崇永記   作:三寸法師

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▲8

〜1〜

 

 

 貞和四年(西暦1348年)正月中旬、室町幕府軍は先日(正月五日)の四條畷合戦に勝利して、なお意気盛んだ。師直軍が南朝本拠地・大和国吉野、師泰軍が楠木氏の本拠地・河内国東条を狙い、それぞれ進軍を再開したのだ。

 十四日、師泰軍が東条に入って南朝武将・岸和田助氏と交戦を開始した。同じ頃、師直軍はまず大和国最大の荘園・平田荘で腰を落ち着けようとしていた。吉野攻略に備え、軍を整え直すためだ。

 

 

師直(武蔵守)殿。平田荘に入った後も慎重に行軍を?」

 

 

「ああ。道誉(佐渡判官)殿、貴殿ならまずお分かりだろう?敵に勝ち筋があるとすれば、それは山間部の地略を活かした伏兵戦術。故に行軍速度を抑えてでも、十分に偵察せねばならん。それに吉野の帝がとっくに山奥へ逃げていても不思議はない。故に敵兵を捕らえ、尋問する時間を加味すれば、通常の機動力重視の戦法は望むべくもない」

 

 

「成る程……合点が参りました」

 

 

 今となっては十三年も前の中先代の乱では、師直(高武蔵守)を含め足利軍が小夜中山や箱根などを難なく越え、爆速行軍を実現させていた。

 しかし、この吉野攻略はどうだろうか。些か中先代の乱と様子が違っていたらしい。ただただ行軍速度が遅かった。本来の幾倍もの日数を掛け、師直(高武蔵守)たちは南朝の本拠地に向けて足を進めていた。

 

 

氏頼(大夫判官)にも理由を伝えておけ。どうせ苛々しているのだろう?」

 

 

「……宗家も頭はキレます。理由自体は既に察しておられるかと」

 

 

「ふん。あの癇癪持ちは、頭の奥底で理解していても感情を爆発させかねんからな。これで師泰軍の動きでも耳に入れて、俺に抗議されても困る。成長して幕府最強の個の武を誇るようになり、自尊心が益々膨れ上がっておる。連敗も果たして灸になったかどうか」

 

 

 吐き捨てるような師直(高武蔵守)の言葉を聞いて、道誉(佐渡判官)は目を丸くした。

 気になる点があったのである。勿論、惣領の氏頼(大夫判官)の性質については当然ながら、師直(高武蔵守)より同族の自身の方が詳しい自信があった。

 とはいえ、道誉(佐渡判官)としても、師直(高武蔵守)の語った佐々木六角氏頼(大夫判官)像について違を唱えようと思う点はない。問題は別のところにあるのだ。

 

 

師直(高武蔵守)殿……今、何と?師泰殿の軍勢で何かございましたか?」

 

 

「ん?……ほう。腹黒坊主の道誉(佐渡判官)殿なら既に諜者より知らされているやもしれんと思っていたが……そうか。ご存知なかったか。ま、貴殿も聞けば、氏頼(大夫判官)に黙っておかねばと思うだろうさ。必ずな」

 

 

(拙僧を試されたか……師直(高武蔵守)殿こそ正行(まさつら)を討って自信が漲っておられる様子だ。この分では、やはり弟殿(御舎弟殿)との衝突の日は遠からず)

 

 

 この頃、聡明な者たちは皆、今後の政局に思いを馳せていたに違いない。腹黒坊主の道誉(佐渡判官)は後の政争自慢だけあって尚更だろう。

 一方、師直(高武蔵守)はそんな道誉(佐渡判官)の腹の内に構わず、如何にも同じ婆娑羅武将の誼とばかりに語り出す。道誉(佐渡判官)の顔が急速に強張っていく。

 婆娑羅の仕掛け人という道誉(佐渡判官)の立場にしてみれば文字通りお茶目な笑い話に過ぎないが、惣領の氏頼(大夫判官)の心象を思えばそう呑気に言っていられなかった。なので、歯切れ悪く驚きの言葉を口にする。

 

 

「何と……それは確かに宗家が聞けば……」

 

 

(京の邸宅にしろ近江国の佐々木城にしろ、何の因果か宗家は古の聖徳太子と縁をお持ちだ。今し方師直(武蔵守)殿の申された件が宗家のお耳に入れば厄介だ。どこぞで溜飲を下げる機会を作っておかねば)

 

 

「だろう?八幡大菩薩の比でないにせよ、その辺に転げ回って一日中喚き散らしかねん。氏頼(大夫判官)は基本的にやる事なす事、我ら婆娑羅武将と大して変わらん癖して、妙なところで弟殿に劣らず潔癖だ」

 

 

 事の起こりは十三日である。師泰軍は東条攻め──楠木残党掃討作戦──を翌日に控え、大和川水系の石川沿いに南下していた。

 古典『太平記』によれば、師泰軍は作戦に際して近隣地域の掌握を図り、寺社領に至るまで例外を認めなかった。天王寺所有の荘園からも米を一粒残らず徴収したため、七百年以上に亘って一瞬たりとも途絶えなかった寺の灯明が名刹の威光諸共、消えたという。

 これだけでも中世の人々が最大の悪逆と見做し得るものらしい。

 しかし、師泰軍の悪行は留まるところを知らなかったようだ。

 

 

『父上。見たところ、この辺りの九輪は大半が赤銅製のようです』

 

 

『九輪か。そんなもののために赤銅を使うなんざ勿体無ェな』

 

 

『……どうせなら九輪を盗って湯の釜にでも』

 

 

『成る程な……それは名案だ、師世』

 

 

 師泰(高越後守)は九輪の一つをして湯の釜を作り、茶を飲んだ。まるで現代で言うところの中国福建省、そこの名茶の如き味がしたらしい。

 これを見て、東条討伐軍の兵たちは我も我もと和泉・河内国の寺から九輪を奪い、湯の釜を作ったのだという。ここだけを見れば、中世らしいユーモアという解釈も確かに成り立つかもしれない。

 

 

『おいおい、あいつら茶葉はどうする気なんだ?』

 

 

『父上。丁度まだまだ兵糧が欲しかったところです。もし正儀にも父親譲りの才能があれば、戦の長期化は不可避……茶葉ついでに、寺を焼いて分捕りましょう。まずは見せしめに適当なところを』

 

 

『……太子廟でも焼いてみるか。敵の拠点にされても面倒だしな』

 

 

 こうして師泰軍は更なる兵糧の必要を建前とし、叡福寺の太子廟を焼き討つ蛮行に出た。宝物を差し押さえ、今後の備えとした。

 その悪逆非道ぶりは計り知れないだろう。そも太子廟とは何か。

 聖徳太子とその母・穴穂部間人皇女、妃の膳部菩岐々美郎女が合わせて葬られているという、由緒正しき三骨一廟の墳墓である。

 太子廟燃ゆ。飛鳥時代の産物が、無情にも高一族の悪行伝説を彩る犠牲となっていく。高一族はかつての蘇我氏すら超える賊臣かもしれない。飛び散る無数の火の粉が、天下に警告を与えていた。

 

 

 

 

 

〜2〜

 

 

 

 

 

 吉野攻略を前にして、総大将の師直(高武蔵守)と腹黒策士・道誉(佐渡判官)の打ち合わせが続けられている。今は吉野より内部について懸案があった。

 東条攻略を狙う別働隊・師泰軍の太子廟焼き討ちについて武勇の誉れ高い氏頼(大夫判官)が知ったが最後、臍を曲げてしまうのではないか。

 氏頼(大夫判官)の憤りが軍に広まり、士気を下げるのではないかという懸念である。将軍烏帽子子の不満を宥められないとなれば、師直(高武蔵守)の指導力に対する疑念すら誘発させかねない。将軍執事の師直(高武蔵守)は、近未来の主力武将でもある氏頼(大夫判官)を監督しなければならない立場なのだ。

 

 

氏頼(大夫判官)は貴殿の一族の惣領にして、六角氏の当主だ。その六角という苗字、屋敷の所在が由来だったな?由緒も有るとか無いとか」

 

 

「は……ご存知の通り、我が京極に対して、宗家が六角を名乗っておられる訳は、屋敷の所在……とりわけ宗家の六角東洞院の屋敷はかつて平賀朝雅*1の邸宅だった場所……牧氏の変*2で幕府から佐々木一族に褒美として与えられた経緯がございます。極論を申せば、そこに住まわれるのは西国の源氏の王たる証。尊氏様が京に居られる限り、佐々木惣領の証左としての意味が精々でしょうが、宗家は()()に事の他、思い入れがあるかと。なればこそ今回の件は──」

 

 

氏頼(大夫判官)の癪に障るか……馬鹿馬鹿しい」

 

 

 京の六角という地名は「鳴くよウグイス」より遥か前、聖徳太子の生きた時代にまで由緒を遡らなければなるまい。かつて聖徳太子が開基したとされる紫雲寺頂宝寺、通称・六角堂が起源なのだ。

 南北朝時代でも六角堂は人々の信仰を集め、公家が頻繁に通い詰めていた旨も日記から確認できる。六角邸(氏頼の屋敷)はその目と鼻の先だ。

 だからこそ氏頼(大夫判官)が聖徳太子に親近感を抱いていても、何ら不思議はない。これが道誉(佐渡判官)師直(高武蔵守)の共通認識だ。故に、師泰(高越後守)の太子廟焼き討ちの件を氏頼(大夫判官)が知ってしまえば、暴走リスクが否めないとも。

 

 

「そもそも彼奴は何だ。関東で弟殿が北条氏の目を盗んでせっせと源氏復活の妥当性を新田たちに吹き込んでいた事、西国暮らしの身で知っていた訳でもあるまいに、自発的に源氏の正統性を唱えて、六波羅攻略を目論む足利首脳陣に接触してきた。弟殿がどこか氏頼(大夫判官)を贔屓目に見ているのはそのせいだろうが……あれか?佐々木大明神の化身であるからにして先を見通していたとでもいうのか?」

 

 

「先を見通すといえば、かの諏訪明神ですが……確かに宗家も時折そのような気配を漏らす事が……尤も、宇多源氏の血を拙僧と比較にならない程、誇っておられるのは確かでしょう。あの御方は幼き頃より帰属意識に飢えているところが……だからこそ、御自分の生まれも近江国守護の地位も将軍の烏帽子子たる事もたいそう誇りに思われるのです。並大抵の権力者とは少し毛色が違いましょう」

 

 

「……ふん。それで婆娑羅とは笑えるな」

 

 

「思うに世間から宗家が我ら婆娑羅大名の同類と見做される事は以後も無いでしょう。延暦寺や興福寺は兎も角……宗家が我らと同じ振る舞いを致そうとも、世間は道理に基づいての行いだと思い込むに違いなく……ただ、拙僧に言わせれば、宗家は婆娑羅者です」

 

 

「ほう。娘がぞんざいに扱われている事、心憎く思っておろうに」

 

 

「……左様な事は。神力豊富な魅摩を飼い慣らすための宗家なりのお心配りと理解しております。どうして分家の拙僧が不満など」

 

 

(相変わらず意図が読めん。賢い者ほど、その黒い面を見て疑心暗鬼に駆られそうになる。だが、実は意外と然程でもない。四條畷で巧妙に軍功上位を勝ち取ったが、武力はやはり氏頼(大夫判官)に劣る。どこかでボロを出させてみるか。どうせ道誉は直義と相容れないのだ)

 

 

 明らかな虚勢に師直(高武蔵守)は白々しい思いだった。道誉(佐渡判官)は腹黒策士である事を自覚し、敢えて下手な芝居を打っているようだったのだ。

 道誉(佐渡判官)は将軍・足利尊氏の友人である。将軍執事の師直(高武蔵守)としても京の権力争いを制するため、腹黒坊主の道誉(佐渡判官)の力が不可欠だ。中先代の乱の最中より、自身を接待する道誉(佐渡判官)の姿勢を気に入っている。

 

 

「俺がその魅摩とやらを差し出せと言えば貴殿はどうされる?」

 

 

「おや。師直(武蔵守)殿と宗家を選べ。こう申されますか?」

 

 

「質問に質問で返してくれるな。で、どうされる?」

 

 

 互いに冗談だと承知している。ただ、二人の心象は全く異なる。

 大型ペットが家猫か何かに戯れ付くようなものだ。師直(高武蔵守)はただ揶揄っているだけのつもりでも、道誉(佐渡判官)としては気が気でなかった。

 この期に及んで出産の経験のない魅摩は、人妻としての魅力を欠いている。もはや行き遅れの未婚の女に等しいだろう。師直(高武蔵守)が好むような姿形をしている訳でもない。しかし、世にも珍しい神力持ちである。佐々木氏内部の不和解消の象徴ではなく、実験道具として魅摩が利用されるのではないか。その可能性に思い至ったのだ。

 

 

(ここは……神力に話が及ばぬように答えておくか)

 

 

「あまりお勧めできませんなァ。今の宗家に魅摩への愛想は欠片も無くとも、ただただ御自分が恥を掻かされたと思って憤慨する可能性はございましょうぞ。宗家は塩冶より苛烈……拙僧や師直殿が無事でも、魅摩の首を獲って我らの前で床に投げつけかねません」

 

 

(よくそれで氏頼(大夫判官)に娘を遣ろうと思ったものだ。余程大きな企みが)

 

 

「そうか……無論、仮の話だ。安心されよ。俺とて氏頼(大夫判官)が直義派に戻る切っ掛けを作りたくはない。外様で武勇なら六角氏頼、総合力は土岐頼康だ。それと信濃国の小笠原政長を合わせて、我が派閥のための巨大な帯とせねばならん……それと悪いが、貴殿の娘たちは我が好みではない。知っての通り、俺が好むのは真に高貴な産まれの京女だ。艶やかな黒い長髪と産める腰付き、優雅な佇まいが揃わねば美女と申せまい……顔世が死んだ事、今でも惜しく思うぞ」

 

 

 結局のところ、名門は名門でも武家は武家である。京極佐々木家の娘でさえ、皇女や貴族の妻女らにどうしても見劣りするのだ。

 男については武力重視の師直(高武蔵守)と言えど、女についてはブランド重視だった。塩冶高貞の妻・顔世御前など美貌や教養は勿論、皇室の血脈を引いていた。死を惜しむ師直(高武蔵守)の気持ちに偽りは無かった。

 是が非でも自分のものにしたかったと合理主義の身で思うのだ。

 古典『太平記』で「宮巡り」を揶揄される男独特の(さが)である。

 

 

「人妻と言えば……先日、噂を耳にしましたぞ」

 

 

「……噂だと?」

 

 

「は。どうも正行(まさつら)の想い人を師直(武蔵守)殿が狙っておられるとか」

 

 

「些か誇張もあるが……大体は正解だ。氏頼(大夫判官)はこの事──」

 

 

「まだ宗家のお耳に入れないよう黒田殿や郎党たちにキツく言ってございます。ただ……細川家の元氏(清氏)殿や頼之(弥九郎)殿など他家の若手の口から聞かぬとも限りますまい。師直(武蔵守)殿が箝口令を敷いても、愚直が過ぎる元氏(清氏)殿など……会えば必ず漏らしてしまうでしょうなァ」

 

 

(氏頼(大夫判官)はきっと今も心のどこかで塩冶夫妻について含みがあるに違いない。かれこれ十数年間、陣営を違えども、氏頼(大夫判官)正行(まさつら)は幼馴染だった間柄。この師直(武蔵守)が、正行(まさつら)の妻になるやもしれなかった女を欲していると知れば……あの繊細男は要らぬ義憤を起こしかねん)

 

 

「……厄介な。師泰のところから秘密兵器でも借りるか。安保や薬師寺たちだけで氏頼(大夫判官)の癇癪を抑えられるとは思えん。丁度、向こうに紀伊国から畠山軍が加わる頃合いだ。その穴も心配無かろう」

 

 

 紀伊国守護・畠山国清(阿波守)は近頃の楠木軍との戦で目立った活躍が無かったが、師世と同じで実力を隠しているものと将軍執事の師直(高武蔵守)は踏んでいた。真の実力は関東執事の上杉憲顕(民部大輔)すら軽く凌駕する。

 ところで、厄介な事は立て続けに起こるものと相場が決まっているものである。将軍執事・師直(高武蔵守)でも、その道理は例外ではない。

 

 

「報告!北より兵五百騎が多くの荷駄を携え、南下中です!」

 

 

「何……北畠顕能の南朝軍、ではあるまいな?」

 

 

「いえ!旗の紋は四つ目結!六角軍の一部かと思われます!」

 

 

「「?」」

 

 

 六角家当主の氏頼(大夫判官)は現在、分家の京極軍の帷幕で過ごしている。

 四條畷の終戦後、師直(高武蔵守)が本人に伝えた通り、師冬(高播磨守)の陣屋を離れて同族の道誉(佐渡判官)の陣屋に移ったのだ。尤も、やはり気が進まないのか、魅摩との関係修復について取り組む様子が微塵も見られないのは相変わらずである。この氏頼(大夫判官)の行動自体は、師直(高武蔵守)も予想していた。

 自分の感情に(たが)う事ならば命令違反も已むなしという氏頼(大夫判官)の三つ子の魂何とやらな性質は、完璧執事として織り込み済みなのだ。

 しかし、六角軍の南下は寝耳に水だ。師直(大夫判官)道誉(佐渡判官)も耳を疑った。

 

 

「まさか……宗家が勝手に。いや、やはり……」

 

 

「……良いのか?六角家の連中とて、俺が派閥結束のために貴殿の娘との間柄を何とかするよう命じたと知れば、黙ってはおるまい。ましてやその裏に貴殿の要請があったと分かれば……氏頼(大夫判官)にどこか適当に捕まえた南朝貴族の娘を献じようと企むかも分からんぞ」

 

 

「いえ、それをやれば宗家が激怒して女を惨殺。見せしめに郎党の誰かを選んで処罰する程度、見通しているでしょう。六角党は我が京極家と違って、完全なる持ち駒なのですから、その命運は尊氏殿に何ら憚る事なく、宗家の思いのまま。ただ別の事が心配です」

 

 

「別の事?」

 

 

「これが(直義)殿の命令に基づいて居たなら……という話です」

 

 

「……そういう事か。この俺に南北和睦の交渉をさせようと」

 

 

(どうせ荷駄など交渉期間のための兵糧補填だろう。弟め、余計な真似をしてくれる。南朝殲滅は事後報告にするつもりが厄介な事になった。尊氏様が体面を気にして日和ってしまえば全て水の泡だ)

 

 

 生真面目の過ぎる副将軍・直義の顔が、師直(高武蔵守)道誉(佐渡判官)という婆娑羅大名たちの脳裏で思い浮かぶ。もしかすると吉野攻略を前に余計な差し金があるのではないか。そして、その予想は当たっていた。

 平田荘に到着の十五日以降、師直(高武蔵守)は和睦交渉のために幾日かを無駄にせざるを得なくなる。この間も吉野周辺の網張りに時間を費やす事が出来たとはいえ、師直(高武蔵守)にしてみれば余計なお世話だった。

 二十四日、師直(高武蔵守)は飛鳥宮跡近くの橘寺に移動する。同日、幕府軍先鋒隊が南朝首都・吉野に乗り込み、北朝初の快挙を達成した。

*1
源頼朝の猶子。北条時政の娘婿でもあった。その讒言が平姓畠山氏の破滅を招いた。時政夫妻に一時、新たな将軍候補と目される。

*2
畠山重忠の乱が終わり、時政夫妻と義時・政子の関係が悪化。鎌倉幕府三代将軍・源実朝の身の安全が危ぶまれる事態となった結果、時政夫妻は幽閉され、娘婿の平賀朝雅は在京御家人たちによって追討された。




以下ネタバレ注意!
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原作について。南朝武将の集合コマに楠木氏が誰も居なかった事で「あ……」となりました。そりゃあ戦前と繋がる一族ですもの。
本来、南朝軍で最も意地や誇りを見せたのは楠木正行だと思うんですがね。心の底から残念。歯痒いなんてものじゃありませんね。
加えて正儀。九州の懐良を除けば、ほぼ唯一善戦したと言える筈の正儀があんな行動に出る(いつの日か扱う予定)んだから、南朝の腐敗ぶりが分かるってもんです。正直、宗良も義宗もその後は……義興は兎も角。この作品では義詮の将軍就任以降、守護大名たちの内紛に焦点を当てていく予定です。『太平記』のアウトラインを踏まえつつ、同記述外の康暦の政変も見据えていきます。氏頼(大夫判官)の負の遺産がキーポイント。
この先も執筆スタンスは変わりません。その気になれば腰を落ち着けてじっくり扱える環境がある以上、原作よりも古典や史料を反映させるケースは、少なからず生まれます。武将や南朝公卿などのネガティブな面も描写していきます。ここまで読み進めてくださった方は再三の話ですから重々承知でしょうが、この機会に改めて。
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