おしのこ!   作:すさ

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花火ですの?

 本日は斎藤社長、ミヤコ全面協力のもと事務所へ集まることと相成った

 

「壮観だねぇ」

 

「そうですわねぇ」

 

 星野アイとクリソベリルは事務所の屋上で夜景を見る

 苺プロダクションは星野アイ及びB小町を擁するアイドル業とネット配信による収入、及び広告費により立派なビル一つ構える大企業に成長していた

 

「水汲んで置いといたからな」

 

「うん。ありがとう社長」

 

 よっこい、とバケツを置いて折り畳み式の椅子に腰かける

 星野アイは地面に目を向けて袋を両手で取った。花火セットなるカラフルな表紙で中には細長い花火やら箱状のものが入っていた

 

「おー。ネズミ花火とか渋いのもあるのか」

 

「ネズミ花火?」

 

「地面をこう、ぐるぐるしながら光るんだ」

 

 アクアがもう一袋買ってあった方を脇に抱えて指先を回すことで伝えていた

 えぇ、とルビーは驚きながらも感心している

 

「取り合えず普通のやつ貰っちゃお」

 

 ルビーは袋から長細い花火を取り出した

 星野アイがそれに気が付きライターを片手に近付いて屈む

 

「ふあぁ、きれい……!」

 

 ライターで火を付けられた花火が七色に光る

 きれいだねー、との星野アイの感嘆があった

 

「二刀流ですわ」

 

 しゃきん、と細長い花火に目を光らせながら両手で構える大人がいた

 たまにわんぱくが抑えられないんだよね。星野アイはクリソベリルを慈愛の眼差しで見ていた

 

「危ないからやめなさい」

 

 そんなー、とミヤコに一本取られて涙目になる

 後でこっそり三刀流して見せて貰おうかな。星野アイをしてどんな風に構えるのか興味が尽きなかった

 

「落ち着くなぁ」

 

 アクアはミヤコから火をとって線香花火を眺めていた

 ぼんやりと火が弾かれている様子を眺め目を細めていた

 

「渋いわね、アクア」

 

 そこにミヤコがやってきて屈んだ。その目はやはりぼんやり線香花火を眺めている

 アクアは小さく頷いていた。二人でその炎に癒されていた

 

「城○内ファイヤーですわ!」

 

 クリソベリルはひたすら長細い花火に火を付けてははしゃぎ、付けてははしゃぎを繰り返していた

 ライターを渡してあったため永久機関が完成してしまっていた

 

「わたしもやるー」

 

 長細い花火を片手に星野アイがクリソベリルに近づく

 良いですわよ、と頷くクリソベリルに微笑を向けて

 

「鮮やかー」

「キレイですわねぇ」

 

 花火の先端に持っていたライターで火を付けていた

 星野アイの瞳はいつも輝いているがこの時はなお輝きが増したようにも思えた。クリソベリルもそれを覗き見て負けじと終わった花火をバケツに放り込み新しく持ってきたりしていた

 

「最近仲良し多くない?」

 

「ママはクーちゃん成分が足らないとああなるね」

 

 クーちゃん成分、とアクアは反芻してルビーともに線香花火をしながら母とその親友候補を眺めていた

 二人は花火を合わせてきゃっきゃしてた。ぽろ、と主にアクアの線香花火が落ちる

 

「あああ……っ!」

 

「……ほら、線香花火ならまだあるよ。お兄ちゃん」

 

 切ない声を出してその様を眺めていた

 ルビーは心底しょうがない、という顔をして線香花火を新しく持ってくるのだった

 

「すごい、本当に回ってる。不思議~」

 

「駒みたいに回るから面白いなー」

 

 うん、とのルビーの笑みを受けて兄は死んだ目ながら大きく頷く

 火花を散らせながら回るそれを食い入るように見つめていた

 

 星野アイ、クリソベリルの二人もネズミ花火に火を付けこれを眺めていた

 クリソベリルはことに興味深そうに火花が散る様子を見ていて

 

「ぐるぐるのぐるですわ!」

 

 回る火花に合わせて顔まで回してしまっている始末であった

 キレイで光るものには目がないんだよね。星野アイ思わず笑みを溢さずにはいられなかった。ネズミ花火よりもクリソベリルの方を見てしまっていた

 なおこっそり見せてもらった三刀流は二本両手に持った上で頭に乗っかっていて。ちょんまげじゃん、と星野アイにはうけた

 

 ルビー、星野アイ、アクア、クリソベリル、ミヤコでなんとなく囲むようにして真ん中に小さな箱形の花火を置いた

 

「危ないから近寄るなよ」

 

 斎藤社長が今一度注意する。ライターで火を付けてから退避してミヤコの隣に収まった

 やがて箱から真上にシャーと七色に光る炎が巻き起こった

 

「怒った時のクーちゃんみたい」

 

「わたくしあんなんなるんですの?」

 

 クリソベリルが指差すと星野アイは頷いていて

 やっぱり超サ○ヤ人なのか、というアクアの懸念が口に出ていた

 

「綺麗だねー」

 

「そうだね。ルビーほどじゃないけどねー」

 

 ルビーはどきりとして赤面してしまっていた

 あはは、とそんな娘に母は愉快そうに笑っていて

 

「不思議だ……アイとルビーはありな気がする」

 

「そうなるとアクアくんが挟まりますわね?」

 

 クリソベリルは真剣そうな顔をしながら顎に手を添えていて

 そうか、なんて呟いてアクアはなおも深刻そうな顔を浮かべて腕を組みなにか考え込んでいた

 そんなことをしていると箱形の花火の光が小さくなっていき。完全に止まったところでミヤコがこれを処理した

 

 花火を堪能した一行はミヤコが運転する車で家路に着いていた

 助手席にはクリソベリルが収まり、後部座席には星野アイ、アクアに挟まれる形でルビーが座っていた

 

「とっても綺麗だったね!」

 

 そうだねぇ、と星野アイは娘の髪を解くように撫でていった

 先程言われたことを気にしているのかルビーはやや頬を染めていた

 

「ネズミ花火とか渋くて久々に見た」

 

「あれ、わざわざ取り寄せたそうよ」

 

 ミヤコのそんな裏話にほう、とアクアは感心して腕を組んでいた

 変なところ凝るのよね、とミヤコは続けていて

 

「打ち上げ花火とはまた違った赴きがありましたわね」

 

「みんなでわいわい出来てよかったよね」

 

 ほんの少し後ろを向いて大きく頷く

 ひょっこりでてくるとキタキツネ感あるよね。星野アイはそんなクリソベリルに柔和な笑みを向けていた

 

「……でも浴衣の母さんはみたいかも」

 

「そっかあ。じゃあ今度は浴衣用意しようね」

 

 うん、とアクアはにこやかな母と見つめ合った

 結局アクアが赤面して惨敗し、すぐに目をそらしてしまう。そんな息子の横顔を見て星野アイは口を緩ませていた

 なお妹は母の手でしばらく頭を撫でられていて今回はこれをまともに確認することはなかった

 

 ミヤコを車に待たせてクリソベリルは完全防備の星野アイ、アクア、ルビーと共にマンションの階段を登っていた

 

「今日は星が綺麗だったね」

 

「屋上から見る星空ってのもおつなものだな」

 

 そうだね、とアクアに声をかける後ろ姿をクリソベリルは神妙な顔で見ていて

 星野アイはこれに気がついたのか振り向いてから人差し指を口許にやっていた

 

「……ママの方がキレイだもん」

 

「あら。やり返されちゃったかぁ」

 

 珍しくルビーに言い負かされて。これであいこだね、と笑っていた

 そんなやりとりを見ているとクリソベリルは静かに笑みを浮かべていてやがてマンションの扉の前に三人で立った

 星野アイが鍵を開けてアクアとルビーは部屋に入る。クーちゃん送るね、と言付けて扉を閉めて一旦鍵をかけた

 

「帰るの? クーちゃん」

 

 既に背を向けているその大きな背中に話し掛ける

 クリソベリルは後ろを向こうとしてこれをやめていた

 

「はい。夜遅いですし……ちゃんと戸締まりして暖かくして寝るのですよ?」

 

「……さてはママなんだ?」

 

 ふっ、とクリソベリルは吹き出していて。後ろから来る衝撃に不意を打ったかのように目を見開いた

 腹部辺りに細く繊細な両手が回されている

 

「……どうかされましたか?」

 

「ごめん……たまに抱き締めたくなっちゃうの」

 

 なるほど、とクリソベリルは上を見上げていた。蛍光灯の光がそれなりに明るい

 確か、と溢して目の端で手すりをとらえていて

 

「──この方が誰にも見えません」

 

 あっ、と目を開く。クリソベリルの栗色の瞳が闇夜に輝いて広がった金髪は鮮やかに舞った。そして次の瞬間に星野アイを庇うように頭と背に手を添えていた

 藪つついて蛇だしちゃったかも。星野アイはなおも楽しそうに笑みを浮かべていてその背に手を回していた

 

「……もう泊まっちゃう? クーちゃん」

 

 短く息をはいてクリソベリルは片手で端末を操作して耳に当てる

 電話先のミヤコには短く言われて切られてしまった

 

「──先帰るって言われちゃいました」

 

「そっか」

 

 バレてたんだね、と笑みを深めていた

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