さてさて、やってきました裏通り。うん、すげぇ怪しい雰囲気で観光客が入ってくるところじゃねぇなこりゃ。
「へいへい、姉ちゃん、ここはあんたが欲しがるようなもんは何もねぇぜ」
ほんとうにこんなこと言ってくる奴いるんだ。うわっ怖いよ裏通り、よく原作熱斗君こんなところ来たよな、今の俺も女だから危険だけど、小学生とかもう抵抗のしようもないし絶体絶命だよな。
「ここのまとめ役のラウルさんに用があってはるばるニホンから来たのよ。あんたたち御用達のナンバーマンのバックが来たっていえばわかるかしら?」
日暮さんがウラに強い商人になったおかげで、ウラにアクセスするような奴らの顧客の情報網がある。そしてこういった裏通りで流通する盗難品はオモテではなくウラに流れていく。そんな奴が多い所でナンバーマンの名前は効果てきめんみたいだ。
俺に声を掛けた屈強なこわもての男は、他の男に話しかけ何やら確認を取る。すると裏路地の奥に続く道までを指で指示し無言で道を開けた。
奥へ奥へと進むと、路地の行き止まりに屈強な男が佇んでいる。なるほど、見た目もそうだが強者の雰囲気って言うのかな。若い筈なのにこの路地裏でいろんな民族の仕切り役を任されるだけあって只者では無いようだ。
「お前が道化師のオペレーターで、ニホンのネットエージェントと呼ばれる組織のメンバーか、お前のことはナンバーマンから聞いている」
「そう、だったら話は早いわ、私がここに来たのは……」
「残念だが他国の組織と関わることはできない、今回会うのも世話になっている商人の顔を立ててのことだ」
あらら、最初から話し合う気はなしってことか。ラウルさんは元々アメロッパのとある部族の出身で、ネットバトルの腕で一本でアメロッパオフィシャルのトップクラスの実力者になった。
アメロッパは多くの人種が存在するため、差別的な問題がひどく、力の弱い希少部族の者達は裏通りに追いやられ身を寄せ合って生きている。彼がオフィシャルネットバトラーとして活動しているのもオフィシャルを通して自分達の待遇改善を訴えるためだ。そのため自分の立場に関して責任を強く持っているし、俺みたいなオフィシャルに属さない国お抱えのネットバトラーと仲良くするわけには行かないのだろう。
「さすがね、全然大丈夫よ、本当はゴスペルに対しての情報や何かを掴んでたら欲しかったんだけど、あなたなら明日の世界会議で発言するんでしょうし、そっちに関しては問題ないのよ。私が来たのは別の理由」
「何?」
「ひとまずネットバトルでもしない?どうせ世間話にしても腕を見ないと相手にしてくれないのがここの掟でしょう?」
「ふん、オフィシャルと違いウラに精通してる組織というのは本当らしいな、こちらの流儀を知っている。よかろう」
この路地裏で唯一インターネットにつながっているラジカセの前に立ち互いのナビをプラグインする。
『ふひひ、久しぶりの出番だかんね、活躍しちゃうもんね』
『我が神の裁きを受けてみよ!!』
ラウルさんの持ちナビ、サンダーマンと俺のカラードマンが向かい合う。俺も熱斗君や炎山君に追い抜かれっぱなしじゃ、年上としての面目が立たないってもんだ。その点ラウルさんはシリーズ一貫して味方だし、俺が安心して胸を借りて戦える強者だ。
「カラードマン、久しぶりに初見で戦う強者が相手よ、ビシッと決めちゃいなさい」
「サンダーマン、油断するなよ、ウラで名をはせた実力者だ、加減はいらぬ」
結果だけいえば俺とカラードマンの勝利だ。相手の属性がわかってたし、盾の機能も果たす雷雲も誘爆するプログラムアドバンスや、ダブルタワーの貫通する攻撃の前ではその強みを生かし切れなかった。もっとも相性とメタを押し付けて終始逃げ切った結果だが、それでも喰らい付いてくるラウルさんとサンダーマンのコンビネーションと執念は素晴らしいものだった。
戦いが終わると俺はラウルさんに向き直り頭を下げる。俺の礼を見た彼は少し驚いた顔をしたがすぐに表情を引き締める。
「噂にたがわぬ腕前、見事だ」
「こちらこそ素晴らしい対戦をありがとうございます」
互いに握手を交わして健闘を称えあう。これでようやくまともに話が聞けるな。とにかく困ったらネットバトル、腕に覚えがあるものなら案外馬鹿に出来ないコミュニケーションなのだ。まぁウラの世界だと弱肉強食も相まって初めの頃はどこに行くも戦いの嵐だったけど。
「残念だが俺の持っているゴスペルに関する情報や明日聞かされる情報を流すことはできない、オフィシャル所属の建前があるからな、本来ならここまで規模の大きな相手だと協力し合えるもの同士が手を取り合うのが筋ではあるのだが」
特に小さな部族同士を守るためには、アメロッパ全土にネットワークを持つオフィシャルの影響力は大きい。だからこそラウルさんも協力したい気持ちはあるのだけど、組織に所属する人間としてそれはできないという事なのだろう。
「お任せください、そっちの方には困っておりませんので、ただしばらくの間このホテルを拠点に活動しますので、無駄なトラブルは遠慮してほしいのですよ、ただでさえ微妙な立場なので」
「うむ、そういうことなら裏通りの者たちに声を掛けて、ネットエージェントに手を出すような真似は控えさせよう」
その土地の有力者に協力を取り付けれたらこっちのもの、これでこの辺りの活動に困ることは無くなったし、何かあれば地元のコミュニティを頼らせてもらおう。
「後でもう一人のネットエージェントとも戦ってほしいのよ。私の後輩なんだけど、ラウルさんとサンダーマンのコンビとの戦いは得るものが多い筈よ」
「強者との戦いは私も望むところだ、そう言った要件ならいつでも会いに来てくれ」
これにて裏通りの任務完了。それじゃ熱斗君のいる宝石店の方に行こうかな。もしかしたらもう終わってるかもしれないけど、スネークマンも結構手強いんだよね。俺と同じ遠距離からバンバン攻撃してくるタイプだし。
実はナンバーマンに一度紹介されてウラで戦ったことがあるんだけど、あの時は大変だった。お互い遠距離のアドバンテージの奪い合い、ナビ同士は一切近づくことなく、近年のネットバトルでは珍しい形になってしまった。あれから家の会社で働かないかってお誘いも頂くんだけど、いくら断ってもミリオネアさんもスネークマンもそれこそヘビのようにしつこいんだよね。まぁ不快じゃないギリギリのラインを攻めてきてるし、こっちからは何も言うことないんだけどね。
宝石店までのんびり歩いて行く、アメロッパの表通りの方は相変わらず人が多く賑わっている。この辺は裏路地と違って治安も良く、道端で喧嘩しているのもいないし、スリや置き引きも少ない。やっぱり根が小市民な俺にはこういうのが性にあってるかも。
「うわっ、オシャレな服……こっちはニホンではなかなか手に入らない画材、さすが外国、面白いものがいっぱい!」
別に好きなわけじゃないんだけど、どうもこの体の影響か目移りしてしまう。今度ケロちゃんと買い物に行ってみようかな、甘いものとかは元から好きだけどちょっと洋風のデザートが好きに趣向が変わったんだよね。そういえば機内食とはいえファーストクラスのデザート美味しかったなぁ。
「ヘイ!そこのガール、俺と茶をしばきませんか!」
うん?茶をしばきませんかとかアメロッパで使う言葉じゃないだろ。一体誰やねんと思い振り返ると、見た目はすらっとハンサムなアメロッパ人の男性が、嘘くさい感じで歯をキラキラとさせ、キメ顔をしながら立っていた。うーん、これはナンパなのか? 俺の目の前にいる金髪碧眼の青年は、翻訳機を使わず恐らく自分で覚えているであろうニホン語で話しかけてきた。
「悪いけどナンパなら間に合ってるわ、他を探してね」
モテて悪い気はしないけど、今仕事中だし、熱斗君に会いに行くところだからね。それに俺元が男だからかあんまりイケメンに興味ないんだよね。むしろ胡散臭いかなと思っちゃう。見知らぬ地で外国人さんに声かけられると余計にそうなるよね。
「そんなこと言わずに、よろしければお近づきの印に先ほど見ていたお洋服をプレゼントさせてくだサーイ」
うぉ、グイグイ来るな、これがアメロッパスタイルなのか。イケメンって初対面に服とか買ってやるのか!?ラウルさんに話は通してるからウラのやばい人とかじゃないと思うんだけど、ただの一般人ならそれはそれであしらうのもめんどくさいな。
「悪いけど人を待たせてるのよ、他のフリーの子を誘ってちょうだいね」
「あなたのような人を待たせる男なんて、すっとこどっこいです。そんな人ほっといてお茶でもしばき倒しませんか?」
ただの変な人か……。普通女にここまで言わせたらナンパしたにしてもスッと引くのがマナーだろうが!しょうがない大体こういうのはネットバトルで一発ボコボコにしてわからせてやるしかねぇ。
「残念だけど私強い人が好きなの、今のダーリンみたいに世界有数の腕がないと私を振り向かせるのは無理よ」
「おぉう、上等です、アメロッパ大会ベスト8にも輝いたミーの腕を見たらきっと納得します」
よしよし、上手いことネットバトルする流れに持ち込めた。あとはこいつをボコボコにしてさっさと宝石店に向かおう……。ってもたもたしてたら向こうから熱斗君来ちゃったよ。あぁ変な男の相手してたらスネークマンとの戦闘見逃しちゃった、参考になるだろうし見たかったのに!
ってまてよ、どうせなら熱斗君にこの変なのも任せちゃおうかな。せっかくだし久しぶりに頼れる男の子に助けてもらおう。
『ラウル』
アメロッパの裏通りを仕切っているオフィシャルネットバトラー。アメロッパのとある部族の出身で、部族の誇りを大事にしている。持ちナビのサンダーマンは強力な雷で敵を黒こげにしてきたが原作ではこの後アメロッパ城で自分が黒こげになる。
『ナンパ男』
別にゴスペルに関係ないし、オフィシャルにも関係ない、裏路地にも関係ないし、今後のストーリーにも関係ない。
観光に来た異国の女性を強引にナンパするのが趣味な人、一応ネットバトルの腕前はアメロッパ町内大会ベスト8の腕前。使い捨てキャラなのでアメロッパの町内大会ってなんでやねんと突っ込んではいけない。
地味にニホンに仕事で行ったことがあり、言葉も少し覚えたのだがアキンドシティで覚えたためちぐはぐな感じ。