ニンジャスレイヤーTRPGフロムゴブリンスレイヤー   作:BANZAINAMUSAN

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【Q&Aどういう話?】ゴブリンスレイヤーはゴブリンをスレイする。ニンジャスレイヤーはニンジャをスレイする。ゴブリンニンジャが現れた。何が起こる? ハーメルン次元においては別に珍しくも無い回線の混線……クロスオーバーですよ。


サンプルリプレイ:ゴブリンスレイヤーとWasshoi!判定

 

 ファイアイーターはゴブリンニンジャだ。

 だから動かない的にスリケンを投げたら必ず命中するし、カラテパンチを繰り出すことには必ず成功する。そこにウカツはない。定命の者(モータル)とは違って。

 しかしそれが敵に致命傷を与えたかどうかはまた別問題だ。

 故に、有効打判定……よりコイネー・コンバートするなら、結局は命中判定……という概念は存在する。

 

 ゴブリンスレイヤーにとって幸運にもファイアイーターの投げ放ったスリケンは鉄兜スリットに入らず、つまり有効打とならず生き延びたようだが、無知からくるウカツにより意識は朦朧とした様子で、もはや抵抗の力は無い。

 

 ファイアイーターはゴブリンらしく、無駄に抵抗したその男に残された生を限りなく蹂躙せんとする。

 片手で鉄兜を掴んだまま、ケリ・キックで執拗にいたぶり、苦痛と絶望の悲鳴をあげさせようとする。

 人を虫けらのように殺さんとし、なんら省みず、自らを絶対強者と疑わぬファイアイーター。

 

 その強さの代償に、いくら孕み袋へ注ぎ込んでも意味が無くなってしまったことを、彼は知らない。最弱という弱みを克服したが故に、繁殖能力の高さというゴブリン種最大の強みを喪失している。得れば失う。自然の摂理。ニンジャは実質種無しなのだ。

 

 尋常ならざる強化には、それ相応のデメリットがある。

 そしてニンジャの繁殖方法を、ゴブリンニンジャはしないだろう。

 

 彼は自身が実質種無しになったことを自覚していないし、上位存在から知らされてもいない。

 しかし少なくとも、このイクサの顛末には何の関係もないことだ。

 

 この男を殺し、さらなるパワを得たならどうしてくれようか。

 ファイアイーターは夢想する。敵にカイシャクすらせず。

 並のゴブリンであれば慢心はあれども、少なくとも敵にトドメを刺してから高笑いしただろう。

 でなければ逆に殺されるからだ。

 それをしない。何故か?

 過剰に強くなったがゆえの、増上慢。

 

 どこか別の場所で非ゴブリンニンジャの屑を支配し、絶対的な力で一党をまとめあげ、人間どもの集落を襲い、男は殺し、女は犯す。ニンジャであればなんでもできる! 最強に強いから!

 

 なんと浅ましいことか。夢想のなかでファイアイーターは、一国の王すら殺し、その国にいるあらゆる女を犯し、腹いっぱいに飯を食い、酒をたらふく呑んでいた。ゴブリンニンジャが歴史の影の支配者になることはない。ただ奪えるだけ奪うのみ。

 

 

 ……しかしながら、この世には、四方世界には、その根底に無慈悲で残酷な根本原理が存在している。

 

 すなわち、上には上がいる。

 

 

『Wasshoi!』

 

「グワーッ!」

 

 

 ファイアイーターが鉄兜を掴んでいたその男は。

 逆にファイアイーターの顔面を掴み、腕のリーチ差とカラテ差で鉄兜から引き剥がし、180°反転して叩きつけたではないか!

 なんてカラテだ! 我々はこの構図を知っている!

 ニコニコどうがで280まんかいくらい似たようなのをみた!

 

 

『ゴブリンどもは皆殺しだ。/ニンジャ殺すべし!』

 

 

 アナヤ! 全身鎧の男が発する声は、あたかもステレオ二重音声じみて聞こえるではないか!

 ま、まさかこれは!

 ……そのまさかだ!

 

 これぞまさに、シンクロニティ!

 

 ユングが提唱した「意味のある偶然の一致」の概念!

 ニンジャスレイヤーTRPGに用意されたルールが!

 ゴブリンスレイヤーのゴブリンを殺す絶対の意思が!

 闇のニンジャソウルが発する怒りの鼓動をその身に受け止めたのだ!

 超古代文明の遺跡の、なんらかのなにかによって!

 

 単純なニンジャソウル憑依現象ではない……もっとインスタントな、言うなればソウル共振現象!

 パンク・ニンジャがそのソウルフルなビートで聞くものの心を同一に震わせたような、ソウル一体感!

 

 それにちかいかんじの自己強化(バフ)がゴブリンスレイヤーの身から溢れる!

 

 おお、見よ! ゴウランガ! ニンジャスレイヤー概念の脈動(ビート)がオバケめいて具現化し、名状しがたい赤黒の炎(ナラク)エフェクトがゴブリンスレイヤーの全身に纏うではないか!

 

 とてつもない自己強化(バフ)のカラテ供給が全身から溢れているのだ!

 

 体が熱い! 力が覚醒(めざ)める!

 

 ゴブリンスレイヤーの身体能力がぜんたいてきにさいていでも3倍以上はアップ! HP全回復! ニンジャスレイヤー・ウィズ・インストール!

 

 

「アイエエエエ! ニンジャスレイヤー!? ニンジャスレイヤーナンデ!?

 こんな話、上(上位存在)から聞いてない!」

 

 

 ファイアイーターは激しくロウバイした。ニンジャスレイヤー・リアリティ・ショックだ。その特製ニンジャソウルに刻まれた、ニンジャスレイヤーTRPGのルールが、ジゴクめいて赤く光る双眸のうちのひとつを恐れたのだ。ネオサイタマの死神じみた眼力を!

 

 

『死ね。/イヤーッ!』ゴブリンスレイヤーの右ストレートパンチ!「グワーッ!」回避対応失敗!『死ね。/イヤーッ!』今度は左ストレートパンチ!「アバーッ!」回避対応失敗!ゴブリンスレイヤーのパワは、とてつもない自己強化(バフ)によって跳ね上がっていた。

 

 

「ナ、ナンデ……オレサマ……ニンジャ……なのに……」ファイアイーターは今にも気絶しそうな、朦朧とした意識の中で呟いた。せっかくニンジャになったのに! 嫌だ! 死にたくない!『それがどうした。死ね!/カイシャクしてやろう。イヤーッ!』「アバーッ! サヨナラ!」

 

 

ナムアミダブツ! ゴブリンスレイヤーは小丸盾外周部位のチャブギロチンめいた鋭利な刃先で、ファイアイーターの首を刎ね飛ばした。ファイアイーターはしめやかに爆発四散。

 

 

何故? 浮かんだ疑問より先に、ゴブリンスレイヤーは極度の疲労を感じてシリモチをついた。肉体の限界を明らかに超えていた。その反動であろう。彼はたったいま自分の身を包んだ自己強化(バフ)を理解しようとした。それは簡単だった。自己強化(バフ)の方から語りかけてきたからだ。

 

 

(((グググ……なんたるキンボシ・オオキイ! アヤツのソウルを感じるぞ! ニンジャマスターを殺せ……殺すのだ!)))(知るか)(((何?)))(俺はニンジャマスターなんぞ知らん。俺はゴブリンを殺すだけだ)ゴブリンスレイヤーの宣告によって、即座に両者のインスタントな繋がりが別ちはじめる。

 

 

 この共鳴は、ゴブリンでもあり、ニンジャでもあるゴブリンニンジャを相手にしていたからこそ起こったもの。ゴブリンではなくニンジャを相手にするには、互いの方向性の違い、殺意対象の違いにより、ソウルが一致しないのだ。常に共に在ることは無い。出来ない。

 

 

(((だがゴブリンニンジャ殺傷には積極的クロスオーバー、クロスソウルが必要0111ゴブリンニンジャ100110たらまた呼100011トダマ…呪文110010『Wasshoi!』……忘れるべか10010101ニンジャ殺す100110)))殺意の共有を介したソウル共振現象が収まる。全身を描け巡る脈動が消えた。

 

 

 ……そして、名状しがたい赤黒の炎エフェクトもまた消える。跡形も無く。

 

「ニンジャなんぞ、知ったことか」

 

 ゴブリンスレイヤーはにべもなく独白。

 祈らぬ者(NPC)の呪詛じみた力。

 安易に頼るべきものではない。

 継戦に継戦を重ね過労死する未来しか見えない。

 

 だが、謎めいた自我を持つ自己強化(バフ)の言うとおり、第二第三のゴブリンニンジャが現れたとしたら。

 

 彼は両手を見続けている。

 不思議な感覚だった。

 眠っていた潜在能力が目覚めるような。

 いまはもう、感じない。

 だが、それでいいのだ。

 何故か? ゴブリンに使われるからだ。

 

 この世の王だとでも言わんばかりにつけ上がるゴブリン上位種、おそらくその最上位にすら位置するであろう存在を、逆に恐怖のドン底に叩きおとして蹂躙する。

 なんと心地よい体験だったことだろう。

 

 だが、過剰な力はゴブリンに利用される。

 実際いまゴブリンスレイヤー自身が体感した、歪んだ万能感さえ得られた自己強化(バフ)を、おそらくファイアイーターも得ていたに違いないのだから。

 

 危険だ。

 この力、存在を許してはならない。

 ゴブリンに利用されるからだ。

 

 ゴブリンスレイヤーは両手を握り、開き、立ち上がった。

 そして雑嚢からとりだした強壮の水薬(スタミナポーション)を呑み、極度の疲労感を誤魔化すと、二百一、と呟いた。

 ゴブリンスレイカウント。ゴブリンニンジャもまた、ゴブリン。

 数えもらすことは、ない。

 

 謎めいた覚醒の原因、理由、必要な要素。

 それらすべてを明らかにするような情報を、今の彼は持たない。

 

 たった一つ予想できることは、この謎めいた超古代文明の遺跡には、それを誘発するなんらかのなにかがあるかもしれないという可能性だけ。

 辺境の各地でゴブリンを殺し続けてきた彼が、はじめて会うタイプのゴブリンだったからだ。

 

 可能性があるなら、それで十分だった。

 この遺跡は、徹底的に破壊しつくさねばなるまい。

 再びゴブリンに利用されないように。

 

 ゴブリンスレイヤーは決断的に、雑嚢の中から『こんなこともあろうかと』備えていた全てを吐き出すことを心に決めた。それでも足りぬなら、一度帰還し、再度備えなおしてでも。

 

 ゴブリンスレイヤーはゴブリンをスレイする。

 ニンジャスレイヤーはニンジャをスレイする。

 またいつか、ゴブリンスレイヤーの前にゴブリンニンジャが現れたとき。

 似て異なる者の存在の生存を許さぬ殺意は再び、そのソウルをインスタントに共振させるだろう……ともに嘆き、震え、恨む……憎悪を共有するからこそ成せる、ソウル一体感とともに。

 

 

「それにしても、『Wasshoi!』か。なんとも気の抜ける響きの呪文だ」

 

 

【サンプルリプレイ】終わり

 

 

【アフタートーク】

 

 

「コラッ!」エルフのせんしがボブを叱っていた。《真実》と《幻想》はなんとかエルフのせんしを宥めようとする。「ウチのボブが本当に失礼いたしました」エルフのせんしは腰から120°深々と頭を下げて2柱に謝罪。アンチ・ヘイト活動などあまりにも奥ゆかしくないからだ。厳重注意!

 

 

ボブは抗弁した。「ちょさくけんとかがしんがいされたら世界がおしまいだ」エルフのせんしは問うた。「……なぜ?」「だって、なんか内容がパクられたりとか」「……きみは、その描写で目撃したというのか?どこで?」「実は見ていない」「きみはニンジャなのか?」「ハイ」「コラッ!」

 

 

エルフのせんしはひかった! そしてエルフ・ケンでボブの中からわるいソウルを追い払った。『邪魔を……グワーッ!』ニンジャマスターはすごいしんせいなひかりとかのせいでどっかに退散した。『次こそは絶対だーッ!』アンダードッグ・ハウリングを残して。エルフのせんしの教育的指導はつづく。

 

 

「きみはたまたま目にした作品をいきなり叩いた。なぜだ?」「パクリかもしれないから」「リスペクトだったらどうするんだ? 君は何と戦っている」「えっと」「パクリでないなら、作品を叩いた君は、何だ?」実際、ゴブリンスレイヤーはニンジャスレイヤーのパクリではなかった。

 

 

そこには確固とした独自の世界観があり、人々はネオサイタマとはまた方向性の異なるマッポーめいた世情にも絶望せず生き生きと暮らし、そしてゴブリンスレイヤーはゴブリンをスレイしていた。ラブ、リスペクト。そしてラブ。「叩いた君は?」「ごめんなさい」「反省せよ」

 

 

エルフのせんしはパン、と掌を合わせた。「では、これでブルシットは水に流した。立ちなさい」ボブはチャブの前から立ち上がった。そして改めて《真実》と《幻想》に向き直り、腰から90°曲げて謝罪した。「ごめんなさい」「良いよ良いよ」「楽しかったかい?」「……ハイ」「それなら良いんだ」

 

 

「そんな甘やかすようなことを言って」「良いじゃないか。きっと次元渡り(プレインズウォーク)も初めてだったんだろう? ちょっとは気が大きくなるものさ。それこそ、ニンジャになったみたいにね」次元渡り(プレインズウォーク)。自らの内に「灯」を見出すことで覚醒した者が行える、超自然的な現象。

 

 

おそらくそれは、ボブの内心に湧きあがったとてつもないデスパレード感情の高ぶりや、いにしえの暗黒神存在がきっかけとしてなんかいいかんじに火がついたっぽいのが原因なのだろう。それだけボブは重篤ニンジャヘッズなのだ。

 

 

ボブは自分の崇拝する世界が簒奪され、蹂躙されるかもしれないという危機感を覚え、その他さまざまなよういんが巡り巡って自分のソウルに火をつけたのだ。その灯は、エスカレーションは、今はもう大人しい。沈静化している。

 

 

エルフのせんしはボブの手を取りました。「さあ、もとのせかいに帰るんだ」「ハイ」エルフのせんしに導かれ、ボブはあるべきばしょに帰っていきました。

 

 

「……結局、ゴブリンスレイヤーは骰子を振らなかったね」「まったく、あいつは大したやつだよ。なんだかちょっとした敗北感すら感じるよ」その場に残った二人は、お互いに顔を合わせ、苦笑いを浮かべました。

 

 

《幻想》がゴブリンスレイヤーのピンチの際に転がした骰子は『Wasshoi!判定』。ゴブリンスレイヤーが天命に賭けた骰子ではありません。ニンジャスレイヤーTRPGに定められた、2D6なのです。

 

 

『Wasshoi!判定』とは?:ネオサイタマの死神がエントリーするか否かの判定だ。これは特殊な判定で、常に2D6を振り、その出目を合計する。判定目標値は、その場で最も高い【DKK】値を持つニンジャの【DKK】値。それを下回ることで成功する。

 

【DKK】とは? ダーク・カラテ・カルマの略。「邪悪なニンジャ」のロールプレイと、それによって引き起こされる「ニンジャスレイヤーによるスレイ」という一連の流れを、きわめてゲーム的に再現するためのルールでもある。

 

いつ判定する?:「シナリオで規定された各種タイミング」、「1ターン中に合計3以上の【DKK】が発生したタイミング」、および「ニンジャマスターが適切と考えるあらゆるタイミング」で『Wasshoi!判定』を行ってもよい。

 

 

ファイアイーターの【DKK】ポイントはニンジャクリエイト特殊裁定により、はじめから12だった。何か問題があれば、すみやかに後始末できるように。彼が生き延びる出目は、元よりなかったのだ。そういう検証をするための検証盤であるのだから、むべなるかな。あえて何も言うことはない。

 

 

ボブはあえて、邪悪なニンジャをロールプレイし、ゴブリンスレイヤーのニンジャスレイヤー性を引き出そうとした。その狙いは、最終的に成功した。ゴブリンスレイヤーはゴブリンニンジャスレイヤーとなったのだ。でも思ってたのと違う。パクリではなかった。成否こもごもであった。それでよかったのだ。

 

 

いにしえの暗黒神……混沌の勢力に属するニンジャマスターは、このセッションに、どのような企みをもっていたのだろう? その具体的な内容は、本人が退散したのでハッキリとはしないが……半神的存在としてのニンジャを、四方世界に定着させようとした、といったところか?

 

 

2柱……3柱が当初想定したニンジャスレイヤーのエントリーは、超古代文明のなんらかの機構により異次元ポータルが繋がり、そこから登場する、というものだった。そして、ニンジャスレイヤーはゴブリンニンジャをスレイ。爆発四散にせしめる。

 

 

その後、2人のスレイヤーが二言三言言葉を交わし、それぞれ自らの居場所に帰還する。出目によっては、ゴブリンスレイヤーは死んでいただろうが……そういう結末を想定したシナリオであった。だが、骰子は面白い出目を出した。「死神のエントリー判定」の出目が6だったのだ。

 

 

『Wasshoi!判定』が成功だった場合、続けて「死神のエントリー判定表」で出現方法を決定する。それが戦闘シーケンス中だった場合、『Wasshoi!判定』は基本的にターン終了フェイズの最後に発生する。

 

◆死神のエントリー判定表

1:高所からの回転着地!

2:ドアを蹴破って出現!

3:KRAAAAASH! 窓を突き破り出現!

4:天井破壊や床破砕または垂直リフト射出により出現!

5:冷蔵庫や金庫から突如出現!

6:「行き先はジゴクですよ」

 

出目が5であれば、面白そうだった。ニンジャスレイヤーがミミックめいて、宝箱に潜んでいるような形での登場となるからだ。しかし実際の出目は6……「行き先はジゴクですよ」とだけ書かれても、ゴブリンスレイヤー読者諸君には意味が分かるまい。下記に詳細を記す。

 

6:「行き先はジゴクですよ」:マップ上にいるNPC1人(標的ニンジャから最も近くにいる者)が、実はニンジャスレイヤーの変装であった。そのNPCのコマを【殺】に変更せよ(本物のNPCがどこにいったのかはニンジャマスターが後で考える)。激しい恐怖や動揺により、次のターンの終了時まで、その場にいる【DKK】1以上のニンジャ全員は『連続側転難易度』が+2される。

 

 

ここでいうNPCとは、祈らぬ者ではない。コイネー・コンバートするならば、モブキャラと訳するのがもっとも適切であろうか。あの場にモブキャラはいなかった。全員死んでいた。状況に合わないために骰子を振りなおすという方法もあった。

 

 

しかし、いにしえの暗黒神は、盤面内描写で描いたように、ニンジャソウルを自己強化(バフ)と解釈して、盤面内に表現することを提案したのだ。ボブを含めた全員が面白い試みだと思い、同意した。故に、成った。ゴブリンスレイヤーはゴブリンニンジャスレイヤーに。

 

 

「ねー。まだー?」

 

 

《豊穣》が2柱に呼びかけました。

 あんまりにも主軸の盤面を放っておいたら、《豊穣》がこっそり何を仕込みだすか分かりません。

 ゴブリンスレイヤーは、生死の瀬戸際でも骰子を振らない。

 2柱は改めてその結論を共有して、円卓の間に戻るのでした。

 

 

「あれ? ボブくんは?」

 

「お迎えがきたから帰ったよ」

 

「なあんだ。色々教えてあげようと思ったのに」

 

「混沌の勢力に引きこむのはやめてあげてよ。根は純朴そうなのに」

 

「ゴブリンニンジャだけど、アレやっぱ駄目だよ。

 世界のバランスがこわれちゃう。やめやめ」

 

「えー。面白いのに」

 

 

 やんやかんや。やんやかんや。

 こうして神々は、ちょっとした検証のために中断していた卓上遊戯を、再び再会するのでした……

 

 

……………………

…………

……

 

 

 数日後。

 ボブはたくさんの物理書籍がはいった紙袋を片手に、ひいこらひいこら自宅に帰りつきました。

 

 

「ゴブリンスレイヤーはニンジャスレイヤーじゃない。それはみとめる。

 だけど、反ニンジャスレイヤー……つまり、ほとんどニンジャスレイヤー」

 

 

 ぶつぶつと独白しながら、端末を起動。検索する言葉は、ゴブリンスレイヤー。

 

 

「僕はまだかんぜんに権利のしんがいが無いって認めたわけじゃないんだからな。

 とにかく全部! あますところなくチェックしてやる。

 見逃さないぞ。定額制動画視聴サイトで、アニメイシヨンも全部見てやる。

 もうすぐ第二期みたいだし、もしどっかにパクリがあったら許さないんだからな」

 

 

 紙袋の中身はゴブリンスレイヤー単行本……小説と漫画が両方。

 それに、ゴブリンスレイヤーTRPGの各種プリセット。

 万札一枚では到底足りないくらいのお買い物ですね?

 

 

「ニンジャスレイヤーフロムアニメイシヨンより先に第二期決定しやがって! 許さんぞ!」

 

 

 ボブはクリックし、ゴブリンスレイヤーの第二話を視聴し始めました。彼は数日前、第一話だけ見たのです。

 

 

「ニンジャスレイヤーに卑猥は一切無い!

 そ、それにくらべて、ゴクッ。

 ああいう、解像度の高い描写するなんて、いけないんだ。

 青少年の何かが危ないだろ! 厳重注意!」

 

 

 ああ、ボブ。ゴブリンスレイヤーアニメ第一話に描写される、豊満を囲んで棒で叩き、ファック&サヨナラせんとするインモラルなリョナ描写でエッチ・リアリティ・ショック(モザイク付き)に発症し、性癖が歪むほどニューロンが焼かれたのでしょうか?

 

 エルフのせんしからたくさんちゅういされたのに、それほどあまり心から反省してはいないのでは?

 

 

「公平で中立的な第三者として、僕は厳しくいくぞ!

 こっちには巻き戻しも、スロー再生だってあるんだ……

 権利なんだ! とにかく何もかもを!」

 

 

 いいえ。きっと違います。

 彼はインターネット上で激しいアンチ・ヘイト活動はしていません。

 今はただひとり、ゴブリンスレイヤーがニンジャスレイヤーの権利を侵害していないか、監視しているだけ。

 巻き戻しや、スロー再生を駆使して。

 

 

「ハァーッ! ハァーッ! ハァーッ! ハァーッ!

 過去回想から無防備な豊満シーン!?

 アブナイ! IPが!?

 本当に大丈夫なんだろうな? もう一度見てみよう」

 

 

 ボブは呟き、クリックしました。

 牛飼娘のバストは豊満であった。

 

 

「フィ……いけないぞ牛飼娘=サン! そんなことでは!

 卑猥なゴブリンに狙われちゃうじゃないか! カラダニキヲツケテネ!」

 

 

 オーバーリアクションでアニメを見るボブ。

 彼は相変わらずアンチ・ヘイトに繋がりかねない心を秘めていますが……

 ファンが気に入らない描写ひとつでアンチになりかねないように。

 アンチは気に入る描写ひとつで、ファンじみてくる可能性が、まったくないということはない。

 彼は実質、ゴブリンスレイヤーという作品の、新しいファンのひとりになったのです。

 

 そして動画や物理書籍のチェックだけでは不足と考えたなら、改めてとにかくどうにか四方世界の円卓へと行こうとするでしょう。こんどは、秩序に属するのでしょうか? それとも再び、混沌の勢力? それらはすべて、別の話……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【おまけ/ゴブリンニンジャ出現並行世界における、その後の一幕】

 

 

「馬鹿め」

 

 その火球は、あまりにも遅かった。

 カトン・ジツであれば、既に全滅していたであろう。

 そう思考する余裕さえあった。

 迎え撃つ男の、淡々とした呟き。

 轟音。

 閃光。

 そして静寂。

 ゴブリンスレイヤーはいつかのように、《転移(ゲート)》の《巻物(スクロール)》を発動した。

 激しい水圧が、上位種の四肢を裂いた。

 瀕死。

 ファイアイーターとは違って、あっけない幕切れであった。

 

「さて、お前の名前はなんといったか……どうでもいいな」

 

 ゴブリンスレイヤーは四肢の欠損に醜くうろたえ、声ならぬ嗚咽をあげるオーガの喉仏を踏みつけ、黙らせた。

 

「おまえなぞよりも、ゴブリンニンジャのほうが、炎を喰らう者(ファイアイーター)のほうがよほど手ごわい」

 

 そして高々と振り上げたショートソードで裂き、介錯。

 生死の瀬戸際、オーガは激痛と故も知らぬネームドゴブリンに劣ると宣告された屈辱に身悶え、あっけなく死んだ。

 

 ……その帰路。馬車の中。

 

 妖精弓主は眠るかどうかと思った話題の途切れ目に、何気なく、オルクボルグ(訳注・ゴブリンスレイヤー)に炎を喰らう者(ファイアイーター)について尋ねた。

 この胡乱な男が固有名詞を出すなど、そのとき初めて聞いたからだ。

 ゴブリンスレイヤーは早口で言った。

 

「恐ろしいネームドゴブリンだった。奴はいにしえの暗黒神とやらにニンジャの力を授かったと言った。先の上位種よりも素早く火の魔術を生み出し、放った。異様に素早く、先に見せた水圧の大半をかわされた。錬金術のようなものでこのような飛び道具を瞬時に作り出し、投げてきた」

 

 ゴブリンスレイヤーは妖精弓主に鉄の十字星……スリケンを見せた。

 ファイアイーターがカラテ生成したものだ。

 彼はあの日の未熟の戒めとして、反省として、またイザというときの強力な飛び道具として、それを小円盾の内や、特注で作らせたシュリケンホルスター内に仕込んでいた。

 彼はあの遺跡からの生還後、馴染みの鍛冶屋にも現物を見せ、シュリケンを量産してもらったのだ。

 

 スリケンはナイフより小さく、携帯性に優れ、並のゴブリンの技量では投擲物として扱うことはできない。

 それどころか、何も知らず握りこもうとしたゴブリンに自傷させることさえ期待できる。

 切り札とすることに躊躇いはなかった。

 

 習熟するのに苦労したが、ゴブリンを殺すためならば、たくさん練習することなどなんともない。

 

「コイツが俺の鉄兜をひしゃげさせた。その衝撃で俺は朦朧(スタン)し、片膝をついた。奴はその隙に接近し、鉄兜ごと俺の首を捻じ切ろうとした。先の上位種に匹敵しかねん怪力を、ゴブリンの体躯にして誇っていたに違いない。その前にコイツで胴体を狙われたら死んでいたし、調子に乗っていなければ逆転の目は無かった。馬鹿で助かった。炎を喰らう者(ファイアイーター)。恐ろしいネームドゴブリンだった。鉄兜の修理が終わるまでゴブリン討伐依頼を受けれず、苦心した」

 

「なんだ。思ったより冒険したことあるじゃない」

 

「冒険?」

 

 あれは冒険だっただろうか? ゴブリンスレイヤーは訝しんだ。

 

「強敵と命がけでやりあって、なんとか勝ったんでしょ?

 で、自慢げに語れる武勇伝になったんでしょ? 冒険じゃない」

 

 でもいつか、ちゃんとした冒険に連れて行く! と、妖精弓主は寝そべりながら拳を突き上げて宣言した。その胸は平坦であった。

 あれは冒険だっただろうか? ゴブリンスレイヤーは再び訝しんだ。

 

 あの日以来、新たなゴブリンニンジャとの遭遇(エンカウント)は、未だ無い。

 しかし、いつかどこかに現れるとしたら……常に想定し、予想と備えは怠らない。

 予想を怠れば死ぬ。備えが不足していても。ならばしない理由が無い。

 

 今はただ、備えよう。

 常に、常に備えよう。

 もうこれ以上、何も、喪わないために。

 

 

【おまけ】終わり。

 

 

 

【ここまでのあとがき】

 

▲以上でサンプルシナリオは終了だ。君はニンジャになってもいいし、ならなくてもいい。冒険者になってもいいし、ならなくてもいい。ゴブリンニンジャになるのはオススメしない。コンバート処理でGMに負担だからだ。するならステータス交換比率をグループ内で相談しよう。自由。多様性重点▲

 

▲ボブからはじまるクロスオーバー。ルビという特殊タグに使い慣れず、目の肥えたゴブリンスレイヤー読者の方々からしてみれば、表現に拙いところや解釈違い、ルビに不足があるかもしれないが、ボブもあたらしいファン(やっかいな、という一言がつくが)になったので彼の生存活動を許してほしい▲

 

▲話は全く変わるがボブは何故かハーメルン内に投稿されたあちこちの作品の感想欄に出没している。ボブは偏在する。これはプレインズウォーカーでも稀にだがよくある現象で、だからボブも実質プレインズウォーカーだ(発想の飛躍)ニンジャよりすごいのでは?▲

 

▲このクロスオーバー次元で、ゴブリンスレイヤーはシュリケン(たくさん)やスリケン(1つだけ)を投げる。その違いは? ゲーム的に解釈すれば分かる。手裏剣の種類によって威力が違う。そんな程度の理解で良い。詳しく知りたいならニンジャスレイヤーで検索だ▲

 

▲なにはともあれ、コンバート・クロスセッションはこれにて終了、完結です。中時間のご閲覧、ありがとうございました▲

 

 

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