崇永記   作:三寸法師

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▲3

〜1〜

 

 

 厳島における三日間もの参籠を終え、足利軍の船団は持明院統の院宣を得て、意気揚々と瀬戸内海を東に進む。そして、五月五日、備後国の鞆の浦に到着し、同地で一週間以上の時を過ごした。

 山陰並び山陽地方西部の足利方の武士たちを接収したのである。

 

 

「塩冶判官。六千騎を率い、只今到着致しました」

 

 

「よくぞ来られた。塩冶殿」

 

 

「ここ三ヶ月の貴殿の本国でのお働き、兄上もよくご承知だ」

 

 

尊氏様(鎌倉殿)直義殿(御舎弟殿)。滅相もございません」

 

 

 佐々木一族の有力大名で、箱根竹下合戦を機に足利方へ転じていた二ヶ国守護(出雲国&隠岐国)の塩冶高貞は宮方有力となった二月以降の数ヶ月間、決して元鞘に戻ることなく、本国で勢力の補充に務めていた。

 中国地方の諸勢力の他、四国の軍勢までも既に吸収していた足利軍は催促状を送るまでもなく、雪だるま式に兵力を拡充した。

 各種準備が整いつつあったある日の朝、執事の師直が稀代の腹黒坊主の道誉を伴い、どこか上機嫌の尊氏の朝食に立ち会った。

 

 

「殿。何やら今日にも赤松家より申し出があるそうで」

 

 

「ふむ。昨晩、道誉殿に事前の相談があったのか」

 

 

「はい。曰く、播磨国、備前国、備中国、美作国と山陽各地に軍勢を分散させている新田軍の現状を鑑み、御兄弟揃って海路を行かれるのは危険であり、別動隊をして陸の敵を討たしむのが良いと」

 

 

「うん。構わんぞ」

 

 

 ドス黒い笑みを浮かべる道誉の言葉に尊氏はあっさりと頷いた。

 鞆の浦から足利軍は二手に別れて進軍することになる。陸路を直義軍の大兵力が進み、海路を幾千艘もの尊氏軍が進むのだ。

 

 

「して、尊氏殿。あの菩薩の絵は?」

 

 

「ん?菩薩のお導きがあってな。千寿丸が夢枕に現れたのだ」

 

 

「「?」」

 

 

 今の足利本軍に姿のない千寿丸という到底ここでは予期し得ぬ名前が尊氏の口から出たことにより、道誉も師直も眉を顰めた。

 一方で、尊氏は朗らかに語り出す。微睡の中で見た夢の内容を。

 

 

『そこに居るのは我が麗しの千寿丸ではないか』

 

 

『た、尊氏様!?船の上……ここは一体?』

 

 

『いつの間に此処(鞆の浦)へ参った?三石城は……陥されたのか?』

 

 

『い、いえ。脇屋軍一万五千騎に囲まれておりますが、友軍の斯波(尾張)孫四郎の采配の妙もあり、どうにか持ち堪えておりまする』

 

 

『そうか。一安心だな……千寿丸、その声は如何した?』

 

 

『あ……それは、その……』

 

 

 言い淀んだ千寿丸に対し、尊氏は夢の中でありながら近寄った。

 数えにして齢十一の稚児の艶やかな髪に、尊氏は手を触れる。

 

 

『忌憚なく申すが良い。我と君の仲ではないか』

 

 

『は。それが、さる経典を読み続けておりましたところ、斯様な声になってしまったのでございます。お耳汚しをご容赦ください』

 

 

『どれ、千寿丸。口の中を見せてみよ』

 

 

『御意!』

 

 

 口を大きく開けた千寿丸の喉を尊氏は上からひょいと覗いた。

 ここまで来たら、尊氏が男としてやることは一つしかない。

 

 

『千寿丸。須く我に委ねよ。終われば、君の調子は元に戻ろう』

 

 

『……!』

 

 

『さぁ、逝くぞ』

 

 

 全てが終わると、千寿丸は喉に手を触れて、尊氏の(あ、あ、)知らない呪文(マイクのテスト中)を唱えた後、儚げに笑ってから光の粒子となって姿を消した。

 驚いた尊氏が紛らわすように直前まで千寿丸の姿があった場所に手を伸ばしてみると、朝になって目が覚めたということである。

 

 

「しかし、あれだな。道誉殿。千寿丸はやはり時信殿の息子だな」

 

 

「……と申されますと?」

 

 

「打たれ弱さだ。戦況が膠着すると途端に神経質になる」

 

 

「殿。不安であれば、陸路の大将……直義様ではなく、師泰(我が弟)に」

 

 

「いや。ここはやはり直義を大将として派遣し、新田軍に対して粘り続けている山陽勢の顔を立ててやりたい。師泰と高経殿を副将に据えた上で、先鋒は塩冶殿の山陰勢でいこう。この万全の態勢なら直義も安心だ。三石城下の脇屋義助もいい加減、音を上げよう」

 

 

 五月十三日、鞆の浦を出港した尊氏軍は備前国吹上を目指した。

 古典『太平記』によれば、尊氏は瑞夢があったとして、自らの手で菩薩の宝号を書いた短冊を全ての帆柱に付けさせたという。

 

 

 

 

 

〜2〜

 

 

 

 

 

 沖で尊氏が機嫌良く、慰みがてらの書写に取り組んでいた一方、今日も脇屋軍を相手に防御戦を展開する三石城において六角家の若党たちが、麒麟児(斯波家長)の弟で城方主将の孫四郎に呼び出されていた。

 その面々には何と仮にも六角家当主付きの便女でもある亜也子も含まれていた。無論、亜也子の顔には緊張の色が漂っている。

 夜中ずっと起きていた千寿丸が眠りこけている今、彼の乳兄弟の青地重頼が若党たちを代表し、他家の武将(足利孫四郎)と向き合っていた。

 

 

「あなた方の主君のご快復は友軍として喜ばしい限り……ご当人は夢で尊氏様にお会いし、喉の穢れを掻き出して頂いたからだと申されておりましたが、世の中には不思議な話もあったものです」

 

 

「ええ、まことに。ただ、貴軍のお働きがあったからこそ、夢で尊氏様にお会いできたことを我が殿は言うまでもなくご承知です」

 

 

「恐縮にござる」

 

 

(斯波孫四郎……殿様は以前、次弟殿は斯波孫二郎(家長)に比べて才覚で一枚か二枚劣るって言ってたけれど、こうして見ると、おちゃらけていない時の頼重公を思い出す。頭の良い人にありがちな雰囲気。見てるこっちまで影響されるような、張り詰めた感じがする)

 

 

「先程、あなた方の御主君にも朝食を一緒にするついでにお伝えしましたが、いよいよ援軍がこちらにお越しになるそうです」

 

 

「……斯波(尾張)様、失礼を承知でお聞きしますが、それは確かで?」

 

 

「間違いごぜぇませんよ、青地殿。貝川で海沿いからの敵の対策を担当する我が尾張足利家の将、石橋和義からの確かな情報です」

 

 

 今なお寄せ手の脇屋軍は城の南方の平地を中心に、二重ないし三重もの布陣を形成しているとはいえ、尾根の上にある三石城には抜け道も複数存在している。それも、千寿丸たちが籠り始めてから切り開かれたものであるため、数年前の討幕時にこの三石城を築いた張本人で、今も後醍醐帝に与する伊東大和守でも知らない道だ。

 六角家当主の千寿丸が甲賀忍軍を活用して独自の情報網を形成する一方、尾張足利家の御曹司の孫四郎もまたこうした道を活用し、石橋和義のような他の足利方の勢力と連絡を取り合っていた。

 

 

斯波(尾張)様、もしや我が殿はそれを聞き」

 

 

「賢察の通り……話を聞くや否や、早速出撃の算段をと申されましたので、此方で嗜めておきました。その様子ですと、ご自分の郎党たちに相談された訳でもなさそうで……一つ安心にござる」

 

 

(他所の元服前の武将にも心配されてる……)

 

 

 野戦で鋭い嗅覚を発揮して臨機応変に戦う千寿丸だが、月単位の籠城戦となると我慢し切れず、当初の防衛戦略を破棄し、平然と無茶をする可能性があるというのが六角党の共通認識である。

 便女として亜也子にも千寿丸の様子に十分注意して貰いたいというのが、かねてより六角家の郎党たちから伝えられていた要望だったが、あろうことか尾張足利家出身の孫四郎にも、当代の佐々木惣領の抱える慢性的な暴発(興奮)リスクを見抜かれているようだった。

 実際、千寿丸は後年、土岐氏や赤松氏と同じく、外様大名にして足利幕府の誇る主力武将になるのだが、友軍を無視し、危険をまるで恐れず、少数のみを率いて強敵と戦うことが度々あり、一族や郎党から死傷者を出し、従軍した道誉の孫(京極高詮)すら負傷させている。

 

 

「ところで、我々を呼んだ目的はそれを確認するためのみでございましょうか……有り体に申せば、殿の便女も含めて我らをお呼び立てするとは穏やかではないと身構えるところもござったもので」

 

 

(うわ、思い切り言っちゃったよ。この人)

 

 

「?」

 

 

 主君の若手家臣筆頭格の青地重頼が、同じ城で共闘している他家の大将に送った警戒心の籠った眼差しに、亜也子はたじろいだ。

 しかし、何とも拍子抜けなことに、孫四郎はきょとんと呆気に取られたような顔を浮かべ、目を瞬かせてから苦笑を溢した。

 

 

「安心されよ。単に六角殿のご様子に注意されたしと改めて告げておきたかったのみです。特に望月殿はかのお人のご寵愛を一身に受けておられるとお聞きしました故、より細心の注意を払って頂きたかったものですから……配慮が行き届かず、まこと申し訳ない」

 

 

「滅相もございません。斯波(尾張)様」

 

 

(ほっ)

 

 

 内心、胸を撫で下ろした亜也子はようやく警戒心を解いた。

 幼い身とはいえ、他家の便女に対してマズいことをしたと気が付いたらしい孫四郎は頰を掻きながら、詫びと言っては何だがと前置きをした上で、六角家に仕える若党たちに話を切り出した。

 

 

 

 

 

〜3〜

 

 

 

 

 

 三石城において六角家の者たちに与えられた陣屋で、亜也子を含む若党たちが、あえて陣屋に残っていた伊庭や目賀田といった重臣たちに、城方主将とのやり取りについて報告を上げている。

 仮に千寿丸が現状において馬淵義綱ただ一人となっている近江国守護代を増員する場合、真っ先に名前が挙がるであろうと目されている伊庭は今の三石城にいる六角軍のNo.2として耳を傾けた。

 

 

「青地殿。京極家が相手ではないのだから、あまり他所の武家に啖呵を切るような真似は止めておかれよ。殿のことを思って気が立つのは理解できるが、尾張足利家は少しマズい。取り立てて問題にならなかったようだから、まだ良かったが、少し軽率だったな」

 

 

「相済みませぬ、伊庭殿。六角家の若武者たちに対する、幼少の主将の招きを変に邪推して断るのも角が立つというのも含め、分かっていたつもりでしたが、どうにも気が急いてしまい……ところで、先方とのやり取りに関してお耳に入れておきたい話がござる」

 

 

「というと?」

 

 

「孫四郎様が申されるに、この三石城での籠城戦を無事に切り抜けた暁には……尾張足利家が亜也子殿の後ろ盾になることを高経様や家長様に具申しても良いと。すなわち、もし殿の御子を亜也子殿が宿された場合、尾張足利家が味方になるということです」

 

 

「……これは驚いた」

 

 

(そりゃ驚くよね……正直、私も信じられない)

 

 

 千寿丸の従兄妹伯父に当たる高経が当主を務める尾張足利家は本来であれば、尊氏や直義の足利宗家に引けを取らない程のブランド力を有している。高経の長男の斯波家長が弱冠にして東国の足利方を纏め上げることが出来た背景には、麒麟児と言われるような本人の才覚以外に、一門でも群を抜く尾張足利家の値打ちがあった。

 こうした価値のある尾張足利家が新たな養子縁組という形を活用するなりして千寿丸の便女の後ろ盾になるならば、京極家の息女の魅摩と十分張り合える。六角家の若党たちは、突然の話に戸惑う亜也子の心情を考慮することなく、目に見えて浮き足立っていた。

 

 

(御郎党方は殿様と違って、同族の筈の京極家とやり合うことがむしろ望むところみたいな雰囲気になってるのがまた何というか)

 

 

「待たれよ。青地殿、まさか食い付いたりは」

 

 

「いえ、目賀田殿。ちゃんと濁しましたよ。斯波(尾張)高経に十全の信用を置くのは危険だという大奥様(先代の細君)のお言葉もございましたし」

 

 

「……殿はすっかりお忘れのようだがな」

 

 

「まぁまぁ、儀俄殿。殿がお母上の言葉を聞き流されるのは昔からのことでしたから。強いて例外を挙げれば、三年前の六波羅滅亡後の戦後処理くらいでしたか。それ以外はやれ生野菜は嫌だ、生水は嫌だと事ある毎に申されて……ただ、だからこそ、物事に夢中に打ち込まれた時のお姿が光り輝いて見える。そうでしょう?」

 

 

「……確かに。結局、尊氏は殿の予見通り、九州を素早く掌握し、今にも再上洛する勢いだ。一方、奥州へ返した北畠顕家はあの斯波家長に苦戦中だという。つくづく殿のご慧眼には恐れ入る」

 

 

「何だかんだ言って、鎌倉幕府にしろ後醍醐の帝にしろ、殿の仰せになった末路の通りだ。まさに神の御業と申せましょうな」

 

 

「然り。ただ、正直に申せば、出来ることなら食わず嫌いを直して頂きたいが。この分だと狗肉だけでなく、最後の拠り所の屍肉も嫌がりそうだ。本当に死んでも食わぬと言い出しかねんわなぁ」

 

 

「安心されよ。粟生田殿。援軍はもう隣の備中国に来ておるぞ」

 

 

(でも目に浮かぶ。殿様は大体、興奮して周りが見えなくなるか繊細に考え過ぎて空回りするかのどちらかだから……ただ、今でも前よりマシになった方なのかな。みんなの話を聞いている限り)

 

 

 まだまだ新参者の亜也子は今の主君が喜び勇んで血の川を渡る様子を幻視した。共に狂気に沈んで追従する兵たちの姿を含めて。

 何はともあれ、尾張足利家の介入を招くのは幾ら対京極家が不穏とはいえ、如何なものかという伊庭の一言で場は落ち着いた。

 

 

「そう言えば、殿は喉が快復してからというもの、元気が有り余って夜中に起きて、何が面白いのか余人にはよく分からない一人蹴鞠(リフティング)を日が昇り始めるまで延々と続けておられるようだと聞くが」

 

 

「その通りですよ。儀俄殿。最近は亜也子殿と睡眠時間をズラされている訳で……まぁ、今の戦渦で便女に身重になられる訳にも参りませんし、これで良いのではないですか?一月の時点で生殖は未だ敵わぬと申されていましたが、そろそろ有るやもしれませぬ」

 

 

「ッ」

 

 

(魅摩とあっても、私はなぁ……身体の大小の前に、田舎っぽい娘は殿様の好みじゃなさそうだし、京で頑張って垢抜けないと、十年経っても、殿様の体液(鮮血)を飲むので精一杯になりそうな気がする)

 

 

 紅一点の亜也子は感じた。便女の主君との進展に期待する周囲の視線に籠った重圧を。そこにあるのを紐解けば、ただひとえに京極家への警戒心である。要は対抗馬として担ぎ上げたいのである。

 ただ、亜也子が次の佐々木惣領の母となった場合、武芸達者な女傑として名を残せる可能性がより高くなるのは確かであった。

 

 

「と申されても、だ。殿は十二月のお生まれで、今は数え十一の五月であろう?まだ無理があるのではないか?早くて来年の筈だ」

 

 

(私の年齢が考慮されていない……今更だけどさ)

 

 

「楢崎殿、ああ見えて殿は人一倍」

 

 

「皆、静粛に!そろそろ刻限が代わり、前線にいる者たちと交代せねばならん!無駄口を叩く前に、矢の一本でも敵に当てぬか!」

 

 

「「「応!」」」

 

 

 騒ぎ始めた若い郎党たちを一括した伊庭は溜息を吐いて彼らが陣屋から出るのを見送ると、亜也子の前で膝立ちして頭を下げる。

 明らかに将来の主君の妾と目されている。改めてその認識を強めた亜也子は慌てて六角家の重臣に頭を上げるように告げた。

 

 

「その謙虚さ、京極父娘には全くない美点です。敬服致します」

 

 

「け、敬服には及ばないかと……」

 

 

(相変わらず魅摩たちへの偏見が凄い。これぞ本家というか。でも本当のことなのかな?特に道誉なんかは直接話したこと無いから、よく分からないけれど、六角党だけでも評判が異様に悪い)

 

 

「亜也子殿。殿より直義軍の動向はお聞きですか?」

 

 

「はい。快進撃を続けている様子だって殿様が」

 

 

「如何にも。既に備中国の草壁荘に到着したそうです」

 

 

(結局、足利直義が戦に弱いって噂は何だったのかな?確か手越河原で新田義貞に負けたけど、箱根で尊氏決起までの時間を稼いで、豊島河原だと北畠も宇都宮も退け、脇屋まで追い込んで……九州の戦でも大暴れしてたって云うし……今回は連戦連勝って話だし)

 

 

 あまり直義に近付きたくないらしい千寿丸によれば、従う将たちの質が井出沢の戦と比較にならない程に良化しているというのが、直義の健闘の要因であるという。尤も、そうした優秀な大将たちを纏めて使い熟す力量こそ、将の将たる所以というものであった。

 この意味で、足利直義は兄の名に恥じない良将であったと言えるだろう。少なくとも、直義は人生において強敵たちと対峙し続け、十数年後の戦に至っては世にも稀な大金星を上げることになる。

 ただし、その直義は現在、備中国に攻め入り、福山付近に辿り着くまでは良かったものの、脇屋軍の別働隊(大江田義政の隊)の前に苦戦していた。

 

 

(まさか!?空城の計か!してやられた!)

 

 

「直義様。ここは我らにお任せあれ……皆、慌てるな!最初の対応が肝心ぞ!四方を囲み、一歩ずつ確実に追い込めば問題ない!」

 

 

「「「応!」」」

 

 

(ケッ。結局、斯波(尾張)に頼り切りじゃねぇか。情けねぇ弟殿だ)

 

 

 副将の師泰が呆れながら塩冶勢らの奮戦する前線へと走る一方、二十万騎を自負する軍勢を率いながら、僅か数千騎の大江田隊に翻弄されている現状を忸怩たる思いで見つめる直義であった。

 古典『太平記』によれば、備中国に二千騎の兵で進出していた大江田義政は圧倒的な数的不利をモノともせず、果敢に敵の大軍勢に突入して直義の首を狙ったり、十六度もの戦闘の末に、三石城を狙い続けていた脇屋軍との合流を目指し、退却したりしている。

 閑話休題。五月十八日の夕刻、事態は動き始めた。海と陸の両路を行く足利兄弟(尊氏と直義)が迫って来るという風雲急を告げられた新田兄弟(義貞と義助)が連絡を取り合い、可及的速やかな退却を決断したのである。




既にご存知の方も居るでしょうが、道誉は中央政界で存分に暴れ回るものの、惣領の()()()()(しかも最終的に滑り込みセーフ狙いに切り替えるため、更に厄介)に振り回されたり、惣領の不在時に本家の郎党から執拗に追い回されたりと割と散々な目に遭います。
ていうか観応の擾乱、本当にどうしたものか。解説書を読んでも途中から混乱するのがお決まりパターンになりつつあるのがネック。
史実的に「書く上での」逃げの選択肢、つまり途中でスキップする手もあるものの、武蔵野合戦は流石にやりたい……ただ、これからの原作で観応の擾乱がどう描かれるか分からないことには不透明にならざるを得ないところがあるのもまた事実な訳で。
尤も、観応の擾乱どころか土岐頼遠の末路に触れる頃には原作が完結している可能性が非常に高いので、今悩んでも仕方ないですね。
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