壊れてしまったレフィーヤさん~妖精は髪を切り、そして英雄に依存する 作:37級建築士
治療にかこつけて新婚プレイさせたい。でも、やっぱり曇らせたい、だからこその失っきn…………なんでもないです
今回はレフィーヤ視点、短め。ではどうぞ
控えめに言っても、私の旅路は華やかなものじゃないと思う。全部が全部だめってわけじゃないけど、けど目新しく覚えている記憶は、私の旅路が曇ったものだと思わざるを得ないから
傷だらけになって、最後は救えなくて、そんな自分が嫌で嫌で、だから強くなろうと決めた
もとから、髪を切ろうとは考えていたけど、けどこんな形で髪を切ることになるとは思いませんでした。ええ、本当に
……わたしはこわれた
自覚はある。そのうえで、自分の罪を理解している
理解したうえで、それでも頼ってしまっている
考えすぎるとつらくて、だからそれにかまけて甘えてしまって、ほんの少しでも居心地がいいなんて考えた私はなんと恥ずかしいことか
……迷惑なのに、お荷物なのに
……どうして、あなたというヒューマンは
交わることは、時折だけ。本来私と彼は別の旅路を歩んでいた、はずだったのに
私はすぐれた英雄にはなれない。誰かのために、せめて手の届く範囲で守ることができる英雄なら、今思うにしても私がなれる英雄はそこまでだったと思う
けど、彼は違う。手の届く範囲なんか関係なく、必ずと、絶対にと、安易に壮大な言葉を吐いて、そして実行してきた
私とでは、きっと彼の歩む旅路は違う
私は進めなかったほう。現に、もう道はない
……なのに、なのになのにッ
道があるのに、彼は立ち止まって私を掴んでくれた
手離さないように、しっかりと、傍に止まって。包み込んで
そんなやさしさに私は寄生している。与えられるものは何もない、積み上げた関係もそっけなくて、感情的で嫉妬深い小うるさい女しか見せてこなかった
なのに、そんな私が、あろうことかベル・クラネルを独占してしまっている
知っている、彼がいろんな人々から親しまれて、期待されていることを知っている。
このままじゃいけない。私の停止に、彼を巻き込んでいいわけがない
治らないと、心を戻さないと。そのためならどんな治療だって受ける。
でも、時間はかかるはず。立ち止まらせている罪は、どうあがいても拭えない
……損はさせたくない、だから、だからッ
「……わたしはッ」
× × ×
「たし、はッ…………ぁ」
数秒、止まった思考で目の前を見る
まず見えたのは、薄暗い模様。それがくしゃくしゃに固まった服の塊だと気づくのに時間はかからなかった。
数秒間、それで意識は地に足を着ける。眠っていたことを、思い出す
「…………ん」
まどろみこ心地よさ、というのはあまりない。長く寝続けたせいで体は凝り固まり、どこかお腹の底がぐらぐらと揺れる
生理の痛みほどではないにせよ、体の不調は内面から現れていると理解した
「!」
足を延ばして、次に手を伸ばす。無意識に、そして思い出した。手をつないでいることを
それはいつからか、もしかして眠り落ちた後もずっとつないでいたのか、いや、いまはそれよりも
「べ、ベル」
名前で呼ぶ、いつからかフルネーム呼びをしなくなってしまった
口にすると、不思議と心に熱を感じるその言葉。呼びかける相手は、今も目を閉じて、穏やかな寝顔を見せる
手は握ったまま、服の抱き枕を挟んで、対面で向かい合って
……起こしたら、迷惑ですよね
持ち上げた手は降ろす。左手に感じる安心感は、今日も変わらず温かい
仰向けになって、レフィーヤは天井を仰ぐ。何もない天井
思ってみると、このまま動けないと何もできないことに気づく
だったら、またもうひと眠りするしかないのか、そんな不健康で惰眠な行動をとるべきか思案した
そんな、折に
………………——ッ
「……ん、うぅ」
もだえる下半身、身をよじり、右に左に、そして横向けになってベルを見る
「あの、ベル……起きて」
か細い声で、くださいと告げる。だが、疲れているのかベルは起きる気配がない
無理に起こそうとすれば話は別だろうが。軽くつつく程度では起きないぐらいに熟睡していることは理解できた
今だけは、楽に寝かしてあげなければと、責任を覚えた
…………ぶるっ
「ぅ…………ぁ、どうすれば」
右手で、布の上から抑えるしぐさをとる。長く眠っていたせいで、たまったものは突如として警告を体に発した
内からくる痛みは、きっとこれのせいだったのか
「ベル、きて……さい、わたしその」
おトイレに、行きたい。はっきりとささやいた
震えた唇で、赤らめた頬と向き合えない視線で、そんなどこか艶やかな様相でレフィーヤは告げる
告げる。だが、か細い声のささやきで起きる眠りではない。それは、十分に理解できている
迷惑をかけるべきじゃない。次第に、考えはそのような方向へと移る
…………トイレは
立ち上がって、少し縁側の廊下を歩いた先。併せて10歩もかからない。
だけど、今の自分には、千里にも近い距離
「……ぁ、ベル……ぅ、ン————ぁ、あぁ」
……ブルル
羞恥の熱、それが急にヒヤッとなる感覚が襲う
とっさに、右手で下を確かめて、そして安堵の息を
「は、ぁ……むぐッ」
吐こうとしたが、瞬間で止めた。気を抜くだけで、この均衡はたやすく壊れてしまうと理解した故に
……行かない、と
……迷惑、かけたらダメ
「ひとり、で……解決、しないと」
震える手、怖くなっていっぱいに息を吸う。
ベルのジャケットに顔をうずめて、繊維に込められた空気をいっぱいに吸った。
ほんのすこし甘い洗剤の香り、そこに鼻を突く青臭い好青年を思い浮かべるにおい。
依存しきった心には、きっとどんな悪臭であろうと、甘美に変わって肺を埋めてしまう。そんな壊れてしまった器官で、いっぱいに安心感を注ぐ
……大丈夫、練習はしてる
6日目から始めた、リハビリの一環
少しずつ手を離せるように、繋ぐ手を緩めたり、ほんの一瞬だけ離したりと、訓練を積み重ねてきたことをレフィーヤは思い返す
いまだ、指二本で動機が乱れる経過で、手を放すなんて決して不可能に近い
だけど、それでもと
……迷惑は、かけたくない。負担も、させたくない
「一人で、立ち上がらないとッ」
気持ちに活を入れる。固まった服からジャケットだけを口元に、まるで水に潜るための酸素袋をあてにするように
レフィーヤは体を起こし、膝を立てて立ち上がる。
それでもなお強く掴んでくれている手、それを、今
「はぁ、はぁはぁは、ぁ…………うッ」
高鳴る鼓動、乱れる視界
乱れる動悸を抑えるために肺いっぱいにベルを吸い込む
決意が揺らぐ前に、熱が冷めきる前に
「すぐに、戻ればいい……また、すぐ手をつなげばいいッ」
震える手、強張る指、だから、払いのけるように、拒絶するように
…………パッ
「————ッ!!」
離した。勢い良く手を、レフィーヤは払って捨てた
繋がりを絶った。となれば当然
…………ドクン
「ぁ、あぁあ…………ん、あ”ッ」
……ドクン、ドクンドクンドクンドクン
「うぅ、あ”ぁぁあぁぁぁぁッッ」
壊れた心、その加護は消えた
剝き出しの心に風が吹く。内なる記憶の風が、ごうごうと吹きすさぶ
冷たく、激しく、礫を含み、霰や雹を巻き込んで
やわらかい心に、痛々しい傷を与える。自傷が始まる
次回に続く
以上、レフィーヤちゃんの一人でトイレいけるかなでした
次回の冒頭はレフィーヤのSAN値チェックから入ります。お楽しみに
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