「アジーナ国が壊滅寸前ですか……」
「あぁ、先ほど公式発表がされた、敵組織はゴスペル。まさか一国を落としてしまうほどの戦力を持っているなんて」
今までゴスペルのテロ行為に世界中が頭を抱えていたが、今回の一件に関しては規模が違う。まさか白昼堂々とセキュリティ先進国のネットワークを壊滅寸前まで追い詰めるなんて誰が想像できただろう。
「くそう、俺のせいだ、俺が敵の囮にまんまと引っかかったから!」
『熱斗君のせいじゃないよ、もし僕たちが別動隊を倒してなかったら正面からアジーナエリアは襲われて、もしかしたら壊滅してたかもしれないんだから』
「そうよ、熱斗君、あなたはよく頑張ったわ」
自分が現場に居ながら助けられなかったことが葛藤になってしまってる。俺はそっと肩に手を当ててなだめることしかできなかった。
「ニホンとしてもアジーナ国のネットワーク復旧を支援する考えなんだ。悪いが熱斗には引き続きアジーナ国へ復旧用の物資をネット上から輸送してほしい、セキュリティがきちんと機能しなくなってしまったせいで、一般のナビが行き来するのが難しくなってしまったんだ」
「任せてよパパ、俺アジーナ国のために頑張るよ」
「といっても物資の用意に時間がかかるから、今日のところは休んで明日また科学省においで」
「熱斗君、しっかり休みなさいよ、休める時に休むのもエージェントの仕事ですからね」
今日のところはさっさと熱斗君を家に送り出し、休んでもらう。本人に自覚があるかわからないが、他国でゴスペルの国を落としにかかった部隊と戦ったんだ。精神的にも疲れ果ててるとみていい。んでもってこれからは俺たち大人が仕事をするばんだからな。
「さて、まどい君、アジーナ国から正式に送られてきたデータとロックマンが記録してきたデータを見直してみようか」
俺と光さんは研究室の部屋にあるモニターを見つめ、ロックマンの戦いの様子を解析する。
「これは……間違いなくドリームビットですね」
「あぁ、熱斗もそう表現してたし、実際にバスティングしたまどい君もそう言うなら間違いないだろう」
このウイルスの存在を知っているのは報告書レベルでも少ないし、実際に対峙した経験を持つのはあの研究所でWWWの最後を見届けた俺たちだけだ。
「ドリームウイルスに関しては完成がぎりぎりでコピーを取る間もなく熱斗がデリートしたし、外部に流れ出ようとしたウイルスは私と日暮さんとデカオ君で食い止めた。それが今こうしてゴスペルの元にウイルスがあるということは……」
「ゴスペルにWWW残党が関与してる可能性があると」
当然そういう考えが浮かんで自然だし、結果としてワイリーが裏で手を引いてるんだから間違ってはいない。でも本当のところは最後の力を振り絞って新しい回線を無理やり繋いだドリームウイルスが、己の子供たちを解き放ちウラの奥深くに隠れて増殖をしているのが真相だ。おかげでランカーになってウラの王の住むシークレットエリアに行った時ビビったよ。流れついて勝手に住み着いたってヤマトマンに言われてぽかんとしちゃった。
「まどい君が前に提出してくれたウラの奥地でひっそりと生き延びた個体をゴスペルが採取して複製に乗り出したって可能性もあるんだけど、オフィシャルではWWWとの関係から調べ直したようだ」
まぁ、当然か。結果がどうあれ国一つ相手取れるネットマフィアにWWWの影がちらついたんだ。二つの組織を繋ぐ唯一の接点がそこにあるんだから、捜査線上に上がってしかるべきだ。そこまでは俺だって理解できる、でも、だからって!
「私たちネットエージェントが国のゴスペル対策本部から外されたのはそれが原因ですか」
「私も納得できないことだらけだ。オフィシャルから国へ強い反発があってね、まどい君が元WWWであることや、私が研究所爆破前にオフィシャルよりも先に現場にいたこと、それどころか今回のアジーナ国の侵略、大量のウイルスを内部から手引きした存在がいるのは確かだが、それが科学省内部の人間ではないかとの論調を無理やり通したらしい」
「何を馬鹿なことを、今は国の中で争ってる場合じゃないでしょう!」
「現在オフィシャルはニホンのネットワークの全域パトロールを強化している、普段のウイルスに関しては市民バトラーに協力要請を大規模的にかけ、さらに国内の腕利きをマザーコンピューター防衛のため招集して、第一種警戒態勢を発令しているんだ」
国一番のネットバトラーを保有するオフィシャル。さらに民間の協力者も総動員し、余った余力をすべて国防に当てるつもりなのか。確かにオフィシャルという組織でなければ出来ない芸当だ。
「国もこれだけの防衛策を展開できるオフィシャルを無下に出来なくてね、科学省もネットエージェントも国防ではなく、他国の復興に力を注ぐように通達が来たよ」
くそう、なんてこったい、これじゃあ俺たちはお払い箱じゃないか。なんでこんなにも敵対してくるんだ?
「どうも完全に目の敵にされてるらしい、もっとも、はいそうですかと素直に科学省が従うつもりもない」
おっ、つまりオフィシャルの妨害なんかに負けず、やらかすってことですよね。
「もちろんアジーナ国の復興には全力で力を貸すさ、そっちの方は熱斗と表向きに動く科学省に任せて、こっちはこっちで出来ることをしよう」
「こっちもって光主任も動くんですか!?」
「もちろん、息子だけに良い恰好はさせないよ、それにね、いくら大きな組織の都合があるからって仲間たちをないがしろにされて大人しくしてるほど人間が出来てないからね。国内は無理でも、他国の技術者に声を掛けてゴスペルに繋がりそうな情報を集めよう。ついでにアジーナにもう一度チェンジ.batを解析させてもらえないか頼んでみるよ」
「それじゃ、私はウラに潜って情報を集めますね……今回のアジーナ国での暗殺の手口、ナビに心当たりがあるのでそっちの裏取りと、ドリームビットに関しても調べ直してきます」
オモテの王道はヒーローに任せて、悪党はウラで暗躍してみますか。
それにしてもオフィシャルの動きがきな臭すぎるな、もしかしてゴスペルが間接的に妨害してきてるのか?
『熱斗君』
周りの大人たちがいい人で、なるべく仕事はさせるけど、内容は選ばせてる
色々と思うところあれば復興支援のお手伝いのためロックマンと前向きに頑張る。
『科学省』
流石に国のネットワーク全域をカバーできるオフィシャルの権限に勝てず。
でも技術者集団を舐めてはいけない。