『よく来たなまどい。どうかね、我がゴスペルの誇る無人島秘密基地は!』
潜水艇で島の内部に建設された秘密基地に辿り着いた俺を出迎えたのは、見覚えのある電磁スーツに身を包んだ俺よりも高身長な男。
ゴスペルなんてとっくに壊滅したんだけどね
「シュン君どうしたのその格好!?」
『ふははっ、WWWで開発中の技術で、ロボットにネットナビのデータを反映させ、現実世界で活動させる研究というのがあってね。まだまだ発展途上の物だが、あいにく私自身がネットナビのようなものだからね。自分専用のロボットを作って操作できるように少しアレンジさせてもらったのさ』
どこからどう見てもゴスペル首領として対峙したまんまの姿がそこにはあった。
たぶんコピーロイドの元になる技術なんだろうけど、この時点でこれだけ再現出来るの科学者って他にいないよね。
いや、すごいんだけどさ、無人島の秘密基地といい完全に悪役だよこれ。
って考えてみたら『2』の黒幕なわけだし、なんなら俺も元々敵キャラなわけだもんね。
「うわっ、未来で見たシュン博士と同じだ」
『この頃からこのセンスで生きてんのかよ』
あっ、未来でもこの姿認知されてるんだ?
一体どんなことしてどんな姿で歴史に名を遺したんだこの子。
「さて、これで君たちを私自らエスコート出来るな。重要なミッションだから大事な部分は私自身で設定や操作をしたいと思ってね」
案内された先には『4』で見たことある巨大な赤外線装置、これが超遠隔赤外線通信装置って奴だな。
うへっ、すごく言いづらそうな文字列だ。
『これにプラグイン……君たちで言うところの電波変換して内部に入って貰えれば、こちらで小惑星までのウェーブロードを繋げよう。ノイズと呼ばれる通信障害になりえるバグに関してもこの時代は電波自体がまだまだ未発達のおかげで、君たちの時代ほどの障害にはなりえないだろう』
『ってことは安全に宇宙の旅を楽しめるってわけか!』
『君たちの資料を元に色々考えたが、デューオが何か妨害してくることも恐らくないだろう。どうもあれは判断基準を探している、君たちがデューオの前に立てば奴の基準で見極められるだろう』
「そっちは大丈夫です、渡す資料も用意しましたし、渡すまでに戦うことも想定してるので」
やっぱり戦うこと前提なんだ、スバル君もウォーロックの戦闘狂な部分に少し引っ張られてるな。
シュン君は最終チェックとして、通信装置の動作確認をしている。
なんかこう、超遠距離から電波を飛ばして通信するってロマンがあるよね。
「向こうに着いたらそのままデューオと戦って、未来に帰っちゃうんでしょ?」
「はい、僕たちの帰りを待ってる人たちがいるので……」
「せっかくこの時代に来たんだから観光でもしていけばいいのに」
『そうだぜスバル、せっかくだからお土産の一つでも恋人に買ってやったらどうだよ』
ウォーロックは揶揄うようにスバル君に言ったが、シュン君が動きを止めて思い出したかのように懐から何かを取り出した。
「これを持っていけ、未来ではもう存在しない動植物の遺伝データをまとめたものだ。未来の技術なら再び花を咲かせることも可能やもしれん」
データディスクを受け取ったウォーロックはそれを口の中に放り込むと、むしゃむしゃと咀嚼し始めた。
もしかしてそれが電波体のダウンロードの仕方なの!?
『あんがとよ博士、良い手土産になりそうだ。あんたって人はやっぱり気が利くんだな』
『貰った資料に書かれててね、どこかのお節介好きがこの時代の私に頼んできた。女が喜ぶのはいつの時代も花に変わりないらしい』
なんか粋な会話してるな二人とも。
スバル君は全然知らなかったみたいだけど、ウォーロックと未来の資料を用意してくれた人は知ってたみたい。
周りの人たちもスバル君に頼りっぱなしじゃなくて、少しでも彼が安らげるようにバックアップしてる。
案外未来にもちゃんとした大人はいるらしい、それが俺たちの時代から受け継がれた物だったらうれしいな。
「あら、私はシュン君に花束なんてもらったことないけど?」
『使い道のなくなったこの無人島で花の栽培も始めて見るか、そしたら島全部に咲き乱れる花をプレゼントしようではないか』
いつものようにちょっと俺も揶揄ってみたら、とんでもなくロマンティックなことを言われてしまった。
科学者の癖に浪漫が分かってらっしゃる、むしろ可能性を追求する科学者だからこそ浪漫がわかるのだろうか?
「なんだか、意外だよね」
『そうだな、人に歴史ありってやつだ』
横で見てた二人組がひそひそと話し始めていた。
そりゃ二人にとってシュン君は、遥か昔に名を刻んだ優秀な科学者として認識してるはずだからね。
今の時代のシュン君は優秀だけど、普通に少年だし、いつもこんな感じだよ。
お姉さんの前で格好つけたい年頃なんだよね。
『よし、準備も出来たぞ。いつでもデューオがコントロールする小惑星に君たち二人を飛ばせる』
「ありがとうございます。お二人のことは未来に帰ってもずっと忘れません」
『ありがとよ、シュン博士にまどいの姉さん。あんたらが守った世界は未来でもきちんと守り通して見せるからな』
二人ともこれから宇宙に行ってデューオ相手に戦ってくるんだよな。
そんでもって未来に帰ってからもまた世界を守るために戦う。
この時代の俺たちには何もできないけど、せめて過去の時代から応援して、二人の頑張りを知ってる大人がいるって伝えたい。
「がんばれ、ロックマン!」
こういう時大人のお姉さんが出来る少年へのエールといえば、ギュッと抱きしめてからの頬に軽くキスだよね。
いやね、熱斗君にもしてるし、すごくやる気出してくれるからさ。
年頃の少年にこのくらいの役得があってもいいじゃないか、俺だって少年の立場ならされたいもん。
それに恋人がいてもウォーロックが喋らない限りバレないし、もしバレたとしてもウォーロックが何とかしてくれるでしょ。
一瞬フリーズしたかと思うと、顔を真っ赤にしてウォーロックに言い訳を始めた。
不可抗力とか、事故だとか、絶対に誰にも話したらダメだとか。
『いいからさっさといけ! まどいもこれ以上少年をたぶらかすな!』
シュン君に急かされ、二人は通信装置の前に立つとプラグイン用の端子に吸い込まれるように消えていった。
『まったく、なんとも締まらない別れになったじゃないか』
「いいじゃない、湿っぽいよりも全然」
装置が無事作動したことに安堵しつつも、小惑星のことを計測し続けるシュン君。
『私はしばらくここに残りデューオの行動を監視する。本来は数か月後に地球に迫りくるはずだった存在だからな』
「それなら私もしばらく残るわ、何か不測の事態が起こった時にネットエージェントの手は借りたいでしょ?」
『一応セレナードにも待機してもらっているが、君がいれば心強い』
地球が滅ぶ可能性があると言われたら、そりゃウラの住人だっていくらでも協力するよね。
今回ことがことだから、セレナードはじめウラランカーの一部にしかこの情報は出回ってないけど。
遥か空の彼方を見上げながら、二人してちょっとセンチな気分になってしまう。
『遥か未来技術が進歩しても、案外人間というのは変わらないらしいな』
「そうね、どんな時代になっても世界征服とか企む奴っているのね、ブームみたいになってるのかしら?」
『我々だって人のことは言えないが……彼らが来なければデューオとやらも私たちで処理しなければならなかっただろうな』
「えぇ、その時はまた私と熱斗君の出番でしょうね」
本来であれば世界の命運をかけて戦うはずだった相手に交渉に行った二人、俺たちには無事を祈ることしかできない。
「でも小惑星以外にも不安な奴は多いわよ」
『そうだな、ダークチップを流通させるネビュラ、WWWもワイリーが野放しである以上また何か仕掛けてくるだろう』
「でも私と熱斗君がいれば何とでもなるけどね」
『ふむ、心強いカップル様だ……』
「あら、シュン君ももちろん入ってるわよ、どちらかと言ったら私の相棒ってシュン君の方が似合うわよね」
熱斗君のライバルは炎山君だし、システム面でバックアップしてくれるのは光博士。
だとしたら俺にとっての相棒はシュン君がそれっぽいのかもしれない。
元々二人とも途中退場予定の悪者だし、俺もネットエージェントなんてやってるけど、ほぼウラの世界側の人間だからなぁ。
『ふははっ、そうだな、確かに私たちの方がお似合いだ!』
高笑いしながら、なんだがご機嫌なシュン君。
たまに俺と喋ってる時急にテンション上がるんだよね。
『まだまだ私たちの戦いは終わりそうもないな』
「そうね、まだまだ付き合いは続きそうよね」
さて、帰ったら熱斗君強化プランでも始めようか。
とりあえずデューオ問題は何とかなりそうだし、次はダークチップ関係に対して考えないと。
まだまだ俺ものんびり出来そうにないな……。
OSSのお話はまどいとシュン君が主役となりました。
本編はまどいと熱斗君のダブル主人公なら、こちらは裏方コンビ、ダークヒーローといったところでしょうか。
ウラを取り仕切る二人組、ある意味似た者同士でもあるんですよね。
そんなわけでこの二人の話も今回でいったんおしまい。
これからの未来を考えながら、無人島に二人といったエンドでございます。
明日がOSS編も最終回、未来に帰ったスバル君と流星のロックマンがどのように変化してるのかお見せして、この作品も完結です!