「ぴよぴよぴよ~ぴえヨンチャンネルですわ~っ!」
肩まで伸ばされた鮮やかな金髪をもつ黄色を基調としたドレスに身を包んだ可鈴な女性が両手ではためいて、上腕二頭筋をアピールするポーズをとった
声は元から高かった
「諸事情によりぴえ師匠がおりません。このクリソベリルが代理として進行致しますわ」
クリソベリルは前で手を組んで一礼する
優雅かつ丁寧な一礼であった
「そんな今回、しがらみ案件ですわーっ!」
背筋をピンと伸ばして後ろで手を組む
いつもよりもその声はやたら通ってカメラマンのミヤコが耳を塞いでいた
「ご存知な方はいらっしゃるかもしれませんがうちの事務所でアイドルグループを立ち上げた、とのことで。ここのチャンネルをお借りすることになりましたわ」
案内のように白銀の手袋をしている手を差し出して溢す
「今回はスペシャルなゲストもお呼びしてますから、お見逃しなく! 張り切って今回の企画へ移りますわよーっ!」
ひよこ頭にしている女性がなぜか四人いた。なお、一人だけ明らかに存在感を放っていた
クリソベリルは四人の丁度真ん中に立っており、曲を待っていた
『め、目指せム──♪』
ぴえヨンの裏声を酷使した歌と音楽が始まる
それに合わせて両腕をあげてことに上腕二頭筋がアピールできるポージングをしていた
「セイヤー!」
次に背後を向いて同じように背筋がアピールできるポージングをしていた
「イヤー!」
次に身体を横に向け、一方の手首をもう一方の腕で伸ばしながら胸板を強調するポーズを取っていた
端で踊るひよこ頭はクリソベリルに負けず劣らず無駄に様になっていた
「いきますわよーっ!」
大きくゆっくりと腕を広げて身体を前傾させ拳を合わせる。主に上半身の筋肉をアピールできるポージングをしていた
ドゥンドゥン、と言う音に合わせてそのままゆっくりと身体を回転させる
正面を向いて一旦音楽が止まると最後に腰に手をやりクリソベリルの指はやや斜めを指す。満面の笑みであった
後ろの三人も大体同じようなポージングをしているが、やはり一人だけ妙に指差しなれたような存在感を醸していた
「ぴ え ヨ ン ブ ー ト ダ ン ス ッ!」
「一時間ついてこられましたら素顔出してもヨシッ!」
ハァイッ、との声が皮切りに音楽と共に画面に右手でパンチを放つ。クリソベリルと約一名が無駄にキレがよかった
ぴよぴよ、との謎のバックコーラスにノっていて。リズミカルだった
「ほら、みなさま頑張って!」
音楽に合わせて顔が隠れるように腕をあげて両肘に右膝が付くような動きをしていた
後ろの三人にエールを送りながらクリソベリルは踊る
「乙女はガッツですわよーっ!」
ぴよぴよ、とのバックコーラスに合わせて反対の手でもパンチを放っていて顔が隠れるように腕をあげて両肘に左膝が付くような動きをしていた
約一名が頑張ってるがヘロヘロしていた。歳と運動不足が、との声が聞こえてきて
「おーっほっほっほ!」
音楽に合わせて腰に手を当てて、踵でリズムをとる
Doit! のリズムで両腕で真横をパンチするような動きを左右にわたって行った。クリソベリルだけはやはり余裕の表情だった
『飛べない鳥のポオオォズ!』
「強靭、無敵、最強ですわーーっ!」
座って両足を伸ばして踵浮かして音楽に合わせ両手を広げて羽ばたくようにしていた
頑張って、とそれぞれが声を掛け合っていた
『鳴かないセミのポーズ!』
座ったまま前屈のような形となり両腕を背中側に回すポージングをした。酸欠、との突っ込みがあった
声は出さないがクリソベリルは両腕をわたわたしていて約一名だけ真似をしていた
『眠らない蜘蛛のポーズ!』
尻を起点として腕を伸ばして脚に両手を付けるポージングをした
酸素のこと考えて、との突っ込みが入った
「セェイ! セェイ!」
ぴよぴよのリズムでさっと立ち上がり身体を横に曲げ斜め上方向に右手、左手と拳を放つようにして動いていく
クリソベリルは尚も元気な掛け声をしていた
「全速前進ですわ!」
両腕を前にしては腰につけを繰り返し、膝も曲げ伸ばししていた
次にぶんぶん、と歩かないが激しく腕を振る。振っている間も膝を曲げることを忘れない。とにかく激しく振っていた
「滅びの○ーストストリームですわっ!」
両手を腰付近で広げて羽ばたくように手首をパタパタとさせる
「羽化のポーズ! 羽化のポーズですわ!」
万歳して顔の横に両手を添えて腰を落とすを繰り返した
一連の動きの最後に大きくゆっくりと腕を広げて身体を前傾させ拳を合わせる
音楽が止まった。どうやら終わったようだ
三人が倒れていて一人が倒れた一人をツンツンしていた
アイ様ぁ、とその人はすりすりと身を捩っていて
「だ、大丈夫ですの? みなさま本当にお疲れ様でございました……着ぐるみ取って自己紹介することを許可致します!」
「苺プロ所属……星野ルビー……アイドルですっ!」
素顔を晒して片目の横にピースを添えてカメラに笑みを向ける
額に汗を滲ませ肩で息をして吐息を溢しながらようやく紡いだそんな言葉だった
「有馬かなっ! アイドルですっ! こんにちは!」
素顔を晒して簡潔に答える
相当暑かったらしく顔が赤く染まっており、やや髪型も乱れていた
「MEM……です。アイドルしたい、です」
素顔を晒してこちらも簡潔に答えた
倒れながらの告白となっておりうーん、と目が回っているようでもあった。ふぅ、と息を整えようとして額に片手を添えていた
「みなさま、よく頑張りましたわ。ことにMEMさんは本当に頑張って下さいました」
ぱちぱち、と未だにひよこ頭をつける星野アイと並んで拍手して称えていた
うんうん、と星野アイもこれには満足そうに頷いていて
「わたしたち──新生B小町をどうぞよろしくお願いします!」
MEM、有馬かな、ルビーはなんとか立ち上がってから指先でL字を作るポーズをした
クリソベリルと星野アイは脇で膝立ちになり、両手を伸ばしてひらひらさせていた
「頑張ってねー」
星野アイのそんな言葉を最後に収録は終えられた
「──ふふ。壱護に勝った」
PCを前にしてデスクで事務作業に勤しみながらミヤコはスマホを片手に小さくガッツポーズしていた
ぴえヨンちゃんねるとしては特例だったが、MEMの加入と覆面が星野アイかそうでないかで話題性を産んで、爆発的なものとなっていた
「良かったですわね、お母様」
ミヤコのデスクの対面に座って両手人差し指で素早くキーボードを打つ
不安が残るが、見た目よりはできるようになっていた
「壱護の鼻っ柱折るのは気分が良いわ。やっぱりわたし、性格悪いのかも」
頬を染めていていっそ得意気にも思えた
母のそんな様子を微笑ましく見ていて
「そういえばどうしてぴえ師匠は来れなかったのですの?」
「アイの前であの格好できる気がしない、とか言われちゃって」
「ああ……そういうことですの」
クリソベリルはPCに目を写してキーボード操作を早める
困ったような笑みを浮かべる母にどこか同情を寄せるような眼差しをクリソベリルはしていた
「……終わりにしましょうかクー。疲れたでしょ?」
「オッケーですわお母様! もう少し待ってくださいまし──」
PCの前で真剣な表情を浮かべる娘に小さく溜め息を溢しつつ、ミヤコは席を立った
お湯を沸かして茶葉を取り、クリソベリルのマグカップを洗ってから茶漉しを取る。スプーン三杯くらい入れてその上からお湯を注いだ
「ああ、ありがとうございますわ。お母様!」
「根詰めないでいいのよ、クー」
濃いお茶を啜りんー、と体を震わせる娘の背をただひたすらミヤコは見守っていた