・主人公や仲間たちは基本的にオリキャラとなります
・オリジナルデジモンは登場しません
・オリジナルの進化ルートは出てくる可能性があります
・アニメのデジモンアドベンチャー~デジモンフロンティアまでのキャラクターを一部年齢や性格などを改変して登場させております
・アニメのデジモンアドベンチャー~デジモンフロンティアまでのキャラクターのカップリングを変えております
・人間は「 」で、デジモンやテレビや通信相手の声などは『 』で、心の声は( )で表現します
上記でも問題ないという方、お時間がある方、ぜひお読みいただければと思います。
地上から見る空は様々な色を見せるけれども、上から見る空は色を変えない。
澄み切った青、それがこの世界の色だ。
それを実感できるときはおそらく飛行機に乗ったときだろう。
......澄み切った青、少し違うか。
夕方になれば色を変える、夜になれば色を変える。
でも地上から見たときのほうが空は様々な色をしている。
僕はそう思う。
だから今、こうして、
僕の名前は
今日が僕の生まれた日、八月一日。
僕は今、デジタルワールドの空をデジモンに乗って飛んでいる。
最後の戦いに向かうために長かったのかもしれない。
でも、短かったのかもしれない。
そんな僕の半年間の話をみんなに聞いてほしい。
半年前、二月一日、それは僕の目の前に突然現れた。
『僕は君のパートナーデジモンだ!』
そう、生まれてからこの十三年、パートナーデジモンに縁もゆかりもなかった僕が中学一年生を終えて、中学二年生になろうとしていた僕の目の前に、デジヴァイスを手に入れたその日、僕はテイマーになったんだ。
話はさかのぼり、一月三十一日の話をしよう。
僕は大学の研究室で、頭を抱えていた。
デジモンの大会が行われる十月一日までに、システムの再構築と強度強化を行う必要があったからだ。
実家で作っているパンを貪りながら僕は思う。
「なんでこの研究に手を出したんだろう.....」
締め切りが間近になるといつも思う。
論文を書いてる時だってそうだった......。
お父さんやお母さんに頼み込んで院生にまでなったっていうのに、こんなこと考えちゃ罰当たりだな。
今の言葉、教授に聞かれていなければいいけど......。
「教授は聞いてないけど、私は聞いてたわよ」
どうやら、ばれたらまずい人に聞かれたらしい。
「る、
「別に? ただ、
そういいながらふてくされた顔をして、僕の隣の席に彼女は座った。
名前は
「だって、戦闘用のデジタルフィールドを制御する装置だよ? いくら研究しても、またデータが変わって、新しくなるんだから仕方ないじゃない?」
「なんで、そんな面倒な研究に手を出したんだか......」
「......それは入学時代の僕に言ってほしいね」
入学当初、留姫と一緒に入ったこの大学、「先端情報技術大学」では唯一、日本でデジタルモンスター(通称デジモン)に関連した研究が行える、最先端の技術を持った大学だった。
倍率も高く、苦労はしたものの、友達のジェンの協力や、留姫のサポート等々、いろんな人の手を借りて何とか入学ができた。
実家を継ぐというのは決まっていたのかもしれないが、それはまだまだ先の話で、父曰く、「なんでも学び、やってから、パン屋をやったっていい」と言われた。
だからこうして昔から興味のあるデジモンについて学べる大学を選んだ。
とはいえ、日本が一番デジモンの研究が盛んであるにも関わらず、取り扱っているのがこの大学だけというのは、何故か。
それは、研究者たちがほとんど、ハッカーやその他の研究職から、デジモン研究へ移り、研究をしているからで実際に日本に「デジモン専門に研究している学者」というのは実はほんの一握りである。
僕はその一握りになるためにここに来たといってもいいんだけど、さて何を学ぶべきかと悩んでいた時、教授に声をかけられた。
「デジモン専門に研究している学者」の一人だ
教授曰く、「今、デジモンを自由に戦わせるための制御フィールドの研究をしている。デジモンのことも学べるし、一石二鳥だとは思わんかね?」とのこと。
今、デジモンを戦わせるためにはリアライズフィールドが必要になる。
このリアライズフィールドは戦闘が可能なデジタルフィールドを形成することができ、日常生活でのデジタルフィールドとは別に扱われる。
ごく稀にこのリアライズフィールドが自然現象的に表れる時がある。
これはデジタルワールドから迷い込んできたデジモンが発生させるフィールドであり、霧のような形で形成し、一定時間(この時間はデジモンによって様々)形成される。
その中でならデジモンを自由に戦わせることができる。
それを自由に作るという画期的な研究だった。
第一段階で、一応「完全体」までが耐えられるリアライズフィールドの生成は可能になったものの、まだ強度が甘く、究極体同士の戦闘には不向きだ。
教授の話は、そこから小一時間続いただろうか。
僕はその研究をしたいと思っていた。
こうして僕はデジモン研究に加えリアライズフィールドを生成するために大学一年生の頃から教授の研究室にお邪魔していた。
物珍しそうに見る先輩たちを尻目に、僕の席も用意され、帰る時間は終電ギリギリ。
そんな生活がまさかこんなに続くことになるとは思わなかった。
一方で今、隣にいる彼女である留姫は、別の研究をしている。
山科研究室に在籍しながら、「デジモンの新たな進化のメカニズム」という題材の研究をしている。
彼女の研究も難しいながらもリアライズフィールドの生成という課題に比べてみると、専門家も多く参考文献も多々あるため、まだ研究の進みとしては順調である。
だが、ここ数日は研究室に泊まり込みで論文を書いていたようで、よくよく見ると、彼女の目の下には
「留姫も相当大変そうだね......」
「今日、教授が来るから、論文を見せてOKが出たらすぐ帰るわ。 人使いは荒いのよね......」
ため息交じりに言う彼女も、相当フラストレーションがたまっているように見える。
そんな僕も実はとある締め切りで、本日教授と会う予定だ。
リアライズフィールドの小規模の生成を行い、究極体と同等エネルギーを放出した際にどうなるか、フィールドの強度実験を行うために、現在、調整中である。
これが終われば、明日、予定していたことができるので、何としても終わらせたい。
彼女と話をしながら、最後のプログラムを書いていると、奥の扉がガタッと音を立てて開いた。
二人で振り返るとそこには、山科教授の姿があった。
「おお、二人とも、すまないね、休みの日なのに」
「いえ、問題ありません」
「では、牧野君の論文の添削から始めようか。 松田君はその後にしよう」
「はい、わかりました」
その言葉と同時に留姫は席を立ちあがり、扉のほうへと向かっていく。
教授とともに、教授の部屋へと向かった。
僕は僕で最後の仕上げを行わなければならない。
究極体のエネルギーとはとてつもないエネルギーだ。
それを閉じ込めるとなると、こちらもかなりの出力をコントロールできるようにしないといけない。
ここまでのプログラムを完成させるまでにはかなりの時間がかかってしまったが、友人の泉君の知恵を借りながら、何とかここまで来ることができた。
彼は本当に高校生なのか、少し疑問が生まれてきそうな具合でもあったが、まあ、この際、それは無視しよう。
僕は最後のプログラムの一行を書き終えて、データを保存し、実験場へデータを転送した。
終わった......。
とりあえずは僕の考えているものは出来上がった。
その瞬間、デスクにおいてあったデジヴァイスが光を放つ。
『タカト、終わったの?』
「うん、今終わったよ。 ごめんね、ギルモン。 遊んであげられなくて」
『大丈夫~、ボクはタカトが一生懸命頑張ってる姿見るのも好きだよ』
「ありがとう、ギルモン」
デジヴァイスの中から僕のパートナーデジモンであるギルモンが声をかけてきた。
彼は僕だけのデジモン。
この世で一体しかいないデジモンである。
彼のことについてはまた機会があるときに話そう。
どうして、彼が僕のもとへ来たのか、どうして彼が一体だけなのか、どのような歩みでここまで来たのかとかね。
「啓人、終わったわよ。 次あんたの実験」
声がした方向を見ると、留姫が腕を組みながら立っていた
「留姫は大丈夫そう?」
「ええ、何とか合格したわ。 次は発表資料の作成だけどね。 ま、今日はこれで帰ろうと思ったけど、あんたの研究も気になるから、少し手伝うわ」
「え、本当? それは助かるよ! じゃあ、僕先に第三実験室にいるから、教授を十分後くらいに連れてきてもらえる?」
「ええ、かまわないけど」
僕はデジヴァイスをポケットにしまって、僕は研究室を後にした。
私は山科俊二、しがない研究家だ。
デジモンという存在がこの世に認知されたとき、私はまだ学生だった。
今、こうしてデジモンたちが人々に寄り添って生きる環境を構築するまでに、実に二十年の歳月をかけた。
それが認められ、私はデジモン研究家の道を進むことができた。
一つの私の功績といっても過言ではない。
中には「まだ彼を教授にするには早すぎる」という言葉も聞こえてくるが、関係ない。
私は私の夢の実現のために、様々なことをして、デジモン研究をしていきたい。
私の夢、それはデジタルワールドへ行くことだ。
だが、それはかなり難しいことだ。
大容量のサーバーが必要であり、人間をデータ化する技術も必要となる。
これを実現するための費用と、技術はまだまだ足りない。
サーバーを確保するのは費用がどうにかなれば大丈夫だろう。
問題は人間をデータ化する技術。
これは私の研究人生の中でも、研究成果を上げた者は数少なく、参考文献が足りない。
もしかしたら、個人の研究家が実験を繰り返し、挑戦はしているだろう。
だが、これには問題があり、次はデータ化した人間をどうやってもとの姿にするかが問題だ。
肉体を日常生活でも問題なく扱えるようにしないといけない。
問題はやまずみだが、私はこの研究をひそかに続けていきたいと思う。
そしていつの日か、世にこの成果を放ち、公表できればと考えている。
さらなる世界の発展を目指して......。
私はふとデスクの上にある論文に目を落とした。
先ほどやってきた牧野留姫君の論文だ。
彼女はとても研究に真摯な面があり、今後の成長が楽しみな学生の一人だ。
テーマとしては、「デジモンとパートナー間での共鳴による別進化の可能性」だ。
デジモンはパートナーと共に過ごすことで、絆が生まれる。
その絆が共鳴することにより、新たな進化を迎えることができる可能性をみつけたという論文だ。
彼女の切り口はかなり斬新なものばかりで、驚かされてばかりだ。
私をすぐに越してしまうかもしれない。
そして、彼女と同等にその力をいかんなく発揮しているのは、松田啓人君だ。
彼は最初に話した時から、何かほかの学生とは違う何かを感じた。
だからこそ、彼に目をつけ話をし、私が受け持っている一つの研究である。
「戦闘用デジタルフィールドを制御するためのエネルギーフィールドの生成」という研究を任せた。
彼なりに進みながら、答えを導き出している。
その結果、完全体同士の戦闘を十分ほどなら耐えられる戦闘用デジタルフィールド、通称リアライズフィールドの生成に成功している。
これが究極体まで行けば、より人はデジモンとともに戦うという部分で絆を高めあうことができ、牧野君の研究にもつながるだろう。
二人の新星がどこまで登るのか、私はこの目で見ていきたい。
そう思いながら椅子に座り、なんとなくリモコンに手をかけてテレビをつけた。
そこで流れていたのはとある人間へのインタビューだった。
『
『はい、あのデジヴァイスはより人の生活にマッチした形で、人とデジモンをつなぐものをコンセプトに開発しました。 特徴は簡単に言うと、従来の機能であったデジヴァイスをパソコンなどの電子機器につなぐことで仕事や生活のクオリティを上げるという部分、ここは高速化し、デジモンの動ける範囲の拡大に成功しました』
『なるほど、範囲が拡大されたということは今までできなかったことをできるようにした、ということだと思いますが、例えばどのような部分でしょうか?』
『さすがに会社の社外秘などになる部分には手を付けられないようにしていますが、例えば仕事でのファイルを扱う際に、デジモンがそれをサポートしてくれるという部分や、防犯カメラにアクセスることで、デジモンへそのデータが入り、離れた場所からでも危険を知らせてくれたりといろいろですね』
『デジモンにとっては負担になりませんか?』
『それは私たちも危惧している部分でしたので、デジモンたちに負担にならないようにデジヴァイスの中を快適にしています。 まあ、その部分は難しい説明になるので、割愛させていただきますが......』
テレビではデジヴァイスの作成者である
彼のデジヴァイスがなければ私の功績もなかったのだから、彼には感謝しても仕切れない部分がある。
今度のリアライズフィールドの件も、資金を出資してくれたのは彼だ。
だからこそ、いろんな実験もできる。
あれが天才というものだろうか?
私は彼なら、もしかすると人間のデータ化、復元ということもできるのではないかと考えている。
まあ、そういう予感がするだけだがね。
テレビを切るとちょうど扉をノックする音が三回聞こえた。
「失礼します」
牧野君だ。
何か用があるのだろうか?
「たか......松田君の実験準備ができましたので第三実験室までお越しください」
「おお、そうか。 わかった、今行くとしよう」
私は椅子から立ち上がり、デスクの上の論文を引き出しにしまって鍵をかけた。
そして、松田君の待つ第三実験室へと足を向けたのだった。
「神堂さん、本日はお忙しい中、ありがとうございました!」
「いえ、こちらこそ、私が忙しいばかりに、足をお運びいただき申し訳ありません」
「いえいえ、そんな稀代の大天才、神堂玲一さんにお会いできる機会なんてそうそうありませんからね!」
「そんなお世辞言っても、何も出ませんよ......。 申し訳ない、次の会議が待っているので私はこれで」
私は神堂玲一。
デジタルアークカンパニーの社長兼研究者だ。
中学生のころに海外の大学へ行き、デジモンの研究を行い、デジヴァイスの開発に成功。
それからは世界中に注目される人となった。
だが、私はそれを欲していたわけではない。
私が本当に欲しいものは......。
テレビ局の方々と別れた私は社長室へと向かった。
そこは私だけの空間。
誰一人、入れることはない。
私と話したい場合は、私がその場所まで向かうという形だ。
面倒ではない。
むしろ社長なのだから、社員の働いている手をあまり止めたくはないため、私が動くことで、すぐに仕事に戻ることができるだろう。
だから、私は何かがあれば動くスタイルをとっている。
年々、技術者たちの腕も上がってきており、より高性能のデジヴァイスの作成が可能になっている。
あまり私が顔を出さなくても仕事が進んでいることは、喜ばしいことだ。
だが、足りないのだ。
データが、そうデータが足りない。
私は社長室の椅子に座ることなく、その後ろに設置されていた本棚の前に立った。
一つの本に鍵穴がついている。
私が所持している鍵を差し込むと、その本棚は右側と左側に動き始めた。
すると扉が現れる。
『アイコトバヲオコタエクダサイ』
機械音で聞こえてくる言葉に私は答えた。
「世界はデジタルワールドに、デジタルワールドは世界に」
これが合言葉だ。
そうすると扉が自動で開き始める。
私は中へと進んでいった。
そこにはあるのはエネルギーを放出する機器と、真ん中にはエネルギー体が形成されていた。
「夢とは望むものではない、夢とは自らの手でつかむものですよ、山科教授」
昔、私が海外にいた頃だ。
私は山科俊二氏にあったことがある。
その時の彼の夢を聞いた。
私は聞いたとき思った。
(この人は、夢を実現するための手を伸ばしていない)
私は彼の話に感銘は受けたものの、自分の手でつかみに行こうとしない彼の姿勢に、憤りを感じてしまった。
だが同時に、その夢は実に興味深いと私は思った。
それから独自に研究を続け、ようやくここまで来た。
構成は省くが、私のしたことはデジタルワールドという世界に、私の遺伝子データを取り入れること。
そうすることで、私はその世界で活動することができる。
ただ、データに過ぎない遺伝子データは、都度更新しなければ
私の場合はリアルタイムでそれをすることが可能にするために、デジヴァイスに独自の機能を取り付けた。
エネルギー体に手を伸ばすと、チリチリと痛みはあるものの、どんどんエネルギー体の中へ入っていくことができる。
そうしてすべての体が入ったとき、暗い空間へと入り込んだ。
そこには五人の人間が席に座っていた
「すまないね、テレビの取材が長引いてしまって、なかなか抜け出せなかった」
「かまわない、で、今日は何の集まりだ?」
「ここで話すってことは大事な話なんでしょう?」
「すぐ終わらせてくれ......」
口々に声を発する者たち。
まあ、突然呼び出したのだからその反応は間違えではないだろう。
私は席に座り、指を鳴らすと、私の後ろに大きなスクリーンが映し出される。
そこには「α計画」という文字が書かれていた。
「ほほう、やっとやる気になったのか?」
「まだデータは足りないがね。 やるには十分だよ」
「それで、いつ実行するの?」
「待て待て、私の話を最後まで聞くんだ。 まだデータが足りないから、君たちにも動いてもらう」
私は彼らに現在実行するべきことの詳細を話していく。
五人のうち四人は驚きながら話を聞くものの、一人は黙って話を聞いていた。
一人が口を開く。
「それって、ヤバ目な計画じゃん? 本当にできるのか~い?」
「できるかできないかじゃない、やるんだよ。 これを実現するために俺は、ここまでやってきたんだから!」
拳を作って机をたたく。
大きな音を立てたため、四人がさらに驚く。
俺......いや私は、それ機に冷静さを取り戻した。
「これは優秀な君たちだからこそお願いしたいことなんだよ」
「......わかったわ、期日は?」
「七月三十日、そこから三日かかるから八月二日だな」
「OK、七月三十日までに集めましょう」
「ああ、玲一氏の頼み、しかと引き受けた」
「じゃ、今日は退散って、こっとでいいかにゃ~?」
「ああ、みんなありがとう」
それと同時に四人は姿を消した。
唯一、一人だけその場に残った者がいた。
その人物は私のほうを睨むように見つめてきた。
当然の反応だと私は思った。
「どうしたんだい? その姿では何も怖くないよ?」
「好きでこの姿になったわけじゃないと何回言えば気が済む......。 俺も作戦に組み込まれているなら、俺は何をするんだ?」
「監視だよ。 他の者がここに来ないように見張ってほしいんだ」
「......それだけか? お前のことだ、まだ頼みたいことがあるんだろう?」
「察しがいいね」
私はスーツの内ポケットから、メモリーディスクを取り出し、座っている人物のほうへと投げた。
瞬間的にキャッチをして、デジヴァイスにメモリーディスクを差し込んだ。
その内容を見ると今度は驚いたかのようにこちらを見た。
「お前、これを俺に?」
「できないとは言わせないよ? 君にはそれをやってもらわないといけない。 君の命は僕の手の中だからね? そうだろう、
私が彼に笑顔を見せると、苦虫を噛み潰したような顔をして、彼はその場を去っていった。
その背丈は小学生くらいといってもいいだろう。
いや、
彼は裏切る可能性はあるが、使えるものは使わねばならない。
「さあ、ゲームが始まるよ? 人類の諸君......」
私はまるでRPGゲームでいう魔王のような感覚だった。
でも、間違えではない。
これはゲームであり、私が魔王で、人類はモブの集まりなのだから......。
第三実験室、ここは山科教授のような情報学を専門に取り扱っている研究室の専用となっている実験室。
私はここでとある実験の準備をしていた。
松田啓人、私の同期の学生であり、同じ研究室で研究をしている、私の彼氏だ。
まあ、あいつとの付き合いも小学生から続いているので、付き合うことになったときは私自身驚いた。
居心地は悪くない。
でも、あいつ、私とは違う子が最初好きだったくせに、私のことが途中か好きになったってどういうことよ......。
そこらへんはいろいろあったけど、まあ、この際、棚に置いておく。
今は、あいつの研究の成果を披露するタイミングだから、昔話はまたの機会に。
とはいえ、この研究は難しい。
私は進化のメカニズムを研究しているけど、それはだいぶ参考文献があるから助かっているけど、あいつが研究している分野はリアライズフィールドの耐久性の強化と発生時間の持続、さらには究極体デジモンにも耐えうる物でなければならない。
相当に困難だ。
今までこの分野に目を付けたものはおらず、山科教授がやっと目をつけて、五年位前に完全体までのデジモンとの戦闘を耐えられる成果までもっていった。
とはいえ、これも時間制限があり、十分程度だ。
それでも革命と言わざるおえない。
今までは、デジヴァイスフィールドと呼ばれる機体にデジモンを転送して、その機体の中でデジモンに指示を出して戦うのが主流であった。
私も小学生時代はそのようにして戦っていた。
まあ、
その話も今はやめておく、長くなるから。
だから、教授やあいつがやろうとしてることは、とても困難な道といっても過言ではないのだ。
「留姫、AのコードとCのコードをつないでくれる?」
「いいわよ、他はある?」
「とりあえず他は準備できたから、そこをつなげて起動するだけ」
あいつの指示通りにコードをつないで、しばらくすると端末の起動音が聞こえる。
自動的にパソコンが立ち上がり、私たちの目の前にある大きな機器も轟音をあげた。
この機器はエネルギー発生装置と言ってもいいだろう。
これを使ってあいつの研究は実行される。
なかなかに費用のかかる機器だが、デジタルアークカンパニーという会社と共同研究をしているため、費用面は問題ないらしい。
まあ、それでも費用は限られているので何でも利用するというわけにもいかないが。
「じゃあ、松田君。 まずは君の作ったものを起動してもらおう」
「わかりました」
そういうと、パソコンを操作し始める。
私は固唾を飲んで見守った。
これに何か月も時間を費やしてきたのだ。
その成果を今ここで見せられないと十月の納期に間に合わなくなり、研究は凍結されてしまう。
そうなったら、あいつ......啓人の努力が水の泡だ。
いつの間にか私は拳を強く握りしめていた。
すると機器がさらに音を立てて、動き始めた。
すると網目状の丸い球体が出来上がる。
「教授、できました」
「なるほど、エネルギーを一つずつの線ととらえて網目状にしているのか」
「同時に一本一本の線をねじれている状態にしています。 これで強度は上がっていると思います」
「エネルギーを一本ずつねじれさせる! よく思いついたね」
「これは知り合いからのアドバイスのおかげです」
「それでも、実現させた君も大したものだ。 では、その中に究極体のエネルギーを入れてみよう」
「はい」
啓人はそういうと、またパソコンを操作し始めた。
網目状の球体の中に、小さいながら光がともり始める。
赤い小さな球体。
これが究極体デジモンの平均的なエネルギーに相当している。
小さい光ながらもとてつもない力を持っている。
ちなみに、完全体だと青、成熟期だと黄色、それ以外は緑だ。
「前は光が発生した瞬間に弾けていたが、今回は出現自体は大丈夫のようだね」
「では、動かします」
啓人は一呼吸入れて、パソコンのエンターボタンを押した。
すると赤い光は振動を始め、網目状の球体の中を移動し始める。
不規則な動きで、網目状の球体に当たっていった。
私はその様子を見ながら、さらに拳を強く握りしめる。
前は光の発生だけでも壊れていたものが、今はどうだろう。
網目状の球体は少し動くものの、壊れはせずに形を保ったままだ。
これがどれくらいの時間持続するかで、また結果は変わるがひとまずのところ、この結果は......。
「松田君、よく頑張ったね。 これなら、実用化に向けて十月の大会までには間に合いそうだ」
「教授......、ありがとうございます!」
うれしそうな声をあげながら、深々と礼をする啓人。
私の目から、水滴が一粒地面に落ちた。
素直に私もうれしかったからだ。
「とりあえず、このデータをフィールドを形成するサイズと同じにして、二体の究極体デジモンを出現させて、実際に戦わせてみるのが、次の成果となるだろうな」
「そうですね......。 あとは二体の究極体デジモンの最大パワーを出した時にどれだけ耐えうるかも調べないと......」
「強度の想定はどうなんだい?」
「参考デジモンのデータの最大出力を見て、それには耐えうるというのは計算済みです。 でも、実際にどうなるかまでは......」
「まあ、確かに、そこまでは試せないから、その計算が出ているだけ幾分かマシだよ。 今日は二人の成果を見られてよかった。 二人ともまだこれからいろいろあるが、三日くらい休みなさい」
「え、いいんですか?」
「ここのところ泊まり込みでやってたというのは、他の学生からも聞いている。 ゆっくり休みなさい」
「ありがとうございます」
「そうします」
私と啓人は礼をした。
久々の休みだ。
とはいえ、私も啓人もこれからいろいろと忙しくなる身。
あまり気を緩めるのもいけない。
「それじゃ、後片付けをしたら今日は帰っていいよ。 ご苦労様」
「ありがとうございました」
教授は実験室を去っていき、私と啓人は顔を見合わせた。
同時に安堵のため息を漏らした。
「よかったわね」
「泉君のおかげだよ。 あの考え方がなければこの結果は生まれなかった。 網目状までは思いついたんだけどね」
「でも、教授も言った通り、実現させるのは至難の業よ。 おめでとう」
「留姫もね。 さて、明日の予定をキャンセルせずに済みそうだ」
「明日?」
「うん、親戚の子と一緒に新型デジヴァイスを買いに行くんだ」
「ふ~ん、私、三日間、予定空いてるけど?」
わざとらしく言ってみた。
意地悪だろうか?
でも、こういう時は彼氏と過ごしたいっていう乙女心も察してほしい。
苦楽を共にした仲、でもあるしね。
「え、あ、うん、もちろん! 明日は無理だけど、どっちか明後日かその次の日は予定を空けるよ! てか、僕も空いてる!」
慌ててる。
まあ、そうだろう。
こいつはいっつもそうだから。
でも、そこがいいなって思う時もある。
「じゃあ、明後日行きましょう。 とりあえず、ここの後片付けね」
「うん」
私たちは実験室の後片付けを始めた。
世界は時に残酷だ。
人に試練を与える神様ってのがいて、それを乗り越えるために幾多の困難を置いていく。
俺はこの試練に打ち勝つことができるのか、ずっとそれを考えていた。
時刻はもう深夜の十二時、二月一日になった。
デジタルワールドから見る月は、いつも変わらない。
ただわかるのは手を伸ばしてもつかめないことだ。
それは現実世界と同じであり、伸ばした手の長さが、
この体になって、もうそんなに月日がたつのかと、何度も思い返す。
なんで俺だったのか、なんで俺はそれをつかんだのか、今でもわからないままだ。
でも、何かが起ころうとしているからこそ、この状況になっているに違いない。
神堂の行動しようとしていることも、デジタルワールドが何を望んでいるかも、
だからこそ、歩みを止めちゃいけない。
俺が、神原拓也という人間であることをやめてしまわないためにも......。
だからこそ、俺はこいつらにお願いしなければならないんだ。
『使者を送る? 現実世界の子供に?』
「ああ、頼めないか?」
『......我々ロイヤルナイツは自身の正義のために動く。 君がかつてのデュナスモンとロードナイトモンを倒したように、また我々は君に牙を向けるかもしれないぞ?』
俺の視線は今のデュナスモン、ロードナイトモンに向けた。
二体のデジモンは我関せずといった具合だ。
声の主が再び話し始める。
『だが、君がどうしてこの状態になってるのか、我々も知りたい部分ではある。 デジタルワールドにいるホメオスタシスの導きなのか、イグドラシルもそれを知りたいようだ。 もし、それを知ることができるなら、協力しても罰は当たらないだろう』
「本当か、ガンクゥモン!」
俺は声の主の名を叫んだ。
ロイヤルナイツは自身の信じた正義の名のもとに行動する。
それは俺が身をもって体験した。
今回も対立するかと思ったが、そうではないようだ。
だが、いくつか空席がみられるのが気がかりだ。
『神原拓也、どうして空席があるか気になるようだな?』
「え、あ、まあな......」
『我々もテイマーもとへ行くことになっている』
「ロイヤルナイツもか?」
『ああ、今はまだ覚醒していない者たちがいる。 いずれは我も、そしてここにいるデジモンたちも、テイマーのもとへ行くこととなる』
デジモンも不思議なものだ。
まだ解明されていないメカニズムがあるということ......。
ガンクゥモンのいう覚醒、その意味が......。
『覚醒の意味が分からないようだな』
ばれた......。
『我らは各々に力を持つものを待っている。 その者のデジモンが力に目覚めたとき、我らの体はそのデジモンのデータとなり、一体化する』
「つまり、選ばれたデジモンは二つのデータを持つってことか?」
『簡単に言えばそうだ。 だが、我らはその者たちを支配しようとはしない。 その者たちが我らのデータをいかように使うかはその者たちに委ねるにしている』
俺にそう教えてくれたのは赤いマントを羽織ったデジモン、デュークモンだった。
今、彼が目の前にいるということは、まだその覚醒が起きておらず、データが一体化していないということだ。
少し難しい話だが、なんとなく分かった。
『過去の私がしたことについて詫びを入れよう、神原拓也』
薔薇を携えながら、そう口にしたのはロードナイトモンだった。
このデジモンとは過去に戦ったことがある。
その隣で座っているデュナスモンともだ。
「別に、今のお前が悪いわけじゃない。 今は浄化されて、姿形は同じでも、別のデジモンなんだから」
『ふっ、まあ、そうだな。 だが、私たちのしたことは世界の歪みそのものだった。 過去の私の罪は今の私の罪でもある』
『我らになるデジモンが覚醒したとき、その罪を背負わせるわけにはいかないがな。 だから、今我らにできることがあれば、このデュナスモンとロードナイトモンが手を貸そう』
「へぇ、いいやつになったじゃん? ならよろしく頼むよ」
遠慮なんかしてられない。
俺は手段を選んでなんかいられない。
俺のするべきことがどうするのか今わからないが、何としてでも俺に課せられた何かを達成しなければ。
『では、使者として我が弟子を送ろう。 その後のことはデュナスモンとロードナイトモンに頼もう』
『鉄槌の騎士と言われたあなたに頼まれたら、私たちも断れない、協力をしようガンクゥモン』
『ふっ、自称・美麗の騎士は素直でよろしいな』
『皮肉な物言いだな? 忠義の騎士デュークモン?』
『いや、何、元は強固の騎士と呼ばれているお前が素直に応じることに驚いてな』
『くっ、その異名で私を呼ぶな!』
『まあ、落ち着け我が友よ。 デュークモンも言葉が過ぎるぞ』
『いや、失敬。 無双の騎士殿もとても扱いづらい友がいるようで大変だな』
『くっ、貴様!』
『落ち着け、友よ!』
かすかに笑いながら、デュークモンは二体から目を逸らした。
ロイヤルナイツもこうやって人間みたいに喧嘩するんだな。
デジタルワールド最強の騎士たちなのに......。
「ところで弟子とは?」
『我の元で鍛えている最中のデジモンがいる。 その者を人間界に送ろう』
「そいつもロイヤルナイツなのか?」
『......わからぬ』
「え?」
意外な回答が返ってきた。
ガンクゥモンが育てるということは何かしら、関係していると思ったのだが、そうではないのだろうか?
『我らロイヤルナイツが十三体いることは知っているな?』
「まあ、聞いたことなら」
『実は、十三体目の漆黒の騎士はともかく、十二体目の騎士はまだ現れていないのだ』
「そうなのか?」
絶対的に十三体いると思っていたロイヤルナイツにそんな秘密があったことに驚いたが、そうするとデジタルワールド最高戦力はまだ完ぺきではないことになるのか。
俺の動きに支障が出ないか、気がかりだな......。
その判明していないロイヤルナイツが、もし敵になったら......。
『神原拓也よ、おそらくお主は、そやつが敵になるやもしれんと思っておるのだろう?」
「え、あ、いや......』
『確かにその可能性も捨てきれん。 だが、少なくともそやつは自身の信ずる正義の名のもとに動く。 いつ出現するかわからないものに気を取られる必要はない』
『さすが、知略の騎士ドゥフトモン、よいご意見ですな』
『鉄壁の騎士と言われたそなたに褒められるのはうれしいな、クレニアムモンよ』
二体はその言葉の後、互いに笑いあった。
なんだろう、この取り残された感......。
『まあ、我が弟子がロイヤルナイツの素質を持つなら、いずれわかることだ。 本日、弟子を現実世界に送り込む。 そこからはお前の仕事だ。 神原拓也』
「ああ、わかってる。 ありがとな」
彼らに一礼し、俺はその場を去った。
もしかしたら、神堂がこの場をどこかで見ているかもしれない。
そうだとしても、俺は俺のするべきことする。
ロイヤルナイツの協力を得られたのなら、こちらとしても問題ない。
後は俺がどう行動するかだ。
絶対に、世界を歪めたりはしない......。
多分、デジタルワールドはそれを感じ取って、俺をここに呼んだんだ......。
三年前のあの日、|このデジタルワールドを旅していた小学生の頃の体《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》を渡して......。
二月一日、僕は今日、初めてとあるものを買う。
それはデジヴァイス。
今までは両親の方針で所持を許されなかったけど、何かと便利だと啓人兄ちゃんからの説得もあり、新発売されるデジヴァイスの購入することに至った。
「大地君、おまたせ」
「啓人兄ちゃん! 全然待ってないよ!」
「僕も同じだったな~。 初めてデジヴァイスを買うってなったときはそんな感じだったよ」
「えへへ、楽しみで仕方なかったんだよ」
啓人兄ちゃんを出迎えて、僕らはお店へと向かった。
予約はしているから受け取りだけで済むとは思うけど、多分長蛇の列になる可能性があるから、朝早くから並ばないといけない。
......と思っていたんだけど、さすがデジヴァイス。
深夜組の想定を忘れていた。
「こりゃ、かかりそうだね......」
「ざっと見積もって、三時間かな? まあ、いつもならもう少し少ないから、マシなほうだよ」
「これでマシなの!?」
「僕の時なんて、お父さんと一緒に六時間並んだよ。 開店前と合わせると、九時間くらいかな?」
驚きすぎて声が出なかった。
そのまま僕らは列へと並んだ。
開店までまだ三時間もあるというのに、この列はすごい......。
僕らの後にも人が並ぶんだから、そりゃ、そうだよね。
「啓人兄ちゃんは、パートナーデジモンとはどうやって出会ったの?」
「ん? ああ、僕は特殊だからね、参考にならないよ」
「特殊?」
「うん、でも大抵の場合はD-Shopで気に入ったデジモンのデータをもらってリアライズさせるのが普通かな」
「そっか......」
「この後はD-Shopだね」
「うん!」
D-Shopとはデジモン専門店であり、全世界各所で展開している。
そこでデジモンのデータが売っており、それをデジヴァイスに入れて出現、リアライズさせる。
デジヴァイスにはデータ化したデジモンを実体化させる力はある。
戦闘はできないけど......。
だからこそ、啓人兄ちゃんのような人が研究をしているのだ。
すごい研究だな......。
「どうしたの?」
「ううん、何でもないよ。 それにしても本当、みんな既に持ってるのによく並ぶよね」
「スマホみたいなもんさ、最新型は欲しくなるもんだろう? それと同じ」
「そっか~、まあ機能も増えればそりゃ、欲しくもなるか」
そう、今回のデジヴァイスはかゆいところにも手が出るといった感じで、多機能にはなっているのだ。
神堂社長も昨日のインタビューで話していたしな~。
楽しみすぎて、その特集を何回か繰り返し見たんだよな。
「なかなか、かかるね......」
「ま、進行速度は早いほうだよ。 街のほうへ行かなくてよかったね。 もっとすごいよ」
「特典とかついてるんだっけ? 僕は興味なかったから、別にいいんだけど」
「そうだね、特典は欲しい人が買えばいいものだしね。 値段もその分高くなるし」
「あ、列が動いた!」
「どんどん近づくね、大地君のデジヴァイスデビュー」
そんな話をしながら時間をつぶし、開店前から合わせて五時間半、ついに僕の番が来た。
「予約してた白峰です」
「白峰様ですね、こちらご注文していたデジヴァイスになります」
店員の人から手渡されたデジヴァイスは、綺麗な白色のデジヴァイスであった。
手にフィットする形状で、液晶画面がついており、側面にダイヤル式のコントローラー兼ボタンがついている。
取っ手の最下部には小さな穴があり、そこにはメモリーディスクを入れられるようになっている。
また、液晶の上部に溝があり、そこにカードを通すことで、カードの効果をデジモンに付与することができる。
とても優れたものだ。
でも、白は珍しい。
他の人はちゃんと色がついているのに......。
まあ、白も立派な色だし、僕の苗字にも白ってついてるからぴったりかな。
代金を店員の人に渡して、僕と啓人兄ちゃんは店の外へ出た。
「念願のデジヴァイスだね」
「うん! これで友達との会話にも遅れずにすみそうだよ」
「それはよかった。 じゃあ、次はD-Shopだね」
「うん!」
そうして僕らはD-Shopがあるほうへと歩いて行った。
距離は少し遠いものの歩いては行ける距離なので、散歩がてら行くことにした。
そういえば近道があったっけ......。
そこを通れば、時間を少し短縮できるかも。
「啓人兄ちゃん、近道があるからそこから行こうか。 裏路地に入るんだけど」
「近道か~、昔は通ってたな......。 よし、そこから行こうか」
二人で裏路地に入る道へと進んでいった。
裏路地とは言ったものの、入り組んだ構造にはなっていない。
ちょうど真ん中あたりで、大きな広場みたいなところに出るけれど、そこも特に人が集まることはなく、ただ広いだけの空間だ。
たまに利用するけど、一度も人やデジモンを見たことはない。
まあ、普通はこんな道は通らないよね。
でも、この日は何やら様子が違った。
徐々に煙なのか、霧なのか、立ち込めてきたのだ。
空は晴れているというのに......。
「なんか、霧が出てきたね......」
「そうだね、こんなに空は晴れて......、そんな、まさか!?」
霧が出たことに不思議に思い口に出すと、啓人兄ちゃんが何かに気づいたようにデジヴァイスに手をかけた
だけど、それは少し遅かった。
見る見るうちにあたりは霧に包まれて、何も見えなくなってしまった。
これは、いったい......。
「リアライズフィールド......」
「え!? ってことは、ここって......」
「戦闘ができるデジタルフィールドの中に入ったんだ! なんでだ、なんでデジヴァイスが反応しなかったんだ!?」
通常デジヴァイスは、付近に発生するリアライズフィールドを補足する力も持っている。
不用意な野生のデジモンとの戦闘を防ぐためだ。
そのためにD-Policeと呼ばれる対デジモン戦に特化した部隊などもあるほどだ。
将来のD-Policeを育成するために、選ばれた数人がD-Saberという組織に所属するという話も聞いたことがある。
これはその方面の人たちが出てくる案件だ。
つまり、デジモンが出てきたら、戦闘をする可能性がある。
「まずい......、今、ギルモンは寝てるのに......」
「え、じゃ、じゃあ......」
「逃げるしかない、かな......」
少しずつ僕らは後ろに下がっていく。
『待ってくれ、危害を加えるつもりはない』
僕らが下がったのを見てなのか、正面から声が聞こえた。
たくましい男性のような声だった。
そこに現れたのは、巨体の大男のような、デジモンだった。
デジモン、だよな......?
「私は鉄槌の騎士、ガンクゥモン。 とある事情でパートナーのいない人間を探している。 どちらかパートナーデジモンを所持していない人間はいるか?」
ガンクゥモンと名乗ったデジモンはそう僕らに告げた。
僕らは顔を見合わせた。
そして、恐る恐る僕は手を挙げる。
「ちょうど、僕、いませんけど......」
どうしてその時手を挙げたのか、僕にもわからなかった。
ただ、そうするべきだと思ったのは事実だ。
「ほう、ちょうどよかった。 これも出会った縁、君に託したい」
ガンクゥモンと名乗ったデジモンは人差し指を突き出すと、何か一筋の光がデジヴァイスに向かって注がれた。
その光は強さを増し、デジヴァイスの液晶画面から、さらに強い光を放った。
僕らはそのあまりの光の強さに、地面に倒れこんだ。
「頼むぞ、選ばれし子よ......。 君に託す、我らの新たな時代の光を......」
消えうるガンクゥモンの声とともに、霧は晴れていった。
霧が晴れたということはリアライズフィールドが去ったことを意味する。
僕らが体を起こすと、目の前には違う影があった。
「君は......?」
『僕は君のパートナーデジモンだ!』
それが僕とハックモンの出会いだった。
これが始まりのお話。
僕らの戦いが始まった瞬間の話だ。
こちらはPixivでも公開しておりますので、そちらもご覧いただければと思います。
別途キャラクターの紹介欄などを設けたいと思います