シャンフロ設定多すぎて事実確認が大変です。
「ゲーム」というものの定義は曖昧だ。「クイズゲーム」なんてものから「トランプゲーム」、果ては「FPSゲーム」などなど、古来からある娯楽の総称。それは、カードや盤上ゲーム、つまるところトランプや将棋に由来する。それらが転じ続け、第二次世界大戦終戦後にその存在を作ることになる。世界初のコンピュータゲーム自体はただのチェスゲームだったそうだが、進化し続け前いた世界ではテレビゲームに至った。
この世界ではどうなっているのかは分からない。
どこで特異点が発生してVRなんて超技術を手にしたのか。だが、そんなことはどうでもいい。今は少なくとも、VRゲームというものを最高に楽しむべきだからだ。
「とりあえず、久しぶりのゲームだし楽しもう」
取扱説明書に書いてある注意事項などをよく読み、されどあまり信用せずに、大きなVRキットを頭にセットする。
「形は前のと似てるな、あっちでももしかしたら再現はできる日が来るかも」
VRというものを考えるに、やる前にはお手洗いを済ませ、水を近くに置いてベッドに横たわってやるのが正解とみえる。エナドリは何がいいのかとか分からないから、今回は水だ。
「ゲームスタート」
口の端が自然と浮き上がる。久しぶりの感覚だ。事前の調査によると、やはりこのゲームは革命的なものらしい。発売日からやれるのが最善だが、もう過ぎている以上そこは妥協せざるをえない。
起動して次の瞬間には、キャラメイク画像に移っていた。
「ソウルキャリバーですか?」
あまりに多いキャラメイク事項にキャラメイクの自由度が高いゲームを想起させる。角やアクセサリーなんかもあるのは珍しい。あのゲームはキャラの衣装から顔立ち、果てはCVまで選べるというキャラの作り込みが恐ろしいゲームだ。それでいて格ゲーであるというのだから分からないものである。
「ああ、こうなるとロールって選択肢すらあるのか」
ここで立ち止まってしまい、「一生私のシャンフロ始まらない」なんて呟きがあったことは目に浮かぶ。流石にこういうのは美形の方がいい。これをダサい格好でやれるほど変態じみてはいないつもりだし、変人だと思われるのもあまり好めない。
「一からキャラメイクしても上手くいかないのがオチでしょ」
特定のプリセット的なものがあるならいいのだが、このゲームのように完全に0から作るタイプだと初心者、つまるところこのゲームを弄り慣れていない人間は上手くいかないのは目に見える。ましてや、こちらはいくらゲームを昔やっていたとは言え数年ぶり、いや、この体にとっては初体験である。こういうのは自分の顔をもとにしてしまうのが手っ取り早い。
「分からない程度に誤魔化して…こんなもんだろ」
髪色と顔つきを多少変えれば当人だとは意外と気づかれないものである。ビフォーアフターを並べ、「これは分からない」となるくらいまでデザインをずらす。
髪色は青に、他諸々も変え、あとは適当に整えて完成。青髪の細身美形が出来上がった。
青い髪、黄色の目、引き締まった顎に吊り目。少しばかりの若さと精悍さを混ぜたような見た目だった。
「基本ステータスも固定じゃないんだね」
一旦それを保存し、ステータスやジョブ等を弄る画面に移動する。
「何これジョブ多すぎでしょ」
「いちいち武器でジョブ分けてるのか…通りで」
騎士(大剣使い)なんて細かい枠組みがあるせいで、ジョブが本当に多い。
「補正付き…なるほど」
職種によって補正が違う。器用さや力、素早さの数値が変動するようだ。「神秘」なんてあったらそれこそ高難易度ダークファンタジーアクションが始まるわけだが、パッケージを見るにそうではない。
「でも割となんでもやりたいんだよな…」
MMOの醍醐味というのは、相反する二つの武器を持ったりできるところにある。おそらくこのゲームもその例に漏れないはずだが、サブジョブなんて項目はない。
「メジャーなの取るかそれとも…」
メジャー、つまるところ魔術師や剣士はバランスがいい。ここで極振りを選ぶと、大抵は上手くいかない。それで上手くいくのは何度もそれを通ってきたRTAプレイヤーか、そういう極振りが見に合う人間だけである。
「…弓使いたいんだよなあ」
弓、中でも大弓を使いたいと彼は考えていた。理由としては、ゲームで弓を使う主人公が少ないことと、弓が不遇なことが多いこと、そして「弓」に少しばかり憧れがあることだ。
弓というのはロマンがあると彼は考えていた。ゲーム作品に登場する弓は、大抵がお洒落である。フェイルノート、大鷲の弓、カラドボルグ、流星一条、巴の雷、天羽々矢、パルテナの神弓、百龍弓、光の弓…だからこそ、弓がいいなあ…とか考えていたのだが、初期状態から弓しか使えない時、どうなるかは明白。弓を引く前に近接でぶっ飛ばされてオシマイ。
「頑張ったらいけるけどセーブ制度もどんな感じか分かんないしリスクが…」
誰かと一緒にできるならいいが、今までこの世界のゲームなどプレイしたことはない。後衛に徹するという作戦も無に帰す。
「うーむ…」
悩みに悩み、選んだのは結局魔剣士だった。ネットで少し調べてみたら、特定の町でサブジョブを得ることができるそうだ。それなら、後々組み合わせることにもなりそうな魔剣士を選ぶことにした。
「出身…まだあるのか」
どうやら出身地まで決められるようだ。そんなもの決めてどうなるんだ、と思いつつもステータス補正があるようなのでとりあえずAGIとSTRの増えるものを。
「これでいっか」
決めたのは『忌子』。厄ネタの匂いが香ばしいが、この程度の厄ネタなど特定の鬱ゲーと比べれば甘いものである。街の近くの奇妙な場所、要するに敵の多いところから始まる代わりにAGIとSTRが上がる。そして、LUCが下がる。二つのデメリットのおかげで数値は大きく、非常にありがたい。
「プレイヤーネームはいつものように」
この名前を使うのも随分久しぶりだ。
「「レブラ」と。」
非常に遠回しな由来があるその名前に、ついクスリと笑ってしまう。気を取り直して前を見る。
「さあ、空想の世界へゴー」
軽い感じの掛け声と共に次の画面へと進む。
「…プロローグとかないの!?」
目が覚めたとき、そこはすでに森の中だった。まずはプロローグ、と身を構えていたのだが、無かった。
「ん?でもプレイ映像にはあったのを見たことあるんだけど…」
「んん…?」
当人は気づいていないが、これは「忌子」という出身を選んだからである。
この事実はまだ判明していないのだが、このシャングリラフロンティアというゲーム。
少しばかり専門的な言葉を使っていうと、「UNDERTALEのようにメタフィクションを一部ミスリードとし、かつメタフィクションを同じように成立させているシステムと世界観の絡み合う複雑な世界観のゲーム」である。
結果、『「忌子」なら、この世界に伝わっている伝承を知らなくても仕方ないよね!』という理由でプロローグがカットされたわけだ。まあそもそも、SLDpOkjgEGJSTAmhUISdiAL(解読不能)であるわけで。ともすれば、これすら作者側のミスリードと言えるのかもしれない。
「深く考えても仕方ない、先に進もう」
その事実に全く気づいていない彼はとりあえず先に進む。この森でやれることといえば、動作確認くらいなものである。
「…………」
「…その前に、一回このセリフ言っておこうか」
「科学の力ってスゲー!!」
一瞬全く別の疑問に脳内を侵食されたせいで、反応が遅れた。もはや世界的有名ゲームであるそのゲームのセリフと共に、目を燦然と輝かせる。
彼が知るありとあらゆるゲーム、そのどれよりも美しい。人類の科学はここまで進んだのか、と感じた。風に運ばれる草の香りや、水の滴る葉っぱ。五感の全てが直接的に世界を感じていた。ここまでくれば、最早現実と変わらないだろう。というか、これをできる技術があっていまだに現実で仕事をしていることの方が驚きである。
素晴らしい画質である。文句などあるわけがない。ここまでくれば、これで特定の作品のリメイクを作るのが正解なんじゃないだろうか。
「…いやモンスターが普通すぎでしょう」
目の前にやってきたのは一匹のゴブリン。メジャーすぎて逆に怖い。ファイナルファンタジーのように、終盤に出てくるタイプのゴブリンなのではないだろうか。
「あとスキル確認させて欲しかったな」
確認していたら殺される。ここは基本攻撃だけで倒すしかなさそうだ。初期装備で用意されていた片手剣を取り出し、軽く構える。小鬼はその手に翳した小さな短剣を胸に向かって差し込もうと振る。一歩退くように見せかけて、逆に前に進む。体勢を逸らし短剣を避けながら、くるりと後ろに回って肩あたりから横に一線、おそらくグロすぎるとダメなのか、そうした瞬間にゴブリンが光の粒子となって消え去った。
「…一匹なんて珍しい」
ゴブリンというのは作品によって描かれ方が全く違う。だが、割と群れることが多い。それこそ種として生存していくための手段であり、そう考えると今倒したものははぐれゴブリンと考えるのが妥当だろう。
「ドロップとかあるんだ、とりあえず回収…」
ドロップ品を適当に回収する。
「うーむ、渋い!」
ゴブリンの体の一部しか回収できなかった。予想では持ってた武器とかドロップすると思ったんだけど。そして一拍置いて、恒例のステータス確認である。何が初期値でどのような制度でどのようなスキルがあるのか。それが非常に重要である。
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PN:レブラ
LV:2
JOB:魔剣士(片手剣使い)
4500マーニ
HP(体力):30
MP(魔力):20
STM(スタミナ):10
STR(筋力):15
DEX(器用):10
AGI(敏捷):20
TEC(技量):15
VIT(耐久力):10
LUC(幸運):6
スキル
・パワースラッシュ
・ソードガード
・ファストステップ
魔法
・ファイア
装備
左右:兵士の剣(右)
頭:無し
胴:兵士の軽鎧
腰:兵士の腰当て
足:訓練用靴
アクセサリー:無し
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先ほどのゴブリンによってレベルが上がっていた。これは、序盤はレベルが上がりやすいというあれだろう。
「レベル上げてった方がいいかな…」
スタートがここな時点で、運が悪ければ詰む可能性すらある。先にレベルを上げるのが得策だ。そう考えながらレブラは後ろから襲ってきたカルバノグの兎を仕留める。
「さっき首元掻き切られそうになったからね、見えてる」
少し前に首元に刃が飛んでいたのを見逃しはしなかった。その時は反射で避けたが、一度見れば大丈夫。この兎…ドロップ品からヴォーパルバニーという名前であることが判明したこいつは、素早く賢い。代わりに、どの個体も攻め方が固定されているので、攻撃が読みやすい。
「ドロップした武器の性能がいいのはなんなんだ」
切れ味の鋭いその武器。「致命の包丁」なんて言うそうだが、ここで言う「致命」とは想像できるあの「致命」ではなく、単純に攻撃力が高いと言う意味。耐久と攻撃の両立した有能武器、ムックルみたいなもんだろう。兎だが。
ファイアという魔法で肉を焼いて空腹を抑えながら、独り言を呟く。
「とりあえずレベル上げて町行こう、チュートリアルすっ飛ばして起きるのは後悔だけなんでね」
持論だが、これはゲームの序盤重要三箇条の一つだ。
・チュートリアルはちゃんと読む
・基本操作を覚える
・調子に乗らない
これさえ守っていれば後々「そんなこと言ってたっけ?」とか、「こいつどうやって倒すんだよ」とかにならないで済む。
そう言うわけで。
「ファステイアとかまんまだなおい」
やってきました、シャンフロ界のモンドに。作風が中世ヨーロッパなのも相まって少しばかり冗談になっていない。最初に死ぬと夢オチという形でここにリスポーンするらしいが、それでいいのだろうか。
木材と石ばかりで彩られたその街は、最初の街なだけあって他のプレイヤーも多い。
「…他のプレイヤーかぁ」
懐かしいものだ。他のプレイヤーと一緒に大型モンスターを倒したのも。
「とりあえずそんなことよりリス地固定しないと」
どうやらこのゲーム、街中の宿がリスポーン地点として固定されるタイプらしい。だから、最初はとりあえず宿に寄っておくのが正解だ。
「こんにちは」
「いらっしゃーい」
「…?」
一瞬、違和感を感じる。こいつ、プレイヤーじゃないぞ。この世界との溶け込み具合、否、この世界に対する「慣れ具合」からそう感じられた。
「?どうしたあんちゃん」
「…いや、なんでもない。部屋は空いてるか」
内心、レブラは驚愕していた。NPCがここまで自然な会話を可能にしている。確かに前の世界でもAIと会話できたりはしたが、その節々には必ず「違和感」が発生する。文法的間違いであったり、文脈のなさであったり。それが、ほぼない。なんて恐ろしい技術だ、と実感した。
「運がいいなあんた。一部屋だけ空いてるぜ」
「ありがたい。そこで頼む」
「料金は150マーニだ」
懐からお金を払い、部屋の鍵を貰ってリスポーン地点を固定する。
「やっとこれで一安心」
一旦外に出て、チュートリアルを進めてしまおう。それがいい。
次回、戦闘。
今日のゲーム雑学
昔のゲームがやけに難しいのは、メモリが少ないので、長くプレイしてもらうため。