終わりが見えてきましたが、やはりまとめ上げるのが大変ですね。
『熱斗君、準備は良い?』
「OK、ロックマン」
いよいよ始まるN1グランプリ決勝戦。
相手は正体が謎に包まれたネットバトラーQ、まさに大会のダークホースとして注目されている。
本来大会に出るような選手たちは、その情報が広く知られ対策を取られることもしばしば。
しかし、ネットバトラーQに関しては全くの事前情報が出ず、逆に大会選手に対してメタを的確に張って勝ち残って来た。
『たしかにネットバトラーQの情報は少ないけど、さすがに本選の戦いから見えてきたものがある』
「あぁ、バスターと遠距離チップを主軸にした遠距離から一方的に攻撃してくる、テクニカルでまどいさんと同じタイプだ」
ネットバトラーQの戦法は毎回変わるとはいえ、基礎になっているのは遠距離からの攻撃。
それも相手をただ狙うのではなく、逃げ道を塞ぎ、罠を張り、追い詰める。
高度な射撃戦を得意とし、獲物を追い詰める狩人のような戦い方だ。
『こういう相手との戦い方は覚えてるよね』
「もちろん、まどいさんと散々戦ったもんね。なるべく距離を詰めて相手の強みを潰していくだろ」
こういった距離を離して戦うナビは基本的に近づかれることを嫌う。
無論、直線的に距離を詰めればハチの巣になってしまうし、相手も近距離用のチップを用意して迎撃してくるだろう。
しかし、ロックマンは近距離から遠距離までそつなくこなすオールラウンダー。
相手の強みを潰し、こちらの強みを押し付ける。
これは、メタを張って戦うことに慣れている色綾まどいと日々戦って覚えた教訓だろう。
『そして注意するべきドリームオーラとダークネスオーラ』
「あぁ、近距離戦に持ち込んだらオーラを張って相手の攻撃を弾いて、稼いだ距離を逆に利用するのが準決勝のやり方だった」
無論準決勝で戦った炎山は近距離を得意するブルースを扱う強者。
これらの理屈は熱斗以上にわかっていたし、常に自分の得意な距離を意識しネットバトラーQを追い込み続けていた。
だが、彼らの誤算は『ドリームオーラ』を上回るオーラ属性の防御に行く手を阻まれたことだろう。
オーラに対するメタとして『スーパーキタカゼ』を用意していたが、予選で『ドリームオーラ』を見せていたのはおそらくネットバトラーQの見せ札。
本命の『ダークネスオーラ』を通すためにあえて、『スーパーキタカゼ』を使わせるプレイングだったのではないかと熱斗とロックマンは結論付ける。
「ドリームオーラは火力で突破して、ダークネスオーラが出るまでスーパーキタカゼは温存」
『ダークネスオーラに関して情報が少ないけど、オーラ属性ならスーパーキタカゼで突破可能だってパパも言ってたものね』
最初の頃はWWWと突発的に戦ってきた二人だが、ネットエージェントになってから、事前に情報を得てから戦うことも多くなった。
どんなチップも使いこなせる二人はより戦いの幅を広げ、本来の歴史よりも格段に強くなっている。
さらに、光祐一朗が本気で調整をしたロックマンはナビカスはもちろん、スタイルチェンジもフルシンクロの境地とも呼べるサイトスタイルを使いこなすまでになった。
「やることは最初から決まってるな」
『うん、前陣速攻。炎山君とブルースを見習って、より深いところまで潜り込んで一撃を与えていくよ』
サイトスタイルは熱斗とロックマンにかなりの負担を強いる。
そのため、すべての能力が高水準にも関わらず体力は通常のロックマンよりも低くなってしまう。
だからこそ戦闘を長引かせないように速攻で攻め込む、そして相手の土俵で戦わずこちらのペースに引き込み続ける。
『さぁさぁ、泣いても笑ってもこれが最終決戦! 世界一を決めるN1グランプリ決勝戦今スタートです!!!』
緑川ケロのアナウンスと共に試合開始のカウントダウンが進む。
二人はすでに意識を集中し、熱斗はいくつかのチップを手の中で握りしめ、ロックマンは試合開始と共に相手の攻撃を避けつつ距離を詰めるため足に力を込める。
そして、カウントがゼロになると同時に熱斗はフルシンクロに入り、サイトスタイルの能力をフルに発揮、ロックマンと自分の能力を最大限にまで高めた。
その状態で試合開始と共に走り出し、一気に距離を詰めていく。
『なっ!?』
「どうした? 私のロックマンが遠距離攻撃しか出来ないと思ったか?」
距離を取って戦うと思っていたネットバトラーQのロックマンは、いつの間にかロックマンの目の前に踏み込んでいた。
両者ともに一瞬で距離を詰め、お互いが攻撃範囲に入るが、この事態を想定しなかった熱斗と、あらかじめ想定していたネットバトラーQで攻撃のタイミングがわずかにずれる。
互いにソードを振り合うが、バグスタイルロックマンの一撃がサイトスタイルロックマンのソードを弾き飛ばす。
しかしソードを失ったことに動揺することなく、熱斗は即座に後退指示を出し距離を取った。
「距離も取ったか。良いのかね、そこは私たちの間合いだぞ」
一度立て直すためとはいえ自分から距離を離してしまった。
ネットバトラーQはその隙を逃さず、迎撃チップの用意をしていた。
「見せてやろう、ナビチップ『フォルテ』!」
そう言うとバグロックマンの両手から無数の光弾が放たれ、熱斗とロックマンに襲い掛かる。
それは熱斗とロックマンが対峙したフォルテが打ち出すエクスプロージョンと同等の物、すさまじい威力の爆発がロックマンを包み込んだ。
これだけで決着がついてしまったのではないかと思う観客たちの感情を置き去りに、ネットバトラーQは追撃としてバリアブルソードに特殊コマンドを打ち込む。
エレメントソニックの斬撃がロックマンを襲い、その衝撃でロックマンは後方へと吹き飛ばされた。
『おおっと、なんということでしょう! まさかのネットバトラーのバグロックマンがとんでもない攻撃を繰り出し、光選手のロックマンを追い詰めています!」
熱斗もロックマンも、ネットバトラーQによるフォルテは想定外の攻撃だったが、回避と防御用のチップを駆使してなんとか直撃を避けた。
しかしかなりのダメージを受けてしまったのも事実、怯むことなく体勢を立て直し、斬撃の合間をぬってロックバスターを放つ。
「直撃を躱し、即座に反撃に映ると見せかけ、本命は先ほど避けるタイミングで上空にほうり投げたブラックボム」
自身に迫るバスターはドリームオーラで防ぎ、上空から落ちてくるブラックボムをロックオンするとマグナムで攻撃。
誘爆したブラックボムの爆風は遥か上空で広がり地上にいる二人のロックマンには何のダメージも与えない。
「なっ、これも読まれてる!?」
『まだだ、熱斗君すぐにドリームオーラを割るよ!』
ブラックボムを防がれたがそちらを迎撃するのにバグロックマンは上空を見て一瞬対戦相手を視界から外してしまった。
その一瞬の隙をついて熱斗がくみ上げたプログラムアドバンスがロックバスターから火を噴く。
それと同時にネットバトラーQもプログラムアドバンスをくみ上げており、ロックバスターから放たれた。
「ふむ、ドリームオーラを破壊できる威力があり、遠距離から当てやすいプログラムアドバンス。先のブラックボムとセットプレイだとするとおのずと正体も読めてくる」
ネットバトラーQは放たれたプログラムアドバンスが、火属性単発のヒートスプレッドであると見抜き、ドリームオーラで受け止める。
オーラは剝がれてしまうが、バグロックマンにダメージはない。
『うわぁああああ』
「ロックマン!」
対して攻撃が当たる瞬間にバリアで防御を試みるが、多段ヒットするハイパーバーストは一度目の攻撃でバリアをいとも簡単に剥がし、残りの爆風をすべてロックマンに当てる。
「必殺の一撃を土壇場のバリアで防ぐ、無論強力な一撃は防げるが多段ヒットするプログラムアドバンスの前では無意味」
あまりにも高速で展開する攻撃の嵐に観客や視聴者も意識が追い付いていかない。
それはあまりにもネットバトラーQが完璧にロックマンを操り、完璧なロックマン対策をしていること。
まさかここまであの光熱斗が一方的に打ち負かされるなんて誰が想像できようか。
「体力が下がっているサイトスタイルとはいえ、今の一撃ではアンダーシャツの発動圏内まではいかなかったろう。ここからは大技の必要はない、ロックバスターと……」
「一度立て直すぞロックマン!」
迫りくるバスターを石の塊がすべて弾き返してしまう。
しかし、突如風の塊を受けたストーンキューブはロックマン目掛け走り出してくる。
「まずい!?」
迫りくるストーンキューブをとっさにガッツパンチで跳ね返すが、すでに射線から離れたバグロックマンはチャージしたロックバスターを発射。
ロックマンに直撃し、大きく吹き飛ばされてしまう。
異常なまでに強化されたチャージショットはナビカスに組み込まれたアンダーシャツを発動させ、間一髪のところでロックマンの命を繋ぐ。
「エアシュートで遮蔽物の撤去、光熱斗は防御に置き物を使いながら、それすらも攻撃に転じかねない。放置しておくのは不味いし処理に手間取ってもいけない」
あまりにも鮮やかな攻撃。
ここまで熱斗とロックマンを追い詰めた存在はいない。
いや、ロックマンのことを知りすぎているのだ。
製作者である光祐一朗よりもサイトスタイルを熟知し、ライバルである伊集院炎山よりも対ロックマンの立ち回りが上手い。
そしてなにより、光熱斗とロックマンの戦い方を知り尽くしていた。
『なんてことでしょう! まさかここまで一方的な展開になるなんて、準決勝でも素晴らしい戦いを見せてくれたネットバトラーQ選手ですが、決勝の動きはまさに神がかっております!』
これまでの戦いを見てきた大会参加者はこのネットバトラーQの戦い方に既視感を抱く。
それは光熱斗がロックマンを使ったときの動きそのものだった。
単なるコピーではなく、まるで初めから長い時を過ごしてきたかのような抜群のコンビネーション。
カスタムや戦略の違いこそあれど、すべてロックマンが持つ可能性を引き出した戦い方だ。
「今のでアンダーシャツを発動したことだろう」
すべてを完璧に対処してきたネットバトラーQの声に感情が篭る。
その声に宿るのはただ一つの執念。
「あとはバスターを一撃当てるだけだ……」
ここまでくれば攻撃力など関係ない、攻撃を当てることだけに専念し、連射力を生かしたバスターの雨でロックマンを追い詰めていく。
そして……。
「よくもここまで連射力に優れたバスターを避けるものだ……。しかし、君たちならここまで避けきると信じていたよ」
バスターを避けながら距離を詰める熱斗とロックマン。
『この配置は!?』
「避けきれない!」
「君たちなら勝つために進むことはわかっていた、だから誘った。君たちが勝つにはそのルートを押し通るしかないのだろう」
動きが制限され、すでに回避できる安全地帯がない弾丸の嵐。
いつの間にかその中心に追い込まれた二人……。
「回避は出来ず、チップを使えばその硬直の瞬間を周囲を囲む弾丸が襲う。これで終わりだ」