答え合わせも近づいてきました。
「オラオラ、フレイムマンの業火で黒焦げになっちまいな!!」
『グォォオオオオオオオオ!!』
燃え広がる炎、エリアの大半がマグマパネルとなったバトルフィールドの温度は電脳空間に蜃気楼を作り出す。
「うげっ、フレイムマンが三体に増えた!?」
『熱斗君、本体以外は実体のない分身だよ。惑わされないで』
ロックバスターで即座に分身を撃ち抜き、本体を発見する。
「いいのか、フレイムマンばかり見てて?一瞬でも本体から目を背けたら何が起こるかわかってんだよな」
「やばい、ロックマン!上だ!」
上空からロックマンの後方目掛けて落ちてくるのはバトルチップブラックボム、本来は炎属性の攻撃が当たらないと爆発しない不発弾であるが、着弾地点はマグマパネル。すぐさま爆発し、爆風でロックマンの体勢が崩れる。その隙をフレイムマンは逃さない。
「今だ!ファイアブレスで燃やし尽くせ」
ロックマン目掛けて灼熱の炎を吹き付けるため、一か所に熱エネルギーを溜める。
「へへっ、上を見なきゃいけないのはそっちも同じなんじゃないの?」
「何!?」
上空から激戦の末破壊された穴パネルに吸い込まれるように落ちていくカンケツセン。その穴から液体が流れる音がしたかと思うと見る見るうちに音は轟音へと変わり、大量の水が溢れ、洪水となってフレイムマンを襲う。
「舐めんじゃねぇ!火が水に弱いなんて俺のフレイムマンには通用しないんだよ!!!」
フレイムマンとマグマパネルを押し流すように止めどなく襲い掛かってくる水の中で揺らめく炎。通常なら瞬く間に消えてしまう灯は、一瞬閃光を放ったかと思うと周りの水分すべてを一瞬で蒸気に変え、水蒸気爆発を起こす。爆発の衝撃で電脳空間が揺れ、水蒸気で辺り一面が白く煙る。
「ちっ、ロックマンを見失っちまった。あれしきの爆発で吹き飛ぶわけねぇよな熱斗!」
(ってもどうする、マグマパネルは流されちまって、蝋燭も消えちまったから回復が追い付かねぇし無敵化も消えちまった。次に蝋燭が灯るまでの間にもバグの影響でどんどんフレイムマンの体力が削れちまう。どっちだ、ロックマンは今体勢を整えてるのか?それなら俺もいったん仕切りなおすためにリカバリー系を使いてぇ。だが、もしも今この瞬間に必殺の一撃を狙ってんならその隙は致命的だ。どっちだ、息切れしてんのか、狙ってんのか)
ヒノケンの頭には攻撃か回復の二択が駆け巡る。勝負の行方を決めるのは、その一瞬。頭の中には今の爆発でロックマンを倒した可能性は一ミリも入っていない。
「無事かロックマン!?」
『うん、熱斗君。でも今のでかなり体力を使っちゃったから奥の手を使うにはギリギリだよ』
(どうする、あれは体力の消耗が激しいから、フレイムマンみたいな火力重視のナビの攻撃を今食らったらひとたまりもない。ここはいったんリカバリーとバリアを張って立て直すか?でも時間を与えたらまたマグマパネルを増やされるし、せっかく消した蝋燭の灯もいつ復活するかわからない。向こうはどうしてるんだ?息を整えてるのか、それとも、次の攻撃の準備段階なのか?)
熱斗の頭には攻撃が回復の二択が駆け巡る。勝負の行方を決めるのは、その一瞬。頭の中には今の爆発でフレイムマンを倒した可能性は一ミリも入っていない。
「「攻めか守りか」」
二人のオペレーターが同時に答えを出す。
(ふん、あのガキが炎を恐れ引き下がる姿なんて想像できねぇ)
(絶えず燃えるような奴がここで止まるかよ)
「フレイムマン最大出力だ!やってやるぜ!!!」
「ロックマンサイトスタイル発動、一気に駆け抜けるぞ!!!」
互いに取った選択肢は前進あるのみ。
「いくぜ!クサムラステージ」
あれだけマグマや穴でぼこぼこだったフィールドが一瞬にしてどこまでも続く広い草原エリアへと変わる。
「食らいやがれ、全方向一斉ファイアブレス!!!」
フレイムマンを中心にまるで水面に波紋が広がるかのように、灼熱の炎が辺り一面に広がる。チャージして放たれた炎はナビカスプログラムエナジーチェンジにより、複数の炎属性のチップを燃料にさらなる火力を滾らせていた。まるでビックバンが起こったかのように、草原は一瞬で消え失せてしまう。しかし、その一瞬の刹那。
『グォ!?』
最後にフレイムマンが見た光景は自分の目の前に突如と現れたロックマンがアクレツザンで自身を連続で薙ぎ払う瞬間であった。
「試合終了!!!勝者、光熱斗!!!!!」
緑川ケロのアナウンスが響き渡り、爆発で声を発することを忘れた観客たちは一斉に歓声と拍手を送る。
この圧倒的力量差を目の前で見せつけられたヒノケンはその場に膝を落としたまま動くことができない。ここに来るまでにウラランカーたちの扱きに耐え、人生で一番ネットバトルに熱中した。ナビだって自分の持てる情熱をすべて注ぎ込み、協力してくれた科学者のおかげで過去最高の火力を実現した自慢のナビだ。しかしヒノケンの情熱、執念、燃え滾る思い。そのすべてをもちいても光熱斗とロックマンには届かなかった。
勝者であるはずの光熱斗がゆっくりと近づいてくる。急にしゃがみこんだヒノケンを心配してるのだろうか。ヒノケンはゆっくりと立ち上がり、熱斗の前に立ちふさがった。
「畜生!また負けちまった!今度こそリベンジできると思ったのによ!!!やっぱりおめぇはすげぇ奴だよ」
ヒノケンは熱斗の肩に手を乗せると、乱暴に熱斗をゆすった。少し苦笑いをしながら熱斗はヒノケンに言葉を返す。
「そっちこそ、まさか決勝で当たる炎山相手に温存してた奥の手を使わされるとは思わなかったよ」
「へへっ、てめぇの奥の手の反応速度には警戒してたつもりなんだがな。最後は自分の炎に焦らされて判断力の火が消えちまった。俺もまだまだだな」
「へっ?サイトスタイルのことも知ってるの?今まで数えるくらいしか使ってこなかったし、この大会で使うの初めてだったのに!」
フォルテとの戦い以降調整目的で数えるほどしか使わなかったサイトスタイルのことを知るヒノケンに思わず驚く熱斗。
「まぁな、おめぇほどの強者のことはウラでもきちんと把握してるってことさ。それに決勝に勝ち上がっておめぇにリベンジしてぇのは俺や炎山のガキだけじゃねぇからな……」
「えっ、それってどういうこと?」
「ひひひ、この後の決勝で全部わかるだろうぜ。てめぇの応援は出来ねぇがせいぜい頑張りな」
一人伝えたいことを伝えたら会場のリングから降り選手入場口に歩いていくヒノケン。選手入場口を通ると、この後準決勝二回戦を控えたネットバトラーQが廊下に立っていた。その姿を見てにやりと笑ったヒノケンは楽しそうに話しかける。
「けっ、俺のリベンジは失敗しちまった。仕方がねぇから決勝はおめぇの応援でもして時間でも潰そうかね」
「いいのか?普通自分を打倒した男の応援をするものだろう。その実力を認めたならなおさらだ」
「さっき本人にも応援は出来ねぇって伝えたから問題ねぇよ。それにフレイムマンやらウラランカーのことでいろいろ世話になったからな、てめぇらの応援しても罰は当たんねぇだろ」
「気が早いことだ、準決勝の相手は炎山。もう私が勝ち上がったと思ってるのか」
今まで話した姿を誰も見たことのないネットバトラーQはヒノケンの問いかけに答える。変声機で加工された声とはいえ流暢に喋るその姿に第三者がこの光景を見れば驚きを隠せないだろう。
ヒノケンはそんなQの姿を見て、やれやれと言った口調で答える。
「俺のフレイムマンで得たバグの運用データもそのナビに反映してんだろ。だったら俺の情熱を引き継いだのはてめぇの持ちナビだ。引き継いだ情熱の火の行き先を見させてもらうぜ」
あばよと片手を上げながら応援席に向かうヒノケン。Qはその姿を見送ると、会場に向かって歩き始める。
『彼のフレイムマンがいなければ我らのナビは完成しなかった。ゴスペルと違いWWWの持つオペレーターの質の高さには驚かされる』
「そのゴスペルもWWWも、あれだけの組織でありながらたった一人の小学生にすべてを打ち砕かれた」
『その通り、しかし我々は違う、見せてやろう我らが夢の結晶の力を』
「あぁ、我らの持つすべてをもちいて、光熱斗とロックマンを打倒す。世界を二度救った英雄など恐るるに足らんことを証明してみせよう」
先ほどヒノケンには気が早いと言ったが、すでに二人には光熱斗とロックマンを決勝で倒す未来しか見ていない。
PETから流れる加工された音声と会話したネットバトラーQは準決勝のためリングへと向かう。再びその口を閉ざしながら……。
『エナジーチェンジ』
『3』に登場したナビカスプログラム。
本来はストーリーのイベントで、水属性のチップを消費して火を消したり、火属性のチップを使って蔦を燃やすためのプログラム。今回は戦闘用にナビカスを通して組み込まれており、火属性のチップを消費しフレイムマンの火力を劇的に高めているのだが。そのせいでデメリットバグにむしばまれており、常時体力の消費、または発動にも体力を削る諸刃の剣と化している。
『アクレツザン』
フミコミザン、パラディンソード、フミコミクロスで発動するプログラムアドバンス。
2マス前に踏み込み、ワイドソード、パラディンソード、クロスソードで連続攻撃しその威力600。
単体での威力もそこそこなのだがその真価はPコードであること、同じコードのプラントマンとキラーセンサーで相手を拘束し確実に当てると強力なコンボになる。
ロックマンは迫りくる火の壁をタイミングよく乗り越えてフレイムマンに攻撃。