おしのこ!   作:すさ

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お祭りですわ

 近隣でやっているお祭りに星野アイ、アクア、ルビー、クリソベリルは参加することと相成った

 折角だから、ということで浴衣を借りて事務所でこれを着た上で望もうと言う話で纏まっていた

 

「帯って結構難しいんだよね」

 

 そうね、とミヤコは頷いていて帯を閉める

 うっ。と星野アイはやや吐息を溢した

 

「……とても綺麗」

 

「ありがとうミヤコさん」

 

 割れ物を扱うように両肩に手を置いて鏡の前でミヤコは頷いた

 高いところでやや団子のように巻かれた黒髪にベージュの浴衣と薄く花柄の意匠がある白い帯を纏った星野アイがそこにはいた

 

「みんな、お待たせ」

 

 からころ、と足音を鳴らし衣装室から出てきた星野アイを三人は出迎えた

 

「あっ……すき」

 

 藍色の浴衣に着替えていたアクアは呆然と母の姿を見ていた

 ぽつりとそれだけ呟いていて隣で浴衣に着替えていたルビーも目を輝かせていた

 

「ママかわいい……!」

 

 ルビーには敵わないよ、と母は笑う。同じように髪を高いところで纏めてあり桃色の浴衣に身を包んでいて帯は朱色のものを巻いている

 女の子らしいそんな装いだった

 

「……素敵ですわ。あーちゃん」

 

 クリソベリルは髪は高いところで束ねているものの巻いてはおらず黄色の浴衣に身を包んでおり、帯は黄緑のものを巻いていた

 腕を組んで真っ直ぐに立つその姿はどこか屈強な印象を覚えるような出で立ちで、実はハチミツが好物なんだよねと星野アイは思っていた

 

「……これは驚いた」

 

 斎藤社長が業務ほっぽりだして社長室から出てくる事態まであった

 主にミヤコが睨んでいたが効果がないと悟ると諦めて星野アイを見ていた

 

「えぇー? 大河ドラマするわたしも見てるじゃん社長」

 

「……おまえプライベートと仕事結構雰囲気変わってるからなぁ」

 

 そっか、と星野アイは笑みを向けていて

 斎藤社長は短く息を吐いていた

 

「アイ……すき」

 

「おーい、お兄ちゃん。戻ってきてー」

 

 ルビーもすき、とアクアは譫言のように呟いていて

 そんなこと言われたものだから妹は兄の背を思い切り叩くのだった

 

 ミヤコが車を運転して助手席にはクリソベリルが収まる

 ルビーを挟むように星野アイとアクアが後部座席に座っていた

 

「浴衣の人見かけるようになってきたねー」

 

「和太鼓の音が聞こえますわ。体の芯から響きますわね」

 

 祭り会場は近いようで。眼鏡とマスク着用した星野アイの声も弾んでいた

 妹に叩かれて目が死んだアクアを除き皆期待したような目を向けている

 

「わかってるとは思うけど人が多いんだからはぐれちゃダメよ、クー」

 

「クーちゃんはわたしからは離れないんだって」

 

 星野アイは人差し指を立てながら指摘した

 そういえば、とミヤコはこれに溢していて

 

「……貴方は本当にアイが大好きなのね」

 

「そうですわね。大好きですわ!」

 

 ミヤコにあっさり即答するクリソベリルがいた

 その横顔を見ていた星野アイも笑みを向ける

 

「わたしもだよー。クーちゃん」

 

「い、いけません。両思いですわぁーーっ!」

 

 あはは、おほほ、と二人して片手を口に添えて笑っていて

 ミヤコは困ったような笑みを浮かべて息を溢していた

 

「はっ……! 仲良ししてる……!」

 

「お帰り。お兄ちゃん」

 

 アクアが覚醒してルビーが細目を向ける

 そんなことをしているとお祭り会場にはあっさりついてしまい、ミヤコは車を止めるのだった

 

「色んな屋台があるわね」

 

「網羅したいですわね!」

 

 左右には屋台がならび、奥の方で高台から和太鼓を打っている

 車から降りてお祭り会場を見渡した。ミヤコの隣でクリソベリルは腰に手を添える

 檻から出てきたわんぱく姫だ。星野アイは慈愛でもってこれを見つめていた

 

「あっ、すき」

 

 アクアは見上げて今一度母を確認すると思わず告白してしまった

 あら、と星野アイは笑みを浮かべていて

 

「わたしはもっともーっと好きだよ。アクア」

 

「……しゅき」

 

 わざわざアクアの目線に合わせて屈んで抱き締めてから母は告白していた。アクアは明らかに存在が緩くなっていった

 よかったねお兄ちゃん、とルビーは燃え尽きた兄に笑みを向けていた

 なおルビーも母の手が伸びてこれに捕まり抱き締められてしまった

 人通りもそれなりに多くそれぞれ緊張した面持ちでお祭り会場に一行は足を踏み入れた

 

「結構な盛況だね」

 

 アクア、ルビーと手を繋いでから星野アイはそう溢していてクリソベリルは三人の前を歩いた

 ミヤコは最後尾から見守るように歩いていて。お酒のツマミばかりね、と溢していた

 とりあえず一行は綿アメを買いに走った

 

「綿アメは争奪戦だからねー」

 

 綿アメモグモグですわ! する珍獣をよそに星野アイはマスクをずらして啄むようにして食べていた

 綿アメが大きいうちは顔が隠れることを見つけたらしい

 

「……。クーちゃん! これあげる!」

 

 星野アイは中途半端に余った綿アメを見つめて渡した

 えっ、とクリソベリルは最初こそ目を点にしたが意図を察したのかすぐにこれを食べ始めて美味しく食べた

 

「カステラくださいな」

 

 ベビーカステラとの屋台の前に星野アイは立っていた

 二袋に詰めてもらって、一つはアクアとルビーに手渡す

 

「おいしい!」

 

「カステラも良いもんだな」

 

 うん、とルビーはアクアと笑い合った

 それを見届けながら星野アイもマスクの下に滑り込ませるようにしてこれを食べる

 

「うん。やっぱカステラだね」

 

 カステラモグモグですわ! して食べすぎとミヤコにとりあげられるクリソベリルを横目に頷いていた

 

 一行は千本引きに移る。あらかじめお金を支払って糸の先にくっついた景品を貰うことができるようなものだった

 みんなでやってみるのもあれだから代表して二人が引こうとジャンケンで競った結果、ジャンケン強すぎる星野アイとルビーが持ち前の運で残った

 

「ルビーはなにがほしいの?」

 

「ママと引けるならどれでも!」

 

 そっか、と母の手と共にこれを引いた

 ルビーはその瞬間目を瞑ってしまう

 

「お菓子かー。あっでも大きいね? お得かも」

 

 吊るされた先には○ッピーターンがあった。ルビーは呆然と母の顔を見てしまう

 ん、と目を合わせられて。飛び上がってしまった

 

「……本当にキレイ」

 

 ぽつり、と溢してしまってすらいた。そうかな、と星野アイは照れ臭そうに笑っていて

 ミヤコが持ってきていたエコバッグに収納されるまでその雰囲気は続いた

 

 祭りと言えば射的、と一行は射的屋に脚を運んだ

 ルビーがどこかで見たような顔をしているうさぎのぬいぐるみが欲しいらしく、これを狙ってコルクを撃っていた

 

「よーく狙ってね、ルビー」

 

 えい、と母と共に構えて放たれたコルクは無情にも跳ね返される

 あっ、とルビーは目を沈めてしまって

 

「お嬢ちゃん。これがほしいのかな?」

 

 射的屋のおじさんが端の方でこれを見ていた。両手には使い捨ての手袋をはめていて手の甲の方で景品であるぬいぐるみをほんの少し押してくれる

 いくらかは取れやすくなったかも、と星野アイも頷く

 

「大丈夫、ルビー。きっと取れるよ」

 

「うん……」

 

 真っ直ぐとうさぎのぬいぐるみ目掛けてもう一度撃った

 ぽん、とやはりうさぎのぬいぐるみに跳ね返される

 

「あー残念。残念だなぁ。大丈夫、まだ弾は残ってますから落ち着いて狙いましょう」

 

 コルクはあと二つある。不安そうなルビーの横顔を見てからうさぎのぬいぐるみを見る

 星野アイは目を鋭くした

 

「……ルビー。ちょっとこれ貸してもらっていい?」

 

 うん、とルビーから銃を手渡されて星野アイが構えた

 目の先は見たことのあるうさぎのぬいぐるみだ

 

「貴女がやるのですか?」

 

 射的屋のおじさんが腕を組んで獰猛な笑みを見せる

 有無を言わさずぽん、と撃った。丁度真ん中に当たったがこれをうさぎのぬいぐるみは無慈悲に跳ね返した

 

「……惜しい。次は倒れるかもしれませんよ?」

 

 星野アイは瞠目した。その男は人が嘘を吐く時にする目をしていた

 よし、と死んだ目のミヤコとアクアが頷き合う。二人して乗り込もうとするとクリソベリルが星野アイの後ろから人を避けつつやって来た

 

「泣いても笑っても最後の一発ですがどうしますか? あっ、一応買い取りも行っておりますのでご安心ください」

 

 射的屋のおじさんは笑顔を歪ませていた

 完全に楽しんでいた

 

「あーちゃん。射的は心で撃つものですわ」

 

「……カタキ、とってくれるんだね?」

 

 顔を見てから即座に理解して銃を宛がった。星野はルビーの肩に手を乗せてからその場を退く

 クリソベリルはぬいぐるみを見てから少し頷いて射的台の上にのし掛かるようにして倒れて腕を伸ばす

 

「クリソベリルガンッ!」

 

 おい、とおじさんに言われる間もなく引き金を引いた

 伸び縮みしそうだね。星野アイはにっこりとしていた

 

「ははっ。まぁ良いでしょう……ほれ。こいつはお嬢ちゃんのものだ」

 

 倒れて来たぬいぐるみを手袋を代えた上で掴むとこれを射撃台に置いた

 

「わぁ、ありがとう。クーちゃん!」

 

 ルビーはうさぎのぬいぐるみを両手に持ちながら笑顔を向ける。よかった、とだけ言ってクリソベリルは笑みを向けていた

 よかったねルビー、と星野アイは大きく胸を撫で下ろすのだった

 

 その後アクアが無駄にチョコバナナ欲する母を阻止したり、アクアが無駄にフランクフルト欲する母を阻止したり、アクアが焼きとうもろこし買ってきた母に感動したりした

 しかし、結局クリソベリルが焼きとうもろこし以外すべて星野アイに提供してしまったため本当に無駄な努力に終わってしまっていた

 

「俺、頑張った……頑張ったんだけどな」

 

「お兄ちゃんは無駄な努力するよね」

 

 ベンチに座ってアクアは燃え尽きていた

 とってもらったぬいぐるみを抱えつつ妹は兄にチョコバナナを差し出していた

 

「おいしいねークーちゃん」

 

「もぐもぐですわ!」

 

 星野アイはマスクをずらして器用にチョコバナナを口にいれていて

 ミヤコはそんな二人を見ながらたこ焼きを口に含みやや悶絶しながら食べていた

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