかってきたライトニングに搭乗していたことも。
伊藤龍生 「絶対に逃さない!!」
伊藤は血相を変えて、離れていくシューティングスターを追跡する。
スミス 「なんだ、あいつ。ついてくる…。」
スミスはいつまでも追跡してくる神風に違和感を覚えた。なにか禍々しい殺気をスミスは肌に感じた。
スミス 「しつこいやつだな。そんなに俺に墜とされたいのか?」
スミスはシューティングスターの操縦桿を引き、大ぶりに旋回する。神風と対峙したシューティングスターは12.7mm機銃を神風に向けて射撃する。
伊藤龍生 「くっ…」
伊藤は即座に操縦桿を引き、機銃弾を回避する。機体を元に戻すと今度は伊藤が40mm機関砲をシューティングスターに向けて発射する。しかし40mm機関砲弾は口径が大きいため発射速度は遅い。更にはシューティングスターは高速で飛行するため全く当たらない。
スミス 「そんな弾当たんないぜ!」
40mm砲弾を避けきったシューティングスターは、今度は伊藤の操縦する神風に照準を合わせる。
そのまま12.7mm機銃弾を射撃する。神風の機体に機銃弾がかすめていく。伊藤は横滑りを駆使してなんとか回避しているが、速度が遅い神風ではいずれ追いつかれる。
伊藤龍生 「(だめだ…。このままじゃ…)」
伊藤は死を覚悟した。
その時、伊藤の神風とスミスのシューティングスターの間を何かが高速で飛翔していった。
伊藤・スミス 「!!?」
二人はすぐさまその物体を目で追った。
”なにか”の正体は、なんと一式戦闘機隼だった。それだけじゃない。機体が真っ白に塗装されており、部隊記号はおろか国籍標識すらも確認できない。しかし形は紛れもなく隼だ。
伊藤龍生 「(隼がなんでここに…?)」
陸軍時代、隼に乗り続けてきた伊藤の目に狂いはない。日本機を多く撃墜してきたスミスも同じだ。
スミス 「(なんで奴らの旧式機がここに?)」
隼をよくよく見ると、被弾痕が多く確認できた。それに風防もボロボロだ。なぜ飛んでいるのかすら分からないほどだ。
スミス 「フッ、邪魔するんなら撃ち落としてやる!!」
スミスが駆るシューティングスターは速度を上げ、白い隼に接近する。そして12.7mm機銃を射撃する。
しかし
伊藤龍生 「!?」
隼には確かに銃弾は当たっている。…当たっているはずなのに墜ちるどころか、全く火すら点かない。
スミス 「バカな!!?こんなはずは!」
スミスは隼に向けて機銃を撃ちまくるが、全く手応えがない。まるで幻を相手にしているように…。
坂井三郎 「伊藤!!よくわからんがこちらに白い零戦がいる!海軍第一航空団の所属機ではないぞ!」
坂井から伊藤へ通信が入る。さらに
赤松貞明 「おい伊藤!前進が白い零戦がいるぞ!アメ公が攻撃してるみたいだが、当たってるようにはみえねぇ。」
菅野直 「こちら菅野。見慣れない白い紫電改がいる。俺の部隊じゃあねぇ。なんなんだあれは?」
次々に伊藤の元へ、白い日本軍機の目撃証言が集まっている。伊藤だってわかるはず無い。
伊藤龍生 「いや、私に言われても…」
すると伊藤は驚くべきものを見た。なんと先程の白い隼がベアキャットを撃墜していたのだ。
伊藤龍生 「えっ…?」
伊藤が唖然としている中でも白い隼たちはお構いなく、ベアキャットを撃墜していく。ベアキャットは反撃も通じない白い隼に一方的に打ち負かされていった。
スミス 「くそっ!!」
スミスはシューティングスターの速度を上げ、白い零戦に突っ込んでいく。至近距離で機銃を発射するが、やはり手応えはない。
すると今度は白い隼のほうがシューティングスターに向かってくる。そして機首の12mm機銃を射撃する。
スミス 「当たるかよ!!」
スミスはシューティングスターの高速性を活かして、白い隼の機銃弾を回避する。しかし、一発の機銃弾が風防を突き抜けた。
スミス 「え?」
その時、スミスは見た。
自身の周りが数機の白い隼、零戦、紫電改に囲まれているところを…。
白い日本軍機たちは一機のシューティングスターに狙いを定めて、一斉射撃を行う。7.7mm、12.7mm、20mm、数々の機銃弾が飛び交い、シューティングスターに被弾痕をつけていく。
スミス 「ぐっ…。なぜだ…?なぜ操縦席に誰もいない…?」
薄れゆく意識の中、誰も座っていない白い隼の操縦席を見つめながら、スミスの意識は消え失せた…。
スミスの乗っていたシューティングスターは、エンジンから火を拭きながらシカゴの町中へと墜ちていった。
伊藤龍生 「げ、撃墜した…。なんなんだ一体…。」
伊藤は先程の隼が何者なのか確かめるために、大ぶりに旋回しその姿を探した。しかし、いくら探しても白い日本軍機たちの姿はどこにもなかった…。
三日後、補給線を絶たれたシカゴは、防衛部隊が第一航空団の富嶽爆撃隊の空襲により全滅。シカゴ陥落により防衛線は崩壊した。
その後も日本軍はアメリカ本土を侵攻していったが、1946年10月8日に米大統領トルーマンの講和会議の申し出により侵攻部隊の侵攻は停止、大日本帝国の事実上勝利で大東亜戦争は終戦を迎えたのだった…。
次回 あの青空へ
白い日本軍機…太平洋戦争後期に米軍からの目撃が相次いだ全面が白い日本軍機。その正体は謎であり、米軍からは恐怖の存在であった。