本日は2月14日、つまりバレンタインである
小学校からそわそわしながら妹と帰っている兄がいた
「ルビー。一つ聞いてもらって良いか?」
「……。なに」
きゅ、と赤色のランドセルを握りアクアの顔を覗きこむ
その顔はなぜか死んでいて。遠い目をしていた
「チョコレートって爆発するのか?」
「へぇ……?」
貰ったハート型チョコレートが嬉しくて開けたは良いがぼん、と軽く音がしてから煙がでるような贈り物で
これがわたしの気持ちですなんて手紙の内容だけみるとかわいらしくて反応に困った、という話をルビーは聞いていた
「……お兄ちゃん。そのうち刺されそうだね」
「おまえもそう思うか。実は俺もそう思いつつあるんだ」
くそ俺はアイ一筋なのにと涙ながらに語って拳を震わせていて
やれやれ、とルビーは息をついていた
「お兄ちゃんは顔面が良いんだから気を付けないと」
「……俺、そんな愛想振り撒いてるように見える?」
ルビーは唇辺りに人指し指を添えて考え込んでいた
学校での兄の行動を思い起こそうと努力してるらしい
「まず──授業中に限らずわたし見すぎ」
「……そうかなぁ」
うん、と困ったように頷いていた
「心配なんだよ。なんだか」
「……。うんまぁ、減らないしいいけど。他の女の子は多分嫉妬すると思う」
それは直せそうもないなぁ、と首を捻りながら呟いていて
妹はほんの少し表情を和らげていた
「あと、頭よすぎ」
「えぇっ。それもはや人格否定だろ」
アクアは狼狽えた。わかるものはわかるのだから、と手を挙げて答えてるだけのようで本人には他意はなさそうであった
ルビーはそんな兄にふぅ、と小さく息を溢しながら口を開く
「なんで作者の気持ちとかスラスラ言えちゃうの。あれはわたしでもできないよ」
そうなのか、とアクアは明らかにショックを受けていて
妹は真っ直ぐ顔を見てから頷いていた。先生すら舌を巻くような発言を稀にしてしまうものだから返って印象に残ってしまっていた
「愛想はむしろないけど。そのわりには女の子には挨拶欠かさないよね……?」
「ああ、あれいけなかった……?」
「女の子、ああいうの嬉しいかも。ギャップっていうのかな」
そうか、と腕を組んで興味深そうに頷いていた
難しいなとも唸っていた
「顔面良かったり口がうまかったりと大変だね、お兄ちゃん」
「……。なぁ、それって結局褒めてるのか?」
うるさいとルビーに言われてしまい、しゅんとするアクアがいた
全く、と髪を耳にかけて目を細め唇を尖らせていて
「……とにかく気を付けてね、お兄ちゃん」
「これでも男子からの目が厳しくなるまでになんとか対策したいとは思ってる」
ふふ、とルビーはそれを聞いて笑ってしまう
真面目めいた顔をしているのがなおのこと笑いの種だったようで
「なんだかみんな純粋で、可愛いんだよ」
アクアの顔をじっくり見ているところにそんな発言があった
あはは、といよいよもって笑ってしまう
「──ぅくくっ。えっなになに、お兄ちゃんって前そんなに年寄りだったの?」
「まぁ年寄りと喋る機会は多かったかな……?」
空をみながら顎に手を添えて答えていて
ふぅん、とルビーは瞬いてからやや頷いていた
「勘違いしないでほしいんだけど、わたしはお兄ちゃんがモテてるのはそれはそれで嬉しいからね」
「……そうか」
こくり、と妹は頷いていた
そんなルビーの様子に改めて守護る決意をして。そんな話をしているとあっという間にマンションに着いてしまっていた
「ただいまー」
「ただいまっと」
靴を脱いで部屋に入り。二人して手を洗ってからリビングに戻る
テレビを着けてルビーは定位置で三角座りをして母が出演してる番組を見始めた
こんこん、とそんな折に玄関扉が叩かれて。アクアが扉の方を振り向く
ルビーは未だにテレビに釘付けだった
がちゃ、かたん。と鍵が開かれ。ふぅ、とアクアは胸に手をやって溜め息を溢した
「お邪魔いたしますわねー?」
「よう、クリソベリル。いつも良いタイミングだな」
「クーちゃんおかえりー」
アクアは適当に座りながらルビーに顔を戻して。母の番組を見る後ろ姿を見ていた
クリソベリルは買い物袋を一旦置くと靴を脱いで直ぐに鍵を閉めてドアチェーンをかけ、手袋を脱いでからドレスの内に入れて手を洗った
お風呂の水を確認して沸かした後お湯を沸かしている間に二人のマグカップを洗い、自分のマグカップも洗いながら待った
「そういえば本日はなん日かご存じですの?」
バレンタインだろ、とリビングからアクアの声が聞こえる
ふふ、と笑みを浮かべていて。茶漉しに茶葉を入れてお湯を入れる
何時ものようにその出涸らしを自分のマグカップの上に置いた
「どうぞ」
「ああ。助かるよ」
「ありがとうクーちゃん」
二人にお茶を振る舞って。一旦玄関まで戻って買ってきた袋を持ってきた
よいしょ、とリビングまで持ってくる
「チョコレート。買ってきました。あっ、こちらはお母様からですわ」
手作りらしい綺麗にラッピングされたチョコレートと市販のチョコレートを出しながらそんなことを溢していて
○ルフォートなる商品表示にアクアは目を丸くしていた
「……ありがとう。クリソベリル。ミヤコさんにもお礼言わないとな」
アクアは妙に綺麗にできているハート型のチョコレートがいくつか入った包みを突ついた
「お母様もきっと喜びますわ」
言いながら開封口辺りをつまんでバコォ、とお菓子の口を開いていた
およそお菓子を開ける音してねぇ、とアクアは突っ込まざるをえなかった
そんな二人を目を細めて見ていたルビーは一度立ち上がり冷蔵庫の野菜室を開くとラッピングされた包みが入った黒いものを手にとって後ろにやり。リビングにいる兄の横顔を見た
「こういうものは手作りがベターなのかもわかりませんわね、申し訳ありません」
「いや、これはこれで気持ちが伝わる」
そうですの、と頷いていた。アクアは○ルフォートに手を伸ばそうとしていたところをす、とクリソベリルに阻止された
なんだよ、と言おうとしたそんな時だった
「お兄ちゃんっ!」
ぱたぱた、とルビーは近付く
ん、とアクアはただならぬ妹の様子になにかを察するものがあった。別に初めて貰うものでもないから、その行為が意図することがわかった
「いつも、ありがとう。ち、ちょっと苦いかも。ゆるしてね……?」
す、と後ろに回していた包みを兄の前にそれを持ってきた
少し頬が染まっていて目が泳いでいた。そんな妹はアクアはかくかくとカラクリのように動き、ようやく差し出すように両手を出していて。慣れるとか慣れない以前のものがあることを学んでいた
「もうっ! いつもいつも。自分で取ってよ!」
ぽす、とそれを乗せられていよいよ固まっていた
伝説の超仲良しですわ。クリソベリルは万が一があってはいけないと○ルフォートを一旦回収してそれを見ていた
「…………」
アクアはしばらく固まっていた
ふんだ、なんて言って母の番組を見る作業を開始する妹の耳が未だに赤いことも確認して固まっていた
「なぁ。クリソベリル」
「なんですの?」
「やっぱり、手作りって良いよな」
そうでしょうね、とクリソベリルは笑みを向けていて
妹の体は前後に揺れていた
「いただくよルビー。いっぱい好きだよ?」
「早く食べて!」
しゅる、と桃色のリボンを取って中に手を入れてつまんで食べる
涙を流すほどには苦いようだった
「あーー。すき」
「すきなのはわかったから! 味教えてよ!」
摘まんではぱく、と食べていた
味は最早関係なさそうなそんな行為であった
ううぅ、と妹は悶えていた
「ごちそう、さまでした……っ!」
「……いや早っ。ちょっと引いたんだけど」
机にそれを置いて拝んでいた
そんなに美味しかったんだ、なんて溢していて。ルビーは満更でもなさそうだった
「良かったですわね、アクアくん」
○ルフォートを抱きながらそんなことを言われて。アクアは無の表情をして片手を差し出した
ややクリソベリルは首を捻る
「その、食べ損ねたなって」
「……そうですの」
一つ小袋を出して小さな手のひらに置いた
ぺり、と開いて一口する
「……ありがとう。クリソベリル」
「きっとあーちゃんもなにかくれますから、食べ過ぎないようにしましょうね」
そうだった、と目を見開いていた
毎回とはいえ記憶がトぶほど嬉しいらしい。新鮮な思いで望んでいた
「ルビーちゃんもお一つ如何ですの?」
「うん、ありがとう……でも今はいらないかも」
わかりましたわ、と小袋をルビーの方に大袋を机の真ん中に置いてから席を立った
なおミヤコ製のチョコは滅茶苦茶美味しかったらしくアクアがこれどうやって作ったんだ、というまであった
がちゃ、かたん。と玄関扉が開かれた
「ただいまー」
ママだ、母さんだ、と二人は駆け出した
クリソベリルは呑気にお茶を啜っている。曰く、もうわかるようになったらしい
おー。と感嘆してから一旦荷物を脇にやって屈み二人を抱き締める
そんな他愛のない愛のある行為があった
「ただいま。アクア、ルビー」
今一度強く抱き締めた
アクアは母の腕に身を預けるようにして、ルビーは頭を押し付けるようにして抱き締められていた
「チョコレートだよね、アクア。ちょっと待ってて」
くしゃくしゃ、と息子の頭を撫でてから目を細めて笑みを向けていて
すき、とアクアは浄化されていた
「じゃん。液体にしてみた」
袋に入っていたのは魔法瓶で。それを顔の側で包むように持っていた
ホットチョコレートかあ、とアクアは燃え尽きた