【完結】朝起きたら色綾まどいになってました   作:発火雨

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残すところ決戦とエピローグのみとなりました。私の作品は敵も味方も主人公の影響で強くなる傾向にあります。もう最弱のボスなんて呼ばせません。


対ドリームウイルス

 肖像画の隠し扉を抜けた先には巨大なロケットの前で佇むワイリーの姿。顔には怒りが浮かんでいて今にも爆発しそうだった。

 

「光一族……キサマらはいったいどこまでもワシの邪魔をすれば気が済むんじゃ!」

 

 今爆発した。熱斗君と光さんの顔を見た瞬間に、彼の中の何かが爆発したのだ。そしてその勢いのまま熱斗君の祖父、光正との関係、この国の科学技術の始まりについて語り始める。真剣な面持ちになりながらじっと聞き続ける熱斗君、ワイリーの話を最後まで聞き終えると、彼はゆっくりと口を開いた。

 

「それでも、みんなで決めたことなんだろ、それはただの我がままじゃないか!」

「ふん、お前らにはわかるまい、敗れた者の気持ちが、研究成果を奪われた挙句一方的に追放された、科学者の気持ちなど!そしてワシの研究を踏み台にして、光の奴が発展させたこのネット社会など、消えてなくなればいいのじゃ!」

「えっ、追放、奪う、今の話本当なのパパ?」

 

 原作よりも怒りに支配されてるのかワイリーは感情的に言葉をまくしたてていた。この世界を憎む理由を理性で抑えきれず、心の奥に普段しまってあるデリケートな部分をむき出しに答える。その中に今の熱斗君では聞き逃せない言葉があったのだろう。隣に佇むパパに確認を取ってしまう。

 

「あぁ、本当だ、熱斗のおじいちゃんとワイリー博士はこの国を背負う優秀な科学者であり、親友だったんだ。でも当時の科学省はワイリー博士の疑似人格プログラム……ナビに心を与える思想を危険だと判断し、研究を強引に辞めさせ追放したんだ」

「そうじゃ、ワシは自分の作るロボットを人間にとって都合のいい道具にするつもりはさらさらなかった。自分で考え自分で答えを出す、そんなもう一つの種族を作ろうとしたのじゃ。しかし当時の国の連中は、自分よりはるかに優秀な存在に人権を与えることに難色を示し、光の奴が提唱する人間を導くネットワークナビゲーションプログラム、通称ナビなどというくだらない理論を優先した!」

 

 なんだその話、そんなことが当時あって二人の優秀な科学者は道を違えてしまったのか。前世でもあったAIと人間の関係性みたいなものか。この世界だとナビとネットワーク社会が身近になってるけど、当時そんな考え方をする人はきっと少数で、むしろ機械に人間みたいな心を与えることに反対した人が多かったのかもしれない。

 

 それを良しとしなかったワイリー博士は追放されてもなお自分の理想を追い求め続けた。しかし、自分の技術力を都合よく利用するだけして最後には捨てた国が、共同研究するくらいに互いに認め合う親友の理論で世界有数のネットワーク先進国として世界に認められている。それが許せなかったのだ。

 

 熱斗君はワイリーの言葉を聞きながら静かに拳を握っていた。今まで正義と悪で線引きしていた境界線が歪まされてしまったせいだろうか? 熱斗君の心に迷いが生まれていることだけはたしかだ。

 

「確かに当時の国の判断は正しかったとは到底思えない。父は最後の時まであなたのことを認め、気にかけていた。お願いですワイリー博士、今なら間に合います、終末戦争なんてやめてください。貴方が提唱した理論は時代と共に若い世代に芽吹き始めているんです!」

「黙れ黙れ!話はもう終わりじゃ、ワシが託した夢……ドリームウイルスは世界をデリートするのじゃ」

 

 ワイリーが手元のスイッチを押すと突然部屋中の電子機器がけたたましいアラートを鳴らしながらとんでもないエラーを表示し始める。

 

「貴様らがオフィシャルのボンクラどもよりも優秀だったおかげで、ドリームウイルスは未完成だし、ロケットの最終調整も済んでおらん。だがな、この国のネットワーク社会をデリートする位のクオリティのものは出来ておるのじゃ」

「なっ、なんだこれは研究所の電脳にドリームビットがあふれ出してる」

 

 部屋の画面に映るのは増え続けるドリームビットの大軍。その奥に見えるひときわ大型のウイルスこそがドリームウイルス、でもなんだか様子が変だ。電脳世界とドリームウイルスをいくつもの巨大なコードが結びつける。

 

「ふん、未完成なのは強大な力を抑え込んで制御するプログラムだけじゃわい。この基地のメインコンピューターの演算能力をこいつに直結した。これでこ奴は、エネルギーの限りドリームビットを増殖させ、この国のネットワークを埋め尽くす。当初の予定通り世界をデリートは出来ないだろうが、まず手始めにこの国をデリートしてくれる!」

 

 急いでメインコンピューターを光さんが操作しようとするが、一切の命令を弾いてしまう。

 

「ドリームウイルスがメインコンピューターの電脳と完全に一体化してしまってる。このままだと電脳空間を隔離することも出来なくて、この研究所を中心に国中にウイルスが蔓延してしまう!」

 

 なんだこれ、原作よりもヤバくて面倒くさいことになって来た。ドリームウイルスもどうにかしないといけないけど、溢れ出るドリームビットたちも食い止めないといけない。

 

「熱斗、メインコンピューターはハッキング対策として、外部に繋がるネットワーク回線を一つに限定してるみたいなんだ。今からパパは作戦指令室に戻って、そこからプロテクトを掛け、ウイルスが外に出る時間を稼ぐ」

「つまり二面作戦ってわけでマスな。熱斗君、アッシとナンバーマンの腕じゃ、時間稼ぎが限界でマス。その代わり必ず熱斗君とロックマンがドリームウイルスを倒せる時間は稼いでみせるでマス」

「パパさんのことは俺たち任せな、こっちはこっちで上手くやってみせるぜ。本当に美味しいとこだけかっさらっていきやがる」

 

 日暮さんとデカオ君が覚悟を決めた目で決死の攻防戦を買って出る。二人は何の迷いもなく作戦指令室に駆け抜ける。

 

「まどいさん……息子を頼みます。熱斗、ロックマン、無事に帰ってこい」

 

 光さんも短い言葉を俺たちに掛けて作戦指令室に走り出した、愛する息子とのこれが最後の時間かもしれないのに、その足取りには一切の迷いがない。

 

「なんの相談もなく私だけ残されちゃったわ。熱斗君、私も光さんのサポートに回ったほうがいい?それとも……」

「まどいさん、ロックマンのサポートお願い、たぶんドリームウイルスも無茶な接続されたみたいで、様子がおかしいんだ。何があっても対応できるように背中を守っててほしいんだ」

『ぷぷぷ、しょうがないなロックマンは、僕とまどいがサポートに回ってあげるんだから、さっさとあんなデカブツやっつけてきてよ』

『ありがとうカラードマン、背中を預けたからね』

 

 これが本当の最後の戦い、色綾まどいとしてこの世界に転生したけじめをつける最後の戦い。

 

「いくぞ、ロックマン」

『任せて熱斗君』

 

『『バトルオペレーション・セットイン』』




『ワイリー』
WWWの首領。その昔国を代表する科学者で、機械に人間の心を持たせることを提唱した。先進的すぎる考え方は当時の人々に受け入れられず、国を追われることとなる。

自分の前に立ちふさがる存在が、親友の孫であり、自身の理論を証明するナビあることはいったい何を意味するのだろうか。

『光正』
熱斗のおじいちゃん。時代という大きなうねりに親友との絆を引き裂かれてもなお、彼の身を案じ、その技術力を認めていた。

友の理想は息子に引き継がれ、孫の代でようやく花咲かすこととなる。

『ドリームウイルス』
究極の夢のウイルス。制御プログラムが未完成であり、WWW研究所のメインコンピューターと融合し、溢れ出るエネルギーを止めどなくドリームビット生成につぎ込む終わらぬ夢。

エネルギーをウイルスに変換するシステムが不安定で、自身を纏うオーラを構築出来ない、しかし、電脳空間と一体化したことにより、『3』のプロトのような存在になりつつある。

機械に心を与えようとした男が創り出し、誰の命令も受け付けず、本能のままにウイルスとして増殖しようとする、心宿らぬ悲しき夢の終着点。
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