おしのこ!   作:すさ

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運動会ですわ

 本日はアクアとルビーの運動会ということでミヤコ、完全防備星野アイ、貴族令嬢クリソベリルは学校を訪れていた

 旗を広げて行進し開会式が始まり、校長の長く苦しいお話が終わり。紅白に別れた子供達が校庭のグラウンドを走っていた

 

「あれ、アクアくんですわー!」

 

「いけいけ! がんばれーアクア~!」

 

「頑張ってアクア……!」

 

 クリソベリルは拳を振り上げて、星野アイは手を振って応援していた

 ミヤコの片手にはスマートフォンが収まっていて。アクアが走るそんな様子を記録しているようであった

 

「あはは、クーちゃん見てみて。アクアが加速してるー! はやすぎーっ!」

 

 アクアは星野アイのそんな声が届いたのかどどど、と良い姿勢を保ちながら腕を全力で振り脚を踏み締めている

 星野アイはこれに小さく跳ねながら喜んでいた。ああ、とクリソベリルはこれに思い出したような声を出していて

 

「きっとわたくしの助言が身を結んだんですわね」

 

「あんな風になっちゃうのスゴー!」

 

 アクアは同級生をぐんぐんと引き離していく

 その顔は真剣そのもので応援のなかには黄色い声援も確認できた

 

 アクアは拳を振り上げる。ゴールテープを破った

 当然のごとく一位でゴールしていた

 

「やったー! アクアが一位だー!」

 

 いえーい、とクリソベリルとハイタッチした

 ぱちん、とクリソベリルもその小さく繊細な手に合わせていて自然と笑みを溢していた

 

「アクア大人気だね。わたしは鼻が高いよー」

 

「アクアくんもやはり人を惹き付けるなにかがあるのかもわかりませんわね」

 

 そうだねー、と星野アイは楽しそうな顔をクリソベリルに向けていた

 なおミヤコさんはそんな兄に剥れるルビーをカメラで狙っていた

 

「あっ。今度はルビーちゃん走りますわね!」

 

 クリソベリルの目や耳は混雑であるとかは関係なく機能するようで。これが地味に役に立っていた

 

「本当だ! がんばってルビー!」

 

「ガッツよルビー」

 

 例のごとくクリソベリル、星野アイ、ミヤコの三人がルビーを応援する

 やがてルビーが構えて号砲と共に走り出した

 

「あああ、見てみてクーちゃん。ルビーの走り方きゃわぁあっ!」

 

「はい。癒されますわねぇ……」

 

 ルビーは所謂女の子走りでグラウンドを走っていた

 その顔には笑みが浮かんでいるのもあって微笑ましいものに見えていた

 

「うおおおおがんばれー! ルビー!」

 

 兄の声だった。情熱的過ぎる応援にすん、と真顔なってからほんの少しずつ脚が速くなっていった

 先頭の同級生に抜かし抜かされてやや突き放されてそれでも頑張っているようだった

 

「あっあっあっ、ルビーが負けちゃうよー! クーちゃん!」

 

「これは面白い勝負になりましたわね、あーちゃん……!」

 

 両手を拳にして二人はそれを見守る。ルビーはなおも先頭の同級生と並走しては引き離されを繰り返していた

 そんなことをしていれば消耗も激しいのかその顔がどこか険しくなっていく。頑張って、と祈りに近いミヤコの言葉が溢れた

 

 ルビーは最後の力を振り絞るように歯を食い縛りながら同級生とほぼ同時にゴールした

 膝に手をついて息を切らせている

 

「わあああ!? どっち。あれどっちなの!?」

 

「あれは……同着になりそうですわね。わたくしにはルビーちゃんが僅かに勝ったように思えましたが」

 

 そうなの、やったぁー! と星野アイは万歳していた。よく頑張りました、とクリソベリルもルビーの方に笑みを向けていて

 たまらず出てきた兄に介抱されてルビーは一位の旗が立つところに座っていた

 

「アクアくんとルビーちゃん本当に仲良しですわね」

 

「兄妹二人、二人三脚で来たからねー」

 

 星野アイは顎付近に指を添えて答えていて。危うさは微塵も感じていなさそうであった

 そうですわね、とやや頷いて穏やかなそんな返事をクリソベリルはしていた

 

 玉入れ、大玉転がし、綱引きする二人を応援しているとあっという間にお昼になっていった

 母から貰う弁当とあって、アクアが一番に近付いていた

 

「はい。アクアの分」

 

 弁当箱を青い布で包んだ星野アイお手製のものだった

 差し出される前からその両手は震えていた

 

「あああ……っ! ありがとう。ありがとうございます……っ!」

 

 アクアはお弁当を貰うと天から賜ったかの如く持ち上げてから深く一礼をした

 いえいえー、といい加減スルーがこなれてきた母がこれに答えていて。そんなに楽しみにしてくれてたんだね、と嬉しくもあった

 

「……全く。お兄ちゃんはしょうがないんだから」

 

「なんだかルビーの方がお姉ちゃんみたいだね」

 

 そうかな、とルビーに言われては母はこれに頷きながら弁当を手渡す

 弁当箱を桃色の布で包んだものだった

 

「ありがとう、ママ」

 

 小声でルビーは伝えていて。一度、二度とやや乱れてしまった髪をといた

 娘がくすぐったそうにするので微笑みながら、行っておいでとアクアの方を見て促す

 

「もぐもぐのもぐですわぁーーっ!」

 

「クー。あんまり大声出さないの」

 

 そんなー、とやや涙目のクリソベリルとミヤコがレジャーシートの上にお弁当を広げていた

 アクアもその側でもう一枚レジャーシートを広げてお弁当に対して祈りを捧げている

 

「お疲れ。お兄ちゃん」

 

 ルビーはいい加減そんな兄に慣れてきてしまったらしくそんな労いの声をかけていて

 当人は幸せそうな笑みを向けていた

 

「ああ、お疲れルビー……俺に構わず先食べてもいいぞ。たくさん頑張ってえらかったぞ」

 

 言われなくとも、と妹は結び目を解いた

 いつもよりも大袈裟に祈っている兄に苦笑いを浮かべつつ蓋を開ける

 

「あっ。お二人とも、水分補給は十分ですの? きちんと飲んで下さいましね」

 

 クリソベリルが思い出したようにぴたりと箸を止める

 弁当をミヤコに渡しておき、アクアとルビーに近寄った

 

「あー。俺結構飲んだかも……助かるよ」

 

「ありがとう、クーちゃん」

 

 クリソベリルは二人に笑みを向けつつ二つの水筒を持って元の位置に収まった

 蓋を取ってあらかじめ用意しておいた冷えたお茶の大きなペットボトルを持ってきて中身を足していた

 

「わたしも食べよ。お邪魔しまーす」

 

 星野アイもアクア、ルビーの側に座りスーパーの袋から自分の分の弁当箱を出す

 割り箸を割ってから蓋を開け、いただきますと手を合わせていた

 

「うん。我ながら悪くないねー」

 

 タコになっているウィンナーであるとかだし巻き玉子であるとかをマスクに滑り込ませるように食べていた

 そんな様子を食べ進めながら見ているアクアと目があってしまい。笑みを深めているようで

 

「そうだよね、足りなかったよねーアクア。はい、ハンバーグ」

 

 いやいや、とアクアは首を左右に振って抵抗するも母の箸はアクアの弁当箱に着地してしまった

 俺は無力だ、と溢しながら。これを一口していた

 

「うますぎる……っ! うますぎるよぉ……っ!」

 

 嬉しいなー、と母が慈愛の表情で見ている中でアクアはひたすら食べ進めていた

 ルビーの方が先に食べていた筈だったがそれに追い付いていた

 

「ルビーは足りるかな?」

 

「う、うん! 大丈夫だよ!」

 

 またまたぁ、とルビーに笑みを向けて母の箸は自らのハンバーグに向かった

 母の様子を見てああそんな、と溢しながらも弁当箱を差し出していて。無事母の箸は着地した

 

「……食べる分減っちゃうよ?」

 

「わたし、一撃大満足バーで一日凌いだことあるから大丈夫だよ。ありがとねールビー」

 

 ルビーは口を真一文字にして目を細めていた

 アクアも食べる手を止めて唖然としている

 

「貴女、今回はこっちもあるんだからどんどん食べなさい」

 

 あー太っちゃうよぉ、なんておどけながらミヤコに渡された唐揚げを弁当箱で受け取っていた

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