不墜の一番星 作:チョコミントバナナDX
結局、ディナーの味は緊張してしまってよく分からなかった。
会話も何処か上滑りしていたし、互いに冷静さを欠いてしまっていたんだ。
まぁ、初めから完璧なものなんて無いのだからこれで良いのかも知れないな。
別にデート自体は何回でもできるんだ、こんな初々しい感じも良い思い出になるのだろう。
そんなこんなで小さな反省を胸に二人で夜のネオン街を進む。
最早、お互いに言葉は無かった。
人目を盗むようにそういうホテルに転がり込む。
ベッドが視界に入った瞬間に少し眩暈がした。
「ああ、シャワー後か先がどっちが良い」
「じゃあ、先に頂くね」
とりあえず最低限のマナーだけはこなし、部屋の角に目をむけ最後の思考に耽る。
「上がったよ?」
「済まない、すぐ浴びてくる」
どうやら深く沈みすぎていた様だ。自身の未熟を恥じながら頭から水を被り思考を鎮静化する。
アイを待たせる訳にもいかないので烏の行水でとっとと上がった。
さぁ、もう後戻りは出来ない。
ベッドルームのドアノブを握る手は最後まで震えたままだった。
▲
薄明かりの室内、ベッドの衣擦れ音、エアコンの風
そして自身の鼓動
眼前には少女が一人、身を委ねる様にペタンと座り込んでいる。
「───じゃあ、約束通り、好きにしていいよ?言うことだって何でも聞いてあげる。でも保証出来るのは始めの一回だけね?その後は…さ、私が我慢できないと思う」
常人なら理性が壊れるその言葉。だが僕は別の心配で気が気じゃなかった。
「そうか、二言はないな。じゃあ、そうさせてもらう」
「ホントに一切、私に気を使わなくていいからね?今は無性にそうされたいの」
そう、今回の敵は彼女では無い。
「後悔しても、もう遅いからな」
敵は自分自身。
具体的に言うと暴発がすぎる上に火薬が少なく、砲身も短い我が主砲だ。
───さて、戦略を組まねば。
正直言ってこの股間に付いている不発弾はR18レベルになると容易く爆散する。暗にめちゃくちゃにしてと言われた手前、事が始まる前に暴発したらかっこ悪いなんてレベルじゃない。
多分、行為そのものがトラウマになり毎晩ベッドの中で悶絶する事になるだろう。
しかも相手からは一切何もされてないのでその情けなさは更に加速する。
自分の限界を自分で制御できず爆裂四散した間抜けに成り下がるからだ。
2回目以降はいつ果てようが知った事では無いが、この1回目には僕の漢としての全てが掛かっていた。
だからと言ってノータッチは論外だ。そりゃ、戦場から逃亡すれば恥をかく事はないがアイは悲しむだろう。それと比べれば僕の恥などカワイイ物であろう。
でも、それはそれ、これはこれだ。
やっぱ、間抜けすぎるのはヤダ。
優位とまではいかなくとも、一瞬でもいいから対等でありたい。
では、結局いつも通りに、欲ではなく理性を持って夜を越えよう。
───すっと、アイに手を伸ばす。
彼我の距離が短くなっていく
二人の影が重なる
彼女は歓喜に満ちた微笑みを浮かべながら目を閉じた
精巧なガラス細工を触る時の様に緊張した手は、
彼女の期待を外して、頭部のある一点に落とされた。
みょーん、みょーん、さらさら
「へ?」
「いや、ごめん。一度好き勝手に触って見たかったんだ。アイのサイドテール」
「いや、そうじゃなくて、なんでもしていいんだよ?もっとこう、なんかさ」
「だから言っただろう、後悔してももう遅いって。これから数時間僕は中途半端なスキンシップしかしない。僕が普段味わっている耐久地獄をたっぷりとご賞味あれ」
はっはっは、どうやら自分の犯した過ちに気付いた様だな。始めの一回が終わるまでは如何あれアイからは手を出す事は出来ない。自分で余裕こきながら吐いた言葉だからな、嘘つきな彼女でもこの言葉を嘘にするのはさぞ精神的に苦労するだろうなぁ。
そんな嗜虐心にくすぐられながら優しく丁寧に髪の毛を弄っていく。
前髪を触る
もみあげを優しく摘んでみる
こめかみを軽く押して反応を楽しむ
後ろ髪を手でサラサラと溶かす
時には普通に頭を撫でてみたり、昔教わった頭皮マッサージを施術したり
…あっ、襟足の髪の毛ふわっとしてて触り心地いいな
それはさておき、無論その間僕は全肯定BOTとして心のままにアイを褒めちぎる。
幸い語彙は多い方ではあるので、言葉が陳腐になる事はない。
そうやって彼女の髪と脳を溶かす事に専念して三十分強。
「お願い、おねがいよ。これ以上、こんな事されたら頭おかしくなっちゃう」
互いにまだ服一枚脱いでいないのにアイは完全に蕩けきっていた。
「うん、じゃあここはお終いにしようか」
その言葉の瞬間、抱きついて来ようとするアイを手で静止する。
「まぁ、待て。まだ1回目は終わってない。済まないがまだ僕からいかせてくれ」
そう言いぽかぽかと火照っているアイを抱き寄せた。
すっと顔を近づける、狙いはその艶やかな唇
───ではななかった。
こつん、と額と額が軽くぶつかる、鼻と鼻が掠りそうになる。
視界は互いにの瞳で埋め尽くされた。
「うん、頭が終わったから次は顔だ。いや、一回やってみたかったんだよね。この額合わせのシチュ」
アイの顔が焦燥に染まる。きっとこの後の数時間が未来が見えたのだろう。
まぁ、本当に嫌がっていたらすぐに辞めるつもりであるがこのルール内で苦戦している感じの表情ならまだ大丈夫だろう。
という訳で再びアイを愛で始める。
頬を揉む
目尻を解す
鼻先と鼻先を触れ合わせる
耳たぶをふにふにする
唇に指を当ててみる
───そして、ただじっと瞳を見つめる
ああ、こんなにも綺麗な物だったんだ、と改めて思った。
憎んでいた頃は気付きもしなかったし、付き合ってからも余裕を持って見れることは無かったのだ。
ここは作戦とか関係なしに一度見てみたい事が沢山あった。
穏やかな表情の時の少し細められた目、人を一撃で恋に落とす上目遣い、微睡みの淵で薄らと開かれる宝石箱…
エトセトラ、etc…
表情の数だけ目元に芸術品が生まれる、美しさが増していく。
…やはり人によっては気が触れる様な代物である事に変わりはないが、もう僕は大丈夫だ。
だってこれは僕が惚れた彼女の一側面でしかないのだ。その殆どを知る身からすればこの程度で気が狂っていたら命が何個あっても足りない。
星野アイはやっぱり自分の身に余る存在だったなんて結論はまっぴら御免だ。
その為にも、今晩は出来るだけ余裕をもってアイを見つめる事にしよう。
「好き、好き、好き、すき、すき、」
…啖呵切った手間あれだが、これは少しやり過ぎたのかもしれない。
アイは絶対にこちらには何もしてこないものの、最早誰がみてもそういう状態で身体をくねらせている。
人は四分間、目と目を合わせ続けると互いの存在が大きくなると聞いた事があるが本当だったのかぁ。でもこれはちょっと心配だ。
「おい、なんか色々と大丈夫か?アレだったら今すぐやめにして楽にしてあげるけど」
「ううん、最初こそキツかったけど、この全身をゆっくりと君の物にされていく感覚が堪らなく心地よくて、なんだかヘンな気分なの。逆に今までの短絡的な欲求じゃ満足出来なくなっちゃったかも」
…だからまだ首から上しか触ってないんだよなぁ、服も全部着てるし。
「まじでおかしくなる前には辞めるからな、じゃあ一応続けるか」
首に触れる。
喉を触り、声を聞いた。
脈をとり、心を感じる。
ついでに首の筋肉を解し癒した。
肩に触れる。
鎖骨の下、腕の付け根のリンパ節をなぞる。肩甲骨に指を沈める。
マッサージはお気に召してくれた様だ。
胴に触れる。
肋骨、鳩尾、脇腹、胎、臍。全てに優しく、
だが無遠慮に触れていく。
腕に触れる。
二の腕の柔らかさを堪能し、手首を指で撫でる。
少しイタズラで、手首から肩峰にかけて指でなぞってみたり
掌に触れる。
丁寧に手入れされた爪に見入る。指の長さを一本ずつ確かめる。
そして後はただ手を繋いだ。
脚に触れる。
太ももは想像以上に豊満で、一回後回しにしようとも思ったりして
でもアイの嘆願もあって結局触れてしまったな。
後はツルツルとしたふくらはぎを撫で、仕上げに軽く足ツボマッサージも施した。
時間にして三時間半に渡る愛撫、
これは一人の少女が落ちるには十分すぎるモノである。
服はいつの間にかはだけてピンクの可愛らしい下着がちらりと顔を覗かせている。
全身の筋肉の緊張をほぐされ、優しく撫で回された今のアイは裸よりも生まれたままの状態に近い。
ここらが潮時だろう。
「僕の我儘に付き合わせて済まなかったな、アイ。うん、出来ることはやった。後はまぁ、こんな搾りかすで良ければ、好きにしてくれ」
欲望と死闘を繰り広げ疲れ果てた理性の電源を落として、主導権をアイに返還する。
…何がとは言わないが、まぁ、長く持って三分かな。
「…だめ、まだ途中。最初の一回までは貴方がやって。そしたらきっと最高の瞬間を迎えられるの」
…まじかぁ
いや、自業自得だけどさ。まだ童卒から2回目よ、僕。
他の部位と違ってその辺の上手いやり方なんて知らんのよ。
1回目は目の前の人に襲われただけだし、理性はもう役に立たないし。
僕は服を脱ぐ前に情けなく暴発する自分を幻視しながら、全てを諦めた。
やっぱりお星様は僕の手には余るかもしれない。
申し訳ございません、この続きはどうか皆さまの脳内で…
私はまだ未熟なためそういう事は上手く書けない上、ここに書くとR18タグを付けなければならなくなってしまいます。