『うむ、どうやら無事に帰ってこれたようだな』
「はい、シュン博士!」
『あんたの計画通り、ムー大陸の奴らも説得したし、デューオって野郎の協力も取り付けたぜ』
「結局全部戦うことになっちゃったけどね」
『優れた戦士というのは百の言葉よりも一の実力で人を測るからな、そう言った意味でも君たち二人にしか任せられなかったのだ』
スバルとウォーロック。
遥か昔、まだ私が人間だった時に世界を救った光熱斗とロックマンがあの時代の英雄であるなら、目の前の二人はこの時代の英雄であろう。
知り合いが寿命で亡くなる中、データだけの存在になってしまった私に寿命などない。
それでもずっとこの星の行く末を見守っていたのは、かつての友が命を懸けて救った星を守りたかったからかもしれない。
あの二人の子孫は繁栄しているが、残念ながら世界を救うだけの力や才能には恵まれなかったようだ。
その代わりに世界を救わんと立ち上がったのが、星河大吾の息子とはな。
『さて、後のことは私たちに任せておけ、デューオと思われる小惑星の探索もすでに済んでいる。この時代での決戦についてはこちらで打ち合わせておこう』
「後は私たちの仕事だからスバルちゃんにウォーロックちゃんもゆっくりお休み」
「ありがとうございますヨイリー博士」
ヨイリーの奴も人間ではかなりの高齢だというのに、よくもまぁ現役でこれだけ頭を動かせるものだ。
さすがはワイリーやリーガルの血筋を引いてると言ったところか。
まさか彼らの子孫が世界平和のために身を粉にして働くことになるとは、私にも読めなかったな。
これだからつくづく人の一生とは面白い。
「あら、師匠。今日はなんだかご機嫌ですわね」
『200年前のことを思い出してな、思えば私もあの頃は若かった』
「私が師匠と初めて出会った時で、すでに100歳を超えてましたからね。若い頃なんて想像もつきませんよ」
『貴様が己の才能に溺れ、科学は万能だと思い上がった若気の至りが私にもあったのだよ』
それとなくワイリー博士の子孫も気にかけていたが、特にこのヨイリーという娘は色濃く才能を受け継いだものだ。
まぁ、調子に乗る前に私がスパルタで科学者の何たるかを叩き込んでやったがな。
子供を導くのも大人たちの役目……そうだな、これもまどいから学んだことだったか。
『本当にあの時代から存在してたんだなシュン博士、デューオやムー大陸の奴らと俺たちからしたら変わんねぇんな』
『さすがに彼らと比べたら私など高々200年生きてるだけの元人間にすぎん、私にだってわからないことで世界は満ちているからな』
まさかデューオ以外に宇宙人が存在するなどここ数十年で初めて知ったことだ。
それどころか、初めて地球で存在を確認出来たAM星人が星河大吾の息子と電波変換し、ロックマンを名乗ってると知った時は大笑いしてしまった。
私の知る限り光家と縁もゆかりもないはずの星河家の人間が、時代を超えてロックマンを受け継ぐとはな。
たしかに秋原小学校で熱斗と当時の星河家の先祖が一緒にいたとはわかったが、特別関係はなかったはずだ。
『今回のワームホールに関してもムー大陸のテクノロジーを利用しているからな、私一人の研究では実現していない』
『どうだかな、あんたに出来ないことなんて俺には思いつかないぜ』
『私のことを買いかぶりすぎたウォーロック。私の専門は電脳世界およびバグ……今でいうノイズ学、人間の精神を変換させるシンクロ学、後は最新のテクノロジーに関しては大体のことは出来るがな』
『いや、今の世界を構築するほとんど全部じゃねぇか!』
『さすがに考古学や電波学は専門外だ、今回のムー大陸についても彼女の力が大きい』
私が生きていた時代から遥か昔に超古代文明が存在していたことは明らかだが、それについては私も知らぬ未知の世界だ。
そう言った意味でも、その道の専門家を仲間に出来たことは幸いだった。
「おかえりなさい、スバル君」
「オリヒメさん、ただいま!」
ずっと黙っていたドクター・オリヒメが言葉を出すと、スバルが彼女の胸に飛び込んだ。
どうやら彼女にとっても、スバルは特別な存在のようだ。
恋人が過去の世界に単身乗り込むなど、不安があって当然。
誰よりも帰還を待ちわびたのは彼女であろう。
『おい、二人ともイチャイチャするのは電波変換を解いてからにしてくれ。俺まで巻き込まれてるじゃねぇか』
「あっ、ごめんねウォーロック。ついオリヒメさんに会えたのが嬉しすぎて……」
『ほんの数日間会ってねぇだけだろ!』
「ごめんなさいねウォーロック。私もスバル君の顔を見たら我慢できなくなって」
あの頃の熱斗とまどいを見ているようだ。
恋人を失くして世界に絶望し、ムー大陸を復活させ人類を支配しようとしていた女が、自分の野望を打ち砕いた小学生と恋に落ちることになろうとは。
『200年前からよくある恋人同士のじゃれ合いだ、ウォーロックもいい加減慣れろ』
『いや、歳の差がありすぎるだろ』
『いつまでもAM星人の感覚だな、地球人の恋愛に歳の差とは考慮されない物だ』
『本当にそうなのか? まぁ、あんたが言ってた光熱斗には会えなかったが、奥さんになるまどい姉さんにはあって来たぞ。ついでにコレお土産』
ウォーロックが吐き出したメモリーチップ。
手の平に載せ中身をスキャンしたら、過去の私に頼んだ200年前の動植物の遺伝データだ。
あの頃は貴重でも何でもなかった物も、環境が変化した現代では貴重なサンプルだ。
「そちらにはどんなデータが?」
『なんてこともない、ただの200年前の動植物の遺伝データだ。私のガーデニング諸島ですべて現代に蘇らせよう、スバル君にも栽培後に渡すからオリヒメ君にプレゼントするといい』
「えっ、お花だったら直接シュン博士がオリヒメさんに渡しても……」
「ダメよスバル君、男の子が女の子に告白するときは花束って昔から決まってるのよ」
『そうだぞスバル。光熱斗もまどいに結婚のプロポーズをする時に同じ花を送ったものだ』
まったく、懐かしい話だ。
どこで覚えたか知らないが赤いチューリップをまどいに送るだなんて……。
あの男の、ああ見えて花言葉など気にするタイプだったか?
まどいのようないい女の隣に立とうと思えば男として成長せざるを得ないか。
『さて、デューオとムー大陸の戦士たちに関しては私とヨイリーが調整を受け持とう。オリヒメ君はロックマンの調整を頼む』
ムーの遺産を取り込んだウォーロックを弄るなら彼女が適任だろう。
それに決戦前に恋人たちの時間を作るのも悪くは無かろう。
電脳獣騒動の時もまどいとの時間を熱斗に譲ったからな。
まぁ、私の方が仕事上付き合う時間も長かったし、私の方がまどいの相棒として彼女を支えていた自負があるからな。
私の親友にして戦友、そして同じ女を好きになったライバルでもある。
そんな私から見てもお前はいい夫だったぞ、光熱斗。
「それじゃ、調整は私の研究室でしましょ、久々の二人っきりの時間ね」
「そ、そうですねオリヒメさん!」
『だからよぉ、俺もいるんだって……』
さて、シリウスだか、ブラックホールサーバーの管理者だか知らないが、熱斗とまどいが救ってきた世界をコレクションにしようなど、ふざけた存在だ。
ウラの電脳世界をセレナードから受け継いで、オモテの現実世界もいつの間にか私が大部分に関わるようになってしまったのだ。
私にだってこの星は愛着がある、外部からの侵略者に目に物を見せてやろうか!
「ところでスバル君……なんだか私以外の女性の匂いが体についてるけど、何かあったのかしら?」
「いっ!? ち、違います。過去でまどいさんが勝手に!」
『あっ!? 思い出したぞ、200年前デューオの下へスバルを送るときにまどいにキスされたな!』
『おう、こいつ鼻の下伸ばしてたぜ』
さすがに200年前のことだから今の今まで忘れていたが、なんて羨ましいんだ!
出来るなら私だってまどいに会いたかったんだぞ、でも過去の自分と出会うのはリスクが高すぎるからと断腸の想いで諦めたと言うのに!
目の前で焦る遥か年下の少年に小言の一つでも言ってやろうかと思ったが、それよりも先にオリヒメがスバルを抱きしめ、唇にキスをする。
「んんっ!?」
『おいおい、いきなりかよ!』
「あっ!? オリヒメさん! あうぅ……」
顔を真っ赤にしながら何をしたらいいかわからずフリーズするスバル。
そう言えば、遥か昔にこんな光景を見たことがある気がする……あれは熱斗とまどいの結婚式か。
「スバル君、私とキスするの嫌?」
「い、いえ……ただいきなりで驚いただけで……」
「ふふっ、それじゃこれで過去のことは水に流すわ」
まったく、恋をする人間と言うのはいつの時代も愛おしいものだ。
これにてOSS編も終了『朝起きたら色綾まどいになってました』も完結となります!
途中間を開けながらも、何とか完結まで進めることが出来ました!
流星のロックマン未読勢の方も多いと思いますが、あれはあれですごく楽しいゲームなので是非遊んでみてくださいね。
『帯広シュン』
ドリームウイルスとのフルシンクロにより、意識が電子化した科学者。
人間という枠組みを外れ200年後の世界でも存在してる。
元々の才能に加え、長い時間は彼を世界一の科学者へと成長させる。
スバルの父も多少面識あり、その息子が宇宙人と交信しロックマンを名乗ったため、陰ながらサポートし続けて来た。
彼がいたことで未来世界に色々影響があったが、ご愛敬。
歴史の裏から地球を守るすごい人。
『ヨイリー博士』
ワイリーをご先祖様に持つ科学者。
作中最も高齢なキャラのはずが、今作ではシュン君がいるので二番目。
シュン君の弟子のひとりで、若い頃にスパルタで育てられた人。
人間では世界最高クラスの科学者だが、師匠には頭が上がらない。
『ドクター・オリヒメ』
流星のロックマン2の黒幕、かつてくだらない権力者たちの起こした戦争で恋人を失くし、ムー大陸を復活させ世界を支配しようとした。
今作ではロックマンに野望を砕かれたところまでは同じだか、どういうわけか失った恋人の枠に新しい恋人としてスバルが入り込んでいる。
描写しないが、恐らく色々あったのだろう。
歳の差はあれどラブラブカップル、ムーの遺産を取り込んだロックマンのメンテや改造担当。
実はまどいとシュンのコンビを反転させたらこんな感じになります。
『星河スバル』
ロックマンの中の人その1。
世界を3度救うことになるスーパー小学生。
早い段階からシュン君がサポートに入るため、強化されまくり。
機械弄りが好きなので、シュン博士を尊敬し、影響を受けまくった人。
そのせいで『2』でオリヒメの心を救い、恋人になったすごい子。
大人たちにバックアップされてるので、強い&自信も持っている主人公。
『ウォーロック』
ロックマンの中の人その2。
電波変換しスバルと合体することでロックマンになる。
早い段階でシュン君と出会い、強化された人その2。
オリヒメが途中から専属科学者になったため、超強化されている。
本人は宇宙人のため、相棒と恋人の歳が離れてることも、この星では普通なのかとスルーしがち。
ロックマンの時にイチャイチャされたり、抱きしめられたりすると自分の感覚が分かってしまうので、そこだけは遠慮して欲しいと思ってる。
でもなんだかんだお似合いな二人だと認めてる相棒。
『響ミソラ&白金ルナ』
本作におけるメイルちゃん枠。
本当はダブルヒロインのはずが、この作品では恵まれず。
シュン君が早い段階でスバルに接触し、特訓や意識改革をしてるため、触れ合うイベントが激変。
きちんと大人がバックアップして、事件の後始末などもしっかりした結果、ロックマンと触れ合う機会が減ってしまった。
その隙に敵であるが悲しい過去があるオリヒメを、精神的に成長したスバルが助けてしまったため、その二人がゴールイン。
こんなオチだが、作者は委員長派。