【完結】朝起きたら色綾まどいになってました   作:発火雨

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オフィシャルが無能なのはゲームでも事実ですし、物語の都合上そうじゃないと困るメタ的な話もあるのですが、一応理由もあります。一言でいえば敵組織の方が有能なんですね。


ウラで情報集め

 とりあえずウラをカラードマンが駆け巡ってたよ!オフィシャルはさすがに潜ってこられるような状態じゃないから俺たちしか手に入れられない情報がザクザク。

 

 まずはドリームビット、これに関してはウラの奥深くのエリアでの目撃情報が多数あり、調べに行くと確かに数は少ないけどいる。何匹か捕まえて馴染みのウイルス製作者のところへ持っていく。

 

『これはこれは、カラードマンにネットエージェントの姉さん、キャノン系のウイルスボムならまだ調整中だよ』

「今日は別口よ、このウイルスについて何か知らない?」

『おぉ、ドリームビットね、姉さんも相変わらず面白いもん拾ってくるねぇ、しかしそいつは俺じゃ増やせないよ』

「ってことはこいつが何なのか知ってるのね。これで足りるかしら?」

『おぉ、さすが話が早いね、うんうん、姉さんは上客だからこいつで話してやるよ』

 

 こいつは俺が元々WWWに居た頃から組織にウイルスを作っては売りに来てたフリーのウイルス製作者。組織のしがらみが嫌いでどこにも所属しないが、既存のウイルスを量産するのはもちろん、そいつを強化したり、思いもよらない新種のウイルスを創り出したりもできる優秀な奴だ。WWWにスカウトもされていたが、ワイリーの助手でウイルスの専門家の『教授』のことが嫌いでフリーを貫いた頑固者でもある。

 

『WWWの研究所が爆破された後にな、不安定なネット回線がウラに一時的に繋がっちまったみたいでよ、そこから逃げ込んできたんだよ、大方ウラアクセス用のバックドアかなんか仕込んでたんじゃねぇかWWWでよ』

 

 なるほど、それでウラの奥深くにいきなりドリームビットが現れたのか、通常の回線から雪崩れ込もうとしたのは光さんが防いでくれたけど、隠されたバックドアに気付ける時間はなかったし、俺と熱斗君の戦うのに夢中でウラに逃げ出した個体がいるかどうかなんて気が回らなかった。

 

『WWWが特殊なプログラムを元に作ったんだろ、あれを人工的に量産しようとしたら、専用のサーバーに大量のバグの欠片が必要だし、あいつら属性が自然とばらけやがるから管理が出来ねぇ、試そうとウラの奴らに高い金払って何匹か捕まえてきてもらったが、俺の個人サーバーが一つおじゃんになりやがった。高ランクのウイルスを複製する専門の一番カスタムに金と時間を掛けた自信作をだぞ、おかげで大赤字だ』

 

 話してるうちに怒りがぶり返してきたのか段々声が大きくなっていっている。

 

『ったく、思い出しても腹が立つが、一番むかつくのは、オフィシャルの奴らがあれの生成方法を整えやがったってことだ!』

「まって、オフィシャルがって!?」

『姉さんが教授の野郎捕まえた時はまだ科学省もネットエージェント制度を国に受理されてなかったろ、教授の持ってる資産は全部一度オフィシャル預かりになったはずだ、そん時にあいつが持ってたウイルスの研究データもな』

「確かに、オフィシャルにも研究専門の部署はあるはずだけど、WWWの機密プロジェクトの塊みたいなウイルスを作るなんて技術的に無理よ」

『たしかにただオフィシャルが持ってんなら宝の持ち腐れだが、あそこは世界中にコネが効くし、スポンサーに名乗りを上げてる大企業なら、あのウイルスは喉から手が出るほど欲しがるだろうぜ。あれを利用した防犯システムに、抽出できる強力なバトルチップ、サイバーテロだってあのレベルのウイルスを数揃えりゃ、セキュリティレベルの高くない小国ならそのまま壊滅しちまう、いくら金出しても取り返せる』

 

 おいおい、なんかとんでもない藪蛇が出て来たぞ。

 

「実は先日のアジーナ侵略事件、ゴスペルの部隊に何体かこのウイルスが目撃されてるの」

『はぁ、ゴスペル……。読めたぜ、恐らくオフィシャル、表の企業、ゴスペルって流れで経由してるぜ。実際にウイルスを生成してるのはゴスペルのはずだ」

「あらっ、表の企業が生成してゴスペルに流してるって線はないわけ?ゴスペルがそこから買い取って利用してる可能性もあるでしょ」

『実はここ最近ゴスペルの下っ端の奴らにウイルスを売ることが多くなったんだ。前までは組織内である程度支給されてたらしいがある日を境に無くなったらしい、恐らく、買い取ってるんじゃなく、自前で作り始めたせいで、他のウイルスを作る余力がなくなって、下っ端たちは自前で用意せざるを得なくなってきてんだな』

 

 ははぁん、なるほどね。つまりオフィシャルとゴスペルが繋がってるわけじゃなくて、間に曲者が入り込んでややこしくしてくれてるわけだな。

 

「つまり表の企業はオフィシャルに多額の寄付をちらつかせてウイルスの情報を買ったのね、それをゴスペルに売ったのか盗まれたのか」

『盗まれたとみるのが自然だな。組織がウイルスを欲しがってデカい取引をしたなんて話は回ってこないし、表の企業と世界的ネットマフィアが繋がってたなんて万が一露見するリスクを考えるといくら金を積まれたって取引するなんてことは無い。目先の金に釣られたオフィシャルと間抜けな企業がゴスペルにしてやられやがったんだろうな』

 

 ネット社会の弊害だな、ウイルスだって一山当てたらこの社会で巨万の富を得ることだってできる。だから国も民間企業も必死に研究してるし、犯罪すれすれのグレーゾーンを走る奴もいるし、金のために倫理を無視するような奴が組織の内部でも出てくる。

 

『物はついでに相談なんだがよ、科学省で俺のウイルス研究にいくらか投資してくれるように姉ちゃんの権限で頼み込めねぇか?大損こいちまって研究資金が足りねぇんだよ』

「共同研究はごめんだから金だけ出せってんでしょ、まったく偏屈なんだから、そんなの研究内容がわからないし担保もないなら無理よ」

『へへっ、そっちは抜かりねぇ、おめぇさんたち科学省がオフィシャルに頼らないでシステムの防衛を考えた時に絶対役に立つぜ。こいつが完成図のスペックで、これが担保の極上のレアチップだ』

 

 渡されたウイルスの完成予想スペックを眺めて口が開きっぱなしになったし、渡されたチップを見てさらに驚いた。

 

『へへっ、その反応はどうやら脈ありみたいだな、俺のウイルスのコンセプトは面白れぇし、そのチップだってぶっ壊れたサーバーから抽出した俺の奥の手だ。ゴスペルに喧嘩売るなら、強力なそいつは喉から手が出るほど欲しいだろ』

 

 この野郎、なんて俺の欲しい物、ゲームプレイヤーのロマンをわかってやがるんだ。これだからこいつとの取引は楽しいし、ネットエージェントになってからもウラの奴らと絡むのがやめられねぇ要因なんだよ。

 

「相変わらず女心をくすぐるのが上手いわね、任せて、絶対に上を説得して見せるわ」

『女心がどうとかは知りゃしないが、姉さんは話が分かる女だから俺も好きだぜ。せっかく偉いさんの愛人なんてやってるんだから上手いことたらしこんでくれよ。俺のウイルス研究の未来が掛かってんだ』

 

 たぶん光さんに頼んだら研究意欲から前向きに検討してくれると思うし、何なら今度作る予定のウイルスの飼育研究の責任者としてスカウトされそうだけどな。

 

 さらに情報を求めて、ウラスクエアへ。もうすっかり定位置になっているフリースペースで、先客の相手をしてるナンバーマンの商談が終わるのを待つ。

 

『お待たせしましたまどいさん』

「はぁ~い、ナンバーマン。すっかりウラでの商売が板についたようね。日暮さんは元気?」

『目利きのための世界旅行中で、今頃はチョイナでしょうか』

「よくもまぁ現実世界でそんなにフットワーク軽く動けるわね、見た目に反して行動派オタクよね、日暮さんって」

『私も日暮さんもまどいさんに付き合わされて度胸が付きましたからね、案外ナビも人間もやろうと思えばなんだって出来るもんですよ』

 

 あらら、すっかり裏の世界に染まっちゃって。なんか巻き込んでごめんね。でもまさかウラランカーにまでなってるとは驚きだよ。それでもウラもオモテも商売して渡り歩いてるんだから元々の商才があるんだろうな。

 

 ちなみに俺との取引も形を変えて継続中。俺がネットエージェントになってからも色んな悪党たちをとっちめた中で手に入れたチップはナンバーマンに流してる。

 

『おかげさまで売り上げも好調でしてね、販売ルートも拡大しましたし、日暮さんが戻ってきたときには店頭の取り寄せ販売も出来そうです』

「あらあら、好調なのはいいことね、いつも情報もらってるしこれからもいらないチップはガンガン流すからね」

『いつもすいません……。アジーナスクエアを襲撃したナビの情報でしたよね?』

「そうなのよ、何かいい情報でも入ったかしら?」

『いえ、私のところには何も……。ただ、正面からの力押しではなく暗殺が行われたとのことで、専門家のご意見が必要かと思いまして、先方に話は通してあります』

「マジで?やっる~。いつからウラランカーを顎で使えるようになったのよ」

『勘弁してください、かなりのチップと情報を放出してお願いしたんですから、それにカラードマンとまどいさんの事なんだかんだ言って気に入ってるみたいですよ、あの方も』

 

 気に入られてるかね?実は俺もウラランカーに推薦されたときにヤマトマンと戦ったんだけど、その時の戦い方が気に入られたみたいで、二連戦する羽目になったんだよねあの時。いや、直接的な動きが鋭いシャドーマンと違って、相手の逃げ道を塞ぎ様々な属性攻撃で相手を揺さぶりジワジワ追いつめてく戦い方は、俺も普段使う戦法だけど。

 

「殺し屋にモテても仕方がないんだけどね……」

 

 仕事だからしょうがないし、ウラは居心地いいんだけど、やっぱり俺悪人って向いてない気がするのよね。あぁ、俺も熱斗君と一緒に復興支援の仕事したいよ。そうだ!明日はケロちゃん誘って熱斗君と一緒にランチしちゃおう。二人の無邪気な癒しのオーラでも浴びてリラックスしよっと!

 

 次の日、俺とケロちゃんに挟まれた熱斗君、ランチの後に熱斗君のアジーナスクエア復興支援の話を聞いたケロちゃんが感激してしまい、そのまま一緒にアジーナスクエア復興支援にくっ付いていってしまった。いいなーずるいよケロちゃん、俺だって我慢して自分の仕事してるのに……、仲よさそうにテレビで支援金の募集とか呼びかけちゃってさ。

 

 ケロちゃんとお似合いだって掲示板に書かれてたって弄り倒したらむちゃくちゃ焦ってやんの、年上お姉さんと噂されるのは恥ずかしいか小学生。でも「年上は範囲外かしら?」ってからかいながら聞いたら「いや、別に俺は全然歳とか関係ないと思うし……」って顔赤くしながら言うから、もしかしてケロちゃんの事好きになってるのかも。衝撃の事実である。




『ウイルス製作者』
実は『2』の掲示板に書き込みしてたナビが元ネタ。
ピンと来たあなたはかなりのエグゼ通。

『殺し屋』
今はシークレットエリアを拠点にしている。今でもたまに資格なき侵入者をデリートしたり、ウラの秩序を乱すものをこっそりデリートしてる(不用意にウラのことをオモテの掲示板につぶやくアホをやるのも大体このナビ)

『ケロちゃんと熱斗君』
アジーナスクエア復興のためテレビで特集を組み科学省経由で寄付金を募り活動中。
若きネットエージェントと人気女子アナのコンビはまるで姉弟みたいだとネットで話題。

『ドリームビット』
ゴスペルさん家で飼いウイルスとして増えてる。たくさんバグの欠片も食べさせてくれる良い飼い主に拾われた。
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