崇永記   作:三寸法師

94 / 202
◆4+

〜1〜

 

 

 建武三年の秋以降、親父(道誉)の偽装投降発覚時は例外として、次代の佐々木惣領夫人となっていることが決定的となっている私は首都の京ではなく、一族の本拠地である佐々木荘で専ら過ごしている。

 ただ、昨年末よりの婚約者の三郎が居る時は別にしても、不在時の居心地はかなり悪いと言わざるを得ないのが正直なところだ。

 

 

「魅摩殿、宜しいですか?少し話が」

 

 

「……承りました。大方様」

 

 

 嫡流の六角党の誰も彼もが庶流の京極家出身の私を腫れ物扱いしている。放蕩三昧で腹黒な親父(道誉)の存在が主な原因なのは言うまでも無いにせよ、別件として、京の汚泥を熟知する私が次期惣領夫人に相応しく無いと彼らが考えていることは手に取るように分かる。

 正直、建武政権の時代から、私と三郎(あいつ)が姉弟同然のように接していたことを六角党から快く思われていないことは自覚していたが、婚約することになって以降、突き刺さる視線の量が格段に増えただけでなく、鋭さ自体が一層の痛烈さを帯びるようになっていた。

 いつか本当に婚姻したら、必ず見返してやろう。そういう気持ちでいるのは確かだが、やり難いのは三郎(あいつ)の母親、長井(大江)時千娘だ。

 

 

「さぁ、此方へお入り下さい」

 

 

「……どうも。お邪魔します」

 

 

 ここ一年以上めっきり機会が無いが、私も公家の屋敷に見識を深めるために出入りしていた身だ。心得が無いという訳では無い。

 親父や同世代の惣領の三郎(あいつ)の場合、仮にも目上であっても気安い言葉遣いが可能だが、前惣領の夫人(千寿丸の母君)とあってはそうも行かない。

 ただ、この()()()がやり難そうにしているのを見ると、どうにも肩が凝る。親父(道誉)との軋轢(不和)が生まれるのを恐れてか、あからさまに嫌な姑になるまいと無理しているところが益々気に入らなかった。

 

 

「ごめんなさいね、お呼び立てして。今回はどうしても貴女(魅摩殿)のお耳に入れておきたい件があって。本来なら息子(千寿丸殿)を通した方が良かったのですが、本人にその気がどうしても生まれないようだから」

 

 

「仰ってください。大方様、遠慮なさらずに」

 

 

 甲賀郡での巻狩りが終わっても、三郎は精力的に活動している。

 と言っても、三郎の関心は女漁りではなく、専ら軍事の方面に向いている。巻狩り以外にも、外で出来る訓練を幾種も熟すのだ。

 汗臭い限りな話だと正直思うが、そこが京極家と六角家の違いなのかもしれない。文化面ならば決して引けを取らないつもりだが、軍事面では六角家の方が上だ。今は当主の年季の違いから親父(道誉)の京極軍の出陣する機会が多いが、いずれその傾向は変わるだろう。

 

 

「そう?では単刀直入に。お父上……道誉殿から既に書状等でお聞きかもしれませんが……此の度、足利政権が発布された式条です。鎌倉殿(尊氏様)が明らかにされた新しい政権の方針が書かれてあります」

 

 

「……昨日、これと同じものを三郎殿から見せられました」

 

 

「!……それで、千寿丸殿は何と?」

 

 

直義(弟殿)の作った決まりなんかに従う必要は無い。そうはっきり」

 

 

 率直に言って、三郎(あいつ)の根本的な遵法意識の欠如ぶりは親父(道誉)以上かもしれない。その割に自分の定めた決まりにはやたら煩いのだが。

 今はまだ守護代の馬淵らに多くを任せているから明るみになる危険も少ないが、十年二十年の後はきっとボロを出すに違いない。

 実際、後年から振り返ってみても、この予感は当たっていた。

 私ですら呆れる程、三郎(あいつ)は寺社領の押領(収奪)を頻りに図ったのだ。

 

 

「加えて、こうも。足利家執事(高師直殿)は今回の件で、決定的に弟殿(直義様)との対立意思を燃やしている。元々弟殿(直義様)の負け癖は目に余る上、現場を軽んじて今後の施政方針を鎌倉殿(尊氏様)の御名で発布するとは言語道断だと」

 

 

「その話も千寿丸殿が?」

 

 

「はい。尊氏様が小姓に御身体を綺麗にして貰っているところにひょんと顔を出した弟殿(直義様)の言ったことが、後から確認すれば大事な用件だったみたいです。尊氏様は普段通り、弟殿(直義様)の言葉に大して耳を貸さず、任せるの一点張りだったせいで起こった事故だって」

 

 

 自分の世界()で生きている()()()のある三郎(あいつ)は恐らく分かっていないだろう……きっと分かっていない筈だが、「小姓に御身体を綺麗にして貰っている」というのは寵童の伽を指した隠語に違いない。

 直義様が顔を出すなら、時刻は昼間だろう。伽と言っても、褥の上でというより、座ったところに寵童の顔を近付けさせて、という筋書きが思い浮かぶ。これでも変態共の巣窟の京で育った。想像は大体付くし、尊氏様も京独特の変態生活が板に付いたのだろう。

 個人的に不幸中の幸いなのはその寵童が三郎(あいつ)では無かった点だ。

 正直、今も三郎(あいつ)が京に居たのなら、危なかったかもしれない。

 

 

貴女(魅摩殿)も……千寿丸殿と同じ考えですか?」

 

 

「……そうですね。考えが全く同じという訳では無いですけど」

 

 

「!」

 

 

「私が従うのは三郎殿の意向のみ。他の誰にも曲げさせません」

 

 

 次期惣領夫人として私ははっきり前当主の正妻(長井時千娘)に自分の持っている考えを示した。親父(道誉)も足利兄弟も、私を縛る事は決して出来ない。

 ただ、六角千寿丸だけが私の心身を支配できる。では、その証明にまずは何から始めようか。親父(道誉)と違い、三郎(あいつ)は博打を勧める気にならないらしい。唯一、闘茶は好きみたいだが、あれは己の味覚や嗅覚に依存するものであって、神力でのイカサマは効果が薄い。

 この際、格好も見直すべきか。実は意外と三郎(あいつ)の軍は白一揆や黄一揆に赤一揆などと見栄えがする。多少控えめな格好で淑やかさを演出するのも良いかもしれない。肌面積を抑えるのが早かろう。

 とはいえ、当面は静観が必要だ。実質的に直義様(弟殿)が作ったような決まりにあっさり次期惣領夫人の私が従ったとなっては、佐々木一族の威厳に関わる。まず親父(道誉)の考えを探ろう。近未来の姑の部屋から退がると、私は早速親父(道誉)に出す書状の文面に考えを巡らした。

 

 

 

 

 

〜2〜

 

 

 

 

 

 無礼を働いた自覚はある。だけど、何も作り話をしてまで袖にされる筋合いは無いという思いが沸々と湧き上がる。私は不満を紛らわそうと、六角党による蔵の備品の運び出しを手伝っていた。

 甲賀郡における南朝勢力の反攻対策には北朝方の豪族たちを警護役に残した上で、六角軍は北陸での南朝方(新田軍)討伐のため、高師泰軍や小笠原軍、土岐軍らに加勢するための出兵の準備に追われていた。

 

 

「よいしょっと……!」

 

 

「「「おお〜!」」」

 

 

 膂力を活かし、複数の荷物を同時に持ち上げると、六角党の方々から歓声が上がる。少しだけ心が満たされるような気がした。

 ただ、党員が揃って作業の手を止めたせいで、眉を顰めたのは先の人事異動で副執事から昇格し、殿様の執事となった三井殿だ。

 

 

「皆々方、作業を続けられよ!何百人もが手を止めれば、幾ら亜也子殿がお一人で気張ったとて、却って作業が遅れてしまう!」

 

 

「「「応!」」」

 

 

「……亜也子殿。我が君(千寿丸様)の便女たる貴女様に作業を手伝って頂けるのは有り難い限りですが、憚りながら、ご覧の通り皆の集中力が落ちてしまう。どうか我が君のお側にお控えを。お願いにござる」

 

 

 近付いて嘆願の言葉を口にする新執事(三井殿)の挙動は真に迫っている。

 きっと淡々と仕事していた前任の高宮殿に代わって就任したばかりだからこその気負いがあるのだろう。また、これを機に守護代の馬淵様の負担軽減のため、執事の裁量権が増やされたらしい。

 しかし、理屈の上で分かっていても、感情の上で納得できるのかは別の話だ。不思議にもほんの一瞬だけ視界が眩んだ気がした。

 

 

「ここにも、居場所が無いんだ……」

 

 

「え゛?……その、亜也子殿。我が君と何かございましたか?」

 

 

「お、何だ何だ?」

 

 

「……三井殿、好きに手伝わせてやれば良い。だが、主君と亜也子殿の間が変に拗れては我らが困る。京極父娘がより増長する故」

 

 

「粟生田殿、木村殿……ええい、仕方ない。作業は一旦中断だ!」

 

 

 こうして、三井殿が六角党の様子からやむを得ないと、休憩の序でという建前を置いた上で、今後を見据えた青空会議が開かれた。

 私はポツポツと話した。殿様に振られた経緯を有りのままに。

 

 

『元北条軍のお前を側室なり妾なりにしてみろ!女欲しさにお前を腰越で投降させたと人々に思われる!それでは御匣殿(一宮御息所)の身柄を攫わんとした松浦五郎と何が違う!?ああ!?家柄の良し悪しか!』

 

 

『だから、知らないよ!その松何とかなんて人!』

 

 

『良いか!?お前は戦力!ひたすらに敵の命を奪え!妊娠して鍛錬の時間を潰すなど言語道断だ!己の武力を追い求める求道者たれ!アスリートなら兎も角、命懸けで戦う戦士だろ!?お前は!』

 

 

『明日……?』

 

 

『つまり、だ!今後十五年は戦働きの事のみ考えろ!それから死んだ仲間たちの供養!それでお前は南北朝期の巴御前として広く武名が轟こう!俺と契らずともな!全く何故そんな話になった!?』

 

 

 甲賀郡で言われた殿様の言葉を反芻しながら、肩を震わせる。

 まさか今になって北条軍だった事を蒸し返されるとは想像だにしなかった。数々の合戦を通じ、信頼を勝ち取ったと思ったのに。

 一連の話を聞いて、六角党の方々は頭を悩ませたようだった。

 

 

「十五年……天下泰平にまだそんなに時間が必要なのか?」

 

 

「いやいや、楢崎殿。聞いておらぬか?北陸の前線に居る婆娑羅武将たちが先の式条(建武式目)の件で、直義に不満を抱いているという噂だ」

 

 

「思いますに、婆娑羅武将たちと品行方正な直義の間で諍いが起こると我が君はお読みなのでしょう。きっと決着までに十五年程」

 

 

「「「おお!」」」

 

 

 六角党の人々は私そっちのけで、殿様への畏敬を深め始めた。

 彼らは殿様のために在るのだから、当然だとしても、本来の趣旨とは違う話が場を占めたので、否が応でも複雑な気分になった。

 

 

「んん……?で、何の話だったか?」

 

 

「粟生田殿……ほれ、亜也子殿が未だ殿に心の内で元北条党扱いされていたというので、傷付いたという話だ。ま、確かに亜也子殿はともすれば、我々譜代の者以上に戦場で働いたのだからなァ」

 

 

「あの……木村殿。どちらかと言うと、そこじゃなくて、尊良親王(一宮殿下)絡みの話で振られたのが、私は納得いかないっていうか……」

 

 

 この際、御匣殿(一宮御息所)とかいう高貴な方の生死は正直、問題ではない。

 私が前の主君(相模次郎)への思いを断ち切って、足利方の六角佐々木家に仕えているというのに、肝心の殿様が尊氏への想いを口にしながらも、昔一緒に遊んでいたという尊良親王に未練を持っているらしいという点が釈然としない。まして私を振る理由に持ち出したのだ。

 大柄で未だ田舎臭さの残る私が異性として好みでないと言われたならまだ受け入れられるが、あの謳い文句は正直言って、()()

 

 

「んん……脈無しという訳では無いと思うが」

 

 

「楢崎殿の言う通り、本当に気が無いなら、後年と言わず、さっさと出家させ、僧兵ならぬ尼兵にすれば良いだけの話だからなァ」

 

 

「左様。そうなさらぬから、我々も今まで……」

 

 

 顔を見合わせる六角党の方々の顔を見て、ふと疑問に思った。

 どうして彼らは自分の縁者を殿様の側女にしようと働き掛ける兆しすら無いのかと。その矢先、俄かに信じ難い話が飛び出した。

 

 

「亜也子殿なら、たとえ殿が夜中癇癪を起こされたとして、傷を負うことも無いだろうにな。それもあって珍しくと思ったのだが」

 

 

「か、癇癪?」

 

 

「ああ、何でも無い。何でも無い。で、三井殿。どうすべきだ?」

 

 

「そう申されましても……何か証を立てるとか……いや、具体的な証とは何かと言われても困るかのだが……そうだ。重頼殿だ」

 

 

「確かに殿の乳兄弟なら……いや、どちらにせよ糠に釘か」

 

 

「うーむ。足利尊氏(鎌倉殿)は京極の味方をするだろうしな」

 

 

「あんな良い加減な男、当てにならんわ。むしろ殿を喰おうとしかねない危険人物ではないか。道誉とも気が合うようだからな」

 

 

「そうだ。道誉が悪い!何もかも!」

 

 

「「「そうだ!そうだ!」」」

 

 

 結局、議論は何時ものように六角党ならではの論に落ち着いた。

 作業が再開される。この時だけは幾らか気が和らいだ気がした。

 

 

 

 

 

〜3〜

 

 

 

 

 

 建武四年の春になって迎えた北陸への出兵前夜、六角家当主の俺は傘下の甲賀忍軍からの報告に耳を傾けている。既に信楽谷方面で反乱の気配があることは掴んでいたが、京極家とも協調した上で、警護番役を配置する程度の対策を施すのが現段階では精一杯だ。

 今回の報告は頼んでいた別件についてだ。佐々木荘にある六角邸の軒先で、忍びの美濃部から話を聞き、俺は肩を竦めて見せた。

 

 

「ほれ見ろ、魅摩め。何が御匣殿(一宮御息所)は既に故人だ。どこからそんな出鱈目を耳にした?全く。結局、俺の言葉が正しいではないか」

 

 

「その……殿、恐れながら良基(二条権大納言)卿然り、公賢(洞院右大臣)卿然り、北朝の公家たちから御匣殿(一宮御息所)が鬼籍の御方だと思われている事は確かなようで」

 

 

「ええ?……南朝方の何らかの情報操作の痕跡か?まぁ、尾張(斯波)高経殿から金ヶ崎城攻めで人質作戦は効能が期待出来ないと書状で見解を示されたばかりだ。(しこ)り無く北進出来るだけで十分な成果ぞ」

 

 

「有り難うございます。亜也子殿にもお伝えを?」

 

 

 新執事の三井から先日、六角党の一部で行われた会話の記録を入手してある。計算力だけでなく、記憶力も目を見張るばかりだ。

 読み始めて一瞬で嫌気が差したため、内容を精査した訳では無いものの、俺にとって全く面白く無い話をしていたのは理解した。

 ここ幾月、亜也子の考えが分からなくなっている。あまりウチの郎党たちを扇動するようだと、擾乱後にでも、あるいはそれより早く粛清せざるを得なくなるのだが。今は経過観察の段階に留まっているものの、前に魅摩の言ったように危ういのは確かだった。

 

 

「いや、何らかの折に伝えよう。最初は今回従軍させるつもりは無かったが、越前国における瓜生軍の快活ぶりを見るとな。念の為、連れて行った方が良さそうだ。何はともあれ、苦労。下がれ」

 

 

「は」

 

 

 表向きは単なる家人として振る舞う美濃部の姿が見えなくなり、俺はここ最近、婚約者の魅摩と共有し始めている自室へ戻る。

 襖を開けると、俺は目を大きく見開いた。魅摩が見慣れぬ格好をしていたのだ。見たところ、寝装束という訳では無さそうだ。

 露出が格段に抑えられている一方、魅力は確実に増していた。

 

 

「きれ……ゴホン。まさかお前、婆娑羅の禁止を真に受けたのか?気にせんで良いと言っただろうが。別に(ワザ)と地味にせんでも」

 

 

「でも、この方が正妻っぽさが出るでしょ?以前までの格好だと、愛妾みたいな感じになっちゃってたから。何より、あんたの好みに合ってる。今、綺麗って言い掛けてたでしょ?誤魔化す事ないよ」

 

 

「……敵わんなァ」

 

 

 どこか悔しさを感じるが、魅摩の言葉は悉く的を射ていた。

 俺の反応を見て、満足そうにする姿が憎たらしく思える。

 

 

「出陣前に見せようと?」

 

 

「そ。一番印象深くなる時機に驚かせようと思ってさ」

 

 

「言えてる……思わず連れて行きそうになりたくなる位」

 

 

「従軍しろって言うなら、喜んで付いて行くけど?」

 

 

「結構。それには及ばん。大体、越前国の瓜生軍に師泰殿自ら編成した鎮圧部隊が敗れたという噂があるのだぞ。物見遊山感覚で付いて来られても困るわ。お前は大人しく、ここに居てくれ。な?」

 

 

 現在、北陸方面軍の状況は思った程、良くは無い。瓜生軍の強さが尋常では無さそうなのだ。何せ土岐頼遠や小笠原貞宗、今川頼貞(頼国の子)細川頼春(頼之の父)といった名のある将たちが居るにも関わらず、総司令官の高経自らが、代理の総大将として師泰を残し、金ヶ崎城包囲網から瓜生軍鎮圧のため移動しなければならない事態になっているのだ。

 高経が向こう五年は嫡男の家長さえ寄せ付けない程、すなわち万全の状態で対峙すれば、顕家軍すら退けられる程の名将だということを加味すれば、瓜生軍の脅威の程が分かるというものだろう。

 

 

「分かったよ。予定を変更してまで亜也子を連れて行くってのはそういう事情があるから……ね。じゃ、お休みのチュ。ほら、頂戴」

 

 

「……ん」

 

 

 出兵後、いつ近江国に帰れるかは不透明なところがある。新田親子が金ヶ崎城に追い詰められているとはいえ、瓜生軍次第で盤面がひっくり返らないとも限らない。尾張(斯波)高経を負かすことの可能な武将は軍神(楠木正成)亡き今、それこそ尊氏様のみだと分かっているのだが。

 魅摩の言う通り、最初は軽く済ませるつもりだったが、暗黙の了解から互いの意図せぬ程、布団上で長引いていてしまっている。

 一旦、間を取ろうと、俺は弱音にも似た話を切り出した。

 

 

「魅摩姉、何かさ。負けるとは思っていないが、嫌な予感がする。今回の出兵で、何が俺の予期せぬ事が起こるんじゃ無いかって」

 

 

「……戦絡みで?それとも」

 

 

「分からない。ただ漠然と。これも神力冥利なんだろうけどさ」

 

 

「そっか……ねぇ、このまま最後までしちゃわない?」

 

 

「へ?あと半年は」

 

 

「別に出るかなんてどうでも良いよ。ただ、確実に半年以内に帰国出来るならお預け。そうでないなら、思い切る。さ、選びなよ」

 

 

 互いに熱に浮かされている事は分かっていた。ただ、俺は前世の記憶から知っていた。こういう時は気付いたら終わっていると。

 案の定、俺と魅摩は同じ夢現を味わった。それを頭で理解したのは夜が更けて、両手を繋いで覆い被さるのを止めてからだった。




vs楠木正行軍やvs足利直冬軍での行動を考慮しても、感情に従って生きている感のある六角氏頼。これで晩年まで実子が一人しか居なかったのは……そういうことなんだろうなと。しかも、晩年にその気になったら、三人or四人(満高、氏高、信高、(高郷))立て続け(反駁に『史籍雑纂』)に子どもが産まれる訳で。
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