「ここが秋原町か……なんか感激だな」
メトロを乗り継いで全編通して物語の舞台となる秋原町に到着。ゲームで見るよりも当たり前だが町は広いし、行きかう人々だって多い。そして何より、前世の住む街とは何もかもが違う。まず都会なのに空気が澄んでいる気がする。あと道も広い! 車通りも多いけど歩道も広くて歩きやすい。それに建物のデザインや色使いも洗練されてる!
色綾まどいの体になってわかったことなんだけど、記憶はないけど体には今までの人生の記録が刻まれてるみたいで、俺が一度も操作したことのないPETも簡単に使えたし、やったこともない女性の化粧や身支度なんかも違和感なく出来た。ちょっと厚化粧な気もするけど結構可愛いと思うんだよね。俺と同い年だからか親近感も湧くし、同世代でも美人だと思うんだよね。まぁ熱斗君のヒロイン候補が軒並み低年齢だから、それと比べられるとおばさんになっちゃうのかもだけど。
それと意外なことに絵を描くのが上手い!メモ帳にラクガキを見つけて、俺も出来るかなと試してみるとこれがスラスラ描けて楽しい。前世は絵心なかったし、描いたことなかったから新鮮!確認したらPETにもお絵かきツールが色々入ってたから、たぶん趣味の一つだったんだろうな。
あとカラードマンに確認したらお金もたくさん持ってたよ。いくつかの口座に振り分けてたけど、たぶん全部非合法。元々金もうけのためにWWWに所属してたんだもんね。エグゼで熱斗君が稼ぐ額をゆうに超える資産がたんまりと、やっぱりWWWの幹部ともなると高給取りなんだな。
「さてさて、お仕事お仕事」
俺の知ってる知識とどのくらい差が出てるのか確認も込みで秋原町に来たんだけど、やっぱりゲームよりも町が広いね。別動隊が誘拐して囮の騒ぎを起こすからその隙にアクアプログラムを盗み出す手筈らしい。時期的にもう少し余裕があるし、実際の町を見るのと別にここに来た理由は一つある。
「こんにちは」
「いらっしゃいませでマス!本日ヒグレヤ開店記念セールを実施中でマス!素敵なレアチップが目白押しでマスよ」
俺が目当てにしてたのはヒグレヤ!いやね、お金はあっても中々この世界ってチップのいいものが手に入らないのよ。ウイルスから生成する必要があるから強力なチップは中々出回らないし、個人のナビチップを作るのにもコストがかかる上に少数生産だから物がない。とりあえず金に物を言わせてカラードマンに出来る限りの強化はしたけどチップ周りは正直いまいち。勿論WWWの組織力があればかなり融通も利くんだけどヒノケンの失敗の文字通り火消しや、今後の重要作戦のためいくら幹部と言えどもそこまでチップを回してもらえなかったのだ。
「なになに、キャノンにバリア……この辺は初心者向けのお手軽チップかな、エリアスチールとエレキソードは使えるかもしれないからとりあえず買っとこうかしら」
自然と口調も女っぽくなっちゃうけど、これはこれでしょうがない、でもなるべく原作みたいな悪女口調はしないようにしてるつもりなんだけど、うっかりすると出ちゃうんだよね。
それにしても品数が少ないな、メタ的な話だとまだ序盤だし、オープン初日みたいだからまだ店頭に並べるチップが間に合ってないのかな?
「あの、すいませんショウケースに並んでる分だけでチップは全部ですか?」
「申し訳ないでマス、まだオープンしたばかりで一般的な使いやすいチップはそれだけしかないんでマス。今後商品も増やしていく予定ですので」
申し訳なさそうに独特の言葉遣いで謝る日暮闇太郎。元WWWの下っ端構成員でレアチップ獲得のため熱斗君の学校で次期WWW候補生を作る洗脳演説を流すが熱斗とロックマンに阻止される。その後チップ専門店ヒグレヤをオープンし、以後長きにわたって熱斗君の味方に収まるレギュラーキャラだ。本当はこんな風に味方キャラになりたいんだけど、下っ端と幹部だと罪の重さが違うから参考にならないよな。
そしてもう一つの顔はレアなチップマニア、そのマニアさゆえにWWWに所属し、改心後も店を経営、お金が貯まれば海外にまでチップの買い付け旅をするくらいの筋金入りのレアチップ大好き人間なのだ。もしかしたら店頭に並んでないけど手持ちにコレクションとしてすごいチップとか持ってないかなと思い交渉に来たのだ。
「一般的にということは他のチップもあるんですか?」
「はい、それらはいわゆるレアチップと呼ばれる高額品でして、扱いも難しく何より高額なので子供たちには手が出せないんでマス」
「よろしければ拝見することは可能でしょうか?お金には多少余裕がありますので、是非見るだけでも叶いませんか?」
「そうでマスねぇ……オープンしたばかりでお客さんもまだ来ないし、良ければアッシの集めたレアチップを見てやってくださいでマス」
そう言って店の奥に引っ込んだ日暮さんはアタッシュケースを持ってくると中を開けた。そこには……。
「これは中々お目にかかれないレアなチップで……」
「うそ、パラディンソード!?なんでこんなところに」
他にもナイトソードやナンバーボム3、ユカシタまであるよ。恐るべしコレクター……、パラディンソードなんてストーリークリア後に手に入れるようなチップなのに。
「お姉さんも相当なコレクターのようでマスね、この中で一番知名度が低いお宝のレアチップの価値をご存じとは、そうでマス一般的にはファイターソードが高額なレアチップとして知られてますが、オフィシャルなんかの専門職だとさらにその上にナイトソードがあるのは有名な話。しかしさらにその上にパラディンソードが存在するのは一部のマニアしか知らない激レア中のレアチップでマス」
「ど、どうやって手に入れたんですか?」
「こ、これは、そ、そのぉ……、前の職場の先輩が退職祝いにプレゼントしてくれたんでマス。開業資金の足しにしろって、先輩も結構なコレクターで入ったばかりのアッシに目を掛けてくれたんでマス。もうその先輩も退職されたんでマスが前の職場は結構チップ収集のネットワークが広くって、そこで手に入れたって話でマス」
確かにWWWなら手に入らなくもないのかもしれない、チップの組織内での売買も盛んにされていて、切り札の一つとしてレアなチップを持つ団員も少なくないらしい。先輩って後半で熱斗君に紹介するあの先輩かな、組織を抜けて決別した後、同じように組織を抜け子供たちのために店を持って再出発した後輩への贈り物だったのか。それにしても、まさかここでこんなレアチップに出会えるとは思わなかった。
「出来ることなら先輩の願い通りお金に変えたいんでマスが、知名度が低い上にやたら高額すぎて売る伝手がないんでマス」
そうだよなWWWのネットワークならすぐに捌けると思うけど、そんなことはしたくないだろうし、価値を知るオフィシャルには恐らく目を付けられてるから伝手がなくて売るに売れない。
「あ、あのぉ、これ売るならいくらになりますか?」
「そうですねぇ、これ位になっちゃうでマス」
電卓を叩いて見せてくれる額を見るととんでもない金額。べらぼうに高い、この世界のチップって高いんだよ、特に店売りしないようなレアチップは本当に高い。そしてその代わり手に入れることが出来ない。むむむ、カラードマンは接近戦用にしてないけど、こんなお宝を見つけてみすみす逃すなんてこともしたくない。
「うーん、ううううううううううん!」
腕を組んで悩む、どうする、俺!
「お姉さんの気持ちはわかるでマス、こんなレアチップを目の前にしたらそりゃ悩むでマス、でもアッシも店を構えた商売人の端くれ、さすがに値引きなんかは出来ないでマス」
ってあれ?俺の目標は熱斗君の味方サイドになることだから、別にいいんじゃないかな。そのためにはシナリオを進める必要があって最初の難関はブルースだ。それを何とかするためにカラードマンの強化は必須だし、使わないチップも熱斗君にあげたら好感度も稼げる。俺自体にまどいみたいなブランド品の浪費癖はないから別にいいのか?
「買います!電脳キャッシュで良いですか!」
「買うでマスか!い、いや、正直店も始めたばかりで資金に悩まされてたから助かるでマスが良いんですか!?」
「それと他のコレクションも頂きたいのですが値段を教えてください」
「ち、ちょっと待ってほしいでマス。今調べ直すから待っててほしいでマス」
日暮さんはパラディンソードの会計だけ先に済ませて、他のチップを確認しながら電卓を叩く。
「ちょっと時間を欲しいでマス、もしよかったらその間アッシのナビと模擬戦でもいかがですか?そっちの対戦マシンに接続してもらえたら戦えるようにしてるでマス。勝てたらナビチップを無料でお配りしてるでマスよ」
そういや『1』の時代は店内のマシンでナンバーマンと戦えるんだったよな。よし、原作ファンとして初のナビ戦だ。ウイルス相手には今まで鳴らしてきたから問題ないと思うけど、ブルース前の肩慣らしだ!
「そうね、それじゃカラードマン。ちょっと遊んでいきましょうか」
『任せて、まどいに最近すっごく強くしてもらえたもんね、楽勝だよ』
自信満々のカラードマン。バトル開始と同時にパラディンソードを振るうがすさまじいダメージ、その後もお得意のアクアとフレイムのタワー攻撃であっさりナンバーマン撃破。でも今回はみて思ったのはやっぱり向いてないなソード系。たまたま動くの遅いナンバーマン相手だからどうにか当てれたけど、高速で接近戦を仕掛けてくるブルースには恐らく通じないだろう。こればかりはセンスの問題だからどうしょうもないな。
「うぉ、すげぇ、あんな簡単にナンバーマンを倒すなんて、お姉さん強いんだな」
『ふふん、そうなんだよ僕とまどいのコンビは最強なんだから!』
このマシン液晶が付いており、後ろで他の子が戦いを見れるようになっている。いつの間にかギャラリーが出来てたのだろう。まぁかなり強化したから鮮やかに倒せたもんね。こういう小学生からの純粋な反応は嬉しいな。カラードマンも楽しそう。
「ねぇねぇお姉さん。よかったら俺ともネットバトルしない!」
『だめだよ熱斗君、まずは自己紹介から始めないと』
あれ?聞いたことあるような声だと思ったけどもしかして……。
「わりぃロックマン。俺の名前は光熱斗、んで俺のナビのロックマン」
『初めまして、熱斗君のナビのロックマンです』
『僕はカラードマン、そんでもって僕のオペレーターの色綾まどい。ねぇねぇまどい、この子たちとも戦ってみようよ。強化されたばかりだからもっと試運転したいんだよぉ』
まっ、まさかこんなところで主人公に出くわすとは!?考えて見りゃそうだよな、自分の町に新しいお店が出来て自分の好きなネットバトル関係のお店なら絶対顔出すよね。なんでこんな簡単なことに考えつかなかったんだ俺のバカ!
『日暮闇太郎』
元WWWの下っ端、事件後は改心しチップ専門店ヒグレヤをオープン。結構儲かってるみたいだが、儲けたお金で仕入れのため海外に長期間旅をしたりするせいか、店が資金難に陥ってピンチになることもしばしば。
『ナンバーマン』
日暮闇太郎のナビ。『1』では初期位置から動くことが出来ず弱い、もらえるチップもランダム性が強くとにかく弱い。戦うのは苦手、でも戦闘以外での出番は多し。
『ヒグレヤ』
日暮のオープンしたチップ専門店。この場所で商売をしても半年で撤退するというジンクスがある土地にオープンした。しかし幾度の経営難を乗り越えて最終的にはデパートにまで成長する。
『光熱斗』
ご存じ世界を何度も救うことになるスーパー小学生。説明不要
『ロックマン』
ご存じ世界を何度も救うことになるスーパーネットナビ。説明不要