壊れてしまったレフィーヤさん~妖精は髪を切り、そして英雄に依存する 作:37級建築士
SANチェックいっぱい、楽しいなぁ展開が
世界を旅した神ヘルメス、彼は旅の道中に死体を見つけた。メッセージを残した死体だ
ヘルメスは世界を見渡して歩く最中、それは偶然か来るべき流れか、この世界とは完全に来歴も構成も異なる外なる世界の存在を知ることになった。
自分たち神と子供たちのいる世界、そんな居心地よき空間の果てに、隙間や切れ目を見出してしまった愚かな子供達
哀れなる彼ら彼女ら、覗き込んでしまった者達の遺言を、神ヘルメスは一冊の書記に書き記し、これを今日まで秘匿していたのだった
~某日~
ある時のことだ。旅の道中で立ち寄った廃村の建物で、ヘルメスは死体を見た
死体は死体だったが、なぜか黒くよどんで形だけが保たれていた。腐敗してカビが覆われているのか、はたまた何らかの呪術か
不浄に塗れた不可思議な死体は、よくよく見てみると手の先に一冊の手帳を残していた
以来、ヘルメスは旅の途中でその続きを探した
不可思議な死体が残した手帳、そこに記されたこの世のモノとは思えない記録の数々を目にし、そして察した
嘆かわしきかな、世界には数える程度だが、不幸な子等がいると。
集めた手帳、時に書物を上書きしたものから、自ら噛み切った指先で残した血の遺言に至るまで
ヘルメスは集めて、そして推測は結論へと至った
外なる宇宙、旧支配者
神も人も、時の流れも法則も、ありとあらゆるものを内包したものを一個単位の宇宙と考えて、自分たちのいる世界とは別にもう一つの世界もまた存在しうると、いや存在は証明されてしまうと、恐れた
……世界は一つじゃない、夢のある言葉だが本質は質の悪い悪夢だ
ヘルメスは知る。人と神が共に歩む世界があれば、同時に人が悪神に脅かされるだけの世界もあると
そして、そんな世界においては神以外においても質が悪い。この世界にも怪物はいるが、あちらの怪物は悪辣さにおいて異常がすぎると
人の理解を超えて、人の尊厳をたやすく踏みにじる。人が世界を回すのではなく、世界が人に苛烈を強いる
飽くなき絶望の世界からの怪物、そんなものは踏み入れてはいけない
……認識も駄目だ、直に覗き続けて知り過ぎれば、それだけで影響は及ぶ
……書き記したものはこの世界の知識だ。だが、つながりがある者が得る知識は向こうの知識だ。だから覗き込んだ彼らが死んだことは、はっきり言って救いだ
今まで見つけてきた死体に共通して言える。メッセージを残し、一人孤独に死んだ人々、その者と縁のあるものを見つけ、ヘルメスは生前の行動を数名だが知ることもできた
外の世界を垣間見たものは、皆すべからく狂気を発症していた。そして、人知れず、誰にも見つからず姿を消した
……彼らは狂った、だが狂いながらも見て知った脅威を、これ以上食い止めなければと正しさを貫いた
ある日記の話だ
男は世界のすき間から時を超えた螺旋都市の世界を覗いた
覗いて以来、男は世界を記録に残し続けた。年の形、その世界にいる犬のような姿をした怪物
だが、そうして眺め続けるうちに、自分が不浄に犯され、外の世界と繋がっていくことを実感した
ティンダロスの猟犬、次元を超える不定形の怪物
『他にも脅威は数多くある、だがこいつは特に駄目だ……ティンダロスの猟犬だけは絶対に駄目だ』
神ヘルメスは告げた。故に、最善の手を打つ
一つは、ダンジョンの閉鎖空間に対象を隔離したこと
不浄を浴びてな死に至らず、また自殺も選ばない。そんな彼には隔離以外の方法は無い、下手に討伐のために狂気の伝染者を増やせば通り道のリスクを増やすことになる。故に、隔離
狂気は伝播する。不浄は認識という接触を経て、人の身を犯す
通り道のリスクは防がねばならない。故に、二つ目も当然実行済み
誰にも告げず、誰にも悟られず
二人の少年少女は、世界の誰とも知られず存在を消す
神ヘルメス、彼は最悪の絵図を描く。世界安寧という大義を掲げ、罪を背負うと決めた
〇
「レフィー、脱がすよ……ごめんね」
謝る言葉をかける、うつろな瞳は反応があるかも不確かで示す。
暖める。冷えた心をほぐして、安心感を与える
教えられた方法だから、今はそれにすがるだけ
……ザバァ
「……ぁ、やめ、て……だめ、です」
「大丈夫だよ、お湯をかけるだけだから」
シャワーホースから湯を出し、肩から下に、体を覆うようにお湯を流しあてる
寝巻を脱がして、下着代わりのキャミソールとショーツの姿に、熱い湯で色を戻そうとする。肌色は艶を帯びて、魔石等の暖かい色を良く映す
体温も上がっている。だけど、まだ
「汚い、私は汚いから……だめ、ベルが汚れちゃう、だめッ」
「……ッ」
繋いだ手、それだけは離すまいと強く、強く握って離さない
引き寄せる体、抱きしめて、僕事お湯をレフィーに浴びせる。湯に包まれて、抱きしめて
飲みきれないほどの安心感を注ごうとするも、まだ
「う、わあぁ、ぁぁ……だめ、汚いから、私は汚いッ わたし、きだないッ!!」
「暴れないで、自分を責めちゃ駄目だッ」
「……ぁ、うぁ、ごめんなさいッ ベル、ごめんなさいぃ……ぁぁ」
……ぼくのバカ、強く言ってどうするッ
「……きたない、わたしはきたない、汚くてごめんなさいッ、ごめんなさいおこらせてごめんなさいッ」
泣きじゃくる顔は、絶望を色濃く映していた
自分の言葉で自分の心を刻む。自傷の痛みで苦しむ顔、こんな悲しい顔をさせてはいけない
「……レフィ」
だから、落ち着いて、声は荒げず
寄り添って、懸命に声をかけ続ける、ことで
どうか、どうかこれ以上
「怒ってなんかいないよ、僕はレフィーを嫌いにならない……信じて」
シャワーヘッドを手放す。代わりに空いた手で、僕はレフィーの腰を抱いた
「壊れないで、自分の言葉で自分を壊したら駄目だよ」
手を握って、ほほに触れて、目元から流れる涙を見た
ぬぐって、温めて、大丈夫だと抱きしめて
子供をあやす様に、大げさすぎるほどに丁重に扱って、でも、それでも
「…………ころ、して」
レフィーは、まだ自分の心を傷つける
今ここが浴室でよかった。傷つけるものは何もない、布でも刃物でも、ほんの少しでも目を背ければ命を絶ちかねない。
本気で、そう感じる。断定できる、それだけ、今のレフィーは危うい
恥ずかしいからだけじゃあこうはならない。なぜ、いったいどうして
「ころし、て……ベル、おねがい
「嫌だ、絶対に助ける」
「……どう、して」
「どうしてって、そんなこと」
「だって、って……そんな、そんなこと」
助ける行為に理由なんていらない。
正しいことをしたい、僕もそれを望んでいる。だから、何も
……なにも、ほんとうにそんなこと
「……ぼくは、ぼくはッ」
揺らぐな、考えを楽な方に傾けるな
今、目の前に助けを求めている女の子がいる。理由なんて、それだけでいい
考えるな、考え過ぎたら、それ以上、僕は
僕は、本当に
………………ぼくにとって、レフィーヤさんは
……ほんとうに、助けたい相手なのか
『僕がレフィーヤさんを見捨てれば、冒険者に戻れる』
『見捨てれば、元通り……ダンジョンで英雄になれる』
『英雄になれない、なら、ならならならならならならならッ』
『……レフィーヤを見殺しにすることは、まちがっているだろうか?』
「ちがう、そんなこと僕は思っていない!!黙れッ!!?こんなこと、僕は考えたりしないッ!!?!?」
〇
……ぐちゃ
……ぬちゅ、ぐちゃぁ
…………ぐるるぅ
「!?」
感情のままに叫び散らした、自分らしくない汚い言葉を吐き散らして
だからか、おかしい。今僕は、どこに、なにをしている
……ぐちゃ、ぐしゃぁ
音がする、何も見えない。どろどろで、熱い、ナニカの中?
「……いるの、君はそこに」
手を伸ばす、泥沼をあがくような感覚で、泥をかき分けた先に、人の温度を感じた
レフィーヤさん、あなたがそこにいる。僕は、そうだ、思い出した
浴室にいて、レフィーヤさんを綺麗に洗おうとして、そこで、僕は抱きしめていた。悲しむあなたを憂いて、必死に慰めの言葉をはき続けた
汚くなんかないと、肯定し続けようとして
だからか、僕は、悩んで、迷って、何も見えなくなって
……見えない、そうだ何も見えていない
あるのは泥の感触。そして、レフィー。触れている、柔らかい
生きている、白昼夢じゃない、けど
……見えない、目を開けろ。あければ、わかるのに
怖い、本能が瞼を固く閉じようとしている。
この泥はなんだ、さっきから聞こえる、奇妙な生き物の音はなんだッ!!
「レフィー、レフィーヤ……く、ぁあああああッ!!」
叫んだ、頭を激しく振って、強引に恐怖を払って
目を開けろ、そして前を見ろ
後悔するな、覚悟を決めれば、後悔なんてしない、しないしないしないしないッ!!
「しない、しないんだッ————ぁ、あぁ」
見ろ、なにが見える、そこに何が
「れふぃ、レフィーヤッ!!」
……―――――――――――――――グシャァアアッ!!?!?
……ブシャァ、ボタタ
……————ポタ、ポタ
「え?」
目を開けた、なのに痛い
痛い、顔が痛い、腕が痛い、お腹が痛い
痛い、血が出ている。冷たい、暖かくない
「———————ァアァ」
傷口を抑える、腹の傷が深い
ヘドロに手を付く、青黒い泥に自分の血が混ざって、酷い匂いだ
……糸、いや触手
貫く針は合わせて四つ、出どころはまっすぐ上に、一つの穴で帰結する
レフィーヤだ、目の前にレフィーがいる。だけど
飲まれている、ヘドロがまとわりついて、そして
……ころ、して
…………ベル、にげ、て
「!」
かろうじて動く口の動き、触手の出どころは、レフィーヤの口の奥から
……ぼたッ———―ボタ、ボタ
「ぁ、あぁああァアアアアアッッ!!?!?!?!」
だらりと垂れる血の赤、鋭利な刃を持つ触手が出るレフィーの口は、痛々しく頬を裂いて血を垂らしていた
不浄の泥に飲み込まれて、まるで、まるでこれでは
穢れた、妖精
次回に続く
以上、何が起こっているかわからなくなるだろうな展開でした。要約しますと、レフィーヤもベルもただただ可哀そうなバトル展開が始まります。
正気じゃいられない、そんな物語を描きたい。読了感謝です
次回、足りない描写の説明、そしてヘルメス様が相当なクソ野郎ムーヴを見せます。推されている方には先に言っておきますごめんなさい