「あぁーんっ! わたしもアイドルやりたいやりたいー!」
ルビーが事務所で地団駄していた
あら、と星野アイは顎に手を添えていて
「B小町の新メンバーとして歓迎するよ? きっと社長もねじ込んでくれるよ?」
「な、なんか……それはやだよぉっ! 自分でやった感がほしいよぉ!」
そうだよね、と母は笑みを向けていた
律儀な妹に兄も頭を悩ませていて。そういえば、とミヤコが手を合わせてこれに声をあげる
「B小町を新しく作ってファンの移行させる、という案は壱護からなくはなかったのよ」
「……社長がそんなことを」
「勘違いしないで、アイ。あなたはあなたがやりたいようにやってくれたら良いから」
「ううん、違うの。なんでもない」
星野アイはミヤコに笑みを溢す。ルビーが所在なさげにしてもじもじしていた
そんな妹の肩に兄は手を置いていて
「わ、わたしがアイドルにならなかったら……ママはずっとアイドルに──」
「いやー、キツいって」
ないない、とその童顔の顔で片手を顔の前で振って言っていた
なんの気もないそんな行為だった
「そんな──寂しいよ、アイ。寂しくなるなぁ」
アクアは心底落ち込んでいた
どよん、とした空気にのまれていた
「……アクアはずっと推してくれるんだよね?」
「勿論だ」
これにはすぐに頷いていて
星野アイは笑みを向けていた
「それで十分だよ」
「──言うまでもありませんが、わたくしもずっとあなたのファンですから」
「ほら、おまけまでついちゃった。なあんにも問題ないよね」
おまけ、とクリソベリルは真っ白になっていて
あはは、と星野アイは笑っていた
「あなたがおまけなわけないでしょ。冗談きかないんだからもう、クーちゃんは」
「……あーちゃん」
片手を覆うように捕まれてクリソベリルは目を輝かせた
子犬って多分こんな感じだよね、なんて思われていた
「あれはアクロバティック仲良しだな」
「お兄ちゃんも慣れたもんだね」
流石にな、と腕を組んで頷いている
はは、と妹はどこか安堵したような笑みを浮かべていた
「わたし、ママのグループに負けないB小町を作る。それでママを……その」
ルビーは広げた手を握って今一度目を鋭くしていて
「……良いんだよ? ルビー。面倒なことはわたしに任せて」
頷いてから母は微笑んでいた
しかしルビーの意思は頑なだった
「わたしはっ! わたしは──ママを解放する為にやるから!」
うん、と星野アイはそれを聞いていた
娘の成長がわかるようなそんな言葉に温かい思いが溢れていた
「それで……それで良いよね。ママ」
「……。そう簡単に解放される気はないからね? ルビー」
うん、とルビーは大きく頷いていた
そうなると、とミヤコが深刻そうな声を出す
「アイ擁するB小町グループにルビーは一人で戦うの?」
「──も、問題ある?」
うーん、とミヤコは腕を組んでいて首を捻っていた
「あなたの能力の高さは疑ってないけどできるならもう一人……いえ、欲を言うと二人。信用のおける人物が必要かしら」
「一人……?」
クリソベリルもこれには腕を組んでいて
「なぁ、俺……顔が浮かんでしまったんだが」
アクアのそんな声で皆の視線が集中した
有馬かなの対面にミヤコが座りアクア、ルビー、クリソベリル、そして星野アイがミヤコの周りで立っていた
「ねぇっ! 二人だけで話したいことがあるって聞いたからわたし来てあげたんだけどォ!?」
「事務所に呼んだ時点で気付け」
頭を抱える有馬かなにアクアが呆れた声を出した
「まず、騙した形になったことは申し訳なかったわ」
ミヤコはデスクに肘を着き手を組みながら謝罪していて
ぷい、と有馬かなはそっぽを向いていた
「飴ちゃんお食べ?」
「……あ、ありがとう」
クリソベリルが近付いてハッカ飴をその手に握らせる
ぺり、と破いてからからころとなめていた
「──その。妹のためにアイドルしてくれたらって思って」
アクアは有馬かなから目を反らしながら片手で頭を触る
どこか申し訳なさそうでいてうぅ、と有馬かなは悶える
「ど、どうしてあなたの頼みでわたしが……だ、大体ね、わたし今フリーだけど結構忙しいのよ? アイさんは知ってますよね……? ほら。アイドルやってる暇なんて──」
「できるよ?」
えっ。と有馬かなは目を剥いた
星野アイはなおも笑みを深めていて
「できるできる。わたしができるんだからかなちゃんだってできるよー?」
「そんな。そんなことはぁ……!」
有馬かなは涙目でぷるぷるしていた
「なぁ……可哀想になってきた」
「……。あとでお兄ちゃん慰めてあげて」
しょうがないと妹は大きく溜め息をつく。こくり、とアクアはしていた
なお判子はポンと押された
「うっ、うぅ。わっわたしは、アイさんみたいな超人じゃないのにぃ……!」
事務所の片隅で涙目になりながらしょげていた
「すまなかった……本当に。すまなかったな」
アクアが近付いてぽん、と肩に手を置いていて
うぅ、と有馬かなは頬を染めていた
「──おまえにしか、こんなこと頼めないと思って」
それを聞いた有馬かなの目はこれ以上ないほど輝いていて
アクア、とその名を語って胸板を触るまであった
「あああ」
切ない声を出して主にルビーの脳が破壊されたが、クリソベリルがこれを抱き締める形でこれを収めていた
「おいで、ルビー」
母の口が開かれて。星野アイの口が開かれて。みんなの注目がそちらに向いた
「……はい」
「アイドルになりたいけどわたしの力は借りたくない、その思い。受け取ったよ」
嬉しかった、とこれに続いて笑みを向けている
アイ様、と真剣な話らしいと察してクリソベリルから離れてその脚を星野アイの前まで進めた
「でもね、ルビー。誰かがあなたの背中を押さないといけない。そしてそれはわたしであるべきだと思ってる」
「……でも、それは」
「うん大丈夫だよ、ルビー。ちゃんとこの日のために考えてたことやるだけだから」
星野アイは笑みを浮かべていて。あら、とミヤコが目を丸くしていた
「──そんなこと、わたし聞いてないけど?」
「ミヤコさんはうちのことで手一杯じゃない。流石に心労増やせないよ」
壱護と決めたのね、と目尻を下げていた
星野アイは深く頷いていて笑みを作っていた
「──結論から言うと映像作品を作ろうと思ってる」
映像作品、とアクアが反応した
こくり、と頷いていて
「アクアもよく知ってるおじさんにもお願いして協力を得てきた」
「五反田さんに……?」
うん、と簡単に返事をする
星野アイはこれに続いてこう述べた
「本当に映画にするつもりは、なくて。でもネット配信の45分程度に収まる作品にしようと思ってる」
皆これには黙って聞いていた
聞き入っていた
「タイトルはB小町。で、ここからが重要なんだけど──わたしはこの映像作品には出ない。ルビーはルビーのまま演じてね」
なるほど、とアクアは溢した
それで大体の実態を把握したらしい
「アクアは斎藤社長の役をお願いね。わたしのマネージャー役」
こくり、と頷いていた
よし。と星野アイは瞬いて
「かなちゃんはかなちゃんで演じて?」
「えっ。はっ!? わたしも出ろっての!? しかも演じるなって言うの!?」
「──これの目的はあくまでもあなたたちの宣伝なの。自分がなにが得意なのか探してきてね。報酬は払うから」
きっとできる、と星野アイに頷かれて
有馬かなは渋々頷いていた
「わたし自身の役は信頼できる人を見つけてある。きっと仲良くなれると思うから近い内に紹介するね」
そして、星野アイの目はクリソベリルに移る
「クーちゃん」
「……な、なんでしょうか?」
ふふ、と星野アイはいたずらに笑みを浮かべいて
「誰かユーチューバーで数字持ってて、扱いやすそうな娘心当たりない?」
ほっ、といっそ安心した様子でクリソベリルは腕を組む
首を捻って。ああ、と一人浮かんだようであった
「……いるんだね? 協力してもらおう」
「ぴえ師匠のツテではありますが多分快く了承を受けられるかと」
じゃあそれもお願いね、と星野アイは告げていて
それも、とクリソベリルは反芻していた
「あなたにも役を作った。演じてもらう」
「あ、あの。それは──」
クリソベリルはわたわたとしていた
しかし星野アイはなおも詰め寄った
「ミヤコさんを演じて、と言ったらどう? クーちゃん」
「お母様を──?」
うん、と星野アイは頷いてから笑みを浮かべていた
クリソベリルがミヤコを見つめる。心配そうな顔をされた
出来るか出来ないかのギリギリのところを見極められていた
「その、最悪にこにこしてそうね、しか言わなくて良いから」
「──聞き捨てならないわよ。アイ」
ごめん、と星野アイは手を合わせていて
ミヤコは小さく溜め息を吐いていた
「話をまとめるね? B小町の45分の映像作品を作る。星野アイ役にわたしが推薦した人、星野ルビー役にルビー、有馬かな役に有馬かな、斎藤社長役にアクア、ミヤコさん役にクーちゃんを据えて。あとはわたしがメンバーに話通しておくから心積もりだけしておいてね?」