偽物の輝きは、本物には劣るから   作:りっくんちゃん

9 / 9
8,むかしの友達

 ルビーちゃんに大事な話、って言われたから何かと思ったけど。まさかアイドル勧誘とはね。まあ、少し考えれば別段おかしな話ではない。

 私とアイの容姿が似通う以上、アイドルとして最も重要な要素である容姿というハードルはクリアしているわけだし。他にも、立ち居振る舞いまで似ていたら彼女と同じ様に成功する、という考えもわかる。まあ、現実はそううまくは行かないだろうけど。

 アクアくんが待ったをかけた理由もわかるかな。大方、アイと同じ結末を辿って欲しくないって感じだろう。いくら私とアイが別物だとわかっていても、嫌な考えは頭をよぎるものだからね。

 

 それにしても、有馬かなさんがいるとは思ってなかった。

 そもそも同じ学校ってことすら知らなかったけど、挙句に苺プロに所属してアイドルか。まあ子役がアイドルになって女優になる、って例は結構あるしそこまで意外なキャリア形成ではないかな。ピーマン体操歌ってたぐらいだし。

 

 ただ、ちょっと私としては都合が悪い。アクアくんと仲良くしていく過程で同じ職業、同じ事務所、同じ学校の彼女は私と関わる機会が増えるだろう。別にそれ自体は問題ないんだけど…。まあ、遠くない将来バレるだろうし、別にいいか。

 

 というか、一瞬バレそうになった気がしないでもないけど。かなさんの情緒が不安定になってたから一応、軽くフォローするつもりで少し話したけど、やっぱり中途半端に同情するべき相手じゃなかったか。だから玄人相手に話とかするの嫌なんだよね。でも、ちょっと褒めたら素直に喜ぶあたり、業界人にあるまじきピュアさだ。

 

 さて、要件が終わったならとりあえず今日は帰ろっかな。社長さんには一応挨拶したけど、まあ、ルビーちゃんはメッセージをおくっとけばいいか。

 

 そう思って立ち上がったタイミングで、奥の部屋の扉が開いてちょっとむくれたルビーちゃんが出てきた。なにこれ。アクアくんにこってり絞られたんだろうか。

 

「うへぇ…お待たせしました。」

 

「あはは、おつかれ。アクアくんはもう引っ込んだの?」

 

「あーまあ、そうだね。勉強するみたいだよ。」

 

 へー勉強か。演技の勉強かな。アクアくんなら普通に高校の勉強しててもおかしくないけど。うちの高校偏差値高くないからあんまり勉強に身を入れてる人いないんだよね。

 

「そういえば、あんた。アクアとどんな関係なのよ。」

 

 私がアクアくんに興味を示したからか、かなさんが私に探りを入れてくる。しかし、どんな関係かって言われてもなあ。別に友達以上とは私は抱いてないんだけど。

 

「席が隣で友達になったんですよ。授業とかで一緒に課題を取り組んだりするので自然と仲良くなりましたね。それがどうかしたんですか?」

 

「ふーん、別に。なんでもないわよ。」

 

 びっくりするぐらい素っ気ない返答が返ってきた。あれ、私、かなさんにあんまり好かれてない?彼女のこと知らないからあんまり対応の方向性定まってないけど。だからこそもうちょっと話したい気持ちもあるんだけど…。

 

「じゃあ、そろそろ、帰ろうかな。」

 

「ええ〜!もう帰っちゃうの?もうちょっと居よーよ。」

 

 長居できるわけないでしょ、スカウト蹴った事務所なんて。気まずいんだから。それにアイドルユニットの二人がいるところにいるとなんの気なしに機密情報話されてなあなあでアイドル加入することになりかねないし。

 

「部外者はここらで退散するよ〜。二人ともアイドル活動頑張ってくださいね。」

 

 そう言って帰ろうとしたらかなさんの顔が凄い苦い顔になった。えぇ、もしかして流されてアイドルすることになったの。結構重要な決断だと思うけど。

 

「まあ、いいわよ。この事務所だったらアクアから演技の技術盗めそうだし。そういえば、アクアの次の仕事はないの?」

 

 背を向けて帰ろうとしたタイミングで気になる話題が出てきた。

 

「アクアくん、次の仕事もう決まってるの?キャスティング発表されてるなら私も知りたいな。」

 

「え“、あんたも気になんのかよ。」

 

 そ、そんな嫌がらなくてもいいじゃん。でも、ちょっと必要な要素だからそこは譲れない。とぼけたふりをして誤魔化そう。まだ企画段階なら顔は突っ込めないけど。

 

「うーん、あるにはあるけど…。」

 

 あら、ルビーちゃんも渋い顔だ。ストーカー役はオッケーでダメな役とかあるだろうか。半裸になって走り回る芸人枠とか?でも、そんな売り方するとは思えないけどなぁ。

 かなさんと私で押しに押したらタブレットを持ってきて見せてくれた。

 

 あーなるほど、恋愛リアリティーショーか。

 

 

 

 

 恋愛リアリティーショー。私はあんまり見たことないからよく知らないけど、若い子の男女を同じ屋根の元に住まわせてその恋愛模様を楽しむ、って番組だ。どの程度がヤラセでどこからが本物なのかわからないけど、結ばれたカップルが結婚する場合もあればすぐ別れるものもあるし。その割合は半々といったところなんだろう。

 まあ、かなさんにしてもルビーちゃんにしても気分は良くないだろうね。身近な男が知らない女性にデレデレしてるのがムカつくのはわかる。演技だとしてもそう折り合いなんてつけられないだろう。

 

 オープニングが終わり各メンバーの紹介時間に入る。台本があるのかまでは知らないけどストーリーなんてものは自然に発生するものがないからか、少なくとも役者の顔だけでもいい場合が多いけど、その例に漏れず男女共に綺麗だね。かなさんによると鏑木プロデューサーが仕切ってるらしい。相変わらず手広くやってるねあの人は。

 

モデルにダンサー、配信者とバンドマン。レーベルぐらいは聞いたことあるけど初めて見た子達だ。どんな性格か、スタイルで望むのかは見当もつかない。ただ、一人だけ、私の知ってる人がいる。

 

「げ、黒川あかねだ。」「あかねちゃんがいるじゃん。」

 

 隣で見ていたかなさんが反応した女優、黒川あかねだ。劇団ララライに所属している女優。演劇という、テレビ媒体には映されない仕事だから世間的な知名度こそイマイチだけど、実力派若手俳優と言っても差し支えない。演技に情熱を持ってそうなかなさんが知っててもおかしくはないかな。

 

「え、二人とも知ってるの?」

 

「ちょっと因縁があってね。でもマナまで知ってるなんて思わなかったわ。どういう関係よ。」

 

 ちょっと驚きすぎて、かなさんに探られた。でも、自分はちょっとで誤魔化すくせに私には根掘り葉掘り聞いてくるのズルじゃない?まあ、隠すことでもないんだけどさ。

 

「中学が同じだったんですよ。学年は違いますけど、交流する機会があって、それで少し仲良くしてました。」

 

 今でもたまには連絡をとる程度には友人関係にある。まあ、それ以上のものもあるけど。でも正直、あかねちゃんがこういう番組に出てくるなんて意外だ。あの娘、演技は間違いなく一級品だけどそれ以上に真面目だし、役割が与えられないリアリティショーは苦手なんじゃないかな。実際、自己紹介を聞いてる限りは素の自分を出してる感じがするし。恋愛経験もないから苦戦しそー。

 

 かなさんの追求は続きそうだったけど良くも悪くもアクアくんの登場で有耶無耶になった。アクアくんの演技も面白いけど、それに対するかなさんとルビーちゃんの反応もウケる。

 アクアくんのスタイルはあかねちゃんと真逆だ。アクアくんは素の状態を出したり、それをベースに役作りをするんじゃなくて、あらかじめ用意した同年代の友達と仲良くする社交的なキャラクターをかぶってる。だからこそ、普段の学校生活を知ってる私たちからすれば面白いんだけど。だからまあ、アクアくんにあるまじきチャラさは理解できる。それ以上にかなさんとルビーちゃんの反応だ。

 実の兄がイチャイチャしてるのをディスプレイ越しに見るのは確かに不快な気分になるんだろう。まあ、私は兄姉いないからわかんないけど。でも、露骨なのはかなさんだね。アイドルやることになった一連の流れは知らなかったけど、まあ、大体わかった。アクアくんも悪い男だね。

 

 その後も、ガチ恋を見てたけど初回ということからか、大きな進展はなかった。強いていうなら鷲見ゆきさんがアクアくんに耳打ちしたシーンに女性陣から黄色い悲鳴が上がってたことぐらいだ。それがきっかけかルビーちゃんの推しはゆきちゃんになったみたいだけど。ちなみにかなさんは完全に不貞腐れてた。

 

 まあ、アクアくんの今のお仕事は理解したけどあまり参考にならなそうかな。リアリティショーという番組の性質上、キャストの役割が宙ぶらりんだからアクアくんの器用さなら上手な演技とかはせずに立ち回りだけで上手く運ぶだろうし。あかねちゃんとアクアくんという友達が二人出てるから視聴は継続するけど。

 

 むしろ、あかねちゃんの方が心配か。今度、連絡取ってみよ。




 予約投稿で保存して、ちょっと修正するつもりが時間過ぎて投稿されてました...
 まあ現在の状態から展開は変わりませんが言葉や誤字等を後で修正するかもです。修正しなかったらこの文を消します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。