おしのこ!   作:すさ

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怪演ですわ

 アクアが出た某ドラマの最終回を事務所で上映会のように流していた

 明かりを消して巨大スクリーンの前にソファーを移動させ横並べにし有馬かな、クリソベリル、アクア、ルビー、星野アイが座り、後ろのデスクにミヤコが座っていた

 

『──おまえなんて誰にも必要とされてない』

 

『身の程わきまえて生きろよ。夢見てんじゃねぇよ』

 

『この先ろくなことはない。おまえの人生は真っ暗闇だ』

 

 ヒーロー役に殴られ諭された後にアクアは口を歪めてその言葉を放った

 水場で蠢き、ヒロインを付け狙うストーカー役としていっそ悪寒が立つような迫真さであった

 

『──それでも、光はあるから』

 

 ヒロイン演じる有馬かなの涙がその最後をしめた

 

 

 

「──なーんか自分がヒロインの作品っていつ見ても複雑ねぇ」

 

 スクリーン上映が終わってぽつり、と溢す

 有馬かなはソファーの上で腕と脚を組む横柄な態度でもってそこに座っていた

 

「ちゃんと気持ち悪かったなぁってことはわかる」

 

「わたしですらゾワっと来た」

 

 嬉しいなぁ、とアクアは共に座るルビーに溢していて

 妹はやや微妙な顔を浮かべていた

 

「素晴らしい怪演でございました、アクアくん。黒光りも使いようですわね」

 

 クリソベリルは指先を立てて感心したようにそう溢していて

 ふっ、とアクアは笑みを浮かべていた

 

「えー? なになにアクア。教えてよー?」

 

 そんな時に星野アイが片手に緑茶缶が握り自動販売機から帰って来た

 はいどーぞ、とルビーに渡していて笑みを浮かべ合っている

 

「いただきまーす。アイ様ーっ!」

 

「熱いから気を付けてね、ルビー」

 

 ぷしっと開けてちびり、と飲んでいた

 んー、と悶える。嬉々としたそんな様子であった

 

「ねぇ、ほんとどーしてアイさんがいるんですか!?」

 

「言った気がするけど……?」

 

 星野アイは目を丸くしながら有馬かなに溢していて

 納得できません、と有馬かなは人を指差して涙ながらに拒否感を示していた

 

「──アクアの演技はみたいでしょー? ねぇ、アクアー?」

 

 母はアクアの前に立つ。これ以上ないほどの穏やかな笑みを浮かべていた

 

「アイさん……俺絶対、アイさん護るからっ!」

 

 アクアは感極まって泣きそうになり、目元を抑えていた

 

「……冗談かと思ってたけど本気だったんだ。嬉しいなぁ」

 

 にこにこと星野アイはしていた。本当にナイトになってくれるつもりなんだ、なんて思ってもいた

 えぇ、と有馬かなはなおも言いたいことがあるようで勇気を振り絞ったように両手を拳にして口を開いた

 

「だ、大体ビックリするくらいの多忙なはずでしょあなた様は! お母さんなんですかっ!」

 

 あはは、と星野アイは笑って誤魔化していた

 これにはアクアとルビーも終始真顔を決め込んでいて

 

「かな先輩。わたくしがママですよ?」

 

「ベルさんはママってよりお姉さんなんでしょお!? んもおーっ!」

 

 有馬かなは両手を頭にやってがしがししている。フォローしようと思ってとんでもないことになってるので双子が吹き出した

 先輩、と星野アイもこれに反応していて

 

「あれぇ……? クーちゃんなんでかなちゃんを先輩呼びなの……?」

 

 こて、と首を捻っていた

 生き別れたパンダ姉妹だったのかな、とか思わなくはなかった

 

「かな先輩、わたくしよりテレビ出た回数多いですし」

 

 指を立ててそんなことを溢していて

 あー、と星野三人の声が重なる

 

「律儀だなぁ」

「人間の鑑」

 

 アクアとルビーは思わず感心してしまっていた

 それほどでもありませんわよ? とクリソベリルは困ったような笑みを浮かべていて

 

「クーちゃんクーちゃん。じゃあわたしも先輩って呼んでよー?」

 

 自らを指差して近付いて星野アイは懇願した

 一回くらいは呼ばれたいらしかった

 

「あーちゃん先ぱ~いっ!」

 

 ぱちり、と30ちょいの貴族令嬢が両手を合わせて顔の横に添える

 母に可愛がれに可愛がれて未だにその顔に衰えが見えてないのは救いと言えた

 

「棒なかったかな……」

 

 熊さんがやるしぐさだよね、とだけ星野アイは思い呟いていた

 見回すが残念ながら事務所に良い感じの棒はなかった。倒れるだけで腹筋できるものは何故か見当たったが

 

「ほ、本当だったんだ。ベルさんがアイさんと親しいって……っ!」

 

 大袈裟に仰け反って有馬かなは驚いていた

 

「逆に疑ってたのか。おまえとはいえそろそろ怒るぞ」

「……クー姉さんは無敵なんだから。そろそろ覚えてロリ先輩」

 

 アクアとルビーが畳み掛ける

 あああ。と有馬かなは頭を抱えながら頬を染めて悶えていて

 

「わ、わたしとはいえってなによアクア! もおっ!」

 

 染まった頬を隠すように両手を挟む

 双子の表情筋が死んでいき、あらぁとクリソベリルだけが目を輝かせた

 

「アイさん。あいつの鼻をなんとか折れないものかな。こう、テコの原理じゃないけど」

 

「えー? まあアクアの頼みなら頑張らなくはないけど……」

 

 がんばってアイ様、とルビーからも声援を送られる

 ひえっ、と有馬かなは軽く悲鳴をあげていて

 

「ね、ねぇ。ここの結束カッチカチなんだけど!? 冷えたわー。あーサめたわー。もうわたし帰るから。帰って良いわよね?」

 

 立ち上がって剥れた顔で入り口まで歩き出してから振り向いた。ミヤコが一度PCから目を外して有馬かなを見る

 有馬かなはほんの少し迷ってから深々と礼をしていた

 

「えー。帰っちゃうんだ、かなちゃん? 寂しいよー。もっと遊ぼう?」

 

「わっ、わたしの意思は固いですからね。アイさん!」

 

 ぐっ、と拳を胸元にやって決意していた。そっかあ、と星野アイがこれを残念そうに溢していて

 双子は複雑な表情をしていた。主に母の意思は汲み取りたいところがあった

 

「あっ、それでしたらアクアくんが送って差し上げたら?」

 

「……まぁ頼まれなくはないけど。俺は絶対クリソベリルの方が適任だと思うが」

 

 クリソベリルが振るとアクアは顎に片手をやりながらやや面倒臭そうでもあった

 あからさまにむっ、としている妹であったがここでは矛を収めてくれたようで

 

「そんなことありませんわよ? わたくし、乗り心地悪いって言われちゃいましたし」

 

「──気が変わったわ、ここ最ッ高ね! いっそわたし住もうかしら!」

 

 有馬かなは席まで戻ってきて頬を染めながら顎と腰に手を添えてキメ顔をしている

 そのまま踊り出しそうな勢いだった。相当クリティカルだったらしい

 

「手のひらネジ切れて地球外までとんでってるんじゃないかこいつ」

 

 アクアの余りに冷たい突っ込みにあはは、と妹は苦笑いを浮かべるしかなくなっていて

 歓迎するよー、と星野アイはだけは笑みを見せていた

 

「あっ、やっぱり住むのは無しで」

 

 ぽす、と有馬かなは涙目になってから再びソファーに座った

 最初こそちょこんとしていたが今は我が物顔で座っていた

 

「本当にかなちゃんは愉快だよー。久しぶりにこんなに笑えたかもしれないね」

 

 あはは、と星野アイは片手で涙を拭いながら笑っていて

 アクアとルビーもこれには微笑んでいた

 

「いじめないで……いじめないでぇ……!」

 

 涙目でぷるぷるしていた。もはやトラウマと化してるそれが未だに残っているようで

 目尻を下げたクリソベリルが立ち上がり、有馬かなの前にしゃがむ

 

「……どうなさったのですの?」

 

「クリソベリル。甘やかすなって」

「クー姉さん。ロリ先輩は別に気にしなくても……」

 

 そうなんですの、と言いつつクリソベリルは有馬かなを覗き込むように見つめていて

 へあっ、と円らな瞳を当てられて狼狽えていた

 

「ひっ、拾わないから! わたし絶対拾わないからね!」

 

「……。その、そこをなんとか」

 

 必死に目を両手で塞いでから答えていた

 自ら寄せにいくように両手を膝の上に置いてからクリソベリルは目を輝かせていた

 

「クリソベリル。そろそろキレても良いんだぞ」

「クー姉さんはうちの家族だよ。誰にも渡さない……渡さないんだから」

 

 アクアとルビーがその様子を目の当たりにして機嫌を損ねてしまったようで

 あらら、と星野アイが目を丸くするまであった

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