崇永記   作:三寸法師

22 / 201
◆6

〜1〜

 

 

 遠江国橋本。第一の砦に対する討伐軍先鋒部隊は圧倒的な強さで名越軍が守る砦を陥落させた。今や完全勝利(パーフェクトゲーム)は目前である。

 恐らく足利尊氏こそ源氏総大将であることを天下に広く明らかにするため、宇多源氏佐々木氏惣領たる六角家当主として与えられたのであろう中軍大将の座にある俺は一息吐いた。

 

 

「存外、あっけなかったな」

 

 

「……ああ」

 

 

 流石に師直は足利家執事と言うだけある。伊達に精強な足利一門を統括しておらず、本人もまた相当な勇猛さを持っている。

 統率力についても同様であり、まるで狼が兎を狩るかのように名越軍を蹴散らした。最早、砦の守備兵は散り散りである。

 

 

「皆の衆!敵の残党が押し寄せて来るぞ!必ず刈り取れ!一人残らず討ち取るのだ!」

 

 

「「「応ッ!」」」

 

 

「弓構え……放て!」

 

 

 砦を守っていた残兵たちを殲滅するべく、中軍大将を務める俺は精鋭部隊を連れ、夜を徹しての砦を避けた迂回によって街道沿いに伏せ、第二の砦に逃れようとする名越兵の行方を遮っている。

 戦の経験こそ大して積んでいないが、俺の側には北条軍相手に采配を振るった孫二郎が居る。不手際があれば、直ぐに指摘して貰う算段になっている。

 

 

「千寿丸、少し早いが、相手は逃亡兵だ。弓矢を使った威嚇はそろそろ終わりにしよう。初戦で使い過ぎると後に響く」

 

 

「ああ……重頼、源五と木村に伝えさせろ!敵を討てと!」

 

 

「はっ!」

 

 

 既に別の場所に伏せた高経軍と京極軍が残党狩りに従事しているという報告が入って来ている。今後のために六角軍もそれなりに強いというところを示さなければならないだろう。

 

 

「孫二郎、次の小夜中山の砦では俺たちが主体となって攻めることになっている。どうだ?この軍で戦えそうか?」

 

 

「十分……と言いたいところだが、小夜中山には先鋒大将の名越高邦が居る。そう簡単には行かないだろう」

 

 

「確かに」

 

 

 かつて洛中にある神泉苑で、北条に反旗を翻した足利軍と干戈を交えた名越高邦は、決して知らない仲ではない。

 当時は今は亡き佐々木清高や小田時知といった有力御家人が副将として高邦をサポートしていたとはいえ、果敢にも優勢に持ち込んで足利軍の武将を何人か討ち取る戦果を挙げた。

 

 

 味方の軍が赤松軍に崩された煽りを受けた上、一時休息を取った足利軍の巻き返しを受け、行方不明になってから早二年。

 当時から貴公子然としていた高邦は、敗戦後どこぞに身を潜めている間、あるいは宗家嫡男の時行以上の負けん気で己を鍛え続けていたことだろう。

 

 

「だが、孫二郎。何やら大仏殿崩壊で名越は五百もの死傷者を出したと聞く。今の名越軍が果たしてどれだけの力を出せるものか」

 

 

「千寿丸。頼重は名越軍を襲った惨事を知っても先鋒を変えることはしなかった。言い換えれば、良将の大半を失った状態であっても名越軍には先鋒足り得る力があると言うことだ」

 

 

「……それは然り」

 

 

 たとえ最後は足利軍に敗れる運命にあるとしても、諏訪頼重は小笠原貞宗を撃破した上、二年前に新田義貞に一蹴された北条泰家と協力し、時行に足利直義を追い払わせた実力者である。

 結局は信濃の神官に過ぎないとはいえ、大事な決戦にあたって人事を誤るような人物であるとは思えない。

 

 

「とはいえ、高邦も良く受けたものだな。複数の砦でこちらの兵力を削ぎ落とす気らしいが、はかなくなるのが目に見えている。得宗家を敵視していた名越一族がやることとは思えん」

 

 

「足利の裏切りによる先代当主高家の死で、名越は足利を恨んでいるだろうからな。北条再興の軍の先鋒としての名誉を得て足利と戦えるとなれば、喜んで受けるだろうさ」

 

 

「まー、そんなものか。なら最期は武士らしく散らせてやろう」

 

 

 復讐心を原動力にして鍛えた名越高邦が、今は一体どんな面をしているのやら。一人の武士として興味があった。

 

 

「余裕そうだな、千寿丸」

 

 

「今はな。だが、心配なのは名越を破った後のことだ。箱根の三浦と鎌倉の北条本軍は万全の状態。はっきり言って不安だ」

 

 

「尊氏様が普通にやって勝てると言うなら実際そうなるよ。それとも千寿丸。やはり自分の策の方が良かったとでも言うつもりか?」

 

 

「いいや。そんな戯言言う筈ないだろ。まして尊氏様は俺を中軍大将に任じて下さったのに。そりゃ策には自信あったけどさ」

 

 

「ほー。自信があったのか。僕はあの策、北条本軍が留守にした鎌倉に奇襲を掛けるとこまでは良いとしても、占領が上手くいくのか疑問だったがな」

 

 

「……行けると思ったんだがなぁ」

 

 

 心にもない愚痴を溢しながら前方を見遣ると、名越の兵一人一人が六角に仕える武士たちに殺されていた。

 前世であれば直接お目にかかれない光景をしみじみ感慨深く眺めていると、肩を竦めた孫二郎が再び話しかけて来た。

 

 

「そろそろ仕上げだな。千寿丸、お前の力を示す時が来たぞ」

 

 

「……この時をどれ程待ち侘びていたことか。行ってくる。馬淵、留守は任せる。何かあれば、孫二郎と相談して決めてくれ」

 

 

「御意」

 

 

「美濃部、武器を」

 

 

「ここに」

 

 

 天下一の刀匠とされる正宗の弟子である同族の者が拵えた薙刀を持ち、本陣に詰めていた兵の半数を連れて前線へ出る。

 逃亡兵と言えば弱そうだが、実際のところは手負の獣だ。油断は出来ない。しかし、疲弊した名越兵を撃てなければ、諏訪神党を討つことなど夢のまた夢だろう。

 

 

「ふんむ!」

 

 

「グハッ……」

 

 

 捨て身で突っ込んで来る敵の身体を薙刀で半分ほど切り裂いた俺は梃子の要領で柄を操り、続けて逃げようとする残兵たちの前に掲げた。凄惨な絵面に他の敵どもは怯んで足を止めた。

 敵の武士の傷口から溢れ出てくる血によって俺の腕や着ている鎧は赤く濡れてしまう。不潔かつ不衛生極まりないが、戦場においてそのようなことで躊躇する訳には行かない。

 

 

「改めて全軍に命じる!殲滅せよ!」

 

 

「「「応ッッッ!!!」」」

 

 

 橋本に詰めていた守備兵たちは討伐軍の挟撃策によって悉く根切りにされた。師直の目論見通り、第二の砦に危急を知らせる残兵が一人も残らないほどの完全勝利で初戦は幕を下ろした。

 

 

 

 

 

〜2〜

 

 

 

 

 

 掛川で一泊した討伐軍は十二日、敵軍先鋒大将の名越高邦が籠る西行法師ゆかりの小夜中山に位置する砦を視界に捉えた。

 

 

「殿。高軍より矢文です」

 

 

「ああ。苦労」

 

 

 敵軍の斥候への警戒故に調理の火による煙が出るのを防ぐため、事前に準備した鰹節もどき入りの握り飯を食べることしか出来なかったが、かと言って戦の前に食べ過ぎるのも良く無い。

 戦場は運動会や体育祭などとはまるで趣が異なる。験担ぎの豚カツが食べられるなら是非とも食べたいが、今となっては叶わぬ夢である。諦めるより他はないだろう。

 

 

「孫二郎。高、今川ら各隊動き出したそうだ」

 

 

「……では、始めるか」

 

 

「ああ。美濃部、旗寄越せ」

 

 

「はっ。ここに」

 

 

 この中先代の乱における緒戦においては敵への不意打ちを繰り返し、各個撃破していくことが肝要だ。狼煙でも腰の笛でもなく、旗を使って友軍との連絡を取らなければならない。

 佐々木一族の家紋として知られる四つ目結が白い大布に良く映えた旗を持ち、俺は生い茂った木々の中から開けた場所に出た。

 二度、三度振ると歓声と共に味方の軍から六角と同じ四つ目結の軍勢が砦に向かって襲い掛かった。道誉率いる京極軍である。

 

 

「我らも行くぞ!青地!」

 

 

「はっ!青地衆、京極勢に遅れを取るな!進めぇ!」

 

 

 青地から始まり続々と六角家に仕える武士たちが敵を討つべく出陣して行く。いよいよ俺も戦闘に臨むこととなる。

 

 

「主君が敵に寝返りを打診されていた件で、一体どうなることかと不安視していたが、杞憂だったようだな」

 

 

「ああ。伯父上や馬淵のお陰だ。陣中が然程動揺せずに済んだのは」

 

 

「……そうか。此度も前線に出るのか?」

 

 

「ああ。孫二郎はここで待っていてくれ。日が暮れる前には敵の首級を拝ませてやる」

 

 

「言っておくが、初陣より二度目の戦の方が危険だ。調子に乗って落命し易い。危なっかしいから、暫くはここで見物していろ」

 

 

「……分かった」

 

 

 馬に乗ったまま、戦の趨勢を観察する。戦見物だけならそれなりにして来ただけあって、味方の優勢が手に取るように分かった。

 やはり名越軍は例の大仏殿崩壊で有能な武将たちを多く失ったことが響いているのだろうか。俺や道誉のような佐々木勢や高経率いる足利軍にかなり苦戦している様子である。

 

 

「こりゃ一刻もせずに落ちるな。勝負になってない」

 

 

「結局、名越は数頼みで出陣して来たって訳か。おまけに頼みの数も四つの砦に分けたせいで形無しだ」

 

 

「ああ。千寿丸、頃合い良しだ」

 

 

「……承知した。目賀田、平井!参るぞ!」

 

 

「「応っ!!」」

 

 

 大太刀を抜き取り号令を発した俺は目賀田や平井といった将と共に歩兵や騎兵が混じった精鋭部隊を率いて動き出す。

 突貫工事で築かれたという名越軍の砦は既に半分近くが味方の勢力によって侵食されているようである。

 

 

 味方の軍は攻勢を強めて行く。一方、飛んでくる矢や石はまばらで弱々しく、足止めとしての効果はまるでない。

 てっきりこの手の防御を突破するのはバトミントンのような各種スポーツより遥かに難しいのではないかと思っていたが、弱った敵が見せる現実に嫌でも拍子抜けさせられた。

 

 

「弓を持て」

 

 

「はっ!」

 

 

 最前線では鎌倉の気風を色濃く受け継いだ武士たちが思い思いの敵を相手に取っ組み合いを繰り広げている。

 ある者が敵の首を刎ねようとしている傍らで、別の者が敵の武士と互いの命を懸けて激しい鍔迫り合いをしている。

 また、別の所では馬に乗る敵を狙って複数の味方の歩兵が薙刀を突き出したが、刀を使った払いであしらわれていた。

 名のある敵ではないかと思った俺は、後ろの装備から弓を取り出し、背中の矢筒から敵を射るための矢を取り出した。

 

 

「はっ!」

 

 

「うぉっ……ぐはっ!」

 

 

 少し照準が狂ってしまったが、馬上の敵の腕に矢が深々と突き刺さる。痛みで悶絶しているところを味方の歩兵が引き摺り下ろし、小刀で喉を掻き切った。

 本当は眉間を射抜いてやろうと思っていたのだが、これはこれで悪くない。次は誰に狙いを定めようかと辺りを見渡した。

 

 

「あの距離まで届くとは」

 

 

「小笠原殿に師事されてから殿の弓は大きく進歩なさった。今後戦の経験を積めば、西国随一の弓使いも夢ではあるまい」

 

 

「当代で西国一というと筑前守顕信殿か」

 

 

「強弓に関してはな。彼の方も傍流とはいえ、佐々木一族に連なる御仁だ。いずれ殿に引き合わせたいものよ」

 

 

 後ろで家臣たちが織り成す話し声を他所に、このまま一気に進むのも悪くないと考えた俺は大きく息を吸い込んだ。

 

 

「皆の者!この俺に続け!ただ目の前の敵を討ち取ることのみを考えよ!敵の伏兵は気にするな!別部隊が片付ける!」

 

 

「「「応ッッッ!!!」」」

 

 

 騎馬武者たちが各々の獲物を使って柵を破壊し、目賀田や平井率いる武士たちが敵兵の群れに切れ込みを入れる。

 そこへ俺に続かんとする歩兵たちが雪崩れ込み、敵は次々と突貫工事で作られた防御施設を失って行く。

 

 

 そして、砦の陥落まで残り半刻だろうかというところで敵部隊が自棄になったのか此方に向けて突撃して来た。

 すぐさま迎撃を命じると、伊庭や目賀田らが必死の抵抗を抑え込むべく武器を振るう。しかし、彼らの動きは一人の武将の凛とした声によって一時止まった。

 

 

「我こそは北条軍先鋒大将名越高邦なり!そなたたちは六角近江三郎殿の軍とお見受けする!」

 

 

 明らかに若い。否、幼い声だ。年齢は俺や時行とそれ程変わらない筈である。貴公子然とした風格を持つ少年武将が槍を高々と掲げて俺の名を叫んでいた。

 即座に俺は射殺を検討したが、この時代において堂々とした敵の振る舞いを無碍にすることは家名に泥を塗る恐れがある。

 また、北条軍の先鋒大将が俺の名を持ち出したことで、六角軍の将兵たちは少なからず動揺した様子である。これを収めるには、高邦の言葉に応えるしかないだろう。

 

 

「いかにも!我こそは寛平法皇が御孫にして御堂関白藤原道長公の舅であられた源雅信公の御孫、近衛中将成頼公を祖とする佐々木氏が宗家当主!佐々木六角近江三郎なり!」

 

 

「……私のことなど覚えていないか。ならば此方も改めて名乗るとしよう!我こそは鎌倉幕府二代執権北条義時公が次男朝時を祖とする名越流北条氏当主!名越式部大夫高邦である!」

 

 

「ああ、知ってる。二年ぶりであるか、高邦よ。それにしてもいつの間に式部大夫に任じられた?確かお前は左近将監だった筈だが?ああっ!さては自称か!」

 

 

「ぐっ……千寿丸!私のことを覚えていたのなら、早くそう言わないか!どうにも決まりが悪いだろう!」

 

 

「ああ、今のお前に皆の視線は釘付けだ」

 

 

 敵だからと仕掛けた口撃の影響もあり、遠江国の戦場に集った両軍の武士たちの注目が二人の少年武将、つまりは俺と高邦に集まっている。この間にも師直らが準備を整えているとも知らずに。

 改めて考えると槍使いとは珍しい。名越には俺と時行の繋がりを知られていないようであることに少しだけ安堵した俺は、命のやり取りをする戦場にありながら、酔狂な考えに取り憑かれた。

 

 

「美濃部、我が紅蓮槍をこれに」

 

 

「はっ!」

 

 

「千寿丸、お前も槍を使うのか。しかも変わり種の槍とは」

 

 

「嗜むだけだ。だが、貴様にはこれで十分だろう」

 

 

「……後悔するぞ」

 

 

「ならばさせてみろ!」

 

 

 誰に命じられるでもなく、俺と高邦は槍を握った腕を掲げる。

 そのまま馬の手綱を激しく動かし、一気呵成に距離を縮めた。

 

 

「ふぅぅんっ!」

 

 

「はっ!」

 

 

 複数あるかのように錯覚させられる残像を作り出すほど勢い良く繰り出された名越の槍に対し、俺は残像ごと纏めて叩き付けるかのように槍を振り下ろした。

 すれ違うと両者とも勢いを緩め、馬首を返した。まだ決着が着いていないことを互いに知っているのだ。

 

 

「ぐっ……その槍、ただの槍ではないな?」

 

 

「まさしく。槍身に付いた蓮の花の如き幾重もの鉤爪こそ、この紅蓮槍の醍醐味であることよ」

 

 

「それがお前の使う元寇よりの流れに拠る新時代の武器か。これは手強そうだ。だがっ!」

 

 

「無駄だ!」

 

 

 潜伏期間中に錬磨したであろう名越の突きは執拗なまでに俺に襲い掛かる。しかし、俺は全て見切って悉く遇らう。

 一連の攻防を繰り返すかのように何十合と打ち合うと、互いに少しずつ肩で呼吸し始めた。とはいえ、疲労の色は高邦の方が大分濃厚であることは明らかだった。

 

 

「所詮そなたの武は形ばかりで見掛け倒しだ。かつて北条は幾多の御家人を葬ったが、それらは純粋な武の力ではなく謀略による産物に過ぎない。源氏の血を引く俺に決して敵うものか」

 

 

「随分と好き放題言ってくれるな。しかし、謀略か」

 

 

 酸素を求めて絶え間なく息を吸ったり吐いたりする高邦は爽やかさを保ちながらも、せせら笑うかのように口元を歪ませた。

 

 

「千寿丸。我ら北条を謀略のみの一族と思うのなら、それは大きな誤りだ。確かに時政公は比企能員ら多くの政敵を滅ぼし、義時公は多くの血と怨念を生み出した。しかし、太郎泰時公は──」

 

 

「名越の当主が泰時公について語るか!笑止千万!」

 

 

 北条泰時は偉大だ。先代の時代では力の限り北条の味方をしていた将兵たちの前でこれ以上名越に語らせれば、良心の呵責に襲われる者が出かねないと判断した俺は強引に会話を打ち切った。

 馬を寄せて高邦に再度槍合わせを仕掛ける。今度は加減抜きの波状攻撃だ。思うように突きを出せない名越は防戦もままならず、次第に体勢が不安定になっていく。

 前世より遥かに研ぎ澄まされた武の嗅覚を持つ俺は一瞬の隙を見逃すことなく、石突で高邦の馬の尻を叩いた。

 

 

「なっ!?これは!?」

 

 

「はあっ!」

 

 

 馬の鞍に手を掛け、飛び上がって一回転した俺は暴れ出した名越の馬の身体を今度は紅蓮槍の鉤爪で傷付ける。

 案の定、主人である高邦の必死の呼び掛け虚しく、完全に制御不能に陥った名越の馬はあらぬ方向へと駆け出した。

 

 

「今だ!皆の者、名越が背を見せたぞ!追って討ち取れ!」

 

 

「「「応ッ!!!」」」

 

 

「いかん!名越様を守れ!」

 

 

「遅ぇよ!」

 

 

 名越の副将と思わしき武士を背後から突き刺す。貫いた槍を抉るように引き抜くと、脱力したのか敵は何かを呟いた後、あっけなく落馬して息を引き取った。

 

 

 名越の現当主である高邦を討ち取って残る名越軍の者たちを敵討ちに燃える死兵にせしめるより、高邦ごと名越軍の思考力を奪い去るべきだという俺の考えは、見事に嵌った。

 大混乱に陥った名越軍は面白いほど崩れ行く。程なくして複数のネームドの敵将を討ち取ったあるいは戦意を喪失した敵将が降伏したという報せが次々と舞い込んで来た。

 

 

 若くして北条軍先鋒大将に任じられた名越高邦が、師直に遭遇してあっさり討ち取られた。山中道俊の配下からその報告を聞かされたのは掃討開始より四半刻程のことだった。




 元々の六角氏頼としてのポテンシャルに加え、原作における徳寿丸の活躍のお陰で割と遠慮なく書けるようになりました。
 その代わり、第参章以降で登場する予定の徳寿丸の兄貴の強さがかなりヤバいことになりそうな予感。

ー追記ー
 誤字報告感謝です!
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