これからも更新頻度少し緩やかに進行していこうと思います。
『ようこそ色綾まどい、我がゴスペルのメインサーバールームへ。この部屋に私以外の人物を招くことになるとは思わなかったよ』
マンションの一番奥の部屋、電磁波が一番強い数値を叩き出してる部屋に入ると、壁一面に置かれたサーバーと無数のモニターに囲まれた部屋の中央で椅子に座ったままこちらを見つめている男がいた。電磁波を防ぐサイバースーツを着たその男は仮面で素顔を隠し、音声も機械的に加工した声だ。
「あなたがゴスペルの首領なのね」
『あぁ、あいにく名乗る名前など持ち合わせていないのだがね』
そう言いながら男が立ち上がると同時に周囲のモニターが次々と点灯していく。そしてそこに映し出されたのは……。
「まさか、フォルテをここまで量産してるなんて」
『ははっ、さすがはネットエージェント、究極のナビと言われるフォルテのことも知っていたか』
画面には無数のフォルテたちが映し出されており、まるで一つの軍隊のように統率された動きを見せていた。しかし画面の中のフォルテたちはどこか様子がおかしかった。全身から黒いオーラのようなものを発していて、目には生気を感じられない。まるで操り人形のような動きをしているのだ。
「とてもフォルテを再現出来たなんて思えないんだけど、これじゃあナビじゃなくてウイルスと変わらなそうね」
『いい着眼点だ、こいつらは究極のナビとは名ばかり、あくまで強化され高度な自立行動をとるウイルスでしかない。だが単純な戦力としてはドリームビットを凌ぐ』
「あらあら、それじゃ究極のナビは結局のところ未完成なのね」
挑発的な態度を取って相手の出方を伺ってみたが、どうやら相手はこの程度の煽りには反応しないらしい。余裕なのか、それとも他に何か理由があるのか。いや、俺は正体が小さい少年だって知ってるけど。俺が対峙するこのスーツの男はそんな気配を微塵も感じさせないほど不気味な雰囲気を放っていた。
『究極のナビなどこの際私には必要ない。これだけ素晴らしいコピーをいくらでも生み出せるのだからな』
「そうか!?オフィシャルや科学省の推測は見当違いだったってわけね。バグの欠片でナビを作るんじゃなくて、最初からウイルスを作ることを目的として……」
『その通り、私はバグの生み出す力に可能性を感じていてね。多くの研究者やナビはこの力の本当の価値を知らない。ウラのウイルス研究者たちだってウイルスを強化する材料としか感じていないだろう』
この推測は正しい、のちにナビカスタマイザーが出てロックマンがスタイルチェンジする一つにバグスタイルがあるし、バグの力でナビをパワーアップさせるというのは公式の大会でもほぼ上位を占めていた戦法だ。
「なるほど、バグの引き起こす力に方向性を持たせて上手くコントロールしてるのね」
『ははっ!君は本当に優秀なんだな、バグなんて取り除く不純物としか考えてない堅物の研究者や時代遅れのネットバトラーたちではそんな発想に至らないだろう。私の創り出したフォルテ軍団のコンセプトはわかるかね?』
俺は少し考え込んだ後、ある結論に至った。
「究極のナビをバグの欠片で作り出すのではなく、バグの欠片を使ってウイルスにナビの力を再現したのね」
『その通り、ただの戦闘マシーンではなく、従来のナビのようにこちらの命令を高度に理解し実行するウイルス。もはやオリジナルのフォルテの再現など些細な問題だ。しいて言えば高い攻撃能力は参考にさせてもらってるし、ドリームビットから得たオーラも搭載している。並みのウイルスどころかオフィシャルのナビよりも出来がいいだろう』
そこまで言うと首領は両手を広げ、ゆっくりと高笑いを始めた。その姿からは尊大な自信と静かな狂気が入り混じっているように感じる。
「それで、レディをここまで誘ったのはわざわざ自慢の研究のプレゼンをするためかしら?」
とりあえず時間を稼がなくちゃ、原作では一体とだけ戦ったけど、こんな数と一斉に戦えばたぶんカラードマンと俺じゃ歯が立たないだろうし、熱斗君来るまで粘れるかな? しかし、俺の言葉を聞いた途端、首領の雰囲気が変わった気がした。先程までのどこか狂喜に満ちたような空気から一変し、冷たく無機質な視線を感じる。
『無論、君ならば理解できてるのではないかね?私は今日をもって現実世界とネット世界を統べる王になる。ネット世界はどうとでもなるが生憎現実世界を支配するには今のゴスペルのメンバーでは不足でね。君をスカウトしたいのだ』
「あら、ここまで来てナンパされるなんてお姉さん照れちゃうわ」
『その度胸もいい、残念ながら我が組織は技術力こそあれど優秀な人材に恵まれなくてね。元WWWでありながら表の世界に鞍替えしたしたたかさも私は評価している。どうだね?コインのように世界がひっくり返る時代がここから生まれる。君も裏の世界に戻ってくる気はないか?』
やっぱり、そういう勧誘か、元WWWだし予想はしてたが……。俺は軽く息を整えてから口を開く。勿論この誘いに乗る気はない。
「お生憎様、顔も見せれない男からの誘いなんてお断りよ」
俺はそう言い放つが、首領はまるで動揺することなく淡々と言葉を続ける。
『ゴスペルを統率しここまでの力を見せているのだ。今更私の正体が誰であろうかなど些細な問題であろう。それともミステリアスな男はお嫌いかね?』
そう言って首を傾げながら、こちらを見つめる。まるで子供のような仕草だが、その奥にある得体の知れない何かが俺の背筋を凍らせる。
こんな時はどうするかな、危険だけどちょっとカマ掛けてやるか。
「ミステリアスな男は魅力的だけど、私の好みって背伸びして大人になろうとしてる男の子なのよ」
『ははっ、なるほど、相棒の方がお好みか』
「いえ、あなたにピッタリじゃない、帯広シュン君」
『…………』
少しは反応するかと思ったら完全に黙り込んじゃったぞこいつ。まさか正体が違うとかないよね、原作と違う流れも起こってきてるし、俺が知らない奴が成り代わってる可能性もあるけど、もしそうなら俺かなり間抜けなこと言ってるよ。
「あら、正体がばれたらだんまり?」
頼む、反応してくれ。すると、しばらく沈黙が続いたあと、急に大笑いし始めた。ひとしきり笑った後、男は仮面に手をかけ、ゆっくりと外す。そこには、ゲームをプレイしてた時に見覚えのある少年の顔があった。
「驚いた、本当に優秀なんだな。それとも今だにワイリーと繋がっているのか」
仮面を通さない声はやはり年相応に幼いものだった。ってかよかった、俺が思い描いてた人物で、一応探してたんだけど途中から痕跡が消えて追うことが出来なかった少年、帯広シュン。
それにしてもワイリーと繋がってる?あぁワイリーのナビにそそのかされてゴスペルを結成したから、自分の正体を知ってるのはワイリーだけだとでも思ってんのか。まあいいや、とにかく今は時間稼ぎと情報の吸出しだ。
「まさか、寝返ってから一度も連絡なんて取ってないわよ。その口ぶりだと裏にいるのはWWWで間違いないみたいね」
『その通り、もうすでに私のことも調べ上げているんだろう、両親の事故の後引きこもってバグの研究をしているところに誘いがあってね、ゴスペル立ち上げの資金や自立ナビ開発のノウハウ、そして科学省が討伐に失敗したフォルテの当時のデータを渡されたよ』
ふたたび仮面を被りなおすと、今度はさっきよりも低い声で話し始める。
『もちろん利用されてるのもわかってるさ、ゴスペルを隠れ蓑に壊滅したWWWを復活させるために色々しているのだろう。もしかしてウラにあるあれにも気づいているかな?』
「WWWエリアね、いつの間にかウラインターネットの奥深くに出来ていたあの空間のこと?」
いつの間にかウラに出来た巨大なエリア、ウラの住人も腕利きは知ってるし、ウラランカーたちにも情報は共有されている。その正体はWWW復興のために強者を選ぶ試験の場、あそこで最奥まで到達すると幹部としてWWWにスカウトされる。まぁ原作ではもちろん熱斗君とロックマンが断って壊滅させてるんだけどね。
『その通り、WWW復興のための前線基地だ、普段はそこに三体の守護者を置いているがその存在もご存知かな?』
「あいにくセキュリティーの突破が出来なくてまだ奥へは行けてないのよ。それよりもいいのかしら、三体も防衛用のナビがいるなんて情報軽々しく私に話しちゃって?」
『無論問題ないさ、すぐにそのナビのことは君たちに知れ渡ることになる』
突然指を鳴らすとモニターの画面に表示されている場所が切り替わる。ブルースのいる電脳だ。
「うそっ!?」
そこにはナンバーマン相手に高火力で攻め立てるファラオマンとナパームマンの姿が、普段のブルースなら強引に接近することも可能だけれどもナンバーマンを守るために防戦一方だ、ガッツマンも体を盾にしながら必死に援護しているがじり貧なのは目に見えてわかる。
『君たちネットエージェントがいかに優秀なのかはわかっていたからね、ゴスペルの計画も最終段階に入ってることを理由にワイリーに援軍を要請したのさ、君の相棒の様子も見せてあげよう』
再び画面が切り替わり、ロックマン相手に対峙するプラネットマンの姿。
「呆れた、カリスマのなさで人員不足だからってすぐに大人に泣きついたのね」『それは君なりの挑発かな?思ってもいないことを口にしても意味がないと思うが、君もなぜワイリーが私を支援し、ここに自ら自作した高性能な自立ナビを送って来たのかわかるだろう』
「予想以上に手が早いネットエージェントを警戒してるのも本当だろうけど、もう一つはあなたが創り出したフォルテのコピーを回収するためよ」
『その通り、これほどの力を得たのだ、みすみすワイリーに渡すはずがない。ゴスペルの構成員にもWWWの手先が入り込んでるだろうし、フォルテコピーがいるとはいえ、組織の存在を熟知してるワイリーからすれば私の手からコピーを奪うことなど造作もないだろう』
そう言って、また指を鳴らすと画面が切り替わる。
『これは奴らをここに呼ぶために用意したWWWエリアと直通する特別なルートだ、本来なら一方通行なのだが繋げる時に少し細工をさせてもらっててね、私の方からウイルスを向こうに送り付けることが出来るようになっている、といっても送れるチャンスは一度だけだろうが』
「私たちとは別にWWWにも喧嘩を売る気なのね」
『無論私が世界を統べるには邪魔な存在だからね、私は利用される存在などではない』
そう言い放つ、仮面の中では不敵な笑みを浮かべているのであろう。
『君はこれを見ても平然としていられるかな』
高速でキーボードを操作し始めると、電磁波の数値が突如として上昇を始め、体に電流が走るような感覚に襲われる。不味い、体が痺れて……。
足がもつれてその場に倒れこむ。なんだこれ、体が重い……。起き上がろうとするも体に力が入らない。
『申し訳ない、さすがに対電磁波スーツを着ているとはいえ、ハイパワープログラムで強化したサーバーが発する電磁波は苦しかろう少しだけ我慢してくれ、すぐに終わる』
強烈な電磁波で周りのサーバーも電脳化し始めている。いや、それどころかこの部屋全体が電脳化しようとしている。
「ふむ、このマンションが徐々に電脳空間に取り込まれているな。人間にこの電磁波は辛かろう。もう電磁波の出力も下げた、立てるかね?」
ようやく動けるようになったのでゆっくりと立ち上がる。体がピリピリするし、まだ頭もクラクラするが、どうにか立てそうだ。
『君なら電脳獣のことも当然知ってるだろう?バグの欠片は集まると獣の姿になろうとする特性がある、集めたバグの欠片に人為的に外部から力を与えれば、伝説の存在とて生み出せるのだよ』
そこには『2』のラスボスになる究極のバグの集合体、ゴスペルの姿が……。
すさまじい轟音と共に、電脳世界に現れたゴスペル。画面越しでもとんでもない存在感を放っている。なんだこれ、足が震えてる。こいつはヤバすぎる、その体は漆黒の闇に包まれており、赤い眼光だけが怪しく輝く。
『電脳化しつつあるこの部屋ではゴスペルの存在感も増していく。安心してくれたまえ、君に危害を加えさせる目的で見せたわけじゃない、君には見てほしかったのさ、WWWが再び壊滅する瞬間をね』
するとゴスペルはWWWエリアに繋がった回線を開き、侵入を開始する。
「待ちなさい、WWWエリアだってウラインターネットを経由してオモテとも繋がってるのよ!あいつがバグをばらまきながら電脳世界を暴れ回ったら……」
『そうだな、間違いなくWWWエリアだけではなくすべてのネットワークにバグをばらまき、いずれ世界中のネット社会を衰退させるだろう。各国の環境維持システムは停止し、世界中が未曾有の災害に見舞われる』
「そうすればあなただってただでは済まないのよ」
『私の心配なら無用だよ、私はすでにただの人間ではない、こんなことも出来るのだよ』
そう言って手をかざすと、俺の体の周りに突如として光り輝くリングがいくつも現れる。リングは俺の体を締め付けると、体の自由を奪い始めた。
「な、なによこれ!?」
『すまないが少し大人しくしていてもらうよ、私としても女性に手荒な真似はしたくないのだ』
今度指を鳴らすと突如として小さなストーンキューブが現れて俺はそれに座る形となる。
『この空間はもう現実と電脳世界の境界線があやふやになってきている。私が支配する電脳空間ではこんなことも出来るんだよ』
「あなたの復讐心はネットワーク社会だけじゃない、それを創り出し管理できなかった私たち大人も激しく憎んでる。だからすべてをリセットしようとしているのね……」
人為的なネット犯罪による史上初の大事件とも呼ばれる飛行機事故に両親が巻き込まれて命を失い、引き篭もっていたところをワイリーに現実世界への復讐を唆された少年の怒りの矛先は、ネット社会を作り上げた大人たちに向けられてる。そしてこの世界その物にも。
『ふっ、少し喋り過ぎたな、私も少々高揚しているのか……。いや、私の正体に唯一たどり着いた君がいたからかな?まだ時間はある、ここまでたどり着いた君は新しい世界で生きていくことが出来る権利を得ているのだ。どうか正しい選択を期待しているよ』
『フォルテコピー』
わかりやすく言うと『3』でプロト戦前に戦うフォルテくらいの戦闘力を持っている。
オーラも搭載済み。原作よりも強化されている
『ゴスペル首領』
原作と同じような境遇でゴスペルを立ち上げたが、ハイパワープログラム入手と???との出会いでWWWにも反旗を翻す。
『電脳化したマンション』
あまりの電磁波の影響でサーバールームを中心に電脳化が進んでいる。
『WWWエリア』
『2』における裏ダンジョン、WWW復興のために優秀なウラの住人をスカウトする目的で存在する、ファラオマン、ナパームマン、プラネットマンは裏ボスに当たる。
『ゴスペルが創り出した電脳獣』
いわゆる『2』ラスボスのゴスペル。ハイパワープログラムとより研究が進んだゴスペル首領の技術で故意に生み出された存在。
『悪役に捕まる主人公』
いわゆる姫ポジション。