【完結】朝起きたら色綾まどいになってました   作:発火雨

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遅くなりました。理由は別サイト様での執筆にかかりきりでした。
こことは別に活動してまして、そっちを書きまくってました。


男たちの意地

 グオォオオオッオォオオオッ!!!

 

 目の前で雄たけびを上げるドリームウイルス。その姿はまさにラスボスに相応しい、ってか『1』の時よりも格段にヤバくなってそう。……いや待て、サイズは変わんないけど、暴走して電脳空間に固定化されてた『1』と違って、動きが威風堂々してる!なんか、ちょっとカッコいい?……いや、でもこれと戦わなくちゃいけないわけだもんね、怖ぇえっ!!

 

『ドリームウイルスが現実世界を電脳世界に引き込んだおかげで、電脳世界を統べる者は現実世界を好きにすることができる。この空間では私がすべてをコントロールできるはずなのだが……君のロックマンは私の手に余るようだね』

 

 何がヤバいかって、この空間に入り込んだ時に俺の精神だけが取り込まれたみたいで、カラードマンがいつの間にか居なくなってることなんだよね。たぶん普通のナビじゃこの空間に招待されないっぽいし、PETがいつの間にか手元から無くなっていた。これじゃバトルチップも使えないし……。あれ詰んでね?少なくても俺は何もできないよねこれ。

 

「当たり前だ、俺たちはどんな状況になったって諦めたりしない、行くぞロックマン!」

『そうか、君には戦う力と意思がまだあるのだな、良かろう。我がドリームウイルスの力を見せてやろう。その前に……、戦えぬ者はここから退場してもらおう!』

 

 そうゴスペル首領が手を掲げると、突然周りの景色が変わった。いや、何もない空間に椅子が一つと空中に投影されているのは熱斗君とロックマンがドリームウイルスが対峙している映像だ。

 

『すまないね、さすがに戦う手段をもたない君をあの場に置いておくのは危険すぎてね。ここで相棒の心が折れる様を見物していてくれ』

 

 うわ、なんちゅうことしてんねん。まあ確かに、あんな化け物と戦う手段もないからある意味ありがたいんだけど、でも、一緒に戦うって決めてたのに、何も出来ないで待ってるだけってのも辛いんだよなぁ。……仕方ないか、俺は傍観者に徹しよう。俺が狼狽えても何も事態は好転しないし。

 

『意外だな、この状況下に置かれても、冷静さを保つのか。まだ何か隠し玉を用意しているのかね?』

 

 俺の数メートル隣に椅子を出して腰かけるゴスペル首領。何々、かっこよすぎない!?そんなキャラだったっけ。ってかなんかこの世界子供でも優秀で覚悟が決まってる子多すぎない!?普通こんな非現実的な状況置かれた時点でパニクると思うんですけど。……ああ、俺か。

 

「別に。何もできない時は、信じることぐらいしか出来ないからね。それに子供の前では大人の振りをしたいのよ」

 

 君の正体を知ってるのもあるけれど、熱斗君に大人として憧れられてるからな、あんなにまっすぐ純粋に生きれるのはある種羨ましいよホント。だからこそ、俺は彼に尊敬される人間でありたい。俺の周りの大人たちは本当に良い人ばっかりだし。それに比べたら俺はまだまだだけど。

 

『そうか、うん!?あれは……』

 

 画面の向こうではロックマンと熱斗君が互いの体を重ね合わせ一つの存在になった。フルシンクロなんだけどその外見はどちらかというと、アニメで言うクロスフュージョンに近いかも。そしてドリームウイルス相手に奮闘するロックマン。いや強い!電脳世界で戦う時とは違う強さを感じる!これならいけるんじゃないのか?

 

『馬鹿な……、なんだあの動き、それにあの姿は……まさか!二人の意識がシンクロしてるとでもいうのか……、いや、あり得ないこともないのか、互いに今は電子の存在、さしずめフルシンクロとでもいう状態』

 

 ブツブツと考察を巡らせるゴスペル首領。その様子は子供とか悪の首領とかではなく、科学に対する探究心の塊のような姿だ。……あれ、やっぱり社会に対する復讐心も本物なのだろうけど、一人でこれだけの技術を確立し、電脳世界に革命を起こしてきた科学者としての才能と情熱は本物なんだろうな。俺が例えシュン君の立場になったとして原作知識があったとしても絶対にこんなこと出来ないもん。

 

「好きなのね、考察とか研究とかそういう事。凄いなぁ」

『なに、これくらい誰だって考えるだろう。私からしたら君の方が異常だ。君はなぜ戦わない、君の相棒が命を賭けている時にどうして黙って見ていられるのだ。私には理解できないね』

「うーん、だって今の私に出来ることなんて何一つないし。それに熱斗君とロックマンが勝つって信じちゃってるから」

『ふん、信じる気持ちなど何の根拠にもなりはしないな』

 

 考察を辞め、椅子に座りながら一言呟く。その姿は他者を信じることを辞め、大人たちを疑っているような、寂しいものだった。そうかもしれない。俺は彼のことをデータでしか知らない。彼は今までずっと独りで戦ってきたのだから。他人が信じられなくて当然なのだろう。でもね。

 

「いいのよ、他人なんか信じなくて。むしろ無条件に人を信じてくるお人よしなんて危なっかしいし、少なくても私には向いてないわ」

『しかしまどい君は先ほど彼らの勝利を信じてると……』

「いいのよ、二人っきりだしあなたの正体も知ってるんだからまどいって呼び捨てで、そうね私が信じてるのはあなたがドリームウイルスを信じてるのと同じよ」

 

 そんな無理して大人びた感じを出さなくていいよ、こっちは子供だって知ってるんだし、それにその演技のまま話されたら悪役だけどカリスマあり過ぎて、ちょっとカッコよく感じちゃうじゃん。

 

「自分の技術力の結晶を信じてるんでしょ、自分の培ったものすべてをぶつけたドリームウイルス。あなたがここに至るまでの道には確かに不幸があり、社会への不信があり、復讐心があり、利用されてきたのかも知れない。でも培った科学者としても技術は一つも嘘をついてないのよ」

 

 そうさ、例え社会への復讐心だったとしても、シュン君が生み出したゴスペルの技術力は凄いと思う。きっとこれほどの科学者にどれだけ憧れても、なることができるなんてほんの一握りの夢の果てなのだろう。

 

「私も一緒、もうどれだけ頑張っても熱斗君とロックマンには戦っても勝てなくなっちゃったのよ、でもね、挑戦し続けた私が彼らの強さを誰よりも知ってるのよ、私が信じてるのは私の腕と、私の審美眼なのよ」

 

 少なくても自分の腕がこの世界でも上位に入ってるのはわかる、でも本当の超一流には勝てないのもわかってる。そりゃ色んな葛藤なんかもあったけど、人生何てそんなことの連続だもん、だからさ、少なくても俺はそんな感じに納得してる。俺は熱斗君を信じると判断した自分を信じてるね。

 

 俺の言葉を聞いたシュン君は仮面をこちらに向けじっと見つめている。そして数秒後、大きな声で笑い出した。その表情はわからないがとても楽しそうだ。

 

『はははっ!そうだな、どんな過程があったとしても結果は現実だ。私は自らが生み出したドリームウイルスに世界を変える力を見た、君は光熱斗に世界の先を見たのだな、きっとWWWの時と同じように』

「そうね、世界を救うとしたら熱斗君とロックマンよ、ギャンブルでいうところの一点掛けね」

 

 まっ、こんなこと言ってるけど、俺がゲームやアニメを通じて光熱斗っていう人を見て来たってことも勿論あるんだけど、でもそれって諸刃の剣なんだよね、作品の存在ではなく、みんな生きてるんだから、そのことは肝に銘じなきゃと思うけど、中々前世の知識が邪魔をして難しい。

 

『それじゃ、一つギャンブルでもしないか?世界の命運はどちらに転ぶのか』

「いいわよ、何をかけるの?」

 

 楽しそうに笑いながら提案してくるシュン君。一体何を賭けるのだろうか? ゴスペル首領は空中に映し出された熱斗君とロックマンの戦闘を見つつ呟く。

 

『そうだな、我がドリームウイルスが勝てば君は私の右腕として、私を支えるというのはどうかな?』

「あきれた、お姉さんのことが好きなら、賭けとか理屈付けないで、好きです付き合ってください位言いなさいよ」

『正体を知ってる君との間には歳の差が付きまとうだろ、私がいずれ世界を統べて適切な年月を得たら告白しようではないか、電脳の世界では歳なんて好きに弄ることもできるし、そんな差を気にする者もいなくなるだろう』

「熱斗君なんて、ストレートに告白してきたわよ、ご両親にも自分から話すって」

『はっ!?うむむ、言っておくが私は計画的なのだ。まぁ光熱斗の胆力と人を見る目は認めてやらんといかん。いいだろうまとめて二人とも部下にしてやる』

 

 照れ隠しなのか、そんなことを口走るシュン君、なんだろう、こんな風に普通に会話するなんて考えてもみなかったけど、悪い気はしないな。

それにしても……。画面に映る熱斗君とロックマンは本当に強い。ドリームウイルスの攻撃をまるで見切ってるような動きだ。熱斗君の成長速度は尋常じゃないね。

 

『押され始めたか、先ほどからバトルチップを使う場面も多々ある、恐らくオフィシャルナビの特殊カスタムと同じで、ナビそのものにフォルダデータを搭載してるのだろう。事前に用意していたものだから臨機応変とまではいかないが、一体化したオペレーションは一切のラグがない』

 

 熱斗君とロックマンの動きをみて考察をするゴスペル首領、さすがに分析能力も高いみたいだ。ロックマンが万が一オペレートを受けれなくなった時のためにいくつかのバトルチップは自分の意思で使えるようになってるんだよね、オフィシャルのナビに多いカスタムなんだけど、実はロックマンにも組み込まれてる。勿論光さんが弄った特別製だから、普通5枚しかチップデータが入らないところを10枚入る特別製なのよね。

 

『ふむ、君たちが勝った時は何が欲しい?あり得ないと思うが仮に負けたとしても、私が持つ技術を科学省なら喉から手が出るほど欲しがるだろう、光祐一朗ならばこの価値をわかるはずだ』

「そうね……大人しく投降して罪を償うなんて、賭けで決めるもんじゃないでしょうし。私と個人的に取引しない?何かあったら協力してもらうとか」

『いいのかね、正義のネットエージェントとしては悪を捕らえる場面なのでは?』

「いいのよ、私熱斗君の味方だけど、別に正義の味方ってガラじゃないし、それに元々が悪党からの始まりだもん」

 

 本当は捕まえたほうがいいんだろうけど、なんていうか彼も幸せになる世界があるならそれが一番いい気がするんだよね。勿論俺がどうにかできることじゃないから、全部終わったら光さんに相談して、周りに頼って何とかならないか考えるけどさ。とりあえずは俺と個人的に連絡が取れる状態になってくれたらいいよ。

 

『なるほど、確かに私も正義を振りかざすような身勝手な奴に捕まるのはごめんだからな、まどいはそんな立場になってまで悪党を捨てきれないのか』

「あら、ミステリアスな悪い女はお嫌い?」

『いいや、悪の首領の右腕になるのだ。そのくらいの悪党でなければ困る』

 

 なんか楽しそうに受け答えするよなシュン君。なんかこうやって話してみると結構話しやすいじゃん。本人もずっと人との関わりを絶ってきたみたいだけど、誰かと話す楽しさってのは味わうと癖になるからね、こういった小粋な会話は、なんだかここがゲーム原作だと実感させられてしまう。いやみんなウィットに富んだ受け答え出来過ぎ。

 

「それではまどい、そこで見ているがいい、私とドリームウイルスの執念が、君の信じる光熱斗とロックマンを超える瞬間を!」

 

 シュン君は腕を上にあげ、そう宣言をした。すると目の前から突如消えたかと思うと、画面の向こうのドリームウイルスの真上に現れた。そのまま熱斗君と会話を少しすると、ドリームウイルスと体を重ねる。

 

「うわっ、ウイルスとフルシンクロしちゃったわ……、いや、フルシンクロのこともわかってたみたいだし、もしかして元から出来るように研究してたのかも」

 

 するとドリームウイルスの動きが目に見えて変わる。単純に攻撃速度が上がったとかじゃなくて、攻撃を移動先に置きにいったり、先の行動を読みながら器用に罠を張ったり、今までドリームウイルスがそのオーラや身体能力のゴリ押しをしてきたところに、オペレーターの技術が加わって非常に戦いにくい敵になっている。

 

「嘘っ、プリズムコンボを食らう瞬間にドリームオーラを最大出力で出して防ぎきっちゃった」

 

 いや、プリズムコンボ使う熱斗君もやばいんだけど、それの回答としてドリームオーラで対処するのもやべぇ、『2』のガチ対戦とかもこんな感じだった気がする……。

 

 なんだろう、最終決戦だしラストバトルなんだけど、緊張感がいい意味でないっていうか、いつの間にかシュン君が纏ってた陰気さみたいのが無くなっちゃったから、なんだか世界の命運をかけたってよりも男の意地のぶつかり合いみたいになってる。

 

「青春なのかしらねぇ……」

 

 なんかちょくちょく、俺の名前叫んでる二人の声が聞こえてくる気もするけど、考えないようにしよう。いや、熱斗君といい感じになっといてなんだけど、ヒロインとか俺似合ってないから、俺みたいなおばさんじゃなくて若くてかわいい子を取り合ったほうがいいと思うよ。

 

「あっ、ドリームソードで鍔迫り合いしてる」

 

 まぁ、あんまり考え込まないようにしよう、少なくても熱斗君もシュン君も悪いことにはならなそうな気がする。




『クロスフュージョン』
アニメ『ロックマンエグゼAXESS』から登場した熱斗とロックマンが融合して現実世界に現れた姿。現実世界に実体化したダークロイドなどやウイルスと戦闘を行うために使われる。

もしくは流星のロックマンの電波変換をイメージしてもらえば幸い。

これにより、フルシンクロと変わらず寸分の狂いもラグもなく動くことができる。バトルチップに関しても、データとしてフォルダに紐づけているので、自らの望むタイミングで使うことができる。

現実世界でのフルシンクロではなく、電脳世界でのシンクロなので、元々適性があった二人の力は強大で、サイトスタイル状態と言っても過言ではない。
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