おしのこ!   作:すさ

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自由研究ですわ

 エアコンの冷気の中、アクア、ルビーは机に向かっていた

 星野アイはそんな二人を見守るように対面に座っている

 

「まだ宿題に自由研究残ってるんだよなぁ。どうしたものか」

 

 クーちゃんの生態調べてみよっか、とは流石に星野アイも言えなかった

 うーん、とルビーも唸っていて。あっ、と天井を指した

 

「芸能界は? ママに聞けば一発だよ?」

 

「なんでも聞いてね~ルビー」

 

 えっへん、と星野アイは胸をはっていた

 アクアはそれに珍しくいや、との待ったをかけた

 

「……俺が言うのもあれだけど子供が扱うそれじゃない気もする」

 

 そっかあ、とルビーは人差し指を口元にやって上の方を眺めていて

 アクアも腕を組んで唸っていた。しっかりしてるね、との星野アイの独り言があった

 

「そうだ。雨の振る仕組みを自由研究にしよっ! 絵日記のネタも抑えられて一石二鳥かも!」

 

「あー。ルビーにはいいかもな」

 

 えっ、とルビーは首を捻っている

 アクアは目を丸くしていた。あっ、となにかを察していた

 

「……もしかしなくても合作?」

 

 そうだよ、とのきょとん顔のルビーの言葉があった

 よーし守護ろう絶対守護ろう。アクアは今一度覚悟を固めた

 

「へー。雲の中の水てきや氷のつぶが大きくなって落下して、雨として降ってくるんだって」

 

「まぁ天気予報とか降水量グラフも着けておけば調べた感じでて良いかもな」

 

 スマホを使いつつ画用紙に向かう二人を穏やかな目で星野アイはただただ見つめていた

 そんな折、とんとんとの扉が叩かれる音がして。はぁい、と星野アイは玄関に向かう

 

「ご機嫌よう。カップアイス買ってきましたわ」

 

 扉を開けると貴族令嬢衣装に身を包んだクリソベリルがスーパーの袋を片手に笑みを向けている

 ほう、と星野アイは目を丸くしてそれを受け取った

 

「ナイス」

 

 短いが効果的な賛辞だった。クリソベリルは顔が綻んでしまう

 バニラだね、と中身を見て呟いている。うんうんと満足そうに頷いていた

 

 クリソベリルを室内に入れてから鍵をかける。星野アイは袋から早速四つのアイスと付いてたプラスチックのスプーンを取り出してアクア、ルビーの二人に振る舞った

 保冷剤が利いていたのかそこまで溶ける事はなかったようだった

 

「急いで食うと頭キーンなる。気を付けろ……」

 

 頭を抑えるアクアに星野アイはそうなんだ、と頷いていて自分もとスプーンで掬って食べてやや体を震わせていた

 アクアはそれをじっくり見てしまい頬が熱くなった

 

「クーちゃんありがとう!」

 

 ルビーはアイスを一口掬って告げる

 いえいえ、とルビーの素直な感謝に笑みを向けていて

 

「バニラもぐもぐですわ!」

 

 手のひらに収まるカップを片手に高速でスプーンを扱う

 クリソベリルはひたすらバニラアイスを堪能していた

 

「えっと二人は何を書いてるんですの……?」

 

「雨の自由研究してるんだって」

 

 覗き見るのは悪いと思ったのか星野アイを真っ直ぐと見てクリソベリルは訊ねる

 星野アイはやや頷くと小さく笑みを向けていて

 

「ごめんなさい……一瞬グラフが見えた気が致しまして」

 

 注意はしていてもどうしても目の端に捉えてしまったようで。しゅんとしながらも告げていた

 

「別に減るもんじゃないから見て良いよ」

 

 あはは、とアクアは苦笑いを浮かべていた

 クリソベリルはそうなんですの、と改めて笑みを向けていて

 

「ルビーとの合作なんだ。なぁ?」

 

「うん。お兄ちゃんと一緒に作るの!」

 

 ルビーは雲の絵を描く作業を止めてクリソベリルに笑みを向ける

 そんな二人を見てはへー、と口を開けていて

 

「クーちゃん。くちくち」

 

 んっ、と星野アイに口を示されながら注意されてようやく口を閉じた

 しまいにはピーナッツ入れちゃうからね。星野アイはイタズラな笑みを向けていた。チャンスを虎視眈々と狙っているようだった

 

「あっ、そうでしたわ──わたくし、みなさんのお茶いれてきますわね」

 

 そういって席を立つクリソベリルの背中をただ星野アイは追って小さく溜め息を吐いていた

 やさしいなぁだとか気が利くなぁだとかの温かい気持ちで溢れていた

 

「へー。台風は赤道付近の海上で多く発生するんだって」

 

「台風は結構日本にくるからその手の理由を合わせて書いても良いかもな」

 

 スマホを片手に感心した様子のルビーと画用紙に向かうアクアのやり取りだった。結構本格的だねぇ、との星野アイの独り言があった

 スマートフォンが普及した昨今では簡単に大体のことが調べてしまえる。星野アイも言いながらスマートフォン片手にこれ使えないかな、なんてルビーに言ったりして手伝っていた

 

「台風の目の中は空洞のようになってるそうですわよ? そういえば台風の目の中にいる間はそこまで風が強くありませんものね」

 

 へー、なんて溢して口許が緩くなっているクリソベリルすらスマートフォンの力を借りていた

 以外と器用に扱えるらしく、打つ早さは目を見張るものがあった

 

「台風の目……大きく世を賑わせている中心人物って。母さんみたいだよな」

 

 にこり、と星野アイは息子に慈愛の笑みを向けていた

 アクアはうあっ眩しい、と目を抑えて狼狽えた。アクアは本当に表情豊かで面白いよね、と母は笑みを深めた。やはり息子がかわいくてしょうがなかった

 机に向かうルビーは興味深そうに頷いていて

 

「あーちゃんは台風の目というより台風そのものですわね。民衆を拐っていきますもの」

 

「えー? そんなになんでもたくさん拐っちゃったらわたし目が回っちゃうよ」

 

 あはは、と二人は笑みを向け合っていて

 アクアは終止真顔だったがルビーは笑みを浮かべていた

 

「──クーちゃんもわたしと一緒に回ってくれるの?」

 

「その時はわたくしは精々逆回転しないように致しますわね」

 

 そうだね、と星野アイは自分とは逆回転するクリソベリルを想像して目を細めていた

 きっと貴女はわたしに遠慮してぶつかってこないんだろうなぁ、なんて思っていた。そんなんだから飼育員さんにたくさん心配されるんだけど、とも思っていた

 

「……隙あらば仲良し」

 

「隙を見せる方が悪いよお兄ちゃん」

 

 確かに、とアクアは歯を食い縛り衣服にシワを作らんばかりに悔しがっていた

 ルビーはスマホ片手にマイペースに机に向かっていた

 

「途中だけどちょっと見てくれないか母さん?」

 

 うん、との星野アイ首肯があってアクアのものを受け取って見る

 まず字が丁寧すぎる。グラフとか書いてあって分かりやすくよく纏まっていた。一瞬パソコンで打ったのかなと錯覚してしまうようなそんな内容だった。およそ小学生が書くものではないように思えて、すごいとの感嘆があった

 

「うん。文句なし!」

 

 文句なしかぁ、との息子のとろけ顔があった

 ルビーの目が細まったが、今回は手伝ってもらってるからかほんの少しむくれる程度に収まった

 

「ルビー先生も良かったら!」

 

「あっ。ママ先生どうぞ!」

 

 はーい、と星野アイはルビーから手渡されたものを両手で持った

 まず雨の仕組みたるタイトルの字が丸みがあってもうかわいい。カラフルで女の子らしいいっそ安心感すら感じられる内容だった。ほっこりして自然と笑みが溢れた

 顎に手を添える。雲の絵とかワンポイントである水滴の絵とかが可愛すぎて世界平和いけちゃうんじゃ。美術館とかに捕まらないかな、とか本気で考えていた。息子には息子で甘いが娘には娘で甘かった。むしろ息子より娘に甘いところがあった

 

「おめでとう。優勝です!」

 

「やったー!」

 

 ルビーは万歳していた。ありがとう、と母から返してもらって笑みを向けている

 仲良しパワーの大渋滞ですわ。クリソベリルの内なるゆるキャラが揺れていた

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