『2』もいよいよ最終決戦、ラスボスはフォルテでもゴスペルでもございません。
あちゃ~、また囚われちゃったよ、両手両足光のリングで縛られちゃって椅子の上から身動き取れないねこりゃ。
実は熱斗君のすぐ近くにいるんだけどね、どうも電脳空間と混ざりあってるって言っても本当に空間が広がったわけじゃないみたいで、一種のホログラムみたいなものらしい。おかげですぐそばに熱斗君がいるのに俺の姿が認識されてないみたいだし、声も出せないように口にもリングが嵌められている。
いやさ、ひどすぎない?正直リングが食い込んで胸なんかも圧迫されちゃって苦しいし、口もリングで塞がれてるのって健全なエグゼで描写出来ないよ、熱斗君に見えてないのが不幸中の幸いだよ、さすがに小学生相手にこんなマニアックな姿見せたら性癖が歪んじゃうよ。
多分俺、今エロい恰好してると思うんだよね。その証拠にゴスペル首領のシュン君はさっきからこっちに目線を合わせようとしないし、恥ずかしいなら最初から変な拘束しないでくれよ!たぶんボスの威厳みたいなものを見せたいから格好良く拘束したんだろうけど、予想よりもエロくなっちゃったからどうすればいいかわかってないな、中身はまだ小学生だよね。もうここまでやったから今更別の手段で拘束出来ないし、思った以上に熱斗君が早く到着したから、そのまま対応してるっぽいもん。
『さきほど、まどい君にも問いかけたのだが、光熱斗!俺様と一緒に世界を統べて見ないか、君とまどい君は新しい世界で存在できる権利を得たのだ』
「ふざけるな、誰がお前なんかと手を組むか、そんなことよりもまどいさんを返せ!」
そうなんだよね、人質として囚われちゃってる俺が言うのもなんだけど、絶対に熱斗君こういう時に相手の手を取らないから、むしろ一直線に突っ込むタイプだから。
『そうだな、確かにパートナーの安否が心配で私の提案を考える余裕もないだろう。それでは二人には私が得た力と今後の世界の行く末をお話しよう』
そう言いながら、指を鳴らすとマンション全体がすさまじい揺れと共にサーバーが発する電磁波は強くなり、部屋に設置されたモニターにはノイズが走り突如閃光をともなって俺たちの目を一瞬で眩ませた。
そして次に視界を取り戻した時には、そこには先程までの光景はなく、普段ナビたちが見ている電脳空間がそこにはあった。
「な、なんだここ、ってまどいさん!」
「熱斗君、後ろ後ろ!」
俺を発見して驚いてるところ悪いけど後ろを見てもらったら、なんとそこには……。
「ロ、ロックマン!?なんで俺の目の前にロックマンがいるんだ!」
『色々と驚いてもらっているところ悪いが、少し話をしてもいいかね、なるべく君にもわかりやすくかみ砕いて話すつもりだが』
「こっちは大丈夫よ、なんとなく何が起こったのか推測できるから」
なんかとんでもないことになって来たけど、多分エグゼシリーズの技術が根本には使われてるってことだよね。だとしたら……。
後ろで熱斗君とロックマンが騒いでるけどいったん俺とシュン君で話進めちゃうよ、初めてお互いが触れ合えるのってすごい感動的だし思うところあると思うんだけど、シリアスに解説する空気だからそっちはやっといちゃうね。
「かつて科学省でパルストランスミッションシステムって言うシステムが研究されてたの、簡単に言うと人間をナビみたいに電脳空間に送り込めるようにする技術よ」
『その通り、人間の脳波をデータ化し精神だけを電脳世界へと送る。画期的な技術ではあったが精神と肉体には繋がりがあってね、簡単に言うと精神とは運転手で、体は車と考えてくれたまえ、もし電脳世界でパイロットが居なくなればその車は二度と走り出すことは無い』
「そうよ、生身の肉体に与える危険性が高すぎて研究は中止となったのよ」
俺とゴスペル首領の話に必死に喰らい付く熱斗君、普段の勉強も頑張り始めたみたいだからすごい真剣に聞いてるね。
『つまり、熱斗君とまどいさんは電脳世界に取り込まれたってこと?』
『その通り、先ほどのマンション内は電磁波の力で現実と電脳空間の境界線があいまいになりつつあった、そこで私がWWWから盗み出したパルストランスミッションシステムを応用して君たち二人を私の電脳空間にご招待したのさ、もっともロックマン君も呼び込んでしまうのは誤算だったがね』
たぶん人間しか取り込めない技術だったんだろうけど、ロックマンは普通のナビと違って人間の遺伝情報を持ってるせいで一緒に巻き込まれたんだろうな、もちろん教える義理なんかないけど。
「そんなことよりWWWって」
『WWWは私のスポンサーだったのだよ。彼らのサポートを受けて究極のナビを作り出すのがゴスペルの目的だったのだ、いわば私もワイリーに利用されていたのさ、最もうまく利用したのは私の方だったがね』
さっき電脳獣ゴスペルをWWWエリアに放ったのもそうだけど、完全に敵対行動する予定だったんだな。元々科学省で研究してたワイリーがパルストランスミッションシステムを『3』で作ってたし、その技術もいつの間にか盗んでたのか。
「それで、色々説明してもらったけど、最終目標はなんなわけ?プレゼンの基本は結論から話すことよ」
『すまないすまない、久しぶりに優秀な人間と話すのが楽しくてね、ついつい過程が長くなってしまった。簡単に言うとこのままネットワーク世界すべてを支配し、そのまま現実世界をも電脳世界が取り込む、つまり私が二つの世界を一つにし支配者として君臨するということだよ』
うーん、電脳世界で現実世界を取り込むってのは部分的にこのマンションで出来てるからもしかしたら時間を掛けたら出来るのかもしれない、流星のロックマンシリーズでもどんどんと電波が増えていって、現実世界に電波体が姿を現すのが普通になっていったし。
でも電脳世界の支配ってのが無理だと思うんだよね、例えコピーフォルテやゴスペルなんかを作って軍団を作ったとしても世界中と電脳空間で戦争したらさすがに勝てるとは思えない、多分WWWエリアで暴れまわってるゴスペルだってウラに流れるもんならウラランカーの上位二人が黙ってないだろうし、ランカー序列一位のSが直接出向く可能性だってある。
「もしかしたら現実世界への電脳空間の侵食は部分的には可能でしょうけど、このコピーフォルテやゴスペルをいくら従えたって電脳世界を統べて収めるのは無理よ」
「そうだ、どんなに強いナビやウイルスを集めたって……」
『私の切り札がナビやウイルスではなく、インターネットそのものだとしたら?』
インターネットそのもの?嘘っ……まさか。
「プロト……、いや、無理よ、あなたにはどこにあるかもわからないはずだし、見つけたとしてもプロテクトを突破することが出来ないもの」
プロトが閉じ込められているプロテクト・ガーディアンは頑強な封印がされていて、それを突破するのが『3』でのWWWの目的だった。そのためにフォルテの力が必要で『2』におけるコピー騒動が起こったんだ、でも結局のところコピーはオリジナルに届くことは無く、この騒動で結びついたWWWとフォルテが協力体制を得てようやく封印を解いたんだ。
『ふむ、すぐさまプロトの名前を出すのは尊敬に値するよ、ゆくゆくは我が手に収める予定ではあるがね。さてここまで来た君たち二人には運命という奴を感じざるを得ない、思えば私がこいつと巡り会ったのも運命だった』
突如電脳空間に巨大なひずみが出来上がるとそれは姿を現した、普段はPETを通してデータ上の存在と認識しているもと同じ土台に立つと感じられるプレッシャーは尋常じゃない。先ほど見たゴスペルに劣らぬ巨体、全身を覆う漆黒の禍々しいオーラ。そして何よりもこいつが放つ独特の恐怖感を俺は、いや俺たち二人は世界で一番知っているはずだったのに、それでも体が震えてしまう。
「そ、そんな、嘘よ……」
「な、なんでこんなところにこいつがいるんだよ、確かに俺とロックマンがデリートしたはずなのに」
『初めて君たち二人を驚かせることが出来たな。そう、かつてWWWが終末戦争を望み、生み出したウイルス。君たち二人が運命に導かれ、その夢を打ち砕いたはずだった……、しかし、WWWに利用される身である私たちもまた運命に導かれたのだよ』
かつてWWWの本拠地で熱斗君が命がけで戦って世界を救ったあの日を忘れることは出来ない。そして対峙したこいつのことを忘れることも出来ない。究極のプログラムから生まれた究極のウイルス、夢のウイルス。
『私は社会への復讐を、こいつは自ら生み出された存在理由を証明するために、私たちは同じ夢を見た』
グオォオオオッオォオオオッ!!!
まるでその言葉に答えるように吠える夢の塊。
『これが私の切り札、ドリームウイルスだよ』
『ドリームウイルスR』
究極の夢のウイルス。今作では『1』のラスボスを務める。
制御プログラムが未完成であり、WWW研究所のメインコンピューターと融合し、溢れ出るエネルギーを止めどなくドリームビット生成につぎ込む存在となっていた。
この時、エネルギーをウイルスに変換するシステムが不安定で、次第に電脳空間と一体化し続け『3』のプロトのような存在になりつつあった。
ロックマンにデリートされたはずが、その残留データをもったドリームビットたちをゴスペルが回収、散らばったウイルスをバグの欠片で複製する段階でその存在に気が付いたゴスペル首領が蘇らせた。
甦った後も大量のバグの欠片とハイパワープログラムを取り込み、サーバーに現実と電脳世界の境界線を取り込めるほどの電磁波を流させた。
もはやウイルスと呼べる存在を凌駕しつつあり、インターネットを飲み込みコントロールを得る、そこにパルストランスミッションシステムの技術が加わり、人間の精神を電脳世界へ引きずりこむことも出来る。
『2』ラスボスに相応しい終わった夢のその先である。