おしのこ!   作:すさ

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初詣ですわ

 星野アイ、アクア、ルビー、クリソベリルは近隣の神社に足を運んでいた

 例のごとく完全防備の星野アイと、貴族令嬢服のクリソベリルはいやに目立つ結果になっていた。主に参拝客からの注目がスゴかった

 

「最初は手を洗うんだって」

 

 ぽつり、とスマホ片手に手水舎に星野アイは進んだ。ふぅん、とアクアが溢す

 でろでろ、と水盤から水が溢れだし柄杓が並んでいる。星野アイは柄杓を一つ取って水を掬うとアクアとルビーのために前傾した

 

「つめてっ」

 

 差し出した両手で水を受けて。思わず出てしまったそんな言葉だった

 母とアクアで曖昧な笑みを向けあっていた

 

「──っ、冷たい」

 

 ルビーにも同じように柄杓を使って手を洗わせる

 小さな手に水が溢れていった。アクアの反応を見てある程度は覚悟を固められていたのか顔をややしかめる程度に落ち着いていた

 

「えーと、左手を濡らして……つめたっ!」

 

 側に立て掛けてある案内に従って左手を濡らし。双子と苦笑いを向けあった

 自己流自己流、と右手に持つ柄杓だけは立てるように持つことで洗っていった

 クリソベリルは手袋をしまうと左手、右手を洗い、手に残った水で口を濯いでから柄杓を立てるように洗った。意外とちゃんとしてるね、と星野アイは目を丸くしていた

 

 鳥居を潜り境内に入る。正面には本殿とお賽銭箱が見えて、脇にはしめ縄がされてる大木やお守りを売っている売店も存在した

 ほんの少し辺りを見回してから石畳の真ん中を星野アイはアクア、ルビーと左右で手を繋いで堂々と歩いていた

 

「巫女さんかわいいねー」

 

「キミのがキレイだよ」

 

 息子が良い顔の良い声で言うのでまたまたぁ、とにやけていた

 妹は遠くの緑を見て落ち着こうとしている

 

「クーちゃんクーちゃん、こっちおいでよ」

 

「今いきますわ」

 

 クリソベリルはなんとなく石畳から離れてわざわざ敷き詰められている砂利を踏むような道を歩いていた

 言われてからほんの少し迷って、星野アイに近付いた

 

「本殿に続く石畳すらレッドカーペットに見える」

 

「……そうだね、お兄ちゃん」

 

 心得がわかってそうだがあえて自由にさせているようで。ルビーはアクアに愛想笑いを含めつつ母の手を今一度強く握った

 星野アイはそんな娘の顔を見降ろすが、やがて気にしないように本殿に目を向けた

 

 そうしてついに四人は本殿を望んだ

 星野アイは吊られている鈴から真っ直ぐ垂らされたしめ縄を掴む

 

「いくよ?」

 

 うん、とアクアとルビーもしめ縄にしがみつくように触りそれを確認すると鳴らされた

 えい、ともっていたお賽銭を投げ入れて二回拍手し、しばし目を瞑った

 アクアとルビーも同じように手を叩き瞑目する

 

 アクアとルビーがいつまでも元気でいられますように。これを強く願ってから目を開いた

 クリソベリルはお賽銭箱に手を差し込む形で小銭を入れてから、鈴を鳴らし一礼した後二回拍手し瞑目していた。ありがとですわ、と小声で漏らしてすぐにその瞳は開かれる

 もしかして神社から飛び出してきちゃったのかな。星野アイはあまりにもちゃんとしてるクリソベリルを興味深そうに眺めていて

 

「やっぱり御神籤は引くべきだよねー。おいでーアクア」

 

 あらかじめ小銭を払ってから手招きした

 ほんの少し頬を染めつつ、一歩一歩踏みしめるように息子は近寄ってくる

 本当に恥ずかしがり屋さんなんだから、なんて思っていた

 

「あぁ、ああ……っ!」

 

 力なく呻くと脇の下を掬うように持つ形で星野アイから持ち上げられてアクアは赤面していた

 そんなに嬉しいんだ、と母は良いように捉えていて笑顔を見せているらしかった

 

「届くかな? 一枚引いてみてね」

 

 もう大吉なんだよな、と呟いてから腕を伸ばして御神籤を探り一枚引いていた。母の鼓動が伝わるほど近かった

 それを確認するとゆっくりと地面に降ろして着地させる。すっかり赤面したまま心ここにあらずといった様子だった

 

「ルビーもおいで。持ち上げてあげるから」

 

「う、うん……」

 

 母は手招きしてから両手を広げて促している

 おずおず、と近付いたところを脇下を掴まれて持ち上げられた

 

「ち、ちか……!」

 

「ふふ、さあ。なにがでるかなー?」

 

 むむ、とほのかに頬に朱く染めながらも促される通り小さな手を伸ばした

 ルビーも本当は恥ずかしがり屋さんなんだよね。滅多にないそんな姿に母は微笑みでもってこれを対応して

 

「うーん。これっ!」

 

「……それでいいのぉ? 」

 

 娘がすぐに引いたため、星野アイはそれに煽るような笑みを向けていた

 むむ、と一旦ルビーは御神籤を戻して。じゃあこれ、と引き直す

 慎重にルビーを地面に降ろしてから星野アイも御神籤に手を突っ込み。えい、と迷いなくすぐに抜く

 最後にクリソベリルが小銭を払ってから奥まで手を突っ込んで熟考し、これですわと引いた

 

「狙ったかのような大吉」

 

「お兄ちゃんとおんなじだ!」

 

 双子は御神籤を開くときゃっきゃしていた

 良い年にならないことがないが、大吉を二人して引き当てるのはそれなりに嬉しかったようで

 

「うーん。大凶かぁ」

 

「ええっ本当ですの……? うわ、初めて見ましたわ。ある意味すごいですわね!?」

 

 中吉のクリソベリルは星野アイの御神籤を覗いた

 玄関周りと男運が悪いと書いてある。ほとんど酷評だが病の心配だけはないそうだ

 

「えー? 大凶ってすごいの? 最低だけど」

 

「それこそ大吉よりも出ないと思いますわ」

 

 そういえばそうだね、と笑みを浮かべていて

 クリソベリルは自分のと見比べるように見ていた

 

「気になるようでしたらもう一度引くか、結ぶかしてもよろしいかもしれませんわね」

 

 顎に片手を添えて御神籤掛けを見つつそう溢す

 すでに多数の御神籤が掛かっており、この神社の人気が窺えた

 

「うーん……返ってラッキーなら持ち帰ろうかな。記念に」

 

 そうですの、と目尻を下げて心配そうに溢していて

 うん、と当人は気にした様子は欠片もなく丁寧に小さくしてからポケットに入れた

 

「大吉と挟んだらなんか良い感じになりそうだし。玄関にでも飾るよー」

 

「それはいい判断かもしれませんわね」

 

 そうかな、と星野アイは笑っていた

 クリソベリルも釣られて笑みを溢していて

 

「隙あらば仲良し」

 

「……ほ、ほら。わたしたちが二人で大吉だったから盛り上がったんだよ?」

 

 ん? と妹を見て。ルビーは首を捻っていた

 天然だったらしいと察したのかふっ、と肩を竦めていて主に妹の目が死んだ

 

「健康、家内安全、商売繁盛全部欲しくなっちゃうよーみんなどうやって我慢してるんだろ……?」

 

 星野アイは神社に来たらお守りを毎回揃えている始末でその度に反省するのだがこれが治ることがなかった

 完全に癖がついてしまっていた。やや涙目だった

 

「しょうがないなあ本当に」

 

 こいつぅ、とアクアが肘を脚辺りに押し付けてきたのでえいえい、と母は息子の頬をぷにぷにさせていた

 思わぬ反撃を受け。あいっ、という断末魔と共に思考を停止した

 

「……むっ。むうぅ」

 

 なお妹はその様子を見てやや剥れていた

 星野アイも流石にこれには気がつき。ルビーの頬もぷにぷにすると機嫌が戻った

 境内でのイチャイチャもありですわね、とクリソベリルは腕を組んで頷いていた

 

「クーちゃんも押してみて?」

 

 ねぇねぇ、と手招きして何を言うかと思いきや髪を耳に掛けてそんなことを溢していて

 仕方なしに星野アイの頬をぷに、とする

 

「……。はい、おしまい」

 

 すん、とした顔をされた

 思ってたのと違ったらしい

 

「なんなんですの」

 

「頬をぷにってされてもぷにってされたなぁって思うだけだった」

 

 ごめん、と誤魔化すように笑ってから謝っていた

 仕方ありませんわね、と思わず溢してしまっていて

 

「また仲良ししてる……」

 

「……ほら、お兄ちゃんはわたしと仲良しじゃない。それで我慢して?」

 

 いよいよルビーが辛抱たまらずそんなことを溢すとアクアはときめいた顔を向けていた

 うへぇ、と言っておいて何だが妹は吐き気を催していた

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