おしのこ!   作:すさ

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おめでとうですわ

 ドーム公演が終わって。一行は事務所で二次会をしていた

 

「おつかれさん! 次は映画だな!」

 

 わっはっは、と高笑いしながら酒盛りして

 斎藤は茹でダコのようになっていた

 

「よおしわたくしも負けませんわよォ!」

 

 クリソベリルは大量のスイーツを前にして腕捲りをした

 

「……はいあーん。アクア」

 

「母さん疲れてるんだからそ、そんなぁ──んぐ。うおおお幸せすぎぃいいい!」

 

「はい。ルビーも」

 

「うん……」

 

 星野アイがアクアとルビーにご飯をあげていた

 アクアはもはや尊すぎて目が焼かれ。ルビーはぼやーとアイの顔を見るのみで。わかりやすいほど茫然としていた

 

「スウィーツもぐもぐですわ! もぐもぐのもぐですわぁーっ!」

 

 シュークリームをもって高速で口にいれるを繰り返していた

 クリソベリルの早業は凄まじく全員に一箱ずつ回っていたところ四箱はあったそれがすでに半分を切っていた

 

「調子乗ってると太るわよ。クー」

 

 ミヤコに指摘され。よよよ~としながら食べるクリソベリルを横目にして星野アイが笑みが溢れた

 

「賑やかで良いね」

 

「クリソベリルがいると特にな」

 

 ルビーとアクアは咀嚼しながら穏やかな眼差しを向けている

 

「素晴らしかったっていってたよ。クーちゃん」

 

 ルビーにそういわれてやや目を見開いてしまう

 そっか、と星野アイは神妙な顔をしながら二人にごはんをあげていた

 

「──クリソベリル。そういやおまえもハタチか。めでたいなぁ」

 

 斎藤社長がお猪口持った手をクリソベリルに向ける

 ハタチですの。と当人はふんすしていた

 

「わたくしおアルコール解禁ですわぁーー!」

 

「絶対ろくなことならんからあげないけどな」

 

 斎藤社長に指摘されて、そうですの? とクリソベリルは頭の上に疑問符を浮かべていた

 ミヤコもそれには激しく頷いていた

 

「……あっ。そうでしたわ」

 

 ぴたりとシュークリームを食べる手が止まる

 す、と立ち上がると星野アイにスカートの端をつまんで丁寧に一礼した

 

「──そういうことか」

 

 星野アイは目を丸くした

 ついさっきまで意識していた二十歳の誕生日。それはうっかり霧散していて

 

「お誕生日、おめでとうございます。あーちゃん」

 

「……あなたも。クーちゃん」

 

 クリソベリルはうふふ、と笑いその口はほんの少しクリームで汚れていて。星野アイは親しみを覚えずにはいられなかった

 ありがとう。絶対に面と向かっては言えないけれど誕生日が同じなこともきっと偶然じゃないだなんて思っていた

 

 

 

 斎藤の酒盛りに少し付き合った後解散と相成った

 どうせだからアイを上まで送ってあげなさい、車で送ってくれたミヤコにそんなことを言われ。素行と服装はともかく膂力は確かなクリソベリルと星野三人はマンション内を歩いていたのだった

 

「満腹ですわ。わたくし満足ですわぁ……!」

 

「それは良かった」

 

 階段を登っていく。すっかり暗くなってしまった風景の中でも星野アイの瞳は輝いていて。帽子に眼鏡、マスクのような完全防備でも変わらぬ華を醸し出していた

 

「今日は本当にたくさんかわいくて凄くよかったよ……アイ」

 

「ダメだこの兄。アウトだ……」

 

 アクアが語彙が乏しくなってその小さな手を拳にしている。ルビーは両手を天秤のように広げて呆れていた

 そうかなぁ、と星野アイは照れ臭そうに溢した

 

「あーちゃんはゴッドですの! 先の時代の救世主ですわ! つまり。つまり……勝利者? きゅんですの」

 

「……ありがとね、みんな」

 

 最後に諦めたクリソベリルに微笑みを向ける

 星野アイは目をしばしばとさせていて流石に疲れを見せていた

 やがて星野の表札が見えて。鍵を開けて四人は中に入っていった

 

「では、わたくしはここで……」

 

 クリソベリルは三人が玄関に靴を脱ぐのを確認してそう呟いた

 やや俯いた時のそんな言葉だった

 

「ねぇ。それなんだけど……泊まっていきなよ。クーちゃん」

 

「えぇっ!? わたくしお泊まりしたことありませんわ。本当によろしくて?」

 

 星野アイの告白にクリソベリルは両手を口にやっていた

 なにいってるの、と星野アイは続ける

 

「……施設の時はずっと一緒だったでしょ?」

 

「そう言われてみるとそうでしたわ!」

 

 星野アイが笑いかける。それを思い出したクリソベリルはドレスの中から以外と普通のデザインのスマートフォンを取り出し。ミヤコに電話をかけるのだった

 

「はい。そんなわけで二人もお風呂にしちゃおうね」

 

「……はーい母さん」

 

「クーちゃんあとでね!」

 

 星野アイ、アクア、ルビーは一緒に服を脱いで洗濯機に放り込み。風呂の用意をしていく

 

「……ッ! しまった。うっかりしてた! ナチュラルに母さんと風呂入ることにしてしまった!」

 

 おのれクリソベリル、と続いた

 何気ないアクアの理不尽がクリソベリルを襲った

 

「アクア」

 

 ひっ、と悲鳴をあげる。全裸のルビーが目を細めて入ってきた

 別にいいじゃない親子なんだし。てきぱきと体を泡立たせるその様からはそんな主張が感じ取れた

 

「でもでも、違うんだよ……!

 ほら。アイがライブした後に一緒ってやっぱり……ッ!」

 

「アクア」

 

 もじもじとしていたらついにルビーに笑みを向けられていた

 アクアはぞっとして顔が青くなった

 

「お邪魔しまーす。おっ。やってるねぇ」

 

 背後から星野アイの声がした。万事休す。アクアは考えるのをやめた

 そうだ当然の権利じゃあないか言われてみれば。兄が必死にそう自己弁論しているのがわかってしまってルビーは大きく溜め息を吐く

 

「ママはシャワー係だから泡立て終わったら呼んでね~」

 

 下着姿の星野アイがひらひら手を振って。ばたん、と閉められた

 

「……すき」

 

「お兄ちゃん、それ以上はいかないで。わたしがもたない」

 

 ルビーに釘を刺されてこくり、と力なく頷いた

 やっぱり推しがいる生活は色んな意味で持たない。アクアは今さら深まる危機感で瞳の色を死なせたのだった

 

 

 

 星野アイはアクアとルビーにシャワーを浴びさせて風呂から出た二人をターボドライヤーで髪を乾かす

 いつもよりあっさり寝入ってしまう二人を寝かし付け、それでから全裸になろうとして。目の端で漫画を相手に眉間にシワを寄せながら読んでいるクリソベリルを見つけた

 

「むむぅ……領域○開ですわぁ」

 

 コミックを床に置いて手を組みそんなことを溢すクリソベリルがいた

 星野アイはくす、と吹き出してしまう。動物園にいそう。わりと辛辣な感想を抱いていた

 

「クーちゃん。よかったら一緒に入ろうよ?」

 

「あっ。よろしくてよ!」

 

 顔を起こして笑みを見せている。そこに遠慮は欠片も見られない

 即答なんだ。そうは思いつつも星野アイはクリソベリルのそんなところが気に入っていた

 

「──クーちゃんはさ、ずっとずっと変わらないでいてね」

 

 湯船の中からクリソベリルを見る。彼女の胸部は平坦だ

 あるいはそれは聞こえ方によれば貶した言葉に受け取れたのかもしれないけれど

 

「え? 変わりませんわよ。あーちゃん泣きそうですもの! わたくし変われってお願いされても変わりませんわ!」

 

 そんなことを言われて瞠目してしまう

 なにも考えてない、とはもちろん思っていない。でも彼女がそんなことを口にしてくれるとは思わなかったのだ

 

「そもそもドレスじゃないと普段の半分くらいしかパワーがでなくて散々ですの。もっと強くなりたいですわ~」

 

 真面目にどこを目指しているのだろう。そもそもドレスって動きにくいんじゃないのだろうか

 星野アイをして彼女の将来は楽しみで仕方なかった

 

「……クーちゃん。今日はありがとね」

 

「くるしゅうない、ですわ」

 

 むふー、と得意顔を向けられた

 その顔を見てなんだか無性に腹が立った。だから湯船の水を集めて水鉄砲にしてやった

 

「あいたっ! やりましたわね……あーちゃん……!」

 

 クリソベリルの顔に命中してまずい、と思う

 あっちがシャワー持ってたんだった。ごめん、ごめんと溢しつつ顔を守る

 

「……えいですわ!」

 

 しかしやったことといえば浴槽に入ってきただけだった

 二人入って水が溢れなくなっていく。狭いなぁ、と思った

 

「……ちょっと狭いね。クーちゃん」

 

「ええ。狭いですわね……」

 

 ふっ、と星野アイは吹き出してしまう

 

「くく……あはははっ!」

「あーーっはっはっは!」

 

 こじんまりとしているクリソベリルを指差して笑った

 二人の笑い声が風呂場に響き渡り。それはしばらく続いた

 

「……はぁーあ。出よう、クーちゃん。風邪引いちゃことだし」

 

 ええ、とクリソベリルは頷いていた。まずは星野アイが出てクリソベリルが後に続く

 はっきりとそう意識したことはなかったけれどこんなこと何回もあったかも、と懐かしむのだった

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