やってきました、おくデン谷!
自然豊かで市街地からのアクセスも良く、キャンプをしやすいように貸出用のテントやコンロなども完備。気軽に川遊びをしたりバーベキューを楽しんだりとアウトドア初心者にも優しい場所、おくデンダムから流れる水は『1』の水道局へと送られ、デンサンシティ全域に美味しい水を届けている。
「あぁ、森林浴最高。マイナスイオン効果最高。癒しだわ」
思い切り深呼吸をしてリフレッシュする俺の隣では、PETとにらめっこする炎山君。うんうん、せっかくこんなところに来たんだぞ、楽しんでいかないともったいないよ。俺もTPOをわきまえて今日はスーツじゃなくて私服!
「あら、せっかくのお姉さんと二人っきりのデートなのに何かご不満?」
「ふん、勘違いするな、たかが掲示板の不確定な情報だったからオフィシャルを導入するわけにもいかず、科学省に顔を立てて呼んだだけだ」
「あんまり素直じゃないと出会いを逃すぞ、ただでさえ愛想がいいとは言えないんだから」
まぁ、爆破予告なんてされてるんだから警戒して仕事に当たるのは正しいんだけど、いつまでも緊張感を持ってたら疲れちゃうだろ? たまには肩の力を抜いて、気楽に行こうぜ。それにしても……この辺りは本当に空気が澄んでいて気持ちが良い。
「あれ、まどいさんに炎山君じゃないですか!どうしたんですか二人してこんなところまで?」
「ケロちゃん!久しぶりね。炎山君に誘われて森林浴デートよ、デート」
「俺はおくデンダムを先に調べておく、ふざけてないで与えられた仕事はこなせよ」
「OK、いってら~」
炎山君は呆れて先に行っちゃった。まぁ、何の心配もしてないけどさ。
私たちに声を掛けて来た元気いっぱい女の子は『デンサン・ニュース・ネットワーク』通称『DNN』と呼ばれてるテレビ局に所属する若手の女子アナウンサーの緑川ケロちゃん。カエルモチーフのベレー帽がトレードマークで元気が取り柄の頑張り屋さん。
科学省でネットエージェントが出来たばかりの時、取材に来てくれてからの知り合いだ。その後もちょくちょく科学省に仕事で来てくれてるし、俺もDNNにネットエージェント制度の認知を広めるための番組作りに協力してるから会って話すことも多い。
「ケロちゃんこそ、こんなところまで取材なんて珍しいわね」
「実は取材先を間違えちゃってこんなところまで……、またディレクターに怒られるぅ……」
まじでか!?うん、怒られると思うよ。でもその後掲示板で盛り上がるネタにされて愛されてるから、ガンバ!
「私は仕事でちょっとね……、ネットエージェントの機密に関わるから、詳しくは言えないけど、もし何か起こったらきちんと節度ある行動をお願いね」
DNNは比較的真面目でいいマスコミなんだけど、一人ディレクターに視聴率獲得に異常な情熱を燃やす変人がいるからなぁ……。何度か仕事で会ったけどもう情熱の塊、ヒノケンとある意味熱量で競える人初めてだったから驚いたよ。ケロちゃんが喋りで失敗するの全部ノーカットで流してるのもあの人が、「こっちの方が面白くてナイス!!!」って独断で決めたらしい。そのおかげで同期のアナウンサーよりも人気が出てるんだからあのテンガロンハットの腕は確かなんだよね。
「えぇ、ネットエージェントの機密なんですか!わかりました、お、落ち着いて、せ、節度ある行動を心がけましゅ!」
「本当に大丈夫?ネットバトルしてる時はあんなに自然体で喋れるのに……」
「よ、よく言われます」
そうだ、せっかくだから協力してもらおっと。
「ねぇ、せっかくここまで来たんだから、キャンプしてる人を取材して回らない?私後ろから共演者っぽくついていくからさ」
「つまり、テレビ収録の振りしてキャンプ場を回りたいってことですよね?いいですよ、まどいさんの情報は信用できますし、いつもお世話になってるんでせっかくだったら利用してください」
「あら、勝手に決めてもいいの、ディレクターに怒られない?」
「担当のディレクターには怒られますけど、ここでチャンスを逃したら砂山ディレクターにもっと怒られちゃいます。利用できるものはなんでも利用しろって根性ですからあの人」
あらら、なんだかんだ言って毒されてるのね。それじゃお言葉に甘えて隠れ蓑にさせてもらいましょっか!
一緒にキャンプ場を回り、時にはインタビューするケロちゃんの後ろで目を光らせてみる。おっ、発見、不自然な位置に捨てられたPET。カラードマンをこっそりプラグインさせて……、うん、起爆装置だこれ。下手に今解除するとバレちゃう恐れがあるから、位置情報だけ確認してっと。
「次はあの子にインタビューしてみましょうか!こんにちは、緑川ケロの突撃インタビューです!!!ちょっとお時間よろしいですか?」
「あっ、テレビの緑川ケロさんだ!ってまどいさんもこんなところで何してるの?今日仕事だから来れないって言ってなかったっけ」
あっ、熱斗君だ。実は昨日キャンプに一緒に行きませんかって誘われたんだよね。本当は保護者の振りして一緒に回るプランも考えてたんだけど、先に炎山君に誘われちゃったし、せっかくの夏休みの楽しい思い出なんだから同級生と一緒に遊んでほしかったんだよね。まぁ、この後巻き込まれることになるから、巻き込んじゃうんだけどね。
「今も仕事中よ、そうだ、せっかくだからケロちゃんとネットバトルしてみない?この子強いわよ」
「おぉ、まどいさんの推薦ですか!きっと将来有望なんでしょうね、初めましてDNNアナウンサーの緑川ケロです!」
「初めまして、俺は光熱斗。ケロさんのことテレビで見てるよ、トードマンとのコンビネーション抜群だもんね、この前の町角ネットバトルでのマヒ攻撃は参考にしたくて録画を何度も見直したよ」
「ありがたい、小学生にも私のファンが……、あれ、光熱斗君?光熱斗でネットエージェントのまどいさんが推薦する小学生って!?」
おっ、ケロちゃん相変わらず勘がいい、そうだよね、ネットバトルが得意でアンテナ張ってるケロちゃんなら知ってるはずだよね。
「短期間のうちに市民ネットバトラーSライセンスを獲得して、最年少記録を更新したあの熱斗君!」
「えっ、俺ってそんなに有名なの……、なんか照れちゃうな」
『夏休みの間ずっとオフィシャルセンターに通っていろんな依頼をこなしてたからね』
「すっごい!私もAライセンスは持ってるんですけど、Sライセンスってそれよりずっと難しいんでしょ!すごいなぁ、是非後学のためにもぜひ私とネットバトルしてください!!!」
「えぇっ、ケロさんとネットバトル出来るなんてラッキー、こちらこそ、是非お願いします!」
元気いっぱいでネットバトルが好きだな二人とも、なんかどっちも似た者同士っぽい。
早速二人のバトルが始まったけど、正直ケロちゃんの腕は中々の物だ。たぶん女子アナの中で一番の腕なんじゃないかな、本人の好きが高じてAライセンスまで取っちゃってるし、テレビでネットバトルする機会も多いけど、生放送で実況を交えながら器用にオペレートする姿は見ていて気持ちが良いくらいだった、視聴者受けもいいみたい。
「あぁ!私のマヒ戦法が真似されてる上に、そっちの方が鮮やか!」
「げっ!相打ち覚悟で無理やり押し通してきた、マヒがある分こっちが不利だ!」
「うそっ!なんで今の避けれるの、まどいさん直伝の遠距離コンボなのに!?」
「うそっ!アイスステージにアイスキューブなんて放送で一度も使ったことないコンボじゃん!?」
うん、似た者同士だわ……。
「負けた!?途中までいい線行ってたのに」
「勝った!やったぜロックマン!」
相変わらず強いわ熱斗君。ケロちゃんのテレビで見せない本気フォルダ。アイスステージで地の利と電気属性のマヒ攻撃を相手に押し付けて、逆にトードマンの弱点の電気攻撃をあえて誘いヒライシンで押し返す。いや、熱斗君相手にここまで戦えるケロちゃんが凄いのか?
「すごい楽しかったよ、ケロさん!やっぱりバトルしてるケロさんが一番かっこいいね」
「かっこいい!?そ、そんなぁ、言われ慣れてないから照れちゃうなぁ……。そういう熱斗君こそ初見なのに対応力高すぎてびっくりだよ」
「言ったろ、ケロさんのバトル何度も見返してるって。動きから得意な戦法だって欠かさずチェックしてるよ」
「私対策に対策したアイスステージとヒライシンのコンボなのに、それだって対応が早いよ、バリア張るタイミングが絶妙でしたよ」
お互いがお互いを褒めあう……。あっ、これはお互いの素直さが真正面からぶつかり合って中々止まらない奴だ。でも、鈍感力が高い天然系主人公の方がストレートに褒めまくってるからケロちゃんが押されてる。熱斗君年上の人褒めるの上手いんだよね……、同級生には恥ずかしくて中々言えないんだろうけど、年上相手だと敬意をもって素直に言えるみたいだから、聞いてて気持ちよくなっちゃう。
「はいはい、ケロちゃんが赤くなってきたからそこまで。さすがね熱斗君、というわけでお姉さんから・ご・ほ・う・び!」
どうせ今日会えると思って持ってきた熱斗君専用ネットエージェント装備一式。どの辺が専用かというと光さんが熱斗君の癖やロックマンの性能なんかを考慮して色々調整してる、世界に一つだけのオリジナル品。ほら、ちゃんとロックマンのナビマークが刻まれてる。
「あっ、ありがとう、まどいさん!これで俺もネットエージェントになれるよね」
「Sライセンスまで取ったんですもの、光さんが色々調整してるから、そのうちお声が掛かると思うわ。もう内定みたいなもんだけどね」
「すごいなぁ、二人とも……。私も頑張ってみようかな、Sライセンス」
「ケロさんならきっと合格できるよ、なんたって受かった俺が保証する!」
「本当!?ありがとう熱斗君。なんだか頑張れちゃいそうな気がするよ」
なんか姉弟みたい……、あっ、ケロちゃんが抱き着いて熱斗君照れてる。二人とも可愛いなぁ。俺も二人を抱きしめたいなぁ……。
『緑川ケロ』
DNNに所属する若手の女子アナウンサー。カエルモチーフのベレー帽がトレードマーク、ハイライトのない大きな黒目がチャームポイント。年齢の公式設定はなしのため本作では25歳と設定。
スクープを追い求めて各地を飛び回るニュースキャスター。世間の評価は「元気さは一流、喋りがあともう少し上手ければ……」とのこと、アナウンサーとしていいのか?
趣味が高じてネットバトルが得意。Aライセンス持ち、なのだが実は番組企画で本人の同意を得ずに勝手に応募し、勝手にスケジュールを組んでドキュメンタリー風にテレビ放送された。
ケロちゃんを見出したディレクターが「視聴者は意外性を求めてる!ドジっ子で反応が最高潮にホットな今こそ、ライセンス取得で他局の女子アナと差別化して戦うアナウンサーとして売り出そう。持ちナビのトードマンもDNNのマスコットにしちゃってさ!スポンサー?上層部?そんなことよりも注目を集めて視聴率を稼ぐのが俺たちテレビマンの生き様なのよ。企画を通すのは俺に任せな!」と砂漠のように暑苦しい情熱ですべてを成功させた。
『トードマン』
ケロちゃんのナビ。DNNのマスコットも務める。
電気属性のマヒ攻撃が得意なのに、電気属性が苦手な子。テレビで戦う姿をよく見せてるので、本気モードの時はカウンター戦略を用意している。
あえてアイスシールドで属性ダメージを二倍にし自身のマヒ攻撃を強化、相手が電気攻撃をしたくなった時にヒライシン(電気攻撃をしたら反応する罠チップ)でアドバンテージを取る。ケロちゃんのファンほど引っかかるトラップ戦略。
『砂山ディレクター』
ケロちゃんを売れっ子にしたDNNの名物ディレクター。テンガロンハットがトレードマーク。目立つことと視聴率が大好きな仕事人間。視聴率のためならわりと何でもできるやばい人。でも、仕事にかける情熱は本物で結果も出し続けてる。
実はネットエージェント制度を番組で取り上げる時スポンサーにオフィシャルが関わっている団体も多く、色々と圧力も受けたが全部無視した。