ありえない、いや理屈としてはあり得るのかもしれないが、この土壇場でまさかこんなことが……。
「私のロックバスターにロックバスターを当てて相殺しただと!?」
言ってしまえばバスターとはエネルギーを固めて打ち出すエネルギー弾というもの、これが他のナビの攻撃方法ならそうはいかないが、二人のロックマンのバスターは限りなく近い属性を持つ攻撃手段だ。
さすれば、同じタイミングで同じ威力のバスターを当ててしまえば二つのエネルギーはぶつかり合い相殺、消滅してしまう。
「ば、馬鹿な。こんなことが……」
「よし、まだまだここからだ!」
まずい、確実に仕留める必殺の一撃が防がれ、向こうに流れが出来てしまった。
二人を超えるために持ちうるすべてを総動員した、手に入れることが出来るチップはすべて手に入れた、ナビのカスタムだってこの日のために考えられる最高の状態のロックマンを用意した。
文字通り人生をかけたこの一戦のため、自分がこの世界で培ったすべてをネットバトラーQという孤高の存在に注ぎ込んだ。
それでも勝てぬというのか、これが主人公のもつ運命だと言うのか。
「プランBに移行する、デスマッチ2!」
「おっと、そうはいかないよ、クサムラステージ」
なんだと!?
まずい、接近戦を仕掛けられぬようにエリアに穴をあけ、そこからカモンスネークによる追撃をするはずだったのに。
このコンボは見せたこともないし、足場が崩されたときは基本的にエアシューズで対応するはず……。
だからこそ、用意した対熱斗用フォルダに組み込んだチップなんだぞ。
「なぜこちらの手の内が……。いやクサムラステージは不味い!?」
「へへっ、俺たちの持ちうる全部をぶつけなきゃいけないもんな、ってことでヒノケンのコンボを借りるぜナビチップ『フレイムマン』」
生い茂る草原が一瞬でフィールドに出現したかと思うと、その瞬間巨大な熱源がその地に足を付ける。
炎の化身に触れた瞬間に草木が燃え始め、その熱源は巨大な火球へと姿を変えた。
そして、その炎の化身が口を大きく開くと……。
バゴォォン!!
エリア全体を燃やし尽くす業火の塊が、その口から吐き出された。
草を燃やし、その威力を高めつつあるそれはまっすぐにロックマン目掛けて直進してくる。
「ええい、この距離なら直線の攻撃など……!?」
フレイムマンのチップ攻撃は直線状に火炎放射を打ち込む技、しかしバリアブルソードと同じでコマンド入力をすれば炎の向きを変えることが出来る。
つまり、この炎を回避させることはフェイク。
威力が二倍になっている以上、下手なプログラムアドバンスよりも高威力なこれを受けきるなど到底出来ない。
「ダークネスオーラ!」
もうオーラによる防御は対策もされているだろうし、切るならこのタイミングだろう。
準決勝で見せた手の内だ、こうなればただのバリアとして使い捨てるのが得策とみた。
準決勝ですべての攻撃を無効化した闇のオーラは、煉獄を連想させるほどの炎の塊を真正面から受け止めた。
しかし、そのオーラは徐々に力を失い、そして……。
ゴォォォォ!! ドガァァァン!!
巨大な爆発とともに砕け散り、ロックマンは業火に包まれた。
『なんということでしょう、今のは準決勝でヒノケン選手が見せた必殺コンボです! 見事ネットバトラーQ選手のダークネスオーラを破壊しつくしました』
『凄まじいねぇ、ネットバトラーQの強みは相手のデータを解析してメタを張ることなんだけど、まさか、一つ前の戦いをもはや自分の物にして使いこなすなんて』
ケロちゃんの興奮に対して、冷静状況を分析して解説する砂山ディレクター。
それもそうだが、恐ろしいのはロックマンのHPが残り1なのに回復も防御もせずにここまで攻撃に転じているところだ。
この世界で誰よりも二人の強さを知っていると思っていた。
でも、それが驕りだった、こちらの予想などはるかに超えて成長している。
しかし、君たちがまだ見ぬ敵も、君たちと共に冒険をしてきた。
と言っても困ったことに状況はうれしくない。
相手の体力は風前の灯とはいえ、こちらの体力はバグの影響で時間と共に減り続ける。
サイトスタイルの体力のなさに付け込んで、こちらのメタ戦略から一気に強みを押し付ける。
それが当初のプランだったはずなのに、まさかこんな神業を披露するとは想定外にもほどがある。
ゲームとこの世界は違うものだとわかっていたはずだが、どうも原作知識というのが邪魔をしてしまう。
最もここまで自分が強くなれたのは、その知識によるところが多いのだからなんとも言えないだろう。
「しょうがない、バグスタイルを捨てるぞ」
『いいのかよん、ここまで完璧にロックマンの振りをしてこれたのに』
「すでに枯れた勝ち筋にこだわるっても覚悟ガンギマリの二人には勝てん。いや、もしかすると熱斗辺りはこちらの正体に気が付いているかもしれん」
姿形を変え、戦闘スタイルさえこの大会のために新たに構築したものであるが、どうしても根本には自身が得意とする遠距離攻撃をベースにしている。
正直私生活では鈍感極まりないが、ことネットバトルに置いてはとんでもない嗅覚だと思う。
それに直前にシュン君が顔を出したことや、この大会の構造をしっかりとロックマンが考えているなら答えにも辿り着くだろう。
感覚派の熱斗君に、理論派のロックマン。
味方なら心強いが、敵に回すと面倒くさいものだとは……。
いや、元々敵として対峙していたのを味方にしてもらったのに、変なチャレンジスピリッツでまた戦うことになっちゃっただけなんだけどね。
なぜならは乗り越えなければならないと思ったから。
この世界に受け入れられて、彼と共に生きていくと決めたから。
そのためにも、歳をとって諦めてしまった何かをもう一度つかみ取るため。
子供たちもそうだが、大人だって誰もが夢をもっている。
いや、悪党たちも夢を捨てきれてないせいで、世界の危機が訪れてるから一概には歓迎できないんだけどさ……。
「行くぞ、カラードマン。バグスタイルを強制解除して元の姿に戻った瞬間、すべてを叩き込め」
『あいあいさ~。いつネタバレしてみんなを驚かせるか楽しみにしてたんだから! みんなびっくりしてるうちに全部終わらせちゃうよ~ん』
「ふふっ、そうね、道化師の本領発揮よね。ここまで付き合ってくれてありがとう」
『やっぱりそっちの口調の方がオイラしっくりきていいねぇ~』
自分のロックマンエグゼの知識を総動員してここまで来たが、この世界で得たものもたくさんある。
最後に物を言うのはやはり、パートナーとの絆だろうか?
いかにも少年漫画の王道みたいだし、自分は少年どころか性別も歳もすべて当てはまらなくなってしまったけど。
「さぁ、行きましょうか。大人の底力を子供に見せつけて上げましょう」
『大人げないとも言うけどね~』
まぁ、主役は子供たちというけど、大人たちだって脇役に甘んじてるわけじゃないから。
世界征服を狙う悪の科学者や、世界最強を求めるナビがいるんだ。
それに、肝心な時に子供しか戦えないと世間に思われるのもしゃくだからね。
「さぁいくよ、ラストオペレーションだ」
『あいあいさ~!』
『色綾まどい』
ネットバトラーQの中の人。
一応伏線が色々張られていましたので見返してみると面白いかも。
例えば「N1グランプリ本戦直前」はまどい視点で船に乗っている主要キャラにたいして一言二言話しているのに、ネットバトラーQにだけ言及していなかったり。
ラスボスをロックマンと明記して、のちにバグロックマンを出したのもミスリードを誘うためです、あくまでも本作の主役は彼女なのですから。
どうして大会に参加して熱斗戦っているのか、理由は細かいものがたくさん重なりすぎて絶対的なこれといった理由はありません。
ただし、シナリオに流されるわけでもなく、自分で決めた道だということだけが事実です。