「授業参観……」
寝間着姿の星野アイにうん、とアクアは頷く
小首を傾げて正座してそのプリントを凝視している
「いけるんなら参加に印付けてプリント提出しろって」
ふぅん、と星野アイは溢してボールペンを持つとあっさりと参加に○をした
片手でスマホを起動して高速でなにかを打っていた
「……言っちゃなんだけど、仕事大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。ありがとねーアクア」
そうか、とアクアは頷いていて
星野アイは細かなところに気が付く息子がやはり自慢だった。社長からの了解も取れたし行けそうだ、と満足そうに頷く
「ママが来たら大騒ぎにならないかな」
万が一があってはいけないとルビーはやや不安そうな顔を浮かべていて
「言うまでもなくミヤコさんは来てくれるしクーちゃん連れてくると思うから多分大丈夫……だと思いたい」
「なるほど……?」
アクアは微妙な顔を浮かべる
手放しに名案だとは流石に言えなかったようで隣に座るルビーに顔を合わせた。ルビーも同じような顔を浮かべていた
──この問題わかる人!
「はぁい!」
先生の一言に生徒は一堂は手を挙げる。小学低学年の授業内容はひらがな、足し算のレベルだ
アクアならずルビーですら鼻で笑ってこなせてしまう内容であった。であるからここぞとばかりに手を挙げていた
「張り切ってますわね。お二人とも」
「……そうだね、クーちゃん」
「やっぱりあの子達天才だわ……!」
流石に貴族令嬢服自重したクリソベリル、星野アイ、ミヤコの三人がその後ろから見ていた
三人で入ってきた時には他の保護者が疑問符を浮かべていたがクリソベリルに気が付くと見てみぬフリをするのだった
アクアとルビーはどちらが当てられて答えるか競うかのように問われる度に手を挙げていた
その様子をただ三人は微笑ましいものを見る目で見ていて
──では終わります。保護者の皆さんもありがとうございました
学校のチャイムが鳴り響いた。先生はそう告げて一度教室を後にする
アクアは席を立ち、真っ先に保護者に駆け寄った
「どうだった。ぼくどうだった!?」
ちょっと演じてる始末だった
星野アイはこれには目を細めてしまって屈んで笑みを見せる
「すごいねーアクアは。全部手挙げてたね」
ゆっくりとその頭を撫でていて
クリソベリルおねーさんだ、と目の端でクリソベリルが絡まれていたがそれはあえて無視していた
「ルビー」
ミヤコが所在なさげにしているルビーに気が付き呼び掛ける
気が付いたようで顔を上げてゆっくりと近付いていて
「アクア。ルビーを置いていかないの」
「わ、わかってる。わかってるんだけど……あああ~」
未だに母に撫でられ恍惚な表情を浮かべていてミヤコも流石にどうかと思ったのか注意していた
あはは、と同級生に笑われていた
「……全く。お兄ちゃんまぁまぁ人気だったのにマザコンばれちゃってるじゃん」
妹に囁くように言われたそれが一番ダメージ受けたのか固まっていた
ふん、とルビーはついにそっぽ向いてしまう
「ほら、行きましょう」
「……そうだった」
ミヤコに言われようやく星野アイは名残惜しそうに立ち上がりルビーの方を見る
撫で足りないらしい。もう終わりの会が始まるギリギリだった
「二人ともスゴいね。わたしちょっと感動しちゃった」
双子に向けてほんの少し前のめりになってそう話してから手を振って教室を後にした
クリソベリルはその間小学生でもみくちゃになっていて身動きが取れなくなってしまい、ミヤコが良い感じに別れてしまったと救出しに戻りこれを治めた
「ただいまー」
「お邪魔しますわ」
わたしは業務に戻らないとと例のごとく死んだ目のミヤコと別れてから星野アイはクリソベリルと共にマンションへ帰った
マスクを外して捨てて手を洗い、ついでに伊達眼鏡を水で流して乾かした
「……アクアくん。張り切ってましたわね」
お風呂沸かすついでに手を洗いながら一言溢した
そうだねぇ、と星野アイは着替えてコップとマグカップを洗いつつ溢す
「クーちゃんのスーツ姿新鮮だったなぁ」
「言われてみればそうですわね」
リビングへ移動してコップを置きマグカップを対面に置く。ジュースでいっか、と冷蔵庫から取り出したものを置いてクリソベリルを待った
やがてすっ、と座ってきて。白いスーツ、スカートのいっそ普通の姿の彼女は星野アイからはどこかシロクマめいたものに見えていたがそれはそれとしていた
「クーちゃんとこうして二人で話すの……なんだか久しぶりだね」
「確かに……そうでしたかもしれませんわ」
星野アイはアクアとルビーが産まれてからというものプライベートはアクアとルビーに付きっきりだ
面と向かって話す機会がなかったにしてはなんやかんや行動を共にしていたためクリソベリルとしてはそこまで気にはならなかったことなのだが
「テレビ、つけますわね」
いいよーとの簡単な返事にリモコンでテレビの電源を入れる
あふ、と星野アイはあくびをしていた
『わたし。犯人わかっちゃったかも──!』
『アイさんぽ♡』
『……シャークヘッドマンはね、痰なんか吐かないんだよ』
「いや流石ですわね……テレビつけるとあーちゃんばっかり出てきますわ。実は四人くらいいますの?」
そうかもねぇ、と星野アイは笑みを見せる
バラエティから映画まで幅広く活躍しているようで。それはそれでクリソベリルも嬉しそうだった
これなんかまんまですわ、とか言ってじっとテレビを見ていた
「あーそれ良いよねぇ。ラスボスもっとやってみたいな」
星野アイがする支配はとんでもなく説得力を感じた
思わず引き込まれてクリソベリルは息を飲んでしまっていて
「仕事も仕事で楽しくてさーついつい入れちゃうんだぁ。嬉しい悲鳴だよね」
そういって笑みを見せる横顔はどこか充足して見えて
その向上心にクリソベリルは感心したように頷く
「“おつこい”からなんやかんやクーちゃんとも共演できるようになったから、よかったなぁって」
「……バラエティといえどあーちゃんの土俵に入るのはいつにも増して緊張してますのよ?」
そうなんだ、と星野アイは笑っていた
クリソベリルにとっては笑い事ではないようで苦笑いを浮かべている
「きっと大丈夫だよ。クーちゃんなら」
──芸能界は一人で生きれる何かがないといけない。しかし、確信していた
クリソベリルなら自分とは別のなにかを掴めるかもと期待をしていた
「……わたくしの力というより、社長とミヤコさんの力って感じはスゴいですの。コネコネですわ」
「またまたぁ」
確かに最初はそういうこともある。星野アイには理解があった
頬に片手をやって真剣にテレビを見ているクリソベリルの横顔をじっと見ていた
「ねぇ、クーちゃん」
「なんですの? 改まって」
くりくりとした円らな瞳が向けられて顔が綻ぶ
首をやや傾げてきたのでなにか言わないといけないと思い、はたと思い付いた
「──今度こそ一緒に売れようね、クーちゃん」
それを聞いてややクリソベリルは目を見開いた
純粋に自分が負ける可能性もあるだろうな、とすら感じていて
「……あーちゃん。小さな気配が二つ、ですわね」
テレビを見ながらぽつり、と呟いていた
帰ってきたんだと星野アイは玄関を見る
とんとん、とか弱い音がして。はぁい、と星野アイが玄関に向かう
鍵を開けて目線を下にやるとアクアとルビーの顔があった
「ただいま母さん」
「ただいま。ママ」
うん、おかえり。と星野アイは笑みを向けて中に二人を迎え入れる
アクアくんとルビーちゃんのお母さんみんなキレイだねっていわれた、とルビーから聞いて母は腹を抱えて爆笑していた