崇永記   作:三寸法師

122 / 202
◆2

〜1〜

 

 

 今、俺は死地にいる。武運長じて小笠原流の奥義で敵総大将(北畠顕家)を討ち取ったと思ったのも束の間、ド変態執事(御左口神雫)謹製の咄嗟の策と元天狗の移動速度によって編み込まれた罠に嵌り、窮地に陥っていた。

 一体どこで間違えたのか。顕家を討ち取り次第、速やかに京極軍に借りた矢を返しに戻るべきだったのか。それとも、相変わらず周囲に少なからずの敵兵を抱えていた師直軍に身を寄せるべきだったのだろうか。だが、一つだけ言える事がある。俺は顕家を狙って、一か八かの決死の突撃を敢行した事を微塵も後悔していなかった。

 

 

「悪魔……俺は遅かれ早かれ室町幕府(尊氏様麾下)最強の武臣となる身。重症の時行たちは居ないようだが、新田徳寿丸や宇都宮公綱、祢津弧次郎を集めて戦わせたら、討ち取れると思って貰っちゃ困るなァ!」

 

 

「粋がるだけなら誰でも出来る。六角、彼らは決して貴方一人で勝てる相手じゃない。齢十三の貴方の武力は未完成。十年後なら違ったかもしれないけれど、今の貴方は確実に土岐頼遠(一騎当万)に及ばない」

 

 

「はン!ならば、示そう!度肝を抜かれる準備は良いか!?」

 

 

 正直に言えば、名刀「綱切」が手元に無いのが惜しいが、名門武家の当主として敵の兵馬と相対する以上、凛々しく振る舞おう。

 京極軍より借り受けた強弓をその場に投げ捨て、鐙の後ろに付けていた長物を取り出し、構える。ここで新田家郎党が反応した。

 どうやら気付いたらしい。この長物の()()()()()が誰なのかを。

 

 

「若殿!あの武器、見覚えがあると思えば、義顕様(亡き兄君)が持っておられた戟です!間違いないかと!しかし、何故あの者の手に……?」

 

 

「兄上の……?アイツは兄上の仇なの?」

 

 

「へぇ。そこの色黒のチビ。貴様があの噂の新田徳寿丸か?」

 

 

「そうだけど……ねぇ、六角だっけ?なんでお前が金ヶ崎城の兄上の武器を持ってるの?ただの戦利品?もしかして……殺した?」

 

 

「さぁて」

 

 

 新田徳寿丸(義貞の次男坊)は勘が良いようだ。恐らく戦闘センスにも光るものがあるのだろう。成る程、これなら祢津弧次郎と共同戦線を張って、高師泰(北朝有力武将)を負傷させたという話もあながち納得出来ないでもない。

 ただ、安易に認める訳にもいかない。金ヶ崎城で新田義顕(越後守)を討ったと認めた場合、一緒に居た尊良親王(一宮殿下)の件で、逃れた筈の親王弑しの汚名を自ずと被る可能性がある。今後、六角佐々木家に不利に働くかもしれない。ならば、ここはトボけておくのが無難だろう。

 

 

「戦記を知らないのか?徳寿丸」

 

 

「え?戦記って何?」

 

 

「……」

 

 

 訂正しよう。どうやら徳寿丸は想像以上に童蒙であるらしい。

 二十一世紀でその辺を歩いている一般家庭の幼児ならまだしも、武家社会に生まれた子にしてはおバ……純粋過ぎる。その父義貞(新田左中将)や戦死済みの兄義顕(新田越後守)も幼かった頃はこんな感じだったのだろうか。

 見兼ねたのか、弧次郎が口を挟んできた。数年間、時行と潜伏生活していた筈にも関わらず、人並みの情報は取得済みのようだ。

 

 

「金ヶ崎城か……城内が深刻な食糧難に陥ったところ、師泰や貞宗たちが突入し、堪らず城方総大将の新田義顕(越後守)、それと親王様(尊良親王殿下)まで御自害召されたって聞いたぜ。だが、千寿丸の口振りからすると裏が有りそうだな……どうするよ?徳寿丸。捕まえて拷問するか?」

 

 

「待って、弧次郎君、生憎だけど、そこまでの時間的猶予はない。早くしないと敵軍(北朝)の男山包囲網の外部への警戒が強まって、春日卿との合流が難しくなる。くだらない時間稼ぎに付き合わないで」

 

 

「簡単な話じゃん。要はさ、六角を瞬殺して、兄上の武器を取り返せば良いんでしょ?弓矢は使わなくて良いよ。俺が決めるから」

 

 

「ッ!ちょっと、新田様!?」

 

 

「雫!俺が加勢する!手こずるなら他の皆も来てくれ!」

 

 

 雪崩を打つように戦いの火蓋が切って落とされる。北朝方は俺だけがただ一騎なのに対し、南朝方は坂東武者諸氏(新田・宇都宮・北条連合軍)が数千騎居る。

 まず迫り来る武将は新田徳寿丸だ。俺より五つ程度幼いものの、油断ならない獅子の片鱗を感じる。間違いなく友時(仲時遺児)より格上だ。

 

 

「うおりゃあああ!」

 

 

「甘い!」

 

 

 いの一番に徳寿丸は我が首元を狙い、刺又──後で聞いた噂話によれば、五尺雁股「新芽」という武器らしい──を差し出した。

 馬と馬のすれ違い様、この首を跳ね飛ばそうという魂胆だろう。

 恐らく乱戦の最中の不意撃ちなら喰らっていたかもしれないが、これではあまりに見え見え過ぎる。後続の弧次郎共々、簡単に対処出来よう。俺は一瞬の隙を見逃さず、戟を使って刺又の刃の付け根を引っ掻き、そのまま柄の石突の方で徳寿丸の身体を弧次郎の方へ弾き飛ばそうと試みる。これで一挙両得……かと思いきや違った。

 

 

「ッ!?フェイント!

 

 

「貰った!」

 

 

 柄で徳寿丸の身体に向けてスイングを仕掛けるも、ひょいと一回転して躱される。最初から徳寿丸は長物の振りの隙を突く気であったらしい。俺の一撃は反応だけで躱せるようなものでもない上に、徳寿丸本人の表情から考えても、単なるアドリブとは考え難い。

 徳寿丸の狙いは首元への噛み付きのようだ。そこで生まれた隙を自ら短刀の一突きで仕留めるつもりなのか、あるいは弧次郎に討たせるつもりなのか。どちらにせよ敵ながら自由で面白い発想だ。

 

 

「だが、まだまだ!」

 

 

「ガッ!」

 

 

「口を無防備に晒すと危ないぞ!」

 

 

 籠手の絡繰から手裏剣を取り出し、徳寿丸の口元へ投げ入れる。

 これだけの接近戦である。手首だけの動きで命中させられた。

 仮にも甲賀忍軍を作り上げんと志した身だ。配下の忍びたちに習得して貰いたい挙動は、俺自身が一通り出来るよう務めている。

 俺の動きを見て、敵軍に混ざっている少女が驚きの声を上げた。

 

 

「!?……あいつ、忍びの真似事も出来るのか!」

 

 

この時代に女忍者(くノ一)?そうか、元天狗衆。まぁ、良い。祢津どもが先だ

 

 

 思えば、祢津弧次郎と実際に刃を交えるのは腰越の戦い以来だ。

 あれから弧次郎は四ヶ月前の青野ヶ原合戦で長尾景忠を退ける程の猛将に成長したらしい。本来なら真正面から再戦したい。先月の鞍馬寺における長尾との稽古の時間を振り返ってみれば尚更だ。

 

 

「佐々木六角千寿丸!今度こそお前と決着を付ける!覚悟しろ!」

 

 

「無駄さ!ほら、友軍の若大将を治療しな!」

 

 

 急に口元に入った手裏剣の対処にあたふたし、血を吐き溢している徳寿丸は隙だらけだった。当初の目論見が今度こそ通用する。

 徳寿丸の身体が祢津弧次郎の元へ弾き飛ばされる。比較的軽いとはいえ、刀の峰で対処するのは厳しかろう。無論、刃は論外だ。

 手綱で馬の移動経路を少し横に変え、弧次郎は刀を持っていない方の手で徳寿丸をキャッチする。それこそが俺の狙いであった。

 

 

「でりゃああ!」

 

 

「グゥッ!」

 

 

「……ふぅん。腕力は俺の圧倒的勝ちの筈なんだが」

 

 

 流石に弧次郎は地力がある。柄の紐の絡繰込みなのは、岡崎五郎正宗による新たな刀の仕様だからこの際置くとして、片腕の刀で我が戟の刺突を受け止めた。しかし、ここまでは織り込み済みだ。

 そのまま力を込めて戟を振り下ろす。狙いは戟の側面の戈で弧次郎の馬に傷を与えてやる事だ。案の定、弧次郎の馬は暴れ始めた。

 

 

「あばよ!弧次郎!俺の勝ちだ!」

 

 

「なッ!待て!」

 

 

「待ちませーん!」

 

 

「……クソッ。本当に馬術が得手だな」

 

 

 弧次郎と戦ったまま、敵兵の集団に群がられては非常に厄介だ。

 決着を付けるのもそこそこに、俺は敵軍の元へ馬を走らせた。

 

 

「秕、頼む!黒血川のお返しをしてやれ!」

 

 

「承りました、弧次郎殿」

 

 

 今度は重装備の女武者が相手らしい。三ヶ月前の黒血川の戦いにおいて時行の護衛の一人に選ばれていた成人女性だ。確か天下の名匠の五郎正宗のところで下女奉公をしていたような覚えもある。

 そう言えば、青野ヶ原合戦で土岐頼遠の右腕的存在の長山頼元(三つ顎男)が敵の女武者に斬り付けられたという噂だが、さては秕とやらの仕業なのだろうか。だとすれば、正面戦闘は少し不利かもしれない。

 見たところ、あの重装備は如何にも継戦向きではないが、短時間限りなら無双の威力を発揮しそうだ。こう思っていた矢先、秕が先に仕掛けてくる。重装備の仕掛けの一つか、石を飛ばしたのだ。

 

 

「ヌルい!……良し!ならば、こうだ!」

 

 

「また懐剣投げ?ですが」

 

 

「そう言えば、それ。実は毒が塗られてたりして」

 

 

「え……?」

 

 

 嘘も戦場では極上の()()()()となるケースがある。先程、徳寿丸が手裏剣を口元に放り込まれたばかりの今、効果は覿面だった。

 秕のみならず、敵兵たちが皆一様に徳寿丸へ目を遣る。今この軍における徳寿丸(新田家次男)とはそれ程、貴重なのだ。知力が高ければ高い程、逆にこの()()()()が決まる。何故なのか。彼らが男山の春日軍と合流する上で、徳寿丸は戦略面で欠かせないピースとなるからだ。

 徳寿丸が居ると居ないで、その父親の新田義貞の援軍が北陸から畿内へやって来る可能性は大きく変わる。これは南朝の巻き返し如何に直結する要素である。つまり、徳寿丸こそキーマンなのだ。

 さぁ、キーマンが危ないかもしれないと知って、敵に生まれた隙を大いに利用しよう。尤も、毒なんて実際は塗られていないが。

 

 

「しまっ──」

 

 

「はい、もう一名突破。新田兵、若殿さまの治療は良いのかな?」

 

 

「「「!?」」」

 

 

「皆、騙されるな!見たところ、徳寿丸の口内に入った刃物に毒は塗られていない!それらしく見える油が塗られているだけだ!」

 

 

 どうやら敵方(北条軍)女忍者(くノ一)はいち早く見抜いたようだが、もう遅い。

 新田家の兵士たちの心に暗雲が立ち込めている。これを払うのは単なる叫びでは無理だ。俺は新田兵に狙いを定めた。宇都宮軍に突撃するより、生命の危機に晒されているかもしれない若いリーダーへの心配を各々抱えている新田軍の方が突破し易いからである。

 いよいよこれから馬を止めれば死に直結する局面だ。孤軍で敵兵の集団に突撃する上で、馬の突破力は一瞬たりとも欠かしてはならないものである。さぁ、趙雲のように敵軍の間を縦横無尽に駆け抜けよう。阿斗は居ないが、俺なら出来る。叫び声を張り上げた。

 

 

 

 

 

〜2〜

 

 

 

 

 

 盲点だった。よもやこの期に及んで、敵の忍び(くノ一)が鉄はうを使うとは思わなかった。確かに片瀬・辻堂の戦いで風間玄蕃が用いたのは覚えていたが、あれから三年が経ち、難しい戦を複数潜り抜けた北条党に使用可能な鉄はうが残っているとは、正直考え難かった。

 第一、風間玄蕃は開戦前に我が甲賀忍軍によって無力化されていたようで、実際その姿は未だ見えない。よくも元天狗衆(師直配下)であるという女忍者(くノ一)が、貴重で危険な鉄はうの所持を許されていたものだ。

 

 

「近寄るなや!薄汚い東国武士どもが!」

 

 

「無駄だ!落ちろ!」

 

 

「クッ!」

 

 

 忍び寄った敵の女忍者(くノ一)に反応し、手裏剣を投げて肩に命中させたのは良かったものの、鉄はうの爆破を許したのは、孤軍奮闘を試みていた今、痛恨のミスであった。かつての片瀬・辻堂の戦いの際と異なり、衆兵側(今回は南朝軍)が耳を澄ましていなかったのが、この局面で俺の仇になったのだ。音に驚き、馬の動きが僅かに止まってしまった。

 さて、ここで衆兵側の新田軍はどうか。確かに俺に蹴散らされようとしていた周囲の兵たちは動きを止めたものの、それより遠くの兵たちに支障は出ていなかった。結果、彼らは俺の方へ殺到した。

 

 

「徳寿丸様の御命に別状無き事は確認できた!今は北条軍の娘執事殿の言葉に従い、六角!お前を討ち取る!若いお前を討たなければならないのは心苦しいが、顕家卿の仇らしい故、悪く思うな!」

 

 

「この雑魚が……!千年早いわ!」

 

 

「「「うぉ!?」」」

 

 

 討たれるなら、せめて宇都宮公綱のような名将の手で死にたい。

 著しい体力の消耗に加え、矢継ぎ早に指示を飛ばしているらしい敵の軍師(御左口神)による的確な兵の配置を見て、もはや突破は難しいと悟っていた。一度に十数人を突破したところで、俺の向かう先の外周に兵を補充されてしまえば、キリがないのだ。女忍者(くノ一)の鉄はうさえ無ければ、話は別だっただろうが、こうなった以上は栓無き事だ。

 

 

「宇都宮のジジイ!居るんだろ!?出て来い!俺と勝負しろ!」

 

 

「黙れ!宇都宮様が出る幕は無い!ガキはさっさと寝んねしな!」

 

 

「ああ、それも永久に!」

 

 

「邪魔!」

 

 

「「ぎょわああ!」」

 

 

 最期が迫っているからこそ鼻息荒くし、俺は敵兵たちを破り続けている。宇都宮(ジジイ)はどこだ。坂東一の弓取りはどこに居るのだ。

 そう叫び続ける。さながら死地を求めて、俺は囲みを彷徨った。

 

 

「また会ったな!千寿丸、今度こそ!」

 

 

「お前じゃねぇよ!出直せ、祢津弧次郎!」

 

 

 武名こそ今や各地に轟き始めているが、そういう問題ではない。

 六角家当主(佐々木惣領)の首をくれてやるには身分が低過ぎる。古の六波羅探題で屈指の武将であった宇都宮公綱でなければ、割に合わない。

 俺は八つ当たりするかのように、再び弧次郎に戟を振り翳した。

 

 

「ギッ、何だ!?さっきまでより武力が桁違いに……!」

 

 

「弧次郎君、離れて!準備が出来た!四方八方から射殺する!」

 

 

「ッ……応!」

 

 

 どうにも敵の軍師(御左口神)は心意気というものを分かっていないらしい。

 少し名残惜しそうに弧次郎が退くと、他の雑兵たちも同様に俺と距離を取り始める。遠巻きにした上で、選りすぐりの弓上手たちによる囲いを作って、この俺を確実に仕留めようという腹だろう。

 彼らも時間が無い。さっき雫が言っていたように、過度に行軍再開が遅くなろうものなら、摂河泉の師直軍と男山の麓の桃井軍らによって挟み撃ちされる。彼らは全滅の危険を背負っているのだ。

 もう十分に遅滞は出来たか。心残りこそあれ、正直、顕家を射殺して佐々木城の因縁を晴らし、満足してしまった感は否めない。

 

 

「佐々木六角千寿丸。先の世への未練を置いて、この時代にここまで武力を磨き上げた研鑽は認める。だけど、今度こそ終わりだよ」

 

 

「ああ、悪魔め。こんな状況でなくば、確実に祓っていたものを」

 

 

「未来ではもう少し神妙にしててね……皆、渡した破魔矢を」

 

 

 ざっと見て、五十騎以上が黒い鏃の矢を俺に向けて構えている。

 防げるか。名刀「綱切」ならいざ知らず、この戟はまだまだ思う存分扱える域に至っておらず、一度に百近い矢は対処し切れまい。

 終わりだ。そう思っていると、囲みから一人の武将が進み出た。

 

 

──ギン

 

 

「宇都宮様……?」

 

 

「あの、お退がりを」

 

 

「ご子息よ。時信殿はお元気か?」

 

 

「?……恐らく。最近会っていないので分かりませんが」

 

 

 ボケても昔の記憶はあるのか。公綱は六波羅探題時代を覚えているらしい。一体どういう心積もりで、南朝軍に居るのだろうか。

 感慨深げに俺の言葉に頷くと、宇都宮公綱は馬首の踵を返した。

 誰もがその挙動に困惑する。人外である敵の軍師(御左口神)も同様だった。

 

 

「ッ……気を取り直して!駿河四郎さんの命で一斉に!」

 

 

「「「応!」」」

 

 

「いよいよか。辞世の句を残す暇も与えぬと」

 

 

 敵軍の矢が引き絞られる。俺は戟をその場に立てた。矢の雨に晒されて蜂の巣にされるくらいなら、自分自身で終止符を打とう。

 名刀「綱切」の写しを腰の鞘から引き抜き、首元に向け構えた。

 

 

「遠からん者は音に聞け、近くば寄って目にも見よ!我こそは佐々木氏宗家、六角家当主の近江三郎!千寿丸!今ここに死せん!」

 

 

「駿河四郎さん!どうせ嘘自害だから、構わず撃って!」

 

 

「は!……てェェェェ!!」

 

 

 長崎駿河四郎、既に亡き尊氏様の子(足利竹若丸)の仇の一族に違いない武将の声が、辺り一帯に響き渡る。引き絞られた矢が解放されるのだ。

 俺に向かって真っ直ぐ飛ぼうか。いや、決してそうはならない。

 何故なら射手たちが同時に絶命したからだ。北朝武士たちの正確な射撃によって。弧次郎や雫がハッと東を見ると同時に、急遽駆け付けた援軍を率いる武将が声を張り上げる。俺は目を輝かせた。

 

 

「千寿丸、無事かァァ!?」

 

 

「たかう……え、父上?」

 

 

北朝(持明院統)軍救援部隊先鋒!佐々木六角近江入道玄派!足利尊氏公の命により、精鋭千騎を率いて参った!見れば北条殿らしき姿はなく、御内人の残党、それに加えて新田家や宇都宮家の武将たちが居られるのみ!故に、この入道の参戦に支障無し!皆の者、掛かれェ!」

 

 

「「「うおおおおお!」」」

 

 

 確かに心のどこかで、いざとなれば尊氏様が駆け付けてくれるのではないかという期待があった。しかし、どうして自由に大権を行使できる尊氏様ではなく、隠居した(時信)が武将気取りで来るのか。

 困惑を胸に、刀を鞘に収め、俺は再び戟を取る。乱戦が始まろうとしている。まず狙うべきは長崎駿河四郎。さぁ、戦争再会だ。




歳を重ねるにつれ一年がどんどん短く感じていく今日この頃です。
アニメ二期開始までには楠木正行と戦わせたいですね。切実に。
もし義信(氏頼の長男)が生まれる段階(西暦1349年)まで行けたら、非常に快調です。私生活が忙しくなっているので、高望みのような気がかなりしますが。
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