偽物の輝きは、本物には劣るから   作:りっくんちゃん

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2,はじめまして

 

「星野 愛久愛海。アクアって呼ばれることが多い。」

 

 そうなのった隣人は名前を聞いた私の顔をじっと見つめてくる。アクアマリンか。中々すごい名前だな。

 

「ふーん、じゃあアクアくんって呼ぶね。よろしく。」

 

 名前の凄さには触れず手を差し出す。まあ、名前を馬鹿にされるのは気分が良くないだろうしね。あんまり言及しないであだ名があるならそっちに乗っかろー。

 

「‥何も、思うところはないのか?」

 

 そんな感じで話題を逸らそうとしたのにストレートに聞いてきたんですけど。私の手は宙ぶらりんだし。そんなに自分の名前が嫌なのかな。

 素敵な名前だねって嘘をつくことも別にできるけど、どうしようかなぁ。

 

「うーん…確かに風変わり名前だな、って思うけど人の名前で揶揄ったりしないよ?ご両親から貰った名前でしょ。アクアくんが嫌なら大人になって変えればいいだろうけど、私がとやかく言う事はないかな。」

 

 もしかして地雷だった?と尋ねるとそう言うわけではないらしい。でも明らかに落ち込んでいる。ちょっとわからないなぁ、難しい隣人にあたったものだ。

 もう少し会話を重ねてみようとした時、私の名前が呼ばれた方に顔を向けると、中学の同級生が私に向けて手を拱いていた。

 

「あーごめんね?ちょっと友達が呼んでるみたいだからまた後で。」

 

 少し茫然としている彼を置いていくのは不安だけど、まあ教室の中で何が起こるわけでもないだろうから一度席を離れ、友達が既に形成していたグループにお邪魔した。

 

「ちょっとマナ、いきなりなんでそんなに遅れてんのよ。」

 

「あはは、ごめんごめん。ちょっと寝坊しちゃって。」

 

 遅れた理由を適当に誤魔化す。まあ、私は中学時代もそうして誤魔化していたから、リンは特に疑うそぶりも見せる事なく、会話を続けてくれる。

 

「相変わらずねぼすけさんは治ってないのね。私も入学式すっぽかしたかったなー」

 

「まあ校長先生の話とか長そうだもんね。でも、まさかリンがまた私と同じクラスになるとは思わなかったな。」

 

 今、私を呼んだのは中学生以来からの友達の鈴寝凛だ。まさか、高校まで同じだとは思わなかったけど、中学三年間も同じクラスだったしもはや腐れ縁とまで言えるかもしれない。

 

「他のみんなも急に割って入っちゃってごめんね。迷惑じゃなかった?」

 

 リンと話していると一生話し続けることになるため、周りにいたグループのメンバーに話しかける。遅刻して急にリンとの間に割って入って置いてけぼりならいい気分じゃないだろうし。

 

「いやいや、ちょうど海月さんの話題が出たんだよ。すごい美人さんが入ってきたな、って。」

 

 斜向かいに座っていた男の子がそう返事をしてくれた。顔は整っている方だし、躊躇なく美人とか言ってくるあたり女性慣れしてるね。正直、他に女子がいる場面でそれを言われたら火種にしかならないんだけど。

 

「はは、そんなことないよ。でもこの学校やっぱり美人さん多いね!さすが芸能科があるところって感じがするなぁ。」

 

 とりあえず否定しつつ関連した話題を出して矛先を逸らす。肯定しても否定しても角が立つとはいえ、まあ否定するのが日本人って奴だ。

 

 そんな感じで会話をのらりくらりと交わしながらグループに入れてもらって、放課後、カラオケに行くことで決まった。なんでも、このグループは全員外部組らしい。みんな高校からだからか、やっぱり自然に仲良くなったみたいだ。私が混ざっても違和感ないしありがたいね。歌は、まあ、好きではないけど、出来るだけ友達付き合いはしといた方がいいし。リンがいるから余計に気を回さなくて済むから大丈夫かな。

 

 内部進学組のグループを無視するのも感じ悪いだろうから、グループの会話をほどほどに切り上げて別のグループの人たちとも話した。流石にすぐに仲良くはなれないけど、私という強い輝きを放つ存在を無視はできまい。遅刻のことをいじられたりしつつ、何人かとも連絡先を交換した。

 

 他の外部進学組の一人でいる子に話しかけたりしていると、最初の授業が始まる時間が近づいてきた。話していた生徒との会話もそこそこにして切り上げ、席に戻る。

 

「人気者なんだな、海月は。」

 

 席に座ると隣に座っていたアクアくんが話しかけてきた。どうやら彼の中で生じていたらしい問題は解決したのか、先ほどとは打って変わって平然としている。

 

「うん、中学が同じ子がいたからね。遅刻しても友達がいてよかったよ。アクアくんは遠くの中学から来たの?」

 

 少し、アクアくんの様子をおかしくさせちゃった手前、他のクラスメイトと話している間も気にかけていたけどアクアくんが誰かと話している様子は見られなかった。流石に元同級生とかがいたら話しかけていただろうからきっといないのだろうし、ちょっと離れた中学から来たのかな?って思ってるけど。

 

「ああ、都内ではあるけど区は違うな。」

 

「へえー、じゃあどうしてこの学校に来たの?」

 

 陽東高校は芸能科があること以外は比較的普通の学校だ。だからこそ、誰が来ていてもおかしくないんだけど、わざわざ他の学区から来る必要性はない。それこそ、芸能科に入るため、ということならわかるけど、ここは一般科だし。

 

「妹がここの芸能科に入ったから、心配でついてきた。」

 

「なるほど、妹さんがいるのか!」

 

 シスコンさんだ〜と揶揄っても恥ずかしがることもなく手をひらひらと振ってかわされる。よほど仲がいいんだろうな。

 

「そっかー芸能科にいてアクアくんの妹さんって事は相当可愛いんだろうなー。」

 

 正直、アクアくんのルックスは抜群に良い。このクラスは一般科だから特別顔面偏差値が高いと言うわけじゃないけど、彼は芸能科にいても引けを取らない程度には顔がいいと言えるだろう。化粧もしている様子はないし、それでこれなら芸能界という大きな括りでも負けはしないんじゃないかな。

 

「って、なんでそんなビミョーな顔してるの!?」

 

 そういうとアクアくんの顔が気まずそうな顔をしていた。え、兄妹仲いいんじゃないの?そんな感じの距離感だったけど?それとも自分がかっこいいって言われ慣れてないってことかな。この顔で女子がほっとくわけないと思うけど。

 

「…なんていうか、さっき海月に似てる人がいるって言ったろ。それが、まあ、妹なんだよ。」

 

 あーなるほど。結果的に私が私の容姿を褒めてるみたいになって変な顔をしていたのか。アクアくん視点では確かに妹と級友が似ているのは複雑かもね。

 

「まあ、それでも私は私の発言を撤回しないけどね。だって私、可愛いし。」

 

 すなわち私に似ている妹さんも可愛いと言うことに他ならない。照明完了、LEDってやつだ。

 

「それを言うならQ.E.Dだ。…自信家だな、さっきは一応謙遜してたろ。」

 

「そりゃあ私にだって協調性の一つや二つはありますとも。でも、見た感じ今私たちの会話を聞いてる子はいないし、それならこの世の真理に照らした言葉を吐かないとね?」

 

 というか、さっきの会話をきっちり聞いてたか。目線まで露骨にこちらには向けてなかったけど、こっちを気にしてる雰囲気は感じてたんだよね。やっぱり何か私と因縁でもあるんだろうか。会った覚えはないんだけど。うーん、怖いねえ。

 

「でも、それなら俄然、妹さんに興味が湧いてきた!会わせてくれるんだよね?」

 

「…そんなこと言ったか?」

 

 ふふーん、聞かなかったことにはしてあげないよ?たとえそれが嘘でも適当に出した答えでも、受け取った人がいる以上、本当にする努力義務が君にはあるのです。

 

「もちろん妹さんが会いたくない、と言ったら諦めるけどね。でも〜アクアくんからその約束を反故にするのはお姉さん感心しないなぁ。」

 

 そういうと、苦虫を噛み潰したような顔でしばらく携帯を操作していた。しばらくして、その顔がさらに歪む。人の顔ってここまで歪むんだなー、でも美形だと顔が歪んでも綺麗なまんまだからお得だよねー。私もだけど。

 

「…今日の昼、空いてるか。」

 

「もちもち。空いてなくても空けるよー。」

 

 なんだかんだ律儀に約束を守るあたり、案外アクアくんは押しに弱いのかもしれない。

 

 今日の授業は昼までしかないから昼間、ってことは放課後になる。まあ、カラオケ行かなきゃだからそんなに時間は取れないけど、友達の妹に会うぐらいなら一時間もかからないでしょ。

 

 あんまり約束とかは反故にしたくないんだけど、ちょっと、確認したいこともあるしね。

 




今日の夜にも投稿するのでぜひ見てください。
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