おしのこ!   作:すさ

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ダイナミックお邪魔しますわ

 ピンポンと玄関の鈴が鳴りわたる

 はぁーい、と中から女性の声が聞こえた

 

「二十歳のお誕生日おめでとうですわぁ!」

 

「……」

 

 星野アイの目に飛び込んできたのは貴族風ドレスに身を着飾った謎人物だった

 右手には伸した男を持っていた

 

「……はい」

 

「そっ閉じしないでほしいんですのっ! 傷付きます! というか傷付きましたわぁ……! よ、よよよぉ~!」

 

 わかったから入って。星野アイの片手が伸びてきて引き込まれるのだった

 半泣きの貴族令嬢を玄関に取り敢えず置いといた

 

「……ねぇ。あの。それなに?」

 

 色々突っ込み所はあるが取り敢えず星野アイは貴族令嬢のもつ男を指差すことにした

 

「え? なんか通りかかったらブっ飛ばしちゃったですの……なんでしょうこれ? あ。綺麗なお花持っていらっしゃいましたけれど。それは落ちてしまいましたわ」

 

「そうなんだ……」

 

 星野アイは頭を抱えた

 どうしたの母さん! と男の子が奥から駆け出てきた

 

「げぇっ!? クリソベリル!」

 

「あらアクアくん。ごきげんよう」

 

 アクアに指摘されあら、と白銀の手袋のある片手を頬に添えて笑みを浮かべる

 クリソベリル。天然の金髪と栗色の瞳を持つ可憐な少女であった。その身は黄色を基調としたドレスに包まれており明らかに異質なのだが“似合っている”ため見るものに更なる混乱をもたらすそんな存在だった

 

「う、うぅん……」

 

「セぇイっ!」

 

 ドゴォ、とクリソベリルは片手に握っていた男の腹へ入念に膝を入れた

 からんからん、と男の持っていた刃物が床に転がる

 

「……なるほど。珍しくお手柄だね」

 

 星野アイが顎に手を添えて落ちた刃物を見た

 それを聞いたクリソベリルは花が開くように笑うのだった

 

 

 

 部屋の一角に捕虜のように両手両足を縛られて床に転がされる男とそれを踏みつけるクリソベリルがいた

 

「取り敢えずガムテでぐるぐるのぐるにしてみましたわ!」

 

「うん。ありがとうクーちゃん……ちょっとかわいそうかもだけど。現行犯だからね」

 

 星野アイはクリソベリルとの出会いを思い出し。笑った

 ガムテで簀巻きにしている人を作り施設で本当の意味で浮いていた彼女が。今でも鮮烈に思い出せた

 

「わたくしはっ! あーちゃんの! お役に立てましたわぁ~! おォーッホッホッホッ!」

 

 高笑いしながら不審者を入念に縛る彼女を見て。星野アイをして表情が死んでいった

 

「相変わらずやべーやつだ……」

 

「うん……」

 

 アクアとルビーがその様子をみてやはり目が死んでいた

 この時ばかりは呆れるより他になかった

 

「むーっ! むーっ!」

 

 間もなく男が目を覚ました。クリソベリルが縛っていた男を睨む

 やべーやつ呼ばわりされて落ち込んだのか部屋の端の方で体育座りになり枕をもふもふしていた

 

「待って」

 

「……あーちゃん?」

 

 クリソベリルが目を向ける

 星野アイはそんな無垢な瞳を覗き込み笑みを浮かべる

 

「この人……知ってるかも。話を聞いてあげたい」

 

 ステイだよ、と言い残して。星野アイは四つん這いになって近寄る

 そして不審者の口のガムテをぺりぺりと取り払ったのだった

 

「──はぁ。はぁ。なんだ、こいつ。この暴力女ぁ!」

 

「……わたしのシンユウ、くーちゃんダヨ」

 

 男はクリソベリルを睨んだ

 星野アイをして擁護の言葉が浮かばなかった

 

「なんで棒読みなんですのォ……!」

 

 うう、とクリソベリルは枕に顔を埋めた

 男はそんなクリソベリルにかちかち、と歯を震わせる

 

「し、死ぬかと思った──」

 

 瞳と体を震わせて床を見ていた

 瞳孔が開いていた

 

「えっと……リュウゾくん、だよね? あれ。ちがったかな?」

 

 星野アイに名を間違われてちっ、と男は舌打ちする

 指先を頭にやって首をもたげる。あまりに色々ありすぎたかな、と内心思った

 

「ごめんね……わたし人の名前覚えるの苦手なの。でもほら、見えるかな。君にもらった星の砂は飾ってるよ」

 

「くっ……くうぅ」

 

 星野アイが俯きがちに告白すると男は閉口した

 唇から血が出るほど噛み、瞳からは涙が溢れていた

 

「もう警察呼んだからな。おまえは現行犯逮捕だ」

 

 ソファーの上に鎮座するアクア、ルビーが冷たく男を見下ろした

 この男は刃物を持っていた、と母親の星野アイから聞いている。最悪の想像をするのに少なくはない材料だった

 

「最ッ低!」

 

 ルビーがただそれだけ叫んだ

 くそ、と溢して男の瞳は震えた

 

「仕方が……仕方がないじゃないか……ッ! おまえ。アイィ! あんだけスキスキ言っておいてなんだよ。全部。全部全部う、そ──!」

 

「そぉいッ!」

 

 クリソベリルは枕を振り被って、投げた

 枕は綺麗に男の顔に直撃して倒れる

 

「……いつみても綺麗なフォームだね」

 

「あれは死んだ」

 

「すごいすごい。カッコ良く見えちゃったかも……!」

 

 母、兄、妹三者三様の感想を抱いた

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