壊れてしまったレフィーヤさん~妖精は髪を切り、そして英雄に依存する 作:37級建築士
強くなりたい。冒険者であれば当然の願いであり、決意であり、そして宿命である。
一人の少女は進化を経た。そして同時に多くを失った
心の傷は開いたまま、痛みを噛みしめ虚勢を真実にするがごとく
少女は、再びダンジョンへと繰り出した
長い、山吹色の髪をなびかせて
〇
数日前、下層を探索中に僕はソレを見た。グレイトフォールの行き着く先、未だ先の戦闘の名残が消え切らない滝壺の一帯、そこで僕は惨劇を目にした
目にした惨劇を前に、まず抱いたのは恐怖、それは記憶の底より蘇るトラウマによるもの
かつて、このダンジョンで目にした最悪にして災厄、ジャガーノートの片鱗がソレには感じ取れた
「!」
モンスターがいた。無形で、有形、常に形を変え続ける流動体の新種
そいつは冒険者に襲い掛かっていて、そして次の獲物だとばかりに僕を見た。その時、ソレは形の崩れた獣だったのに、溶けた靄は次第に形を得ていく
変わる形は、色は違えどまさしジャガーノートのそれの再来だ。過去と今と、ウチから沸き起こる悪寒で血の味を思い出す
『————……ッ』
心が氷になる感覚を、今も僕は覚えている
去ったはずのトラウマを無理やりに掘り起こされて、心を蹂躙される不快感をいっぱいに感じて
それなのに、どうしてか僕は
前へと、進んだ。いや、駆け出していた
『あ、あぁ……ハァアアアアアアアアアアッ!!!!』
ナイフを抜いた。襲い掛かる流動体の刃を掻い潜って、僕はソレが伸ばす手を切り裂いた
切り裂いた感触はやはり泥、ソレはジャガーノートではなかった
「あぁあああああああッ!!?!?」
けど、油断はできない。僕はナイフを手放して無我夢中でその手をとった
今まさに、全身に裂傷を抱いて、最後に首を手折られそうな彼女を救うために、抱きかかえて飛びのいた
意識はない、呼吸も不確か、死にあと半歩もすれば至りそうな、それほどに重症なあなたを助けて、僕は手を取った
……生きている、まだ終わっていないッ
体を前に、二振り目のナイフを構えて、僕はすぐに戦闘態勢を取った。
だけど、そいつは僕が構えるやすぐに目もくれずその場を去っていった。より下の階層に、溶けたヘドロが這う虫の集合体の様に霧散して去っていく
白昼夢を見たような心地で、僕は目にした謎に首をかしげる、そんな暇はなく
怪物が逃げたのは、僕のすぐ後ろにロキファミリアの人たちがいたからか
『……ッ』
そして、誰かの一声でようやく意識が怪物から襲われていた冒険者たちに変わり、ここまでしてようやく僕は確信が得られた
長い髪をしていない、雑にちぎられ切り乱れたその短い髪のせいで僕は認識することができなかったのだ
今さっきまで襲われていて、僕が現れたことでかろうじて命の危機から免れた、そんな不運な冒険者
『れ、レフィーヤさんッ』
知っている、知らないわけがなかった。年も近い、共に戦ったこともある
いつも怒っていて、だけど心根は優しくて
本当なら、もっと仲良くしたいけどそれがうまくできない、そんなあなたに僕は真っ先に駆け付けて、そして手持ちのポーションをありったけ使いつぶした
無我夢中で、とにかくこの場から連れ出して、あとは背負って走っていたことだけが記憶に残る
三日前、僕はレフィーヤさんを助けた。リヴィラに立ち止まり、すぐに目を覚ます様子のないから、そのまま地上へと交代なしに背負って走り続けた
~二日前~
早朝に、まだ日も登り切らない時間に、その音は突然として
『すぐに来てッ』
出かけの服に袖を通して、早朝の鍛錬を行おうとしていた。
アイズさんがホームに来たその時、一歩違えば入れ違いになっていた。今思えば、そうならなくて本当に良かったと思っている
その時、僕はアイズさんから理由を聞かされることもはぶかれて、ただ早くと、僕をケヒト様の治療院、つまりはアミッドさんのもとへと連れていった
門をまたぎ、回廊を抜けて、そして重い扉の先に立つ
そこでは、見るよりも先に耳にするのが先だった
見るも無残な、そして聞くも無残な
『—————————————————————————ッ!?!?!?!』
レフィーヤさんが、血を流して発狂する姿を、悲鳴を、僕は知ってしまったのだった
心的外傷によるストレス障害。及び精神に重度の依存症
僕の知るレフィーヤさんは、あの日を境に壊れてしまった
次回に続く
今回は短め、次はもう少し文字数多く提供します。それともう少し症例の解説も
曇らせ展開強め、曇らせレフィーヤで提供したい。介護描写も書きたい。書きたいことが多い
でもラストはハッピーエンド、ここが大事