壊れてしまったレフィーヤさん~妖精は髪を切り、そして英雄に依存する   作:37級建築士

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曇らせ後の甘々なレフィーヤが好評で何より、胸揉ませの続きは行われるかどうか、静観なさってくださいまし

健全に書きますので、もしかしたら期待外れかも


健全で済まぬ


(21) 熱

 

 

 

 消灯時間が過ぎた。治療院の部屋はどこも静かで、そして宿舎の灯だけが僅かに光るだけ

 

 時折聞こえる足音が部屋のすぐ祖座を通り過ぎるだけで心臓がむず痒くなる。わずかに明かりをつけたこの部屋では、理由をつけて中を確認されるかもしれない。そう思えば、紐を引いて魔石灯を消すのは仕方ないこと

 

 

「……ッ」

 

 

 だけど、その行為が、レフィーヤさんには別の意図に思われたのか、破廉恥な行為をするために電気を消したと思われたのか

 

 想像力が豊かだとは思ったけど口にはしない。それはそれで顰蹙を買うと思う、無駄な買い物はしちゃいけない

 

 

「あ、その……今日は、お話をしに来たわけで、でもあなたが望むなら……うぅ」

 

 

 強く、シャツの前を掴んで、また暴走して服を脱ぐ光景が連想されて、すぐに弁明の言葉を頭で練った

 

「いや、ちがいます……消さないと、誰か部屋に来るかもですから」

 

「……ならそう言ってください」

 

「うん、ごめん」

 

「…………手」

 

「?」

 

 

 動揺して離してしまった手を、また差し出してきた。それはダンスの誘いをするような所作で、そっと手のひらを下に向けて差し出している

 

 

「他意はありません。ただ、手を繋いで欲しい。だから、握ってください」

 

「……うん」

 

 

 ちょっと動揺して、けどすぐに取りなおして僕は手を取った。毛布から足を抜いて、僕もレフィーと同じベッドの縁に座る

 

 互いに並んで腰かける態勢で、僕の左手をレフィーの右手に結び付けた

 

 

「……左手、こっちのほうがちゃんと握れるから」

 

 

 必要のない、無駄に言い訳な言い回し。言葉は情けないへっぴり腰だけど、手のつなぎ方は積極的で、親密的だ

 指と指を絡めて、握り合う。手の形、温度、全部わかる

 

 湿った手の中の空気で熱くなる。熱さは繋いだ手を超えて、徐々に僕らの氷を解かす

 

 

「……レフィー、教えて。どうして、ここ最近はあんなに」

 

 必死で、むきになって、けど真摯に

 

 僕に対してお礼をしようとするのか

 

「ぼく、レフィーを助けたのは……それを望んで選択したのは僕だ、僕が助けたいと思ったから、レフィーの手を取った。今みたいに、だから……その」

 

「……無理、しないでって……そう言いたいのですか」

 

「うん、たぶん……そう言いたい」

 

 言いたい、願望としては

 

「けど、ごめん……ぼくも、わからない」

 

「……」

 

「気持ちの整理がつかない。レフィーヤを助けたくて、それは嘘じゃなくて、でも……だったら誘いに乗るべきなんだよね」

 

「…………」

 

「ごめん、整理がつかなくて……ごめん」

 

 

 迷う心はいったい何がわからなくて悶えているのか

 

 レフィーを大切に思う気持ち、それは理不尽に対する怒りや正義感だけじゃなかった。義憤だけじゃ、あの脅威を乗り越えることはできなかった

 

 背中を押したのは、まぎれもない僕の中の願望

 

 そう、あの時思ったレフィーへの意識

 

 

 

「……ベル」

 

 

 

「!」 

 

 

 

 答えがうまくまとまらない、会話の最中に悩んで思考して

 

 だから、完全に不注意だった。気づけなかった

 

 

「答え、別に言わなくていいです」

 

「……レフィー」

 

 

 近い、繋いだ手はもちろん、肩と肩が触れ合う距離に、レフィーは詰め寄っていた

 

 

 

……匂い、すごく甘い

 

 

 

 答えを求めてぐるぐる巡っていた脳に、突然風が吹き荒れた

 

 甘い香り、花の匂い、思考で籠った熱に清涼な息吹が吹きこまれた

 

 

 

「……ふぅ」

 

 

 

「ひぁ……ッ」

 

 

 そう、吹き込まれたのだ、それも物理的に

 

 

「!」

 

 

「……ふふ」

 

 

 振り向き見て、そして微笑んでいた。

 

 いたずらに成功した顔は、いじらしくも愛らしくて、何とも文句が言い出せない

 

 何も返せない僕に、レフィーはまた手を差し出した

 

 

「……手を」

 

 

「う、うん」

 

 

 繋ぐ。今度は右手も

 

 

「指、ちゃんと動くみたいですね」

 

 

 握った手で、指の根元や腹の部分をなぞる。

 

 くすぐったくて、でも気持ちいい。女の子の掌と指の感触は、やはり男の自分とは質からして大違いだ

 

 

「感じていますよね、神経も繋がったみたいです」

 

「……うん。あの触手、とてもキレ味が良かったみたいだから……だから、ちゃんとくっついて」

 

「……」

 

「守ってくれて、ありがとう」

 

「!」

 

 

 不意打ち、ささやいた感謝の言葉に首が上がる

 

 明かりを消した部屋、月明かりのわずかな反射が部屋を淡く照らす

 

 白磁のような肌、月の光でもレフィーの顔はよく目に留まる。そして、そんなレフィーの頬に、一筋の光が落ちていく

 

 

「……命を救われた」

 

 

 震えた声、けど懸命に声を出して、思いを吐露する

 

 

「はじめはダンジョンで、そしてこことあの離れで、本当にあなたはお人よしです。今でこそ、私は助かりましたけど、あなた私のために人生を棒に捨てようとしたなんて……って、あなた……あなたってヒューマンは……ぁ、あぁ……ぅ」

 

 

 ぽつりと降り出した雨が、夏の夕立のごとく一気に降りしきって、綺麗な顔をくしゃくしゃに変える。

 

 涙を流して、けど拭き去ることもせず両手は繋いだまま、レフィーヤさんは涙をこの場で出し切ろうとしているのか

 

 流す涙が無ければ、語れない思いなのか

 

 

 

 

「わたし、ひどいです……あなたに返しきれない恩を感じているのに、意地汚いわがままを捨てきれずにあなたを求めてしまった」

 

 

 

 

「……ッ」

 

 

 

 

 つなげた手のひら、力が強く込められている

 

 思いを吐露すればするほど、我慢は壊れていく、答えは何時だって繋いだ手のひら

 

 レフィーヤさんは、あの時からずっと、今も

 

 

 

 

 

「私は、貴方に依存していた日々が忘れられない……ベル・クラネルと離れたくない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 離れたくない、その言葉は痛烈だった

 

 日中の全ての行動、困ってしまってまともにその真意を受け止めようとしなかった僕に、大きな罪悪感を募らせる

 

 はじめから、レフィーヤはまっすぐに思いを伝えていた。なのに、僕はそれを汲み取らなかった

 

 依存しているから仕方ない、そう言い訳すればきっと願いは叶っていた。けど、それはできないから今こうして明らかにした

 

 手を繋ぐだけでも足らない。だから行動にして、そして言葉にも出した

 

 レフィーヤは、僕を求めた。もっと単純で、短い言葉にも変換できるその真実を、今だけは曖昧にして

 

 でも、いつかはちゃんと言葉にする。だから、今はこの形でいい

 

 

「恩返し、でいいかな」

 

「……依存してしまったから」

 

「お互いにとって一番利益がでる方法……だから、うん」

 

「そうですね、えぇ……利益は、大事です」

 

 

 

 おぼつかない距離感、触れた手だけはしっかりとそのまま

 

 

 

 涙はもう枯れて、今は落ち着いて晴らした目を休めている。泣くのは疲れる行為で、休む必要はある

 

 そして、都合よくベッドはここにある

 

 

 

 

……のし

 

 

 

 

 重さが増えた。シングルにしては少し大きい病院のベッド、二人分の足を収めた毛布の中で、足先と足先がこすれあう

 少し悪戯なのか、足先を上から覆いかぶさるようにして、足の指先をつまんだりして、すると小指と小指がうまく引っかかったのだ

 

 

 

 

「……ふふ、どうかしましたか?」

 

 

「————」

 

 

 

 ベッドで腰をつけ合って座る。そんな状態で、さっそくレフィーがいたずらを仕掛けた

 

 触れ合うことが堂々とできる楽しさからか、さっきまで泣いていたのにすっかり上機嫌で、今は足先を遊ばせている。

 

 

 

 

「れ、れふぃ……く、ふぬ」

 

 

 

 

 次第に、それはどっちが先に相手の足の小指をつまめるかの対決に変わる。まだ傷跡が残る僕のお腹は腹筋に力がこもりにくいぶん、レフィーの方にどうしても軍配が上がってしまう

 

 けど、それでも

 

 

 

 

「くぬぬ……あ、あぁ」

 

 

 

 

 つままれた、がっちりと両足で片足を固定されて、くにくにとレフィーの足が僕の小指をつまんでいる

 

 

 

 

「ふふ、病み上がりなんですから無理しないでください」

 

 

 

「……ッ」

 

 

 負けたのに、言い返せない。むきになって挑んで負けているのは僕、けど乗らせたのはレフィーヤ、でも負けてしまえば言い返すこともできない

 

 されるがまま、僕は足先をレフィーの方へと伸ばした。献上した足が、レフィーの足に絡まって

 

 

「ふふ、ベルの足ゲットです……残念でした」

 

 

 

 毛布に手を差し入れ、そっと太ももを撫でた。突然の手の感触、それも敏感な内腿に手の指先が触れている

 だから、くすぐったくてつい声が出てしまった

 

 

 

「……可愛いとこあるんですね」

 

 

「れ、レフィーが大胆だから」

 

 

「別に、そんなこと」

 

 

「……胸、触らせた」

 

 

 ぼふん、湯気が噴き出た音が聞こえた。どこからかは明白

 

 

「うぅ、こほん……もう忘れてください。あの時は、やっぱり気の迷いもありました。そういうことにしてください」

 

 おねがいですと、ちょっと本気で触れてほしくなさそうで、あまり追及はできなかった

 

 誤解も、結局とけたかわからない。精神が不安定で、薬の副作用で、そんないいわけでどうにかアイズさん達を説得できたかは、もう天に祈るばかり

 

 アミッドさんの方は、もう完全にそういうものだと疑っていた。実際、裸の胸に手を当てていたわけだし

 

 

「…………」

 

 

 裸、胸

 

 

「………………柔らかかかった」

 

 

「ベル?」

 

 

「ふぁ、なんでもないですなんでもないです」

 

 

 視線が痛い。突き刺さる視線で心臓に穴が開きそうだ

 

 

「……」

 

 

「?」

 

 

 

 怒られるかと身構えた、けどレフィーは僕に背を向けた。

 

 それはそれで立派な意思表示かと思った。けど、であれば

 

 

 

 

「……あの、ここ僕の」

 

 

 

 

「————」 

 

 

 

 押し黙って、レフィーは背を向ける

 

 

 

 僕のベッドで、僕の枕で

 

 

 

 そのまま、就寝するような姿勢で

 

 

 

 

「もう、遅いですから」

 

 

 

「……それはそう、だけど」

 

 

 

「…………」

 

 

 

 返す言葉は無い。それは、意地でもここで寝るというメッセージが見える

 

 

 

「寝ないの、ですか?」

 

 

 

「!」

 

 

 

 震えた声が耳の奥をくすぐった。甘える猫のような声を出して、そんな声を聴き入れてしまって

 

 体は、どうにも心より素直になって、逆らえない

 

 

 

 

 

……もぞ、ずぞぞ

 

 

 

 

 

 

「……ッ」

 

 

 

 

 

 入ってしまった。同じ布団で、背を向けあって

 

 これでいいのかと、心で疑問を問いかけて、するとそんな意を汲み取ったのか

 

 

 

 

 

「手を」

 

「え」

 

「……繋がないのですか?」

 

「だって、背中合わせだと……ん」

 

 後ろにやる手、指先を絡めて繋いで見るけど、少し肩の周りがひっかかる

 

「これ、楽じゃない」

 

「ですね、なら……ベル」

 

 

 

 

……もぞり

 

 

 

 

「!」

 

「……ん、あぁ……ベル、ベルこっち」

 

 

 

 

 うごめいていて、布団と体がこすれる音が耳に響く

 

 そして、ささやく音もさっきより濃くなった

 

 

 

 

『……ベル、こっちを向いて』

 

 

 

 

「!」

 

 

 

 

 ささやく声は、耳元で直に

 

 口の中で唾液と空気が混ざる音、呼吸のリズム。生暖かい呼気が後ろ髪をくすぐる

 

 伝わる情報はどこまでも生々しい。レフィーヤが背中に密着して、また何度も呼びかける

 

 

 

 

「……こっち、向いてくれませんか」

 

 

 

 

「————ッ」

 

 

 

 

 甘くささやく声、落ち着いて放つ声は昼間の時よりもはるかに違う。主に、色香が

 

 思いを打ち明けて、ようやく落ち着いたはずなのに、結局これでは暴走していたままでは

 

 

 

 

「……やっぱり、興味がない」

 

 

 

 

「ち、ちがう!」

 

 

 

 

 興味がないなんてない。そう言おうとして、反射的に動いてしま手

 

 それが、レフィーの策略に乗せられた僕の愚かしさだということは、すぐにその表情で気づかされてしまった

 

 

 

 

「……ベル」

 

 

 

 和やかに微笑んでいる。レフィーの手は僕の手を掴んで、傷のない上になっている右頬に、手のひらをかぶせた。

 

 熱くて、しっとりしている。それが僕自身の手汗のせいなのか、けどそうじゃないと嫌でも理解してしまう

 

 インモラルに、そして艶やかに

 

 ムードの中で、レフィーヤさんは僕に触らせている

 

 

 

 

「……秘密ですよ」

 

 

 

 

 恥じらい、けど微笑み

 

 手首をつかんで主導権を奪われた僕の左手が、今目の前で下へ、横たわるレフィーヤさんの体の方へと移動して

 

 

 

……する

 

 

 

……すつ、ふゆん、ぎゅむ

 

 

 

「!」

 

 

 叫びが出なかったのは、それが一度経験した感覚だから

 

 今は服越し、だけどあの時と違いいきなりじゃない。じっくり時間をかけて、丁寧に

 

 それが触れていいものだと。そこが、一番柔らかい場所なんだと教えるように

 

 

「誰にも、言っちゃ駄目です……から」

 

 

「……なんで、レフィー」

 

 

「うれしくないのですか?」

 

 

「…………うれしい、です」

 

 

 嘘はつけなかった。正直に、赤くした顔でわかる通りに本音を吐露した

 

 

 

「ふふ……そうです。理由はそれです」

 

 

 

「?」

 

 

 

 

 

 服越しに、手のひらでレフィーに触れるこの時間

 

 行為は果てしなく驚き隠せない事柄なのに、流れる時間も、発する音も小さい

 

 不自然に、異様に、窓の外の音が耳に触れる。風の音、庭の木々の葉がこすれる音

 

 廊下を行き交う団員の足音、何かの医療装置のちいさな駆動音

 

 全部、全部全部、拾いきれてしまう程に感覚は研ぎ澄まされる

 

 

 

 

「駄目、気を散らさないで……ちゃんと、見て」

 

 

 

「!」

 

 

 

 つかんだ手、また一段と強く膨らみを押し当てられる。

 

 指の先まで、服をくしゃくしゃにして奥の膨らみを掴んでしまった。

 

 弾力も、質感も、全部全部、掌が鮮明に情報を拾ってしまう

 

 

 

「答えは急がなくていいですけど、でも……それはそれとして、ぬくもりは欲しい、です」

 

 

 

 

「……ッ」

 

 

 

 甘くささやく声を飲んだ。吐く息も触れ合う距離で、だから自然と言葉の震えが唇に届く

 

 入ってくる。目の前にレフィーがいて、レフィーが震えていて

 

 そして、熱くなっていることが、肺の底で理解できてしまう

 

 

 

 

 

 熱い

 

 

 

 

 

 

「——————ァ……熱いッ」

 

 

 

 

 

 

次回に続く





次回も健全にベルレフィ、曇らせた分ベルレフィのパートが長く続く問題
  
次回もお楽しみに
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