偽物の輝きは、本物には劣るから   作:りっくんちゃん

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1,そっくりさん?

 

「おいルビー、遅れるぞ。初日から遅刻は勘弁してくれ。」

 

「ちょっと待ってよお兄ちゃん。この制服可愛いけど複雑なんだもん。」

 

 俺たちが産まれて15年が経ち、新たな門出、陽東高校の入学式がやってきた。

 

 妹であるルビーがアイドル活動をする関係でこの高校の芸能科に入ることから、俺も一般科を受けたが、正直なところ俺はあまり、高校生活に希望を見出せていない。

 ルビーも俺も転生者だから二度目の高校生ということになるが、前世ではルビーは生まれが特殊だったのかあまり一般的な学校生活を送ってこなかったようだった。その証拠に、中学では毎日目を輝かせて登校していたしいろんな行事に食いついて、多くの友人を作っていた。

 高校生活では、あいつの夢のアイドルになると言う目標に向かって全力で努力して邁進していくんだろう。

 

 だが俺は前世合わせて40年以上生きてきた。精神は周囲の子供や肉体に影響されるから精神年齢がそこまで成熟したとは言い難いが、周りの中高生と同じようにはしゃげるほど気力がないし、ノリについていくこともできない。

 あいつのように将来の夢ややりたいことでもあれば別だったのかもしれないが、あいにく俺にはそんな夢や希望は持ち合わせていない。

 

 

 俺がこの人生でやるべきことはアイを殺した父親への復讐を果たすということだけなのだから。

 

 

 B小町の絶対的アイドル、星野アイ。俺の前世からの推しで、担当患者で、今世での母親だ。

 

 そして前世の俺を殺したストーカーに11年前に殺された。

 

 そのストーカーはアイを殺した直後に自殺した。直接アイを殺した相手はもういない。だが、アイが子供を授かったことを知っている人間、それをストーカーにリークした人間は状況的に俺たちの父親しか考えられない。そして、アイの交友関係の狭さを踏まえるとそいつは芸能関係者である可能性が高い。

 

 なら、俺はそいつに復讐しなければならない。アイが死んで、そいつがのうのうと生きているということを許すことなどあってはならないのだから。

 

 だからこそ俺は、監督の元で映像技術を学んで、周囲にはそういった芸能界の裏方志望だと伝えてきた。つい最近は、偶然出会った有馬かなから紹介された容疑者の一人である鏑木プロデューサーに接触できたし、次の手がかりにつながる仕事も手に入れられた。

 

 俺の復讐は一歩一歩進んでいる。それ以外のことに感ける余裕など一つもない。

 

 そう言うわけで、俺は高校生活も最低限の関係しか形成しないつもりだった。所詮、ほとんどの友人はこの3年間限りの関係になるし、芸能人がいる高校といえどほとんどは顔やスタイルがいいだけでテレビで見るやつなんていない。ここで人間関係の構築に勤しむぐらいなら、現在の方針通りに進める方が賢明だと考えたからだ。

 

星野(ほしの)愛久愛海(アクアマリン)です。1年間よろしくお願いします。」

 

 だから、新学期そうそうある自己紹介なんてたいしたことを言わなくていい。学校の課題等に支障が出ない程度の友人関係で十分だからこそ、やばいやつだと避けられさえしなければ、悪目立ちする必要も人気者になる必要もない。親友や恋人なんてもってのほかだ。

 

 俺の持ち時間をさっさと終え、他の連中も自己紹介を始める。小器用に爆笑を掻っ攫っていく奴もいれば高校デビューをのっけから失敗している奴もいるが、前世でも見た別段何の変哲もないありがちな風景だった。

 強いて言うなら、内部進学組が多い影響か身内ノリが強い傾向にあるようで、これに馴染むには少し時間がかかるかな、なんて思いながら聞き流していると三十九人分の自己紹介が終わった。

 

 どうやら一人、休みのようで初日から欠席なんて度胸のある奴がいるんだな、なんて思いながら教壇に立つ教師の言葉に耳を傾けようとしたその時、

 

 教室の扉が開き、一人の生徒が入ってきた。クラス全体が教室の後ろを振り向き、俺も扉が動いた音に引き寄せられて胡乱げに振り返る。

 

 

 そうして俺は、目を見開くことになる。

 

 

「すみませーん、初日から遅刻しちゃいました…。ごめんなさい!」

 

 静寂から喧騒に移ると、その音が鼓膜を貫くように、

 

「あれ、もしかしてちょうど自己紹介のタイミングだったりしましたか?」

 

 暗所から太陽の照らす明所に移ると、その光が網膜を焼くように、

 

「先生からの許可も頂けたので、せっかくだし私も波に乗らせて貰いますね!」

 

 締め切られた空間から外に出ると、その風が肌を突き刺すように、

 

「私の名前は海月(うみつき)(まな)。好きなものも嫌いなものも特にはないけど〜、強いて言うなら犬派かな?運動も勉強も全くできないわけじゃないけど、わかんない部分もいっぱいあると思うから教えてね。」

 

 謝意を感じさせながらもよく通る澄んだ声が。変に縮こまらず、不快感を覚えない堂々とした立ち居振る舞いが。私が主人公だ、と言わんばかりの身に纏う雰囲気が。流れるように輝く黒髪に、端正な顔立ちが。そしてなにより、人目を吸い付かせるような、眩い輝きを宿す瞳が。

 

「長々と喋るのもアレだからこれぐらいにしとくね。みんなと仲良くしたいです!一年間、よろしくおねがいします。」

 

 白昼夢を疑うほどに、その少女は、生き写しのようなその鮮烈な姿は、アイそのままだった。

 

 

 

 

 

 今朝、学校の入学式に間に合うように準備をしていたらセンセイに事務所に寄れと言われて、全部の準備がご破産になったんですけど。

 あの人、要件を何一つと言わずに電話切るしもう一度電話をかけても繋がらないしで渋々事務所に行ったけど、入学式は遅刻確定。しかも行ったら行ったでよくわからない話をされて、もう用済みだから学校行ってこいって一体何だって話だ。

 忙しいのはわかるし実際、今まで何度もお世話になってるから別に文句を言うつもりはないけれど、愚痴ぐらいは吐きたい。まあ、口に出すつもりはないんだけどさ。

 

 さて、遅刻の連絡はすでに学校に行ってるらしく、怒られる事はないらしいが、それで一安心とはならない。

 むしろ、学校の始まる最初の瞬間にいなかったと言うのは大きなアドバンテージを失ったと言わざるを得ない。大体の場合、入学式前後の自由時間で席の近くの人と友人になってある程度のグループを作るものだろう。それができないのは徒競走でスタートダッシュに失敗したも同じだ。

 

 まあ、逆にいえばそのぐらいの失態は実力があれば取り返せるとも言えるけど。

 

 学校の先生に遅刻の旨を連絡し、教室に案内してもらう。別段、怒っている様子も見えないからどうやらセンセイはほんとに連絡してくれていたらしい。正直絶対嘘だと思ってた。

 

 教室に辿り着くと、クラスの最後方にいた生徒が座って前に立っていた先生が話し始めた。発表とかは学校の初日からあると思えないし、クラスのそわそわとした雰囲気から自己紹介のタイミングかな?

 

 それなら、タイミングとしてはベストだ。

 

 扉を開けた音でクラスメイトの目を集める。バレないように静かに入るんじゃなくて、あえて普通の速度でドアを開けるので十分。

 

「すみませーん、初日から遅刻しちゃいました…。ごめんなさい!」

 

 注目が集まったと同時に頭を下げる。やったことに対する謝罪は必要だからね。でも、申し訳ないと過度に畏まる必要はない。

 

 頭を上げて先生に目をやると遅刻は連絡が来ているから大丈夫だ、と返事が返ってくる。クラスのみんなも責める、と言うよりは戸惑いかな。第一関門突破だね。

 ここで怒られるなら少し手間だったけど、そんな様子もないし私も自己紹介の流れに乗らせてもらおう。

 自己紹介といっても大したことを言う必要はない。遅刻という要素で既に悪目立ちしているし、他の生徒とは一線を画して印象に残る。面白いことを言うのも選択肢だけど私はそんなキャラじゃないしね。

 

 ありがちなことを話して最後によろしくと締めくくる。拍手の中先生から指定された席に向かった。

 窓際の一番後ろ。主人公席だね。まあ、人間関係の構築という点ではあまり優れた席とはいえないけど。後ろを振り向いて話したり隣が一人少ないから友達できないんだよね。

 

 私で自己紹介を終えたからか先生が二言三言話した後、席に座って待機する様に伝えて教室から離れた。言うなれば交流タイムってとこかな。

 

 とりあえず、唯一の隣人に挨拶をしとこ

 

 そう思って、隣に話しかけようと初めてその彼を直視して、じっと私を見つめていた彼と目が合った。

 

「っ!」

 

 …いや、きっと気のせいだ。確かに、よく似ているけれど、ただの偶然だろうし。

 

 動揺をおくびにも出さず、仮面を被り直して、相変わらず私を見つめ続ける彼に話しかける。

 

「どうしたの、私の顔に何かついてる?朝ごはん急いで食べちゃったからかな。」

 

「…そういうわけじゃない。ちょっと、知り合いに似てたからびっくりしただけだ。」

 

 なるほど、彼も似たような驚きにあったのかな。少なくとも、私が一瞬たじろいだことには気づいてないみたいだ。

 

「そうなの?私に似てるんだったら美人さんだろうな〜。今度その人も紹介してよ!」

 

「…ああ。」

 

「お、やった!そういえば、まだ名前を聞いてないや。私はさっき言ったけど、海月愛。あなたは?」

 

「…星野 愛久愛海。アクアって呼ばれることが多い。」

 

 

 

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